大量の吐瀉物、広範囲に散らばったペンキ。
あえて喩えに出すなら、当て嵌まるのはそういった表現か。
地面を汚す一面の赤色を、遠目に見つけた者がいれば。
警戒と、同じくらいの好奇心に背を押され近くまで足を運ぶだろう。
距離が狭まるにつれ、鼻孔を突く臭いも強さを増す。
そこで徐々に気付くのだ。
胃酸の悪臭でもなければ、塗料特有の独特の臭いでもない。
平穏な日常を過ごしてる者なら、滅多に嗅ぐ機会は訪れないだろう鉄と腐敗臭の混じった臭いに。
四足歩行の生物がいた。
翼と嘴を持つ、鳥に似た生物がいた。
四肢が存在せず、鱗をぬめらせる大蛇がいた。
人に近い形であるも、ファンタジー世界の小鬼を思わせる個体もいた。
ほんの数分前まで原形を保っていた魔物の群れが、今や一匹残らず。
肉と骨で作られた赤い山だと、初見で即座に察せる者がどれだけいようか。
ましてその光景を作り出したのが、たった一人の人間であると。
争いを知らぬ世界の者が聞けば、理解へ相応の時間を要するに違いない。
「下らぬ……」
人間の呟きと、果たしてそう言って良いものだろうか。
地獄の底より響いたと疑いかねない、絶大な威圧感。
恫喝を浴びせ他者を怯ませる性根の者は、世に多々存在すれど。
この者を前にすれば等しく跪き、どうか命だけはとプライドをかなぐり捨て懇願するに違いない。
一度耳に入れれば常人はおろか、歴戦の戦士とて死を覚悟せん程に。
怨嗟を煮詰めに煮詰めた声であった。
発した当人の姿もまた、実に相応しいと言えよう。
全身へ着込んだ銀の甲冑は、眩い煌めきなどに非ず。
数百数千の血を浴び染み込ませた、くすんだ色が歩んで来た戦場の数を物語る。
風に靡かせたマントもまた、鮮血と見紛う程に色濃い赤。
現代に生きる者からすれば、コスプレイヤーの類と嘲笑の的になるだろうがしかし。
纏った本人を目にした瞬間より、誰もが口を噤み怯える以外に出来ない。
髭を蓄えた壮年男性ながら、鎧の下の肉体は屈強の一言に尽きる。
何よりも見よ、不愉快さを露わに細めた瞳の。
奥へ宿る、邪悪そのものの昏き輝きを。
信じられる者がいようか。
絶望を齎さんと君臨する、魔王の如き男の名が。
戦国の世を練り歩き、第六天の字名で畏怖を集めた武将。
織田信長、その人であると。
「実に下らぬ……!!」
憤怒を籠めた一声で、大気が激しく震える。
まるで世界そのものが、信長へ恐怖し悲鳴を上げているかのよう。
ベリアルなる異国の男が、何を目的とし遊戯を開いたか。
そんなのはどうでもいい。
ゾーイという、同じく異国の女が惨たらしく命を奪われた。
微塵の興味も関心もない。
気に入らない。
己を安土の城から引き離し、有無を言わさず未知の戦場へ放った事が。
首輪を填め賽子のように命を転がされる、畜生の如き扱いをされた事が。
第六天の魔王たる己に殺し合えと命じ、支配者を気取るあの男が。
全てが気に入らない、全く持って許し難い。
頂点に君臨し、恐怖と暴力で支配し、指先一つで死を命ずる。
それこそは、ただ一人の絶対的な王に許されし特権。
ではその王とは、絶対の二文字を名乗るのが許されるのは誰と問われれば。
答えはこの自分、織田信長を置いて他に存在しない。
だというのに何を勘違いしたか、ベリアルは信長を顎でこき使う駒へ落とし込んだ。
許せる筈がない。
勝ち残れと言ったか、最後の一人に残ってみろとほざいたか。
元よりこの身は戦国の覇者、屍の山を築き上げるのに躊躇は抱かない。
敗残兵どもの血こそが渇きを潤し、戦場の空気だけが生を実感させる。
争いが望みとあらば見せてやろう、魔王による蹂躙を。
子羊どもの首を並べ、最後にはベリアルも我が刃で以て終焉をくれてやろう。
「余の前に人はなく――」
振り被った右手には、本来の得物とは異なる大剣。
西洋造りの神々しさは既に消え失せ、信長の瘴気を纏う魔剣と化した。
大地を叩き割らん勢いで振り下ろし、吹き荒れる爆熱。
罪人共へ永劫の責め苦を与えんばかりの、灼熱が肉片の山を包む。
「余の後にも人はなし!!!」
灰燼へ変える魔物達には最早目もくれず、信長は往く。
青空を赤く染め上げ、悲鳴と絶望の雨を降らせる。
怒れる魔王の戦が、始まらんとしていた。
【織田信長@戦国BASARAシリーズ】
[状態]:健康、憤怒(極大)
[装備]:獄炎の大剣@ドラゴンクエストウォーク
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:皆殺し
1:参加者を見付けて殺し、最後にはベリアルも殺す
[備考]
※参戦時期とどのナンバリング出典かは採用された場合、後続の書き手に任せます。
人間だった頃なので少なくとも3出典ではありません。
『支給品解説』
【獄炎の大剣@ドラゴンクエストウォーク】
作中で入手可能な武器の一種。種類は両手剣。
敵単体にドルマ属性斬撃ダメージを与える『魔王暗黒剣』、敵全体にギラ属性ダメージを与える『煉獄魔炎斬』等が使用可能。
本来は専用の職業以外は装備不可だが、本企画では誰でも装備可能に敷居を下げるよう調整されている。
最終更新:2026年03月25日 02:41