「シャンフロのイベント、にしちゃ趣味悪いよなぁ。
グロいのは受けるっちゃ受けるけど流石に年齢制限跳ね上がるしな。」
赤と白を基調とした服の、
金髪の少女が周囲を見渡しそう呟く。
『彼』こと魚臣慧、もとい今のHNであるオイカッツォは、
VRゲーム『シャングリラ・フロンティア』におけるアバターだ。
時期に来るシャンフロと同じゲームエンジンを使用している格闘ゲームに備えつつ、
サンラクに誘われたのもあってシャンフロのプレイに勤しんでいたわけだが、
どういうわけか殺し合いと言う突如始まったPVPに誘われて今に至っている。
「するってーと、どっかのバカがハッキングとかして乗っ取ったか?
いやでもこの感覚、完全にVRゲームじゃなくて現実の感覚だ。ありえるのか?」
オイカッツォは理論詰めでゲームをプレイする男だ。
クソゲーにしろ格ゲーにしろ神ゲーにしろ、その辺は変わらない。
しかし全世界で3000万人以上がプレイするとされる神ゲーをジャックするなんて、
どんな厳重なセキュリティかも想像つかないものを前にできるのかとも少々疑問に思う。
ついでに言えば今の感覚は完全にリアルのものだ。痛覚などの感覚もリアルと同様だ。
「ま、考えるのはやめとくか。」
魚臣慧はゲームを仕事にしているプロゲーマーだ。
だから相手をよく見ての立ち回り等観察眼には優れる。
しかしゲームに専念してた都合、お世辞にも頭がいいとは言えない。
サンラク、ペンシルゴンと仲間内では一人会話についていけないこともざらだ。
PVPと言うとモラルをドブに捨て、「死ね!」が挨拶となるようなぶっとんだ怪作のゲーム、
通称幕末こと辻斬・狂騒曲:オンラインはドン引きするほど苦手としたように一対一の方が割に合う。
かといって現実の肉体となってる今の身体を考えると、此処で死ねば本当に死ぬ可能性も出てくる。
ゲームのイベントのような楽観視はできない。肌に感じるリアルさ、手の感触。全てがVRを超えたものだ。
理詰めで物事を考えているオイカッツォ故に状況に対する飲み込みと理解は早い。
ベリアルなんて堕天使の名前からとったのか本当にそうなのかは知らないが、
何方にせよ彼にとっては本気の殺し合いと見ていいことだけは分かった。
「しっかし、サンラクやペンシルゴン抜きかぁ。」
ソロプレイについては慣れたものだ。
格闘ゲームとはチーム戦ではあるものの、
いざゲーム台に立てば頼れるのは己一人だけだ。
自分がいるならシャンフロの人物も参加してるのではないのか、
そう思うところもあるが、殺し合いなんて物騒なものを狙っているんだ。
そう簡単に仲間を呼んでチームを組ませてくれるのかどうかも怪しいだろう。
となると今頼れるのは己の身一つ。苦手なPVPでソロプレイとは少し悩ませるが、
自分一人だけが殺し合いに乗らないとかいう、幕末のように蛮族の集いでもないだろう。
アタックホルダーなんて参加させたらどうなるかわかったものではないことは彼でもわかる。
幸いなことがあるならば装備は手甲以外のは服として扱ってくれたのか外されてないことだろう。
流石にアバターとは言え、女の身体でサンラクみたいな変態的な格好になるのは彼とて避けたいところだ。
「どうすっかなぁ……」
頬杖をついて胡坐をかく。
女性のアバターとしては余りしていいものではないが、
中の人的には男性である為そこに羞恥心と言ったものはない。
アバターのことを考えればやれることはバリバリの接近戦だ。
しかしゲーム性を考えれば飛び道具の一つや二つは余裕で出てくるだろう。
首輪の件もあるので、一人で全てを解決すると言うには流石に無理がある。
素直に人を集めるしかないよなぁとしみじみ思っていると、
「ん、一人発見っと。」
遠くに人影らしきものはあった。
動きからゲームか現実かは知らないが、
経験のあるような身のこなしをしているのが伺える。
少なくとも手を組む相手としては悪くないが、敵か味方かまでは判断がつかない。
とは言えそれ以上のことまでは分からない。観察眼に優れてると言えども、
それはイコール心が読めると言うわけではないのだから。
「さぁてと、接触してみますか。」
「事件が終わった後にまた事件かよ……しかも更にやばそうな。」
ヘタレた声とともに、今の状況を嘆く眼鏡の青年。
女性受けのよさそうな顔で呟かれる言葉と表情では台無しだが、
彼の境遇を考えれば、それも仕方ないと割り切れてしまうことだろう。
城乃内秀保。嘗てビートライダーズと言うダンスチームで活躍していたが、
仮面ライダー同士の対決、ヘルヘイムを筆頭にスケールの上がった戦いに巻き込まれた青年だ。
此処に来る以前も仮面ライダー邪武ことコウガネの存在により世界の危機に陥っていたのだが、
精神的に復活した光実と、一時的に帰ってきた葛葉紘汰が事態の解決に至り、今度こそ終わりを迎えた。
……実際はその後ももう少し色々あるのだが、少なくとも彼が招かれたのはそれから間もなくの頃だ。
戦いには慣れたものではあるが、やはり殺し合いとなると少々話が変わってくるものだ。
インベスゲームは基本は遊びだ。アーマードライダーのバトルもその代理戦争に近い。
無論、インベスやオーバーロードと言った敵と戦ったので戦いの経験値自体は豊富だ。
「初瀬ちゃん……」
支給品の中には馴染みのある戦極ドライバー。
そして今は亡き友人、初瀬亮二が変身するために用いてたマツボックリロックシード。
優勝すれば願いが叶う。ヘルヘイムの果実なんてものを目の当たりにしてきたのだ。
だからそういう荒唐無稽と一蹴するようなことも、十分に受け入れられることではある。
もし優勝すれば、いまだ帰ってこない……いや、もう亡くなってるとどこかで思っている、
彼がまた帰ってくるのではないかと心のどこかで思ってしまうが、直ぐにそれを振り払う。
(何考えてんだよ、鳳蓮さんが知ったらタライ一発じゃすまねえぞ。)
都合のいいものはあるだろうが、そんなヘタレた思考とはもうおさらばした。
昔の頃とは比べるまでもなく、文字通りの変身をした彼にとっては受け容れないことだ。
それに、師匠もいるかもしれないこの状況だ。そうなったら師匠も殺すと言うことになるのだから。
後は変身する前に襲撃を受けないよう、周囲に警戒を配りながら近くの建物の中へと入る。
入った後他に敵がいないことを確認すると、戦極ドライバーをベルトに巻いて、
ベルトにロックシードを嵌め、刀のようなカッティングブレードを倒してロックシードを叩く。
『マツボックリ! ロックオン!』
戦極凌馬の趣味による馴染みあるけたたましい音とともに、
空中からクラックが開き、マツボックリが頭部を被るように包み込む。
マツボックリが開き、戦国時代の足軽をモチーフにしたような黒装束の槍兵になる。
『ソイヤ! マツボックリアームズ! 一撃インザシャドウ!』
仮面ライダー黒影。邪武の時にも、
トルーパーの姿とは言え戦ったので、特別懐かしい感じはしない。
しかし、何処か初瀬が一緒に戦ってくれると言ってくれてるような、
そんな気分がしてどこか高揚しながらいざビルから出ようとすると、
「あれ? なあアンタ、さっきこっちに男が来なかったか?」
オイカッツォがやってきて互いに距離を取る。
PVP、ライダーバトル。どちらも経験済みであり、
何方も距離をよく考えなければならない武器を用いる。
故に一度距離を取り、状況を確認し合うように見つめ合う。
「男って、もしかして俺のことか……? ビルに入ったんだよな?」
「ああ、めっちゃ周り警戒してたからPVP慣れしてそうな奴だと思った。因みに眼鏡。」
「ぴーぶい……? まあいいか。眼鏡なら多分俺だよ。全部は言えないけど、支給品で変身している。」
「うっわ、フル装備とかマジでずりーな。
俺もそういうのあったら便利そうだけど、
持ってねえのがつれーところだなぁ……っと、
んなこたぁどうでもいいか。それで、無駄にやり合うか?」
「フッ、パティシエ舐めんなよ?」
「いや、そこパティシエ関係あんのか?」
全く結びつかないような返答に、
欠片もついていくことができず素で返す。
「そんな質問を態々するなら敵じゃないことぐらいわかるさ。
これでも策士としてのポジションを確立……してた時期があってね。」
「おい、なんだ今の間は。」
色々なんか怪しいところはあるものの、
敵ではないことが分かると、二人は戦闘態勢をやめる。
変身も解除し、互いの事情を伺ってみれば頭が痛くなる話だ。
片方は現実から、片方はゲームの世界から此処に来てしまっている。
ベリアルが数多の世界だどうだの言ってたので別世界ぐらいは認識してたが、
そういう方向で参加者を招いていると言うのは余り予想のつかないことだ。
「んで、どうするんだ? 師匠でも探すのか?」
「師匠って言っても、本業はパティシエだからなぁ……いや元軍人でもあるけど。」
「元軍人のパティシエって情報濃すぎだろ。」
こういう時頼れるのは鳳蓮ではあるものの、
あくまでリーダーシップと言った方面での話だ。
それも余り頼りすぎると、タライが降ってきそうな勢いである。
だから二人にとって、現状の状況の打破の手段は見つからない。
「とりあえずインベスとかオーバーロードとか、
参加者を狙っていきそうな奴を倒していきたいけど……」
「相手も生身の人間っつーのが抵抗出るところだよなぁ。」
カッツォも一応現実だと思って行動するつもりだったが、
改めて現実の参加者がいるとなると、これは本気の殺し合いだ。
果たして本当にやれるのか。そして殺した後落ち着いていられるか。
幕末みたいなゲーム感覚で人を殺すことはしてはならない領分ぐらいわかる。
城乃内も似た気持ちだ。オーバーロードやインベスは基本怪人であり宇宙人のようなもの。
放っておけば地球が滅亡しかねないことを考えれば戦わなければならないのは必然のことだ。
しかし。今度は人間をやめてるので厳密には違うが駆紋戒斗のように、人を相手にする必要がある。
もし殺し合いに乗るような狂人であっても、ちゃんとしっかりとどめを刺せるのだろうか。
そんな風にうーむと腕を組みながら悩む二人ではあったが、カッツォが膝を叩く。
「うっし! 考えたとしても仕方ねえ。
とりあえず人探しだ。敵味方どっちでもいいからよ。」
「……それもそうだな。時間も有限なんだからな。」
時間が経過すればいずれ全滅が確定する状況だ。
立ち止まってるよりも進むべきなのは間違いないことだ。
改めて黒影へと変身しながら、カッツォと共に動き出すことにする。
「なあ、ところでまじで男なのか?」
「ん? そうだけど、なんかまずかったか?」
「いや、そういう人には俺慣れてっから。」
「へー、奇特な人もいるもんだな。」
カッツォが女性アバターなのは、
格ゲーで女性キャラを使うから抵抗がないだけで、
別に女装とかそういった趣味があるわけではない。
だから現実でそういうのが趣味とは、珍しい人もいるもんだ。
そんな風に思いながら、なるべく黒影のペースに合わせて走り出した。
【オイカッツォ@シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし(ゲームアバターの基本装備はあり)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3(手甲、籠手などなし)
[思考・状況]
基本方針:とりあえずこのクソゲーぶっ壊すか
1:城乃内と行動する
2:サンラクとかペンシルゴンもいるのかねぇ。
[備考]
※参戦時期は少なくとも墓守のウェザエモン討伐以降。
【城乃内秀保@仮面ライダー鎧武】
[状態]:仮面ライダー黒影に変身、健康
[装備]:戦極ドライバー+マツボックリロックシード@仮面ライダー鎧武、それに付随する槍
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:とりあえず乗らない。
1:初瀬ちゃん、また力貸してくれ。
2:にしてもオイカッツォといい師匠といい、
そういう男性に会うのは何か理由でもあるのか?
いや、カッツォの場合はそういうのとは違うんだけども。
[備考]
※参戦時期はテレビ本編終了後。
【戦極ドライバー+マツボックリロックシード@仮面ライダー鎧武】
城乃内に支給。戦極凌馬が作ったアーマードライダーに変身するためのベルトと、
それに該当するロックシード一つがまとめて支給品となっている。
マツボックリならば仮面ライダー黒影に変身可能。
最終更新:2026年01月31日 18:53