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 拝啓、イーニッドへ。

……先に断っておくけれど、この手記を貴女に宛てたことに特別な意味なんてないわ。
信頼や友情、そんな甘ったるい感情の表れだと誤解しないでちょうだい。
単に、私のパーソナルスペースを土足で荒らす最距離にいたのが貴女だった。それだけのこと。念のため、釘を刺しておくわね。

単刀直入に綴るわ。
あなたがこの歪んだ筆跡を追っている頃、──私は間違いなく死んでいる。
つまり、地獄の最下層でキリストに石礫を投げつけている私を想像しながら、この先を読み進めることを勧めるわ。

……もちろん、あなたは狼の遠吠えのような悲鳴をあげるのでしょうね。
マスカラを滲ませながら「そんなこと言わないで」と叫ぶ姿が容易に想像できる。
けれど、これは必然なの。
なにせ、もし私がこの不愉快な遊戯から生還した暁には──

──シリアルキラーの妄想録よりも支離滅裂な『この手記』を焼き捨てるつもりだから。



……
………

 目を覚ませば、一人。知らない下町。
──意識を奪われる直前の記憶は、酷く退屈なものだったわ。


「ハンド。どこにいるの、ハンド。──」

「──……返事がないなら、貴方の指一本一本をピアノの鍵盤代わりに叩き潰すわよ」


主催者が、安っぽいディストピア小説から引用したような、欠伸の出るルール説明を垂れ流していた最中。
私は、相棒とも言える『愚かなおてて』に忠告を授けたはずだったのよ。


……
『いい、ハンド。絶対に私の傍を離れないで。──』

『──もし一ミリでも勝手な行動をしたら、『DIP関節』。『四本』』
……


「…………」


関節名を具体的に告げると、脅しは格段に現実味を帯びる……教育的配慮を添えつつね。
私の零度を下回る眼差しを浴びて、そのおてては速攻に死の恐怖さながら。ベラ・ルゴシも顔負けの大袈裟な身振りを見せたものだわ。
……けれど、ルゴシは腐っても怪奇スター。
あの大根役者以下の演技を見抜けなかったのは、……私の落ち度と言っていいものね。
今、ハンドは私の手中になし。
見つけた暁には、麻酔なしでへバーデン結節手術決定。
私は美学のない残虐行為を好まない主義だというのに……愚かな下僕だわ。



「……『ネイルの刑』決定ね。それか、『ゆびにんぎょうの刑』」

私は、どこに脳が詰まっているのかすら疑わしい低知能なハンドの思考に、呆れるというより興味を抱いたわ。
『支離滅裂』。
その語がこれほど正確に当てはまる存在も珍しいものね。

……ええ、悪くない。

この手記冒頭の主題は『支離滅裂』でいきましょう。
多少、唐突?構わないわ。
人生そのものが伏線回収を放棄した散文詩じゃないの。


 ここで扱う『支離滅裂』は二つ。
(その意味合いは、いずれ指が二本しか機能しなくなるハンドへの配慮よ。数えやすいでしょう?)
一つ目の支離滅裂要素──私の相棒であるはずの末端組織の造反については、既に説明した通り。
そして二つ目。
それが、この滑稽な悲劇的冒頭のトドメを刺す、最大の『オチ』というわけ。


「……それにしても、退屈な夜……」


 その支離滅裂というのは、別に支給された武器の貧相さのことでもない。
エリアの地理でもない。
名を呼ぶのも忌まわしい主催者の、透けて見える安っぽい真理でも、
この下町の腐臭漂う衰退の景観でもない。
ましてや、バトル・ロワイアルという、私にとって平穏な日常にも等しい、ぬるま湯な物語のことでもないわ。


「……」


今、この手記に刻むべき、歴史上類を見ない最大の『支離滅裂』。
それはね────。



「よっしゃターゲット捕捉ゥ! うっし、作戦通り行くぞハンドォ~!w」

「(✊シュバババッ!!)」

「………………は?」



「目標確認! 敵は下町にあり! 作戦名『乳輪の彼方に』! 総員、玉砕覚悟で特攻せよ!! ブッハハハハハハハ!!!!wwwwwwwwwwwwww」

「(👍🌟ビシッ!!)」

「………………あ?」


「日頃の溜まりに溜まった恨みをその指先に込めろッ! ユメ(笑)を掴み取れェ! このエロハンドがぁッ!! 行けぇえええええええええ!!」

「(✋ズバァアンッ!!)」

「…………………………ぁ?」



────『三橋貴志』。
この殺し合いを命の危機ではなく、放課後の延長戦としか認識していない男。
……イーニッド、貴女に思考回路も、その騒々しい髪色にもよく似た──救いようのない、支離滅裂生物のことよ。

………
……



 私の胸部へと、放物線を描いて伸びる不埒な五本指。

……説明するまでもないわね。
ゲーム開始から1086秒後。
愚かなハンドが、さらに愚かな参加者の扇動によって私へ突撃してくる確率は87%と算出していた私は、
──開始から663秒の時点で、屋根の縁に『423秒後に自然落下するレンガ』を設置していた。


 グシャッ。

「👋😇」

「げ?! げげぇっ!? お、おまっ! ハンッ――!?」


そして、ハンドがレンガの下敷きになって4秒後。私は後方12.56メートル地点へ視線をやった。
そこには、『設置から843秒後に自然落下するタライ』。


 ガンッ。

「ぐへえっ!!!」


重力は裏切らないのね。
人間と違って。




「ウェンズ……あーもうわかんね。おい水子!」

「素晴らしい命名センスね、三橋。あなたには早急に親になってほしいわ。産み落とされた世界一不幸な子供を観察したい」

「お前さ、顔からしてウニ好きだろ?w 伊藤と付き合っちまえよ!!」

「ガンガゼウニが好きよ。刺せば人は死ぬ。実用的でしょう?」

「うひょ~マジ神!!つか俺と一緒にさ……やろうぜ?──『天下』」

「あなたはどれだけ上を向こうとも映るのは『地下』のみよ」


「このコロシアイでよぉ、島中のエロ本全部燃やして、煙まみれのマジ天下(笑)やっちまおうぜ!──」

「──だひゃひゃひゃ~~~!!!wwwwww 全裸の天下統一だぁ!!!!」

「……やっぱり高いところが好きなのね。煙と、救いようのない馬鹿は」



 COMING SOON……
 The Addams Family presents: WEDNESDAY'S DOWNTOWN.

【ウェンズデー・アダムス@ウェンズデー】
[状態]:低血糖気味
[装備]:早川京子の木刀@今日俺
[道具]:今くん1号@今日俺、メモ、不明支給品×2
[思考]:殺し合いの真相を解明。
1:主催者の意図と構造を分析。舞台装置の矛盾を洗い出す。
2:三橋貴志は観察対象。排除は保留。バグか鍵か見極める。
3:退屈は敵。退屈を破壊する存在が現れた場合、利用する。

【三橋貴志@今日から俺は!!】
[状態]:タンコブ(タライ痛ぇ~~!www)
[装備]:ハンド@ウェンズデー
[道具]:カップ麺、ビフテキ弁当、ジャックダニエル1本
[思考]:『天使な小生意気(ウェンズデーたん)』は『男の勲章』にひれ伏すwwwwww
1: チョ~卑劣な方法でなんとかしてみるわ!w
※:(具体的には、ヤバそうな敵にはウェンズデーたんにアクション映画させて、俺様はハンドと応援上映(笑)wwwww)
2:ハンドを伊藤に見せびらかしてやりて~~w
3:食料は隠す。低血糖らしいから主導権取れるチャンス!
4:戦闘は極力回避。漁夫の利が基本戦術。
5:でもなんかコイツ普通に怖ぇ~~。マジで怒らせたら死ぬやつ(笑)
最終更新:2026年02月23日 20:11