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「むう…あのベリアルという男。どうやってわたしを此処に?
 バビディ様とのテレパシーも通じん……。これは一体」

 蒼天に浮かぶ島を、赤い鬼が闊歩していた。
 否、闊歩しているのが鬼では無い。悪魔だ。
 それも魔王と位置付けられる、強大な悪魔である。

 「これがバビディ様の意図によるものならば、何故わたしに何も仰られ無い…。まさかとは思うが…。いや、このダーブラの目を掻い潜ってバビディ様に手を出す事など不可能」

 ダーブラは思考する。あのベリアルという男は只者では無いと。
 暗黒魔界の王たるダーブラだから理解出来る。ベリアルは人間の姿をしているが、人間では無い。かといって魔族や宇宙人とも異なる存在だと。
 強大な力を持つ存在という事は理解出来る。だが、このダーブラが主人と仰ぐ偉大なる魔導士バビディを、どうにか出来るというのだろうか?

 「わたしが此処に居る以上。バビディ様の意図で有る筈。ならば、何故?」

 暗黒魔界の王であるという自負。主人であるバビディの魔導の力量に対する絶対的な信頼。この二つが、ダーブラの思考を歪め、現在の状況にバビディの意図が絡んでいると、ダーブラに考えさせる。
 だが、バビディの最も頼りとする腹心であるという自認が、現状に疑問を抱かせる。
 何故?己に何も告げずに、ベリアルなる男を介して殺し合いを行わせるのかと。

 「まあ良い。これがバビディ様の計画である以上、わたしは従うのみ。お望み通りに皆殺しにしてみせましょう」

 バビディへの絶対的な忠誠と信頼が、暗黒魔界の王へと齎したものは、殺し合いの肯定。
 速やかに皆殺しにし、ベリアルの背後に控えるバビディへと、己が力量を示すのだ。

 「であるならば、サッサと片付けて……」

 周辺の生物の気配を探ろうとして、ダーブラは気付いた。

 「丁度良い。近くに居る」

 探り当てた気配の主を殺すべく宙を飛んだダーブラは、僅かな間も置かず、気配の元へと到着した。

~~~~

 「名を聞いておこう」

 気配の主は、マントのついた肩当てを装備した、屈強な体躯の男だった。
 人と同じ位置にある二つの目と、額に有る大きな眼。計三つの眼が、ダーブラを見据えている。

 ────何だ?此奴は?

 ダーブラの知る魔族とは異なる、それでいて同種であると理解る気配。
 同じ魔族でありながら、己と異なる種族というのは、何とも不可思議な気分になるものだった。

 「わたしは暗黒魔界の王ダーブラ。貴様の名を聞く必要はあるまい。直に此処で死ぬのだからな」

 「魔王…吾輩の同輩にダーブラなる者はおらぬが…。貴様もまた異物か」

 「同輩…?何を言っているのか分からんな」

 暗黒魔界の王は唯一無二。最強のパワーと魔力で魔界に君臨する己と並ぶ者など存在し無い。
 絶対的な実力と、実力に支えられた傲慢とも言える自負により、ダーブラは相手の話を深く考える事もせず、生命を絶つべく行動を開始した。

 大きく踏み込み。男の顔面へと拳を撃ち込む。
 生じたものは、音の息を超えた大爆轟。
 破滅的な爆音が、衝撃波となって周囲の岩や樹木を粉砕した。
 だが────。

 「この程度か?異界の魔王。巨人の大首長とは比べ物にならんな。興醒めだ」

 男は僅かも動くこと無く、不動のまま。
 魔王ダーブラの拳を受けて、兵然と佇立する。

 「退け」

 繰り出される男の拳がダーブラの顔面を捉え。
 災害レベルの大爆轟が、天と地を粉砕した。
 両者の立っていた地面が粉砕され、空に浮かぶ雲が千切れ消し飛ぶ。
 核兵器にすら比肩し得る拳打。これが人に似た姿形のものが引き起こしたと、誰が信じるだろうか?

 ────強い。

 音など遥か後方へ置き去りにする速度で宙を飛ばされながら、ダーブラは男の実力を改めて評価した。
 凄まじい速度で飛ばされるダーブラの肉体に押し退けられた大気が、衝撃波と化してダーブラの飛ばされた方向を追う様に、大地を抉り深い溝を刻む。
 瞬時に立て直し、地平線の彼方へ消えた男の元へと飛翔する。
 飛ばされた距離の半分も行かないうちに、ダーブラは再度男と遭遇した。向こうもまた、ダーブラの後を追って飛翔していたのだ。

 「かあっ!」

 「おおっ!」

 同時に繰り出される拳が激突し、両者の拳の接触面から腕へと、痺れと傷みが伝わっていく。
 激突した拳を引き戻し、再度同時に拳を繰り出す。
 ダーブラと男の顔面に互いの拳が直撃。並の魔族なら百纏めて消し飛ぶ威力の拳打を互いに受けて、両者は止まる事なく戦闘を継続する。
 拳。肘。膝。蹴り。四肢を駆使し、敵の五体を撃ち砕くべく、両者は無数の攻撃を行い、無数の攻撃を防御する。
 男の拳がダーブラの副部に突き刺さる。ダーブラの蹴りが男の胴に叩き込まれる。
 両者の繰り出す攻撃が、相手の身体に接触する度に、破滅的なソニックブームが周囲の物を平に均しながら、何処までも拡がっていく。
 回避され、虚しく空を穿った拳脚は、大気を引き裂き爆ぜさせて、空気の爆圧を剛速で遥か彼方へと飛ばし続ける。
 此の地に立って相撃つは、双方共に災害と称すべき怪物。戦闘の余波だけで配されたNPCが、魔物も巨人も魔獣もロボットも皆等しく砕け散る。
 NPCの如き有象無象の木端では、此の両者の激突に加わるどころか、見る事さえも許され無い。
 砕け散ったNPCの残骸を、無数に生じ続ける衝撃波が、更に粉砕し、塵よりも更に微細に砕いていく。
 ダーブラの右掌に閃光が生じる。

 「ハッ!」

 軌道上の全てを破壊するエネルギー波として放たれるのに、1秒の間も置かなかった。

 「遅い」

 男はダーブラ放った閃熱を回避。ダーブラの右側へと回り込むと、ダーブラの放ったエネルギー波に匹敵する魔力波を撃ち放つ。
 如何なる存在も耐えられない超絶の破壊エネルギーが、ダーブラの全身を呑み込み、地平線の果てまで奔り抜けていった。

 「キサマ…」

 他に見る者が居れば、恐怖と絶望のあまりに発狂しただろう。
 地上の如何なる物質、存在であろうとも、耐える事など出来ない魔力波を、ダーブラは無傷で耐えたのだから。

 「この程度で終わるようなら、魔王の名を返上しなければならないところだったぞ」

 「おのれ…!」

 ダーブラは己が慢心していた事を理解した。
 この男は、暗黒魔界の王ダーブラと、互角に戦うだけの力を備えた戦士だと、認めたのだ。

 「名を名乗れ…このわたしとここまで戦える者は初めてだ」

 「吾輩は魔王ジャチ。貴様の敵であり、そしてお前は吾輩の“敵”だ」

  「魔王か…このわたしの前で魔王を名乗るとは、とは言え、身の程知らずという訳でも無いな」

 男────ジャチの実力を認めたダーブラの総身から立ち昇る、凄絶なまでの戦意。
 魔王の前に立つに値しない、脆弱な凡百共では、この戦意に触れただけで、全身の細胞が動きを停止するだろう。
 対するジャチも、壮絶な笑みを浮かべて、ダーブラと対峙する。

 「貴様こそ、吾輩の期待を裏切るなよ」

 ジャチが肩当てごとマントを投げ捨てる。

 「ほう…このわたしを相手に、力を押さえて戦っていたとはな…」

 ダーブラは気付いていた。肩当て外した瞬間から、ジャチの力が膨れ上がった事を。
 今までジャチは、力を押さえて、暗黒魔界の王であるダーブラと戦っていたのだ。

 「吾輩も貴様も此処からが本気という訳だ」

 「そういう事だ」

 ダーブラとジャチ。両者の身体から放たれる、質量すら伴った“圧”。
 鋼の塊でさえも、捻れ砕けて潰れるだろう圧力が、両者の間の空間を押し潰していく。
 二人が対峙していたのは、一瞬か永遠か。
 大地が、空が、世界が耐え切れなくなる直前、変化が生じた。
 動いたのは、同時。
 大地が爆ぜて砕ける程の踏み込みを行ったジャチに対し、ダーブラは紅蓮の焔を口から吐き出す。
 鉄すら溶解する灼熱の炎に対し、ジャチは駆けながら右の拳を無造作に突き出す。
 それだけで、空気の爆ぜる音とともに、灼熱の火焔が砕け散り、拳により生じた空圧がダーブラの身体を撃つ。
 蹌踉めいて隙を晒したダーブラへと、接近したジャチが拳を見舞おうとした直前。立て直したダーブラがジャチに目掛けて剣を振り下ろす。
 ダーブラの口元に浮かんだ邪悪な笑みを見よ。ジャチの攻撃で晒した隙。それこそがジャチえお釣る為の釣り餌だったのだ。
 音より速く振われる剣は、刃鳴りを立てる事無く、完全な無音でジャチ首を切り飛ばすべく迫りくる。
 対するジャチは拳を振るい、横殴りに剣を殴打。剣身の半ばから砕いてしまう。
 必殺を期した攻撃を防がれ、生じたダーブラの隙を見逃す程、ジャチは甘くも無能でも無い。
 駆けた勢いをそのままに、ダーブラの胸部へと渾身の拳打を放つ。
 筋肉を突き破り、骨を砕いて、心臓を潰す筈の攻撃は、然し虚しく空を穿った。

 「なにっ」

 幻影だと気付いた時には、既にダーブラは攻撃を終えていた。
 背後に回って、ジャチへと唾を吐きかける。
 当たれば石になるという、文字通りの必殺の唾は、ものの見事にジャチの背中に命中し、ジワジワとジャチの身体を石へと変えていく。

 ────遅い!!

 ダーブラは内心驚愕していた。
 僅かな時間で石へと変わる筈が、比べ物にならないくらいに遅くなっている。
 だが、それでも石化は石化。
 徐々に徐々に石になっていくジャチに、ダーブラ会心の笑みを浮かべて、すぐに凍りついた。
 ジャチが背中に手を回し、石化した部分を毟り取ったのだ。
 鮮血が迸るが、意に介した風も無く、ジャチはダーブラへと向き直り。

 「面白い芸だった」

 渾身の一拳を撃ち込んだ。
 大地が激震し、天を爆轟が斬り裂いた。
 強烈無比な一撃に、ダーブラの体が揺らぐ。
 続く追撃の拳を腕を振るって弾き飛ばし、ダーブラはガラ空きになったジャチの胴へと、返礼とばかりに先刻のジャチの拳を超える拳打を撃ち込んだ。
 身体を曲げ、後ろに数歩下がって、ジャチが構え直す。

 「面白い」

 「やるではないか」

 魔王と魔王。本来出会うことの無い両者の争闘は、まだ始まったばかりだった。

~~~~


 打撃とエネルギー波の応酬が、周辺を際限なく破壊していくも、相撃つ両者の身体に目立った損傷は存在せず。
 世界ですら耐え切れぬ魔王同士の決戦は、世界などより遥かに頑丈な魔王の肉体が健在な限り終わらない。
 撃ち交わされる拳に脚、放たれる閃光。
 二つの巨大なエネルギーの衝突は、正しく災害と呼ぶに相応しいものだった。
 ダーブラとジャチ。二つの魔王は共に傷つき、疲弊しながら、それでも戦いをやめようとはしない。
 彼等が矛を収めるとするならば、それは相手が息絶えたことを確認してからの事だろう。
 激闘は然し、一方の方へと秤が傾きつつあった。
 傾く秤の名は、ダーブラ。
 攻防の最中に於いて適度に唾を混ぜ込む事で、ジャチに回避を強要し、ジャチの行動を阻害する事で、ジャチに対する優位を確立している為だ。
 ジャチにしてみれば、ダーブラの唾を受けるわけにはいかない。触れれば石化する唾に対しては、回避以外の坑道が取れない。
 必然として、唾を吐かれれば、全ての行動を中断して、回避を行わねばならない。
 ダーブラはその隙に乗じてくる。その為に唾を吐いているのだから当然だ。
 ジャチは次第に被弾する回数が増え、ダーブラに押されつつあった。
 頭部、両腕、胴体、両脚。百を超える拳脚がジャチの身体に撃ち込まれ、動きの鈍ったジャチへと、ダーブラは一気呵成に畳み掛ける。
 顎に強烈なアッパーが入り、大きくのけ反った所へ、強烈な前蹴り。
 口から吐瀉物を溢しながら、ジャチが後方へと飛ばされる。

 「ハアァーーーーッッ!!!」

 膨大な破壊力の篭った破壊エネルギーが、ダーブラの両掌から連続で放たれる。
 全てのエネルギー波がジャチに直撃し、世界の終末を告げるかの様な大爆発が生じ、世界を閃光と爆音とで満たす。
光と音が消え、世界が静寂に包まれた時。立っているのはダーブラ只一人。

 「ハァ…ハァ…フフフ……魔王はこのダーブラのみ……」

 だが、強敵であった事に違いは無い。
 この暗黒魔界の王に此処までの傷を負わせ、此処まで疲弊させたジャチの強さは本物だった。

 「貴様の事は忘れんぞ。ジャチ」

 強敵との死闘に勝利した余韻に浸りながら、ダーブラは次の獲物を探しに向かおうとして。

 「何処へ行く、戦いは未だ始まったばかりではないか」

 不意に背後から聞こえた声に、愕然と振り向いた。
 ジャチは健在。傷こそ負っているものの、総身に漲る気迫も力も、些かも衰えてはいない。

 “部位解放(リリース)”。

 ジャチの右腕が一回り以上大きくなった。

 「先程の礼だ」

 ジャチが地を蹴る。大地が爆ぜ、生じた爆砕音よりも速く、ジャチはダーブラの至近に立った。
 勝利を確信して、身も心も戦闘態勢を解いてしまったダーブラに、ジャチの強襲を防ぐ事も躱す事も出来ず。

 「受け取るが良い」

  ”旋渦拳”

 名の通り、渦を巻く巨大なエネルギーが、ダーブラの胸部に炸裂する。
 核でも落ちたのかと思う程の轟音を残し、ダーブラも身体は遥か彼方へと飛んで行った、

 「ベリアルといったか…要らざる真似を」

 ダーブラを殴り飛ばし、即座に追撃に移ろうとしたジャチは、その場から動けずに居た。
 ダーブラから受けたダメージもある。だが、それ以上に、身体が重い。行動に支障をきたす程の疲労がジャチをその場に留めていた。

 「どうやら“部位解放(リリース)”を行うと、一気に疲労が増すらしい。身体能力も完全には発揮出来ん」

 殺し合いを成立させる為に、ベリアル何かをしたのだろうとは予測がつくが、まさか此処までのものとは思わなかった。

 「これ程の制限。並の者では課せられぬ。大魔王ビャクオウ様以外に、この様な事ができる者が居るとはな。まあ良い」

 余計な枷を付けられたとはいえ、異世界の強者とやらには充分に期待出来る。
 巨人族の大首長ギンバックとの戦いは、ニュドーの横槍で流れてしまったが、ギンバックに比肩する強者と、最初から巡り会えた。
 此処に集められた強者との戦いを愉しみ、そして、主であるビャクオウ以外のものでありながら、このジャチに首輪を嵌め、命を下した不届き物を殺してくれよう。
 主人の意を汲んで飛んで来た肩当てを纏うと、ジャチは休める場所を求めて歩き出した。

【ジャチ@バーサス】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:マント付き肩当て。
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~3
[思考]:強者との戦いを愉しむ
 1:ダーブラとは次に出会ったら決着を着ける。
 2:魔王である吾輩に枷を嵌められるとは。
 3:ベリアルは殺す

 ※参戦時期は第20話。ギンバックとの戦闘をニュドーに邪魔された直後です、
 ※“部位解放(リリース)”を行うと、著しく疲労します。
 ※“全解放(バースト)”は使用不能です。


~~~~


 「暫くは、動けんな」

 ジャチに殴り飛ばされ、遥か彼方へ飛ばされたダーブラは、地面に横たわっていた。
 ジャチから受けた傷は元より、耐力の消耗が激しく、暫くは行動できそうになかった。

 「あれ程の強さを持つ者が居るとなれば、やはりこの事態は魔人ブウ復活の為のエネルギーを集める為のもの…?」

 そう考えれば納得がいく。何故このダーブラ一言も告げずに放り込んだのかは謎だが。
 兎に角、バビディ様がお望みなのだ。皆殺しにしてエネルギーを集めるとしよう。

 「動ける様になったら、ジャチを探し出して仕留め、ジャチ以外の強いエネルギーを持つ者も殺し。
 最後にあのベリアルという者を殺して」

 バビディ様の第一の部下は、このダーブラ。
 あのベリアルというゴミは、何をのぼせ上がっているのかは知らないが、必ず身の程を思い知らせてやる。
 バビディ様からエネルギー集めを任されたからといって、調子に乗りおって。

 ベリアルへの殺意を燃やし、ダーブラは魔人ブウ復活のエネルギー集めの為に、休息を取る事にした。



【ダーブラ@DRAGON BALL】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~3
[思考]:魔人ブウ復活のエネルギーを集める(皆殺し)
 1:ジャチは次に遭ったら殺す
 2:ベリアル…調子に乗りおって

※参戦時期はバビディと共に地球にやって来た直後です


支給品解説

※マント付き肩当て@バーサス

ジャチの身につけている肩当てとマント
肩当ては生物であり、ジャチ魔力を常時喰らう事で、ジャチの力を抑える役割を持っている。
要するに肩当てつけている間は、お遊びである。
外しても呼んだら飛んでくる。便利、
最終更新:2026年02月24日 18:16