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♪BGM
【♪長い長い夢の宴の中】



「つまり、あなたが犯人と。……異論はおありで? ハイターさん」

「……御名勝。恐れ入りました、コロンボ警部」


 よれよれなレインコートをまとった、冴えない小男──刑事コロンボ。
対するは、整った法衣に身を包んだ『犯人』──ハイター。
場所は、白夜堂々の歩道。
本来、殺意の腐臭など立ち込めるはずのないその場所で、聖職者は足元に転がる『物』を眺めながら、グラスをゆっくりと傾けた。


「……これは驚いた。さぞかし美味いんでしょうな? 『亡骸』を肴に一杯というのは」

「ははは、手厳しい。ですがこれでお別れ(ラストオーダー)ですから。せめて飲み干すまでの時間は、神も黙認してくださるはずだ」

「参ったな。うちのカミさん、日曜の礼拝だけは欠かさない信心深い人でしてね……。あんたみたいな神父がいると知ったら、来週から通わせるのを躊躇っちまう」

「それは心外だ。神父が皆、私のように不真面目だと思われては困ります。カミさまはいるんですよ……」

「……弱ったな」


 ニューヨーク市警殺人課、コロンボ。
数々の知能犯を追い詰めてきた彼にとっても、これほど不可解で、かつ倒錯した犯人は類を見ないだろう。
ハイターと名乗ったその男は、神父の皮を被った怪物だった。
足元に横たわる、まだ体温の残る女の亡骸。
それを見下ろしながら、彼は良心の呵責など微塵も感じさせぬ手つきで、琥珀色の液体を注ぎ続けている。
コロンボが、感情に流されぬプロフェッショナルであったのは幸いだった。
もしこれが血気盛んな若手刑事であれば、この不届きな聖職者を殴り殺していたに違いない。


「……さて。やれやれ、お迎えの時間です。ハイターさん、車へ」

「おや、何故です?」

「……“何故”、ですって?」


どんな厚顔無恥な犯人でも、連行の間際になれば、言い訳か、あるいは観念した溜息か。
なにかしらのアクションをひとつつくものだ。
だが、ハイターの口から飛び出したのは、警察への挑戦ですらない、
──根本的な認識のズレだった。


「お聞きしますがコロンボさん。私の罪状は何でしょうか? ……このロワイアルのルールに則って言うなら、私は人など一人も殺しておりませんよ」

「……冗談はやめてください。このお嬢さんは『人』ではないと?」

「おやおや。……あなたは何やら、大きな勘違いをなさっているようだ」

「……ええ。納得できる真理ならご説明を」

慈愛に満ちた微笑を浮かべるハイター。
鉄面皮がわずかに揺れた気がしたコロンボ。
そして、街灯の光に照らされた女。
注目すべきは、三人のなかで唯一鼓動の絶えた死体にある。
ピクリとも動かなかったはずの指先がふと、痙攣するように──『生命反応』を見せたかと思えば────。
ハイターは待ってましたと言わんばかりに、天を仰いで酒瓶を掲げた。


「この酒こそ『女神の祝福』……! 人類が悠久の時をかけて追い求めた、魂のオアシス──すなわち『名酒』なんですよ!」

「……申し訳ないがね、もう一声、納得のいく説明を──」


「──なっ……!?」


全人類共通の敵。すなわち、『死』。
同時に、『生への永久』こそが人類共通の夢。

コロンボが目を丸くする──どころか、ピンポン球のように今にも弾け飛びそうになったのも無理もない。
何せ、今、目の前では──、


「あぁ~~……やばい、二日酔い……。脳のBPMが200超えてる……。これもうマキシマムザホルモンじゃん……」

「おやおや。おはようございます、きくりさん」

「おはよぉ~~っ、ハイター大先生ぇ~~! おかわり、ある?」


「……ね? コロンボさん。言ったでしょう、私は誰も『殺していない』と」

「……こ、これは…………」


死んだはずの女──廣井きくりが、傷口も何事も無かったように生き返ったのだから。




グビ、グビ、グビ……。

​「ぷはぁー! 生き返るぅ~! ……って、一回死んでるから本当の意味で生き返ってるんだけどね! ウケるー!」

グビ、グビ、グビ……。

「ぷはっ! やはり、二日酔いには迎え酒に限りますね」


「お! 出た、神父様の名言! 嫌なことは先延ばしにするのが弱者の戦法!」

「延ばしに延ばしたツケは、すべてアルコールが洗い流してくれるものですから……」

「あ、そうだ! ころんぼっちちゃんさぁ、迎え酒用に鬼殺しかってきてぇ~! おつりは全部私が貰うからさ!」

「つまり私がお金を出せと? ははは、弱ったな。神父いじめもそこらへんにしてください」

「「あ~ははははははははははははははっ!!!!」」



「……飲んでもないのに、頭痛がひどい」

 ……さて、状況を要約しよう。ここにあるのはすべて紛れもない真実だ。
酒浸りの生臭坊主・ハイターは、血液の半分がアルコールでできているような女・廣井きくりと、その『匂い』で惹かれ合ったらしい。
彼女の支給品──正体不明の『古酒』。
奇妙なのは、彼らの倫理観だけではない。
その酒もまた、論理を超越した代物だった。
驚くことに、一口啜れば、たとえ心臓を貫かれようと瞬く間に再生するとの。まさに『不死の呪い』を内包した名酒だったのだ。


「あ、コロンボさん。よろしければ、つまみの一つや二つも調達願えれば……」

「……はぁーい」

「うっは! 二日酔いのヘーベルハウスか!!」

「……」


まさしく事実は小説より奇なり。
いや、この光景は泥酔した作家が書き殴った、タチの悪い怪文書そのものだ。
ハイターの説明によれば、彼はきくりに頼まれ、実験として彼女を『殺した』のだという。
──いくら蘇生が前提とはいえ、神父がその手を緋色に染めることに躊躇いがないのは、いささか気になるところだが。

ともかく、使い走りを頼まれたコロンボは、この《バカ騒ぎ》という名の舞台に、
────チクリと最後の一刺しを見舞うことにした。


「あ、最後に一つ。よろしいですか、ハイターさん」

「ええ、何とでも」 「ふぁ~~~い、どうぞぉ~~っ」


「……地図を見た限り、この島にはバーの一軒もないようで。これじゃ、あんたがたも退屈でしょう?」

「はは。事態が事態ですよ? 面白みを求めては神父失格だ」 「まぁ、ぶっちゃけクソつまんないのは事実だよね~」


「……で、その魔法のお酒。廣井さんの支給品で、この場には一本しかない。そうですよね?」

「いやぁ涙ぐましい」 「でも一本あれば、幸せのスパイラルに突入できるから問題なし!」


「……となるとですよ?」

「ええ」 「つか全然“最後に一つ”じゃないし~─」




「ハイターさん、もしかしてその酒を独り占めしたくて、彼女を殺したんじゃないですか。……あくまで私の邪推ですがね?」



…………
……


 二人が、特にハイターがどんな顔をしたか。コロンボはそれを確かめる必要もなかった。
彼は愛車・プジョー403を走らせた。
助手席には、現場からさりげなく『押収』した──琥珀色の酒瓶が泡を鳴らす。



【コロンボメモ】

【容疑者:】
『生臭坊主』

【動機:】
『酒の奪い合い(仮)』

【特記事項:】
『犯人が何度死んでも反省しないため、逮捕状の枚数が足りない』



【キーアイテム】
──『不死者の酒@???』

【コロンボ警部@刑事コロンボ】
​[状態]: 健康、疲労(非科学的な事象への困惑)
[装備]: プジョー403@コロンボ
[道具]: 警察手帳、筆記用具、不死者の酒@???
[思考]:他の参加者に聞き込み。
1:電話がしたい。……やれやれ、うちのカミさんにどう説明したものか。
2:この『証拠品』は私が預かっておくのが一番安全だ。
※コロンボの把握は#03『構想の死角』だけでも大丈夫です。


​【ハイター@葬送のフリーレン】
​[状態]: 泥酔、不死者
[装備]: 杖
[道具]: 聖典、酒瓶(中身は泥水)
[思考]:この地獄に、せめてもの祝杯を。
1:おや、酒がない。……警部、さてはやりおったな?
2:きくりさんとなら何度でも乾杯できそうだ。

​【廣井きくり@ぼっち・ざ・ろっく!】
​[状態]: 幸せスパイラル、不死者
[装備]: ベースギター
[道具]: 不明
[思考]:再生能力が肝臓まで生き届いてないし~~!!
1:あれぇ~~?? ころんぼっちちゃんどこ行ったの~~~?
2:殺し合いをバンドの力で終わらせますっ!!! ……ぷっ! ギャハハハハ!! 言ってみたかったんだよね、これ!
3:酒って飲んだだけでフラフラするとか、どういう理不尽なわけ?! 罠だよこれ! 生意気なんだよぉ!! 水のくせに!!

※酒の効能は、『首輪を攻撃されない限り』、何度も生き返り可能。
最終更新:2026年02月23日 23:32