殺し合いにおける、参加者同士の遭遇で起こり得るのはなにか。
打倒ベリアルの志を共有し、手を取り合う者達がいる一方で。
優勝を目指す者達は打算を勘定に入れ、互いを利用せんと手を組む。
或いは絶対的強者として君臨する者に運悪く見つかり、呆気なく狩られる鼠も珍しくない。
呑み込まれそうな程に蒼い空の下、男が二人対峙している。
互いの警戒を解き、朗らからに言葉を交わすではなく。
出会い頭に殺意を叩き付け、命を刈り取るでもない。
だが両者の間に漂うのは、噴火寸前の火山を思わせる張り詰めた空気。
撃鉄を下ろし弾丸が突き進むように、ほんの一つ切っ掛けが生まれれば。
闘争は確実に起こると、日和見の平和主義者でさえ断言するだろう。
「よう、テメェはどのクチだ?あのスカした野郎がぶら下げた餌に食いつく、飼い犬か?」
粗暴な口調に相応しい外見の男だった。
白を基調とした衣服を纏っているも、清廉の二文字とは程遠い。
ワイルドリーゼントに仕上げた髪の下には、獲物を狙う狩人の如き眼光。
ジャケットを羽織った肉体は鍛えられており、されどボディービルダーのような『見栄え』重視とは別物。
余分な脂肪は削ぎ落し、ひたすらに『実戦』用へ洗練された。
しなやかな、獣の筋肉であった。
「笑わせるな。俺に命令できるのは俺だけだ、何者にも屈する気はない」
男の問いを切り捨てたのは、赤と黒で彩られたコートの青年。
二十歳を過ぎてまだほんの数年だろうに、纏う空気の何たる研ぎ澄まされたことか。
どれだけの痛みを味わえば、幾つの修羅場を潜り抜ければ。
若造と揶揄される齢でありながら、ここまでのモノが出来上がるのか。
「貴様はどうだ?俺を試しておきながら、ベリアルに屈する腑抜けか?」
「眠てぇ冗談抜かすなよ、うっかり殺したくなるだろうが」
反対に問い返せば、殺意のふんだんに混じった獰猛な笑みが返って来る。
お互いの名前すらまだ知らないが、僅かなやり取りで判明した事は一つ。
双方共に、自分達へ殺し合いを強要した男が気に入らない。
純粋な正義感は含まれない、もっと単純で自分勝手に、
首輪を填めて奴隷同然に扱い、自分をコケにした。
その一点で、彼らにとって叩き潰す理由足り得る。
「スカシ野郎は必ず殺す。そこへ辿り着くまでに、邪魔する野郎がいるならそいつらも潰すだけだ」
「同感だな。俺の道を阻む者には容赦しない。奴の甘言に屈し、媚び諂って願いを叶えるなど弱者の典型だろう」
ベリアルが何かしらの、それこそ自分達の予想を超える力を有するのは間違いない。
願いを叶えるという、ホストの謳い文句同然の安っぽい言葉も。
大掛かりな殺し合いを仕組んだ男が言えば、成程確かに説得力が生まれる。
本当に叶える気があるか否かは一旦置き、目の色を変え優勝に心揺さぶられる参加者は少なくない筈。
しかし青年はそういった者達を、弱き者と切り捨てる。
他人に願いを叶えてもらう、それ自体が唾棄すべき弱さの証拠だ。
「この手で倒し、奴の持つ全てを根こそぎ奪い俺の野望の糧にしてやる。真に欲するものは、自分の力で奪い取ってこそ意味がある」
「ハッ、言い切るじゃねぇか」
胸の前で拳を固め宣言する青年へ、男も愉快そうに笑う。
聞く者がいればジャイアニズムの塊だと、呆れや軽蔑を浮かべるかもしれない。
尤も男にはそんな常識被れの戯言より、青年の言葉の方が遥かに好感を持てる。
従順な犬に成り下がってご褒美を待つか、力で捻じ伏せ己のものに変えるか。
選ぶ選択肢は一つ。
与えられるのが当然の家畜ではない、自分の手で手に入れる飢えた獣こそ自分らしい。
「嫌いじゃねぇぜ、テメェみたいな奴はよ」
本心から出た言葉だった。
目の前にいる青年は這い蹲ったままでいるのを受け入れず、何度痛め付けても立ち上がる。
遥か高みへ挑むのを諦めない者だと、察しが付いた。
だからこそ、並んで同じ道を目指す事は不可能だ。
「野郎を殺して全部手に入れんのは一人だけ。お零れに与るなんざ御免だ」
「ああ、つまらん妥協を挟む気は俺もない」
青年もまた、同じ結論に達するのへ時間は掛からない。
別に男へ嫌悪や憎悪を向けてはおらず、むしろ逆。
強いられた立場へ背き、貪欲に力で突き進まんとする姿は。
善悪などとありふれた価値観は持ち込まない、青年自身が強き者と言うのに相応しい。
なれど、手に入れる玉座は一つ。
譲り合う気は最初から無く、誰ぞ彼ぞが仲裁に入ったとて聞く耳持たず。
王であれと、男に我が身を捧げた同胞達がいた。
王であれと、青年に尽くして逝った女がいた。
彼らは善の側へ浸かる者に非ず、しかし託された声に応えぬ脆弱な者とも違う。
であれば最早、必然の流れとしか言えないだろう。
青年が腕を大きく薙ぎ、人の皮を脱ぎ捨てるのに似た動作の直後。
肉体へ瞬く間に変化が起こる。
人ならざる屈強な外殻と、太さを一段階増した四肢。
捻じくれた角はヤギのようにも、冥界に君臨する魔王にも見える。
蒼く輝く瞳に射抜かれ、尚も男に動揺は無し。
高まる闘争の予感へ、そうでなくてはと笑みを深めた。
「テメェは邪魔だ」
「貴様が退け」
破面、グリムジョー・ジャガージャック。
オーバーロード、駆紋戒斗。
弱き己を許せず力を求め、王を望まれた二匹の獣が激突。
火蓋が切って落とされたとあらば、遠慮や躊躇が入り込む余地は皆無。
今からあなたを攻撃します、などと律儀に伝える馬鹿はいない。
地を蹴り、真正面の標的へ突き進むはグリムジョー。
握り締めた拳の勢いたるや、チンピラが小競り合いで繰り出すのとは大違い。
骨を砕き、内臓をミンチに変え、皮を突き破って貫通は確実。
「甘いな」
常人が餌食と化せば、己の死すらも理解出来ずに決着だ。
だが此度の相手はロード・バロン、世界を滅ぼす資格を得た魔王。
パシリと、乾いた音を立てグリムジョーの拳が受け止められた。
プロの投げた剛速球を軽く追い越す速度ですら、ロード・バロンの目には遅い。
「まさか、こんな脆い拳で俺を仕留められると思ったのか?」
「そう急かすんじゃねぇよ、慌てなくてもすぐに殺してやらぁっ!!」
押しても引いてもビクともせず、ならば動かせる部位を用いて仕掛けるまでのこと。
空気を切り裂き飛来する脚部へ、ロード・バロンも蹴りを放ち対処。
人体に当たれば吹っ飛ぶどころか、地面へ肉片の雨を降らせるだろう。
到底蹴り合いで生じたとは思えぬ音を響かせ、脚を振るった体勢で拮抗。
崩さんと力を籠めるも両者譲らず、埒が明かないと先に判断したのはグリムジョーだった。
自身の脚部に掛かる力が消え、そればかりか敵の姿も完全に消失。
居場所を教えるのは言葉に非ず、剥き出しの殺意。
背後を陣取ったときづいた時にはもう遅い、弾丸以上の速さで鉄拳が襲う。
死神の瞬歩や、滅却師の飛廉脚と同じく。
破面にも響転(ソニード)と名付けられた、独自の歩法が存在する。
霊圧感知をすり抜け、高速戦闘を行う技により瞬間移動もかくやの速度を発揮。
頭部を覆う外殻を粉砕せんと仕掛ける。
「甘いと言った筈だ!」
これで決着が付く程度の力しか持たない弱者が、世界を手中に納められる訳があるか。
アーマードライダー同士の、そしてフェムシンムとの死闘で研ぎ澄ました感覚が突き動かす。
電光石火という四文字は正に、今のロード・バロンにこそ相応しい。
振り返り様に裏拳を振るい弾き返すや、敵の第二撃を待たず反撃に出た。
左拳が胸部を狙い、心臓を引き摺り出すべく迫る。
なれど簡単に死んでやらないのはグリムジョーとて同じ、片足を跳ね上げあらぬ方へと逸らす。
「窮屈な見た目の割りに、良い反応しやがるぜ!」
攻撃失敗への苛立ちは見せず、そう来なくてはと笑みを浮かべる。
高揚はグリムジョーのギアを一つ上げ、次いで放つは殴打の嵐。
腕二本で行うのが信じられぬ、機銃の掃射を浴びるに等しい勢い。
人の尺度で計れぬ存在という括りだったら、ロード・バロンも当然そこへ入る。
拳には拳、同等の速さを叩き出しラッシュの応酬が繰り広げられた。
グリムジョーが殴ればロード・バロンが防ぎ、逆もまた然り。
拳が当たる先は相手の拳、一向に胴体へは突き刺さらない。
時折防御をすり抜けはすれど、ダメージになるとは到底言い難い。
力の強さのみならず、肉体強度もまた既存の生物の比じゃなく硬い。
世に名刀と謳われた得物を振るおうと、等しく鈍らに変わるだろう。
「あ゛!?」
殴る蹴るを続けた所で千日手、見切りを付けロード・バロンが戦法を変える。
手応えの奇妙さは真紅の全身が、気体へ変化したが為。
嘗て沢芽市で猛威を振るったフェムシンム、デェムシュと同じ能力を使用。
あらゆる物理攻撃を無効化し、グリムジョーの動きを封じるように纏わり付く。
藻掻こうと抜け出せず、電撃に似た痛みが全身を駆け巡る。
肌が焼き切れるまで維持し続け、じわじわと削り取る算段か。
「ウザってぇんだよ!!」
小細工で勝ちを狙おうなどと片腹痛い、怒声と共に霊力を拡散。
強引ながらも効果的な方法を使われ、気体状のまま吹き飛ぶ。
距離を離された先で実体化、だが立て直しの余裕をむざむざ与えるお人好しはここにいない。
すかさず響転を用いてグリムジョーが、急接近し抜刀。
型も何もない荒々しい、それでいて獲物を逃さぬ牙の如き斬撃の到達まで残り僅か。
「貰ったァッ!!」
「この程度がどうした!!」
十分だ、その僅かな時間だけで問題ない。
ロード・バロンの意志に呼応し、生み出される長剣。
グロンバリャムという名の得物は、使い手に相応しい強度を誇る。
鼓膜を痛める衝突音には気を割かず、刀身を挟み睨み合う。
拮抗は一瞬、持ち前の技量で共に剣を操る。
片や虚圏の生存競争を勝ち抜いた王。
片や黄金の果実争奪戦で足掻き続けた王。
常に死が付き纏う争いの渦中に身を置き、度重なる実戦で牙を研いだ猛者。
急所には決して近付けさせず、反対に己が刃で敗北を与えんと攻める。
首へ走った剣を持ち前の膂力で弾き、一刀両断の元に斬魄刀を振り下ろす。
数歩身を引き躱し、喉を突き破るべくグロンバリャムが疾走。
退いて避けるか?いいや前進あるのみだ。
首元スレスレを切り裂く剣には見向きもせず、ロード・バロンへ迫るは豪快な一振り。
袈裟斬りで以て巌の如し胴体を、刀の錆に変えるだろうがさせるものか。
先に斬り殺せば良いだけと、グリムジョーへの攻撃を優先。
刃がお互いの体を駆け、火花が散り鮮血の花が咲く。
が、与えた傷は非常に小さい。
アーマードライダー鎧武による高火力の技を、ノーダメージで耐え切ったロード・バロン。
鋼皮(イエロ)と呼ばれる霊力に比例した、破面特有の強固な皮膚を持つグリムジョー。
高過ぎる力を持つが故に、通常であれば決定打となる一撃も精々がほんの掠り傷。
斬っても無駄と分かった故に、即座に次の手に出る。
斬魄刀を持つのとは反対の、空いた手に霊力を収束。
指先に籠めた力を一点に放つ虚閃(セロ)に、ロード・バロンは再び気体化。
回避と同時に距離を取るも、グリムジョーからすれば好都合。
「死ぬ気で防げよ!でなきゃ灰に変わるだけだ!」
皮膚から垂れた血を混ぜ、霊力の質を数段階上昇。
王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)。
数ある破面の中でも特に限られた、10体の個体だけが行使可能な特大の虚閃。
第6十刃(セスタ・エスパーダ)に数えられた、グリムジョーだから許される大技を放つ。
破壊力の高さ故、拠点を壊しかねないと藍染惣右介も使用の制限を命じた。
兵器と呼んでも差し支えない力が、ロード・バロンのみを対象に襲い来る。
「以前の俺なら危機感を覚えただろうが……最早過去に過ぎん!」
焦らなければ怯えもせず、目前へと迫る輝きを真っ向から睨む。
望むままに世界を変える男が、この程度で倒せるものか。
グロンバリャムを両手持ちで構え、オーバーロードインベスのエネルギーを付与。
古き世界の王、ロシュオに並ぶか凌駕せん力を一刀に乗せ振り下ろす。
「なっ――」
王虚の閃光と渡り合うどころか、真正面より斬り伏せる。
それだけでも驚愕なのに、ロード・バロンの光刃は勢いがまるで衰えない。
もう一発撃つ余裕はない、響転を用いて逃れるのも手遅れ。
残された時間で霊力を防御に使用、鋼皮を更にコーティング。
両腕を交差し咄嗟の盾に変えた直後、衝撃と熱が叩き付けられた。
真紅の光が晴れた時、現れたのは五体満足を保つ破面。
盾に使った両腕と、防ぎ切れなかった胴体から血を流しながらも。
両断には程遠い、戦闘続行は十分可能なまでにダメージを殺して見せた。
チラ、と負傷を見やり鼻で笑う。
「狙ってやったんじゃねぇにしろ、ぶち殺してぇ野郎を思い出させやがる」
現世に赴き仕留めるつもりが、思わぬ反撃で傷を付けた少年。
この手で必ずや倒すと決めた、オレンジ髪の死神代行。
嘗ての記憶と似た傷痕を付けられ、偶然とはいえ妙な笑いが込み上げる。
「こんな序盤で使う気なんざなかったが……」
昂り止まらぬ戦意に自ら蓋をし、温存だ何だを考え背を向け逃げるか。
合理的だと物知り顔で言う輩もいるんだろうが、生憎お断りだ。
この手で殺さねば気が済まない敵がいて、まだまだ殺き十分と来た。
なら選択肢など、一つしかない。
「軋れ――――」
口に出すは、第二ラウンド開始の解号(トリガー)。
斬魄刀で独自の構えを取った相手に、ロード・バロンは細胞に寒気を覚えた。
恐れてはいない、しかし強く警戒すべきと自分自身の本能が告げる。
これまではほんの小手調べ、敵の本領はここから始まるのだ。
「――――豹王(パンテラ)!!!」
霊圧の爆発的な上昇に伴い、グリムジョーは次なる領域(ステージ)へ踏み抜ける。
白の装いは胸元を開けたスーツ状に代わり、ワイルドリーゼントは長髪に。
四肢を覆う装甲の先には鋭利な爪が生え、尾が蛇のように揺れ動く。
刀剣解放(レスレクシオン)を果たしたグリムジョーだが、能力の説明を行ってやる義理はない。
地を蹴り付けた瞬間、爆撃発生と見紛う衝撃で地面が吹き飛ぶ。
響転は使っていない、にも関わらずロケット噴射もかくやの猛加速だ。
「ぐぉ――!?」
速い、そう思った時には胴体を拳が叩いた後。
難攻不落の城として君臨するロードバロンが、あろうことか両足を大地から離した。
不可視の力で後方に引っ張られる感覚を味わうも、敵が追い付く方が先だ。
「うおらぁあああああああああああああああっ!!!」」
頭上より振り下ろされる踵落しが腹部へヒット、大の字で落下するも真下にはグリムジョーが先回り。
右手の爪を一閃、背中が火花を散らすも一撃では終わらない。
先のラッシュがガキのじゃれ合いに思える、正真正銘の獣の狩りがスタート。
絶えず斬り裂かれる痛みへ、外殻がダメージ軽減に働きかける。
上等だ、完全に砕け散るまで斬ればいい。
「舐めるなっ!!」
尤も、サンドバッグになるのを許可した覚えはない。
痛みを捨て置きグロンバリャムを振り回し、グリムジョーの猛攻を強制的に中断。
爪を弾くや降り立ち、反対にこちらから攻め掛かった。
真っ向勝負が望みとあらば、受けてやろうと敵も迎え撃つ。
四肢を余すことなく使った肉弾戦を、長剣一本で捌く。
リーチの有利が些事以下に思える程に、一撃一撃がほんの数分前とは比べ物にならない。
飾り気のない身体能力(スペック)向上なればこそ、シンプルな脅威だ。
形態変化(フォームチェンジ)による戦力強化は、高ランクのロックシードを用いるアーマードライダーの常套手段であるも。
こうも劇的な上昇は、自身がライバルと認めるあの男くらいだろうに。
「それが貴様の奥の手なら、俺はその上を行くまでだ」
「ゴチャゴチャ何言ってやがる!」
気体化し一度距離を取り、デイパックに手を突っ込み新たな得物を装備。
ベリアルが寄越した一点は癪に障るが、気に入らない相手が齎す道具を使うのは人間の時と同じ。
どのような力だろうと自らの糧にし、使いこなすまで。
取り出したのは、グロンバリャムとはまた異なる大剣。
西洋の竜を象った鍔が特徴のソレに宿る、魔に属する力を引き出す。
「俺を喰らう気だろうが無駄と知れ!その力、この俺の覇道に役立ってもらう!」
ロード・バロン……戒斗の意志が、自らを蝕まんとする大剣の意志を捻じ伏せる。
ベリアルによる調整も少なからず影響しているも、何者にも屈さぬその精神は本物だ。
伝説の魔剣士の血族が振るった雷の大剣、アラストルがロード・バロンの新たな力となる。
外見に変化こそ見られないものの、全身を青き雷が駆け巡った。
敵が近付くまで待つ必要もない、今度はこちらの番だ。
「オォオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
グロンバリャムとアラストル、双剣を構え突撃する姿は正に雷の如し。
速さで上を行かれた相手に早くも並び、両手の得物が牙を剥く。
細切れは御免だ、爪を叩き付け斬り結ぶ中で敵も力を上げたと気付くのに時間は掛からない。
「だからどうだって話だがなぁっ!」
大剣が齎す効果だろうが、考え込む意味が一体どこにあるという。
得た力諸共捻じ伏せ、叩き潰し、完膚なきまでに壊す。
抑えきれぬ破壊衝動を、たかだか強化の一つや二つで止められると思ったら大間違い。
竜巻が発生せん程の勢いを乗せ、回し蹴りを叩き込む。
「そうだ!俺が勝ち貴様が負ける!その程度の話でしかない!」
「ほざきやがれ!」
ロード・バロンも蹴りをぶつけ相殺、災害級も同然の余波が周囲へ拡散。
木々か地面か建造物か、消し飛んだ一切合切には見向きもしない。
霊力の付与により爪が斬撃強化を受け、電撃と鮮血のエネルギーで双剣が輝きを帯びる。
こいつには負けられない、子供の意地にも似た理由だけで幾度目かの激突。
敵の強さは互いに認めている、故にこそ上を行くのは自分だと食らい付く。
技を学習し、動きを読み、時折受ける痛みに構ってなどいられない。
防御を一切捨てた獣同士の血みどろの争いであり、半端な攻撃は無意味と化す王の決闘。
タイミングを同じくして放った、渾身の一撃が両者を後方へと弾き飛ばす。
距離を詰めはしない、数十歩分離れた位置で構えを取る。
肘部分で照準を合わせるグリムジョーに対し、双剣を逆手持ちに変えるロード・バロン。
どちらが早いか、どちらが遅れるか。
鞭のようにしならせた腕が双剣を投擲、回転鋸のように飛来。
ただ投げ付けただけと侮るなかれ、籠めたエネルギーは強大の一言に尽きる。
飛散する力が周囲を焼く中、グリムジョーも装甲の隙間より突起物を発射。
5本同時に撃ったソレは、余さず標的を喰い破る。
「がっ……!?」
「チィッ……!」
脳髄まで駆け巡る衝撃と、堪らず零す苦悶の声。
自分の技が相手に効いたのを、実感するのは共に叶わない。
己が意思とは裏腹に宙を舞い、それぞれ異なる方へ弾き飛ばされる。
完全に見えなくなるまで、相手の姿を視界に閉じ込めながら。
○
「チッ、スッキリしやがらねぇな」
戦場から遠く離れた場所で、グリムジョーはのっそりと身を起こす。
消化不良もいい所な幕切れに、当然ながら不満が募る。
アレで殺せたとは思っていない、追い掛け決着を付けたいがどこにいるか分からないと来た。
(探査回路(ペスキス)にも引っ掛からねぇ。あのスカシ野郎、とことん舐めやがって……)
破面の高度な霊圧探知も精度が落ちており、考えるまでもなくベリアルの細工と分かる。
ついでに言うと刀剣解放を行った際の、霊力消費量も通常時以上。
いらぬ枷ばかりを付けられ、面白いと思える筈がない。
わざわざ首輪を付けねば命令一つも下せない、チキン野郎がと内心吐き捨てた。
「まあ、殺し合えってんなら分かり易くていいけどな」
何故、死神代行に敗れた己がここにいるのか。
数字が一つ上の同胞に手を下され、意識が飛んだと思えば首輪付のデスゲームだ。
浮かんだ疑問は早々に切り捨て、方針は定まった。
自分に舐めた真似をしたベリアルは殺す、奴の持つ力を奪って今以上の力を手に入れる。
「あとは黒崎一護がいれば文句なし……いや、スカシ野郎に下らねぇ枷を付けられたままで殺り合うのも気に食わねぇか?」
必ずや倒すと決めた死神代行も、巻き込まれてるか否か。
歩き回ってればその内分かるだろうと切り替え、次なる戦場へ赴く。
決して満たされぬ渇きを抱え、蒼き空に獣が解き放たれた。
【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:グリムジョーの斬魄刀@BLEACH
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考]:スカシ野郎(ベリアル)を殺して更なる力を手に入れる。邪魔する奴は殺す。
1:あの赤い奴(戒斗)は次に会ったら必ず殺す。
2:黒崎一護も参加させられてんのか?
[備考]
※参戦時期は虚圏で一護に敗北後~千年血戦篇での再登場前。
◆◆◆
「オーバーロードに並ぶ存在も、当然のように集められたか……」
グリムジョーとは別の場所で、人間の姿に戻った戒斗は独り言ちる。
今の自分に比肩する存在は、唯一無二の好敵手と認めた青年。
葛葉絋汰ただ一人と思っていたが、認識を改める他ない。
オーバーロードとは異なる力を操り、自身と互角以上に渡り合った男。
能力が制限されてるのを加味しても、取るに足らないとは口が裂けても言えまい。
改めて、ベリアルが油断ならないナニカを秘めた者だと警戒を強める。
「まあいい。貴様がどんな力を持っていようと、この俺の邪魔をするなら容赦しない」
来る絋汰との決戦を前に横槍を入れ、道具同然に命令を下す。
この時点で戒斗にとっては、ベリアルは断じて許してはおけない敵となった。
奴は必ず自分の手で潰す、そうして奴の持つ力を手に入れ最強の座をより確固たるものに固める。
(奴の言う願いを叶える方法が黄金の果実……舞の可能性もゼロじゃない)
自分より先んじて、或いはサガラをも出し抜き黄金の果実を手中に収めた。
可能性は否定出来ず、仮に事実であれば尚の事許し難い。
始まりの女となった舞を手に入れる資格は、自分と絋汰の二人にだけある。
ベリアルの目的が何であれ、自分達の戦いに茶々を入れたというのなら。
己を敵に回した事を後悔させ、必ずや倒す。
世界を変える力を手に入れる為に、邪魔する者は捻じ伏せる。
結局のところ、沢芽市にいた時と方針はそう変わらない。
負傷を微塵も感じさせない、堂々とした足取りで此度の戦場(ステージ)を歩き出す。
「……誇れ。お前は強かった」
誰もが動けずにいる状況でただ一人、堕天使の名を持つ男へ剣を向けた少女に。
届かないと承知の上で、そんな一言を投げ掛けて。
【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:魔剣アラストル@Devil May Cry
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]:ベリアルを倒し力を手に入れる。邪魔する者には容赦しない
1:青い髪の男(グリムジョー)とは次に会えば決着付ける。
2:葛葉達もいるのか?
3:ベリアルの言う願いを叶える方法が黄金の果実(舞)であれば、尚の事許しはしない。
[備考]
※参戦時期は45話、絋汰との決戦直前。
※魔剣アラストルの魔力を引き出し疑似的なデビルトリガーが可能となりました。発動中は身体能力上昇や電撃の放射が行えますが、体力を常時消費するようです。
『支給品解説』
【魔剣アラストル@Devil May Cry】
マレット島に封印されていた、雷の力を司る大剣。
「力無き者はその心臓を贄とし、我に永遠の服従を誓え」とのメッセージがあるように、お眼鏡に適わない者には独りでに剣が動き心臓を貫く。
本ロワでは主催側が調整を行い、武器としてなら誰でも使用可能。
戒斗は自身のオーバーロードとしての力でアラストルの魔力を制御下に置き、疑似的なデビルトリガーによる強化を可能にしている。
【グリムジョーの斬魄刀@BLEACH】
支給品ではなく、グリムジョーが破面化の際に虚としての力の核を刀剣状に封印したもの。
謂わば魂魄の欠片であり、没収は免れた。
死神の斬魄刀とは根本的に作りが異なり、魂魄の浄化などは不可能。
単純な武器としての使用以外に、破面が刀剣解放(レスレクシオン)を行う際に必須の鍵となる。
最終更新:2026年02月22日 00:59