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わたしは“完ぺきな世界”に残ったはずだった。
 いっぱい心に引っ掻き傷を作って、耐え切れなくて。
 蛍ちゃんには悪いけど……誰も傷付かない“完ぺきな世界”も悪くないなんて、そんなことも考えていた。

 でも、いつの間にかわたしは殺し合いに巻き込まれて。
 ベリアルなんて知らない男の人に、色々と聞かされた。
 今までのわたしなら絶対に信じられないようなことばかりだったけど……蛍ちゃんと過ごしたあの日々やオオモトさまのことを知ってるから、意外とスムーズに受け入れられちゃって。

 勇敢な女の子が殺されたことには心が傷んだ。心に引っ掻き傷を作るほどじゃないけど……やっぱり誰かが死ぬなんて場面は辛くて悲しいもので。

 でも、私がそれをどうこう出来るなんて思ってない。
 だって私は戦う力も技術も持たない正真正銘の一般人だから。
 色々と不思議な経験はしてきたけど……きっとそんな人はここにたくさん集められていて。だから私は本当にただの一般人なんだと思う。
 殺された勇敢な女の子とベリアルの様子を見ても、この殺し合いがわたしみたいな一般人には過酷で浮いてることはわかってる。

 それにしても……どうしてわたしは巻き込まれたのかな。
 そもそもどうやって完ぺきな世界に居たわたしを連れてきた、とか色々と疑問は思い浮かぶけど……わたしなんて巻き込んでもベリアルにとっては何もつまらない、退屈な結末が待ってると思う。

 蛍ちゃんと必死に非日常を生きてきたことはあるけど、今回もあの時みたいになんとかなるとは思えないし……たぶん、きっと、あの時とはレベルが違う。
 本当にわたしや蛍ちゃんみたいな一般人だとどうしようもないレベル……だと思う。

 それに……正直、あまりこんな残酷なものに巻き込まれたくなかったかな。
 殺し合い……なんて簡単にベリアルは言ってるけど、それは絶対に辛くて、苦しくて、悲しいもので。
 きっとわたしはまた心に引っ掻き傷をたくさん作ることになる。
 せっかくそういう世界から解放されたのに……またそういう世界に連れ戻されるのは、やっぱり嫌だよ。

 もうこれ以上、心に引っ掻き傷を作りたくない。
 誰かが苦しんでる姿は見たくないし、自分が辛い思いをするのだって嫌だ。
 でも殺し合いに参加させられた以上、きっとそういうことは避けられないかな。

「……っ!」

 わたしは、自分の首を両手で絞めて。
 少しだけ力を強める。
 死ぬのはもちろん怖いよ。……完ぺきな世界に取り残された時よりも、よっぽど怖い。
 でもこれ以上、心に引っ掻き傷を作るくらいなら――。

 それにわたしは一般人。
 他の人と一緒に行動しても、足を引っ張るだけだと思う。
 支給品で一気にパワーアップ……とか。そんなご都合主義な展開があったとしても、それって結局、殺し合いを生き抜く必要があるわけで。
 もしも殺し合いの中で仲良くなった人が出来たら、その人たちの苦しんだり、死ぬ姿を見ることになるから……辛いよ。

 だから……ね。
 わたしの殺し合いは、もうここで終わりにするんだ。
 後悔は何もない、かな。元々、完ぺきな世界に取り残された時点で死んだようなものだし……。
 ああ――でも、もしも蛍ちゃんも殺し合いに呼ばれてたら。
 もしも蛍ちゃんが巻き込まれてたら……蛍ちゃんを放置して死ぬのは、すごく罪悪感があるかな……。
 でも今のわたしには蛍ちゃんが参加してるかどうかなんて、わからない。
 それに一般人のわたしを守ろうとして犠牲になる人が出てくるかもしれないし……そんなのは嫌だよね。

 なによりベリアルを倒すなんて無理だと思う。
 わたしはもうそうやって悟っちゃった。それに元の世界ってなんだろう。私の場合は完ぺきな世界?それとも蛍ちゃんがいる現実?
 後者だと蛍ちゃんに会えるのは嬉しいけど……また心に引っ掻き傷を作っちゃうんだろうなぁ。

「……ん、ぐぐっ!」

 両手の力を更に強める。
 結局、死ぬのが怖いからあまり全力で絞めることが出来ない。……我ながら、本当に情けないね。
 首が絞まるにつれて、自然と苦悶の声が漏れる。
 今のわたしはすごくみっともなくて、情けないんだろうなぁ。

 この調子でいけばそろそろ、かな……。
 意識も自然と遠のいてきたし……。

「ちょっ、何してるんですかぁ!」

 ――ズシャアアアア

 ウサ耳の生えた人が見えたと思ったら、その人が思いっきりダイブしてきた。
 必然的に地面に転がってわたしの首から、両手が外れる。

「けほっ……けほっ……。いきなりどうしたの……?」

「それは私のセリフですぅ!自分で自分の首を絞めて自殺なんてやめてください!」

 ウサ耳の人は、身を乗り出して必死にわたしに訴えかけてきた。
 きっとこの人はすごくいい人……なんだと思う。
 でもごめんなさい。今のわたしにその言葉は、届かないんだ……。

「嫌な光景を見せちゃってごめんね。きっとあなたはすごくいい人なんだと思うけど……私はもう心が限界で……」

「……まだ名乗ってませんでしたね。私はシア。シア・ハウリアですぅ」

「わたしは込谷燐だよ。……って、今から死ぬ人間の名前なんて聞いても意味ないよね。ごめんね」

「そんなことないですぅ!燐さんにはこれからも生きてもらいますから!」

「……?どうしてシアちゃんは初対面の私にそこまで入れ込むの?」

「ハジメさんならそうするでしょうし……なにより燐さんに諦めてほしくないです。燐さんの事情は知りませんが……私だって絶望に立たされたことがありました」

「絶望に……?」

「私のせいで私の一族――“ハウリア族”が国から追われることになったことがあります。その時に半数以上が帝国兵に捕まり、全滅を避けるために逃げ込んだ谷にもモンスターが襲ってきて……」

 それは、まるで御伽話のような内容だった。
 だけれどわたしもまた“非日常”を味わったし、ベリアルの“元の世界”という発言からしても異世界というものを否定する気にはなれなかった。
 なによりシアちゃんの口調が、眼差しが、真剣そのものだったから……。

「……それは辛かったね……」

「はい。でもようやく私達は未来視で確認していた救世主――ハジメさんに救われました。ハウリア族のみんなも、今は元気にしてます」

「未来視、かぁ。そんな便利な能力があるんだね」

「便利な能力なんかじゃないです。だからそんな状況に追い込まれたわけで……殺し合いについても何も未来視出来ませんでした。……だから未来視は万能じゃないです。
 でも、未来は一生懸命頑張れば変えることが出来る。私はそう信じて、ようやくハジメさん達と出会えました」

「……シアちゃんはすごく努力家で、頑張り屋さんなんだね」

「……諦めなくなかっただけです。頑張りが足りなくて変えられない未来があった。だから私は未来を諦めたくなかったんです……!」

「そっか。やっぱりシアちゃんは、いい子だと思う。わたしならきっと、諦めちゃうから……」

「そこを諦めないでください!燐さんに何があったかわかりませんが、たとえベリアルが相手でも――この殺し合いを潰しましょう!だから、生きるのを諦めないでください!
頑張ればきっと未来は切り拓けます!」

「未来を切り拓く、かぁ……」

 私の未来は、残念ながらもうだいぶ閉じてる。
 お兄ちゃんの居ない世界でまた生きて……そんな未来が待っているのはわかってるから。
 でも。
 でも――私は蛍ちゃんを置いてきちゃって。

 きっと蛍ちゃんには、すごく悲しい思いをさせたはずだよね……。
 お兄ちゃんは大切だけど――蛍ちゃんと過ごした日々も間違いなく幸せな宝物で。
 だからこそ、蛍ちゃんを置いてきちゃったことに悔いがないといえば、嘘になるかもしれない。

 だから。
 シアちゃんの言う通り――未来を切り拓いてまた蛍ちゃんに会いたいとも思うよ。
 私の帰れる世界が蛍ちゃんの居る現実世界なのかは、わからないけど。それでも、やっぱりわたしは――。

「……わたしには蛍ちゃんっていう大切な友達がいてね。蛍ちゃんとまた日常を過ごすために未来を切り拓きたい……っていう気持ちはあるよ」

「……!それなら燐さんも……!」

「……でもね。私は何の力もないんだぁ。戦うための能力も、技術も、私には何もない。……だからちょっと難しいんじゃないかな」

「そんなことで諦めないでください!私だって最初は……ユエさんと修行する前は弱かったです!それになにより大切なのは一生懸命、頑張ることだと思います。だから燐さんも一生懸命頑張って、未来を切り拓きましょう!
 そのための協力を私は惜しみませんよ!」

「……いいの、かな。わたしなんかがそんなことを考えちゃって……」

 わたしは完ぺきな世界に取り残されて、それでも悪くないなんて思った――現実から逃げ出した存在なのに。

「もちろんですよぉ。さあ燐さん、私と一緒にベリアルをぶっ倒しましょう!」

「わたしが力になれるかわからないけど……そうだね。シアちゃんがそういうなら……失ったはずの未来を取り戻したいかな」

 これはただのワガママで。
 我ながら傲慢だとすら思えるけど。
 やっぱり蛍ちゃんと過ごす日常は宝物で――また一緒に居たいと思うから。
 だから……シアちゃんがそう言ってくれるなら、その言葉に甘えてみようと思えたんだ。

 もちろんわたしにも出来ることがあればするよ。どこまで出来るかわからないけど……幸いにも支給品で少しくらいは役に立てるかもしれないし。

「――はい!それじゃあ一緒にベリアルを倒して、失った未来を掴み取りましょう!そのためならこのシア・ハウリア!思う存分、暴れさせてもらいますよぉ!!」

 シアちゃんがデイパックからハンマーを取り出して、得意げにニッコリと笑った。
 こんなハンマーを持てるなんて、見た目に反してよっぽど怪力なんだね……。それにしても……嬉しいなぁ。

「ありがとね、シアちゃん。これからよろしくね」

「はい!よろしくお願いします、燐さん!」

 ――わたしとシアちゃんは、お互いに握手をした。
 わたしはもう諦めないよ……。なるべく心に引っ掻き傷を作りたくないけど、それでも……。
 だから私が帰るのを待っててね、蛍ちゃん……



【込谷燐@青い空のカミュ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:シアちゃんと一緒に失われた未来を──蛍ちゃんとの日常を取り戻す!私はもう逃げないよ!
1:シアちゃんに協力してベリアルを倒す。何か力になれるかな……
2:蛍ちゃん、巻き込まれてなければいいけど……
3:一生懸命に頑張れば未来は変わる、かぁ……
4:なるべくもう、心に引っ掻き傷は作りたくないかな……

[備考]
※参戦時期は本編終了後です

【シア・ハウリア@ありふれた職業で世界最強】
[状態]:健康
[装備]:ドリュッケン@ありふれた職業で世界最強
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:ベリアルをぶっ倒しますよぉ!
1:燐さんは私が守りますぅ!諦めてほしくないですから!
2:ハジメさん達もいるのでしょうか?

[備考]
※参戦時期はアニメ化or漫画化されてる範疇までなら基本どこでも。少なくとも一期終了後以降ではあります
※未来視などの制限については採用された際に後続の書き手さんにお任せします

【ドリュッケン@ありふれた職業で世界最強】
トータス最硬金属アザンチウム鉱石の超重量戦鎚。魔力を注入することで柄を伸縮させることが可能。また、ショットガンスラッグを発射できる巨大な銃や、物理攻撃力を高める円形の盾へと変形させることも可能。さらに、雷を纏う能力など、様々なギミックを内蔵している。
最終更新:2026年03月07日 22:05