廃墟街、コンクリートジャングル。
無機質な灰色と白に混じって、緑色の苔がびっしりと生え渡るそこは、まるでこの世の終わりを思わせる。
人類が地球から居なくなったらきっとこんな風景になるのだろうな、なんて。
そんな場違いな感想を抱きながら、八神隆之は膝をついて両手を頭の後ろに回していた。
「なぁ、いい加減やめない? 膝痛いんだけど」
「いきなり襲いかかってきた側の台詞とは思えないな」
八神の申し出を流し、頭に突きつけた銃口を一切揺らさない男。
ダウンバングの金髪が特徴的で、俳優のような美形を持っているが表情はひどく険しい。
「だからさっきのは悪かったって。銃には嫌な思い出があんの」
話は数分前まで巻き戻る。
金髪の男──レオン・S・ケネディはこの廃墟街を散策していた。
支給品である大口径拳銃に慣れるために構えの練習をしていたところ、この八神が不意打ちをしかけてきたのだ。
奇襲に驚いたレオンだったが、間一髪で躱し銃口を向けて今に至る。
「それに襲ったわけじゃない、銃を奪おうとしただけだよ」
「同じことだ、声でもかければよかっただろ」
「勘弁してよ。相手がそこらのチンピラだったらそうしたけど、アンタの構え方はレベルが違う。
迂闊に声掛けて撃たれたりでもしたら、躱せる自信がなかった」
「素人の銃なら躱せる、って言い方だな」
「あぁ、そう言ってるからね」
八神の態度は、とても銃口を向けられている人間のそれではない。
訝しげに肩を竦めながらレオンは本題に入る。
「お前、何者だ?」
「八神隆之、……弁護士だよ」
「弁護士?」
思わぬ返事に面食らった。
レオンは立場上、弁護士という職種と関わったことは一度や二度じゃない。
だからこそ、こんな弁護士はいないと断言できる。
「そういうあんたは警官? もしくは軍人?」
「似たようなもんさ。
にしても、日本の弁護士ってのは随分と武闘派なんだな。法廷が見てみたいよ」
「ちょっと個人的な事情でね、腕っ節磨かないといけない理由があったんだ」
「そんな話、信じられると思うか?」
「だよな」
グリップを握る手に力が込められる。
脅しではなく、いつでも撃てる心構え。
ゾンビやガナードといった怪物だけではなく、必要に迫られれば人間であっても排除する。
そうしなければ生き残れないと、レオンは本能で察していた。
「けどあんたは、俺の話を聞いたら信じざるを得なくなる」
八神の一言に眉を顰める。
警戒心をそのままに、レオンは問いかけた。
「どういうことだ」
「俺は多分、アンタの気づいてないことに気づいている……って言ったら?」
苦し紛れの命乞いではないということは、声質や目で分かる。
得意げに口角を上げる八神の思い通りになっているようで癪だったが、レオンは無言で続きを促した。
「俺の言葉、何語に聞こえる?」
「いきなりなにを──」
「いいから」
そして、投げられたのは突拍子もない質問。
八神の意図が読めないまま、レオンは淡々と答える。
「随分流暢な英語に聞こえるよ」
「……あぁ、やっぱりそう」
「それでなにが言いたいんだ。弁護士」
少し目を丸めたかと思えば、どこか観念したように首を振る八神。
一人で納得する様にほんの少し急かされたのか、苛立ち混じりにレオンが詰める。
信じられないかもしれないけど、とご丁寧な前置きを述べて、八神は口を開いた。
「俺は日本語を喋ってるし、アンタの言葉も日本語に聞こえる」
「……なんだと?」
一瞬、思考が止まった。
この男は何を言っている、と。
八神の只者じゃない雰囲気にどこか期待を抱いていたのに、途端に胡散臭さが勝る。
「おかしい事を言っている、って思うよな。
けど本当だ、それを証明できる術だってある」
「聞きたいね」
「唇の動きだよ。俺の唇、よく見てみなよ。
生憎英語はそこまで得意じゃないけど、日本語とは動きがまるで違うだろ?
試しに言ってみようか、“はじめまして”」
言われて初めて、レオンは違和感に気が付いた。
暗がりに加えて心身共に切羽詰まった状況。普通、相手の顔を注視する余裕などない。
だからこそ、八神に促されてそれに気が付いた途端──鳥肌が立つほどの衝撃が、レオンを襲った。
「例えるなら、翻訳版の映画を見てる感じかな」
そう、ほんの些細な違和感。
レオンが見落としていたそれを、八神はずっと前から拾い上げていたのだ。
八神隆之の得体の知れなさと、目の前で突き付けられる異常事態にレオンは首を振る。
「こんなこと、ありえるのか?」
「理屈は俺もわかんないよ。でも一つ言えるのは、俺とアンタが持ってる常識はこの場じゃなんの意味もないってことだ」
「……らしいな」
普段のレオンならば嘲笑で終わっていた言葉も、今となれば心拍を揺らす力を持っている。
この瞬間、主導権は八神にシフトした。
八神はレオンの動揺を目敏く見抜き、畳み掛けるかのように喋ることをやめない。
「この殺し合い、変だと思わないか」
「……変?」
「手が込みすぎてる。会場で見た感じ、参加者は10人や20人じゃない。
言葉の壁を取り除くのも、この空飛ぶ島を用意するのも、相当技術がいるはずだ。
おまけにこの人数を、誰にも気付かない内に首輪をつけて一つの場所に拉致する……そんなこと、個人で出来る範疇じゃない」
八神の言う通り、悪趣味な催しと呼ぶにはあまりにも大掛かりすぎる。
なまじレオンも理解力に優れている人間だからこそ、彼の言葉に耳を貸す。
「ただ殺したいなら首輪を爆破すればいいし、そもそも気づかれない内に首輪を装着させられるんならいつでも殺せる。
なら、道楽で殺し合いを見物するのが目的か?
……いいや、だったら俺達のように殺し合いに反対する人間を集める理由がない」
言葉の自由を与えた時点で、八神隆之の独擅場。
もはや、レオンが口を挟める領域に彼はいない。
「俺が思うに、殺し合いをさせることは目的じゃない。
本当の目的を果たすための"手段"なんだと思う」
引き金から指が離れる。
離したのではなく、彼の言葉に“離された”。
法廷でもないのにこの男の口先には、人を従わせる力がある。
「なぁ。アンタが利口な人間なら、その銃──どうするべきだ?」
レオンはとうとう観念したように銃を下ろす。
「レオン・S・ケネディ」
名乗るレオンは左右に頭を振って、詫びるように八神へと手を差し伸べた。
レオンの力を借りて立ち上がる八神は、パンパンとジーパンの汚れを落として口笛を鳴らす。
「それで八神、これからの方針は?」
「まずはベリアルのことを知っている人間を探して、それからかな」
「そんなやついるのか?」
「いるよ、きっとな」
やけにはっきりと言い切る八神。
疑問に思うレオンが口を挟むよりも先に、八神が補足する。
「会場でベリアルに殺された子、覚えてる?
ベリアルはあの子を“星晶獣”と言っていた。
言い方的に、ベリアルは前からあの子のことを知っていると見て間違いない。
だったらその逆もまた然り。星晶獣、あるいはそれに関係する人を探すのはアリだと思うね」
あの会場でそんなにも注意深く視察出来たのは、恐らくそういないはずだ。
素直に感嘆を示すもしかし、断定するにはあまりにも根拠が薄い。
それを見抜けないほど、レオンは馬鹿ではなかった。
「見せしめが最初からあの子と決まっていたら?
あの子を除いて星晶獣とやらも、ベリアルを知る存在もいない可能性だってある」
「かもな」
肩透かしを食らったような気分だった。
けれど八神の顔は、微塵も自分の意見を疑っていない様子である。
「でも、この希望を捨てるようなら“探偵”じゃない」
「……探偵?」
口を滑らせたのか、または故意か。
おっと、なんてわざとらしく笑う八神を見て、きっと後者なのだろうとレオンは思う。
「悪いねレオンさん、俺実は探偵なんだ」
弁護士ってのも本当だけど、なんて付け加えながらあっさりと白状する。
呆然とするレオンは動揺よりも納得が先に出た。
「どおりで」
「お褒めに預かり光栄」
皮肉っぽく笑うレオンへ、八神はひらりと手を振って応える。
そんな彼を呆れたように眺めながら、レオンは先程の会話を思い返していた。
「なら、俺も白状するよ。お前は警察か軍人と言っていたが……半分正解ってとこだ」
「なにその含みのある言い方」
「ホワイトハウス直属のエージェント」
「わーお、どおりで」
八神もまたレオン同様に、あの身のこなしに納得がいった様子だった。
どうやら色々と共通点が多いようで、積もる話がありそうだ。
「こういうの、“二足のわらじ”って言うんだったか」
「お、よく知ってんね。うちら似た者同士かも」
「言ってろ」
軽口を叩き合いながら、二人は歩き出す。
この殺し合いの真相を突き止めるという、かつてない任務遂行のために。
【レオン・S・ケネディ@バイオハザード RE:4】
[状態]:健康
[装備]:レクイエム(残弾数5)@バイオハザード レクイエム
[道具]:基本支給品、レクイエムの予備弾薬(12.7×55mm弾)×15、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]
基本方針:この島から脱出し、任務に戻る。
1:ひとまず八神と協力。
2:……泣けるぜ。
[備考]
※クラウザーとの決着後~サドラーとの決戦前からの参戦です。
【八神隆之@JUDGE EYES:死神の遺言】
[状態]:健康
[装備]:ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]
基本方針:真相を追求し、殺し合いを終わらせる。
1:レオンと協力し、手掛かりを探す。
2:ベリアルと接点のある参加者と接触したい。
3:どこかの機会でドライバーの力を試したい。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
【支給品紹介】
【レクイエム@バイオハザード レクイエム】
レオン・S・ケネディに支給された超大型アサルトリボルバー。
12.7×55mm弾を使用し、高威力で貫通性能もある。
作品を象徴する存在と言える武器であり、一撃でゾンビを吹き飛ばすほどの圧倒的な破壊力を誇る反面、装弾数が少ないという明確な弱点を抱えている。
【ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW】
八神隆之に支給された変身道具。
スロットが右手側にしかないダブルドライバーで、アルファベットのLに似た形になっている。
ジョーカーメモリが付属されており、これをスロットに嵌めることで仮面ライダージョーカーへと変身できる。
最終更新:2026年03月03日 00:32