俺は争いが嫌いだ。
だというのに人も同胞も、俺に争いごとばかり持ち込んでくる。
かつては同じ七崩賢と呼ばれたグラオザーム。
そして現在はベリアルと名乗った魔族。
全く、俺ほど人との共存を目指している魔族はいないというのに。
面倒だ。やりたい奴で勝手にやってくれ。そう言ってやりたかった。
「やはりこの島……大気に微細な封魔鉱が粒子として散っている」
そしてその思いは、この島の建造物や大気の状態を確認してより強いものになった。
この島の大気には魔法効果を抑制する封魔鉱と呼ばれる鉱石の粒子が舞っている。
建物などの建造物も同じ。適当な建物の壁を一部崩して確認できた。
恐らく地面にも微量ではあるが隈なく敷き詰められているのだろう。
その事実はつまり、俺の扱う魔法も影響を受けざるを得ない事を意味する。
本当に、面倒くさいことこの上なかった。
可能ならこの島一体を黄金化してさっさと終わらせるつもりだったのだが。
「大気中の粒子を浴び続けた参加者に魔法をかけるのも、
おそらくはだが、かけた魔法を維持するのもこの環境では難しい、か」
貴重な鉱石である封魔鉱が大気中に微細な粒子として漂っているなど通常ではありえない。
この島の環境では俺の呪いを直接参加者にかけたとしてもその効果が全身に及ぶまで時間がかかる。
そして、及んだあともそう時間をかけずに解除されてしまう可能性すらあった。
「……人に踊って欲しいなら。相応の待遇を用意する物だと思うのだがな」
愚痴を吐きながら、身に着けていたマントを翻す。
これは普段に近い展開速度なのだな。そんな考えを過らせながら目の前が黄金に染まる。
直後に、衝撃が走った。
ケヒッ、ケヒッ、ケヒッ。
黄金化を解き、再び翻したマント。
その先には、耳に残る笑い声を発する人間の男…否、魔族が立っていた。
短い黒髪。顔に走った紋様。見慣れない衣服。
そして殺気に満ちたその魔族の様相に辟易しながら、短く「何の用だ」と告げる。
「なに、丁度”そそる”相手を見かけたのでな。慣らしだ。
この下らん首輪の影響がどれだけあるかは、貴様も興味があるだろう?」
確かにな。
言葉にしないまでも、制限とやらの影響ついては把握しておきたい。
そう言う意味では丁度いい機会なのだろう。
魔法で作り出した黄金の槍をその手に出現させ、臨戦態勢に移ろうとして
生れた開戦までの僅かな空白、相対する魔族は俺に対し告げてくる。
「両面宿儺」
「………?」
「お前を三枚に下ろす者の名だ。特に理由はない」
不遜な態度で名乗り終えた”宿儺”もまた、俺に対し構えを取る。
成程確かに強力な魔力だ。
俺が今まで戦ってきた敵の中で三番目には確実に食い込むだろう。
俺の命にも、指をかける事ができるかもしれない。
それを認識して、俺もまた名乗り返した。無論特に意味はない。
向こうが単なる命知らずではなく、本当に俺の事を知らない様子だったから名乗った。
ただそれだけの話。
「───黄金郷のマハト。覚えなくていい、直ぐに意味は無くなる」
…さて、
始めるか。
◆
「───面白い、魅せてみろ。黄金郷のマハト」
相対者への冷徹な殺意に満ちた名乗りの刻が終わり。
最強の呪詛師の口火と共に、戦端の火蓋もまた切って落とされる。
美味を喰らうが如く迫るは呪いの王。両面宿儺。
迎え撃つは魔王軍直下、最強の七崩賢。黄金郷のマハト。
「解」
空中に文字を綴る様に呪いの王の指が流れ。
不可視且つ高速の両断の刃が敵手へと迫る。
受ければ文字通り胴が泣き別れになる一撃。
しかし黄金郷七崩賢の無表情が揺らぐ事はなく。
「ほう……!」
マハトへの着弾の瞬間、不可視の障壁がマハトを守る様に広がり。
彼の身代わりとして解に着弾。粉々に障壁は砕かれるが障壁の主に傷一つなく。
その様を見て宿儺が小さく短い感嘆の息を吐く中、マハトは地を蹴った。
(純粋な魔法の斬撃で防御魔法が一撃で破られた。となれば距離を取って戦う旨味は薄い)
戦士の物理攻撃ではなく、純粋な魔法の斬撃で防御魔法を破る。
焦燥こそない物の、やはりかなりの手練れだ。マハトをしてそう評する他ない。
魔法も効果こそ凡庸だが出力と発生速度は脅威。撃ち合いに持ち込まれると勝っても逃げられる恐れがある。
逃がさないよう確実に殺しておきたい手合い。それ故に選択するのはショートレンジでの接近戦。
自身の鬼札を以て確実に仕留める。その意志と共にマハトはその手に握った黄金の槍を振るう。
「………!」
自身を切りつけようとする黄金の穂先。
それを見つめ宿儺は愉悦の笑みを浮かべた。
術式で作ったと見られる槍だが、生の呪力を出力する反転術式が使える宿儺にとっては恐れるに足らない。
宿儺の呪力量であれば、首を飛ばされぬ限り欠損は反転術式による回復で補えるからだ。
適当に躱した後、カウンターで拳を叩き込んでやろう。
もしくは、仙台であったリーゼント男の様に顔を三枚に卸してやる。彼はそう考えていた。
本能的に感じ取った脅威。それに突き動かされる様に後方へ飛びすさるまでは。
「……受けると思ったが、存外目利きが効くようだな」
先ほどまで宿儺が立っていた場所の石畳みを叩き割り、槍の穂先を食い込ませながら。
なおも無機質な瞳で、マハトは宿儺を見据える。
だが、宿儺の様子は既にニヤニヤと喜色と愉悦を感じていた先ほどまでのものではなく。
マハトに負けず劣らず冷淡な眼差しで、マハトではなくマハトが貫いた大地を見つめていた。
そして、一つの結論を出す。
「構築術式、か」
貫いた純金槍の穂先を中心に広がる黄金の絨毯。
宿儺はそれがマハトの術式により生成されたものであると断定した。
類するのは恐らく自らの呪力を用い物質の生成を行う構築術式。
呪術全盛の時代に生を受けた宿儺からすれば、そう珍しくはない術式だった。
(───この生成速度と物量を除けばな!)
構築術式は例外なく燃費が悪い。
呪力というエネルギーのみで物質を生成する都合上、その制約からは逃れられない。
しかしその点で言えば、宿儺の視点から言っても黄金郷のマハトという男は。
半ば不文律じみた制約を完全に無視している。極まったレベルの構築術式使い。
マハトを中心に大気から集結し渦巻く黄金色の竜巻を見れば、そう評さざるを得なかった。
───万物を黄金に変える魔法《ディーアゴルゼ》
魔王軍直下・七崩賢最強、黄金郷(エルドラド)の呼び名の所以。
人類未踏の魔法であり、女神の奇跡すら否定する特級の”呪い”。
現存する神話の魔法使いであるゼーリエをして魔法の極みと称するマハトの象徴。
その脅威が、今呪いの王の眼前で黄金槍として像を結ぶ。
「捌」
バックステップで距離を取りつつ、己の術式である御厨子。
非生物を一撃で捌く術式「捌」を黄金へと向け放つ。
鉄筋の高層ビルすら微塵に切り裂き、渋谷の街を更地へと変えた斬撃だったが────
「鵺」
マハトによって生み出された黄金の輝きは、変化を否定する。
ありとあらゆる衝撃、熱量、魔法を以てしても決してその不変を崩すことは叶わない。
そしてそれは呪いの王の両面宿儺の放つ斬撃ですら例外はなく。
捌を物ともせず殺到する純金の津波を前に、宿儺は手早く伏黒恵から奪った十種影法術の掌印を形作る。
正面衝突では形勢は不利、一旦距離を取って仕切りなおす。そう判断したのだ。
(五条悟の無下限とも違う。純粋な物量と硬度で俺の斬撃を跳ねのけるか)
物量に関しては驚異的、攻防一体の良い術式だ。
やはり会敵した時そそる相手だと見定めた目利きに誤りはなかった。
高揚を覚えながら、宿儺は目の前の獲物を如何に捌くかに思考を巡らせる。
まずは物量には物量。脱兎、玉犬、万象辺りの十種影法術の式神達で相手を崩す。
その決定の元、掌印を形作ろうとした、その時だった。
「遅いな」
「ッ!?」
鵺で飛翔した宿儺の数メートル上から影が差す。
上にスライドさせた視界に映るのは、手に握った黄金槍を振りかぶるマハトの姿だった。
マハトにとって、自分の魔法を敬遠して上空に退路を見出す魔法使いは。
それこそ数えきれないほど経験してみた月並みな相手でしかなく。
宿儺が鵺の掌印を作った時には、既に飛行魔法で飛翔を開始していたのだ。
この瞬間、スタートダッシュの差と飛翔手段を鵺に依存する条件からマハトの奇襲を宿儺が回避する術はない。
槍の薙ぎ払いがクリーンヒットし、衝撃が宿儺を襲う。
「解せんな」
隕石の様に大地に叩き付けられ。
二度、三度と伏黒恵の身体を打ち付けながらも受け身を取り。
軽やかに身を起こした宿儺がまず吐いたのは疑問の言葉だった。
その声色と表情から問いかけの意図がある事を察したマハトの腕が俄かに止まる。
「それほどの力を持ちながらこの殺し合い、何故やる気を出さん。
呪霊かどうかは知らんが、お前は人を殺す存在(モノ)だろう」
纏う呪力から、目の前の獣が呪霊ともまた異なる存在である事は察しがついていた。
だが確信を以て言える。目の前のマハトという存在は生まれから人類の敵対者だ。
その視点から出言えば呪霊と同じ。人を襲い、殺め、食い物にする事こそ本懐の化生のはず。
それなのにこの殺し合いを厭い、気怠く感じている様相は、宿儺にとって実に奇異に映った。
「……理由は二つ、俺にとって戦いなど純粋にどうでもいいし、好きではないからだ」
宿儺の問いかけにマハトは意外にも手を止め、無機質に言葉を返す。
何の感情も感じさせないその声色は、まるで機械音声の様で。
言葉を交わす、というよりは単なる反射に近い返答。
だが、続く言葉にはほんの僅かにだが魔族らしからぬ感情が籠められていた。
「もう一つは、俺は人間との共存を目指している」
人間を理解し、人間の語る悪意を理解し、共に生きる事を望む。
その言葉に偽りはなく、マハトは正に魔族の異端児と呼べる存在だった。
そして、彼がその望みを本気で抱いていると確信を得たからこそ。
黄金郷の願いに対し、呪の王は嘲笑を返す。
「人を理解する事などできんよ。貴様には」
いや、人が貴様を理解できる時が来ないというべきが正しいか。
そう宿儺が述べると、マハトの雰囲気が先ほどと打って変る。
気だるげな様相から、俄かに剣呑な感情が覗き。
しかし即座に襲い掛かる様な真似はせず、どういう意味か問いかけ宿儺の返答を促した。
「簡単だ、貴様の害悪と人間は決して相いれん。
貴様が人間を理解し共存を望んだところで、それが叶うまでに貴様か人間は姿を消しているだろうさ」
宿儺が放ったその言葉は、マハトの望みの本質を突いていた。
魔族は息を吸うように人を殺す。そもそもの思考が人とは根本的に異なってしまう。
能力は総じて人よりも高く、共に居れば最後に待つのは人にとっての悲劇しかありえない。
何時の日か理解する日はやって来るかもしれないが…達成までの刻は余りにも遠い。
悲願の到達までにマハトか、或いは人類は地上から姿を消している。
それ故に、黄金郷の名を冠した怪物が自らの望みに辿り着く事は、絶対にない。
「黙れ」
ここで始めて、マハトが宿儺の言葉に口を挟む。
相変わらず声色そのものは無味乾燥な物だったが。
紡ぐ言葉に”不快”の二文字が籠められている事は明らかで。
身構え今にも戦闘を再開しそうな彼に対し、宿儺は宥める様に、焚きつける様に語った。
望みを叶えるために、今マハトが何をすべきかを。
「貴様に決定的に足りない物がある、理想に到達するための"餓え"だ。
ベリアルとかいう男も言っていただろう。願いを叶える、と。であれば──何故本能に背く必要がある?」
ただ最強を証明するだけで、本来なら決して到達し得ない望みに手が届く。
だというのに何故やる気を出さない?何故己の本能に身を委ねないのか。
宿儺の問いかけに、マハトは沈黙で応える事しかできず。
さりとて周囲の大気の緊迫感が高まっていく事を感じながら、宿儺は戦闘の再開を告げる最後の言葉を吐く。
「まぁもっとも───どちらにせよ貴様がそこに辿り着く事はないがな」
「…………!」
マハトの両眼が見開かれる。
この後己に飛来する災禍を敏感に感じ取ったのだ。
迎撃?妨害?いや違う。現状取るべきはそれではない。
予感と洞察によって導いた対応を取ろうとする敵手を前に、悠然と宿儺は掌印を形作った。
双方の魔力と呪力が練り上げられ、呪いの王は呪術戦の極致へと至る。
───領域展開、
───伏魔御厨子。
宿儺の背後に現れる伏魔殿。
黄金郷のマハトの生み出す黄金は、宿儺の解や捌ですら断つ事はできない。
更に黄金の物量を考えれば、マハトに攻撃を通すことは至難を極める。
であればどうするか、決まっている。
閉じない領域に依る、黄金の妨害を無視した必中攻撃を超える手段はない。
数えるのも馬鹿らしい程の殺意が、最強の七崩賢を襲う────、
◆
健在。
「……大した魔法だ。放たれた斬撃全てが俺に集中していた」
渋谷の一帯を更地に変えた斬撃の嵐を浴びてなお。
周囲が更地に変わった世界の中に、傷一つない容貌を保ったままマハトは立っていた。
そして声の冷徹さは一切変わらないまま、宿儺が放った攻撃の完成度に対する賞賛を送る。
詰み(チェック)に至るまでの、反撃を完了させた上で。
「全身の黄金化が一瞬遅く完了していたら、俺は切り刻まれていただろう」
領域展開の術式へのブーストと、対象への必中効果。
二つの必殺を以てしても、金色の輝きを切り裂く事はできなかった。
原因は物質的な硬度が堅牢すぎた事と、それに何より。
術式の性質が宿儺が戦った万が構築術式で操る水銀の様に身にまとう物ではなく。
全身が本当に何物も通さない黄金へと変質していた事が最も大きいだろう。
宿儺の斬撃が届くまでのほんの一瞬で、マハトは全身の黄金化を完了させていたのだ。
そして、彼の黄金化の適用範囲はそれだけに留まらない。
「……やっとか」
「─────ッ!?」
マハトがそう呟き視線を宿儺の目線から僅かに下げると。
それに釣られるように視線を足元に向けた宿儺の目が、見開かれる。
目の当たりにしたのは、黄金色に染まった自身の膝だった。
「制限とやらで普段よりも時間がかかったが……どうやら他者を対象にする事も可能らしい」
効果対象は自身と非生物のみに留まらず。
敵すら物言わぬ純金へと変貌させてしまう。
その効果こそ、万物を黄金に変える魔法の真価。
マハトが最強の七崩賢と呼ばれた裏付け。
伝染病が僅かな潜伏期間を経て発症する様に。
熱された鉄が熱された部分から赤く変色していくように。
かつて城塞都市を一夜で滅ぼした特級の呪詛は、今異空の呪いの王の肉体に牙を剥いた。
「そのまま全身が黄金化したら──お前の首輪を爆破してみよう
どれほど衝撃を与えれば首輪が爆発するのかの実験をしてみたい」
一度効果が表れてしまえば、進行は早く。
膝という機動力に関わる部分をピンポイントで奪われた宿儺に阻む術はない。
纏わりつく禍々しい輝きは、膝から下半身へと広がり犠牲者を逃がすつもりは毛頭ない様子だった。
最早反撃は間に合わない。それ故に、宿儺が取れた手段はたった一つ。
ただ彼は己の両手を前へと突きだし、握りこぶしを作り。
そして、視界全てが金の光に染まる中、彼は淀みなくその祝詞を唱えた。
────布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)
まず機動力を奪う判断は悪くはなかったが。
もし可能だったのなら、下半身ではなく上半身を狙うべきだったな。
万物を黄金に変質させる呪詛に浸食された身で、呪いの王は尚も余裕の笑みを浮かべて。
つま先から頭頂部に至るまで、完璧に黄金化が進行したのはその直後の事だった。
────八握剣異戒神将魔虚羅
呪いの王の黄金化が完了した瞬間。
ほぼ同時に、現れるは最強の式神。禪院の虎の子。
無色の殺意を伴い、術者の危機に魔虚羅が顕現する。
「ふむ、」
振りかざされた退魔の剣を目にしてマハトは直感的に理解する。あれは不味い、と。
会敵から二秒足らずで黄金の波濤を形成。鋼鉄にも勝る防御壁とする。
襲い来る衝撃は、斬撃の直撃を受ければまず命はないと確信させる威力で。
しかしマハトはやはり眉一つ動かさず、宿儺の最後の抵抗を問題ないと評した。
───万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)
魔虚羅が剣を撃ちつけた黄金から、マハトの魔法が伝播する。
参加者やベリアルが手ずから用意した支給品を除くその浸食速度は比にならぬ程早く。
殆どこの地に連れてこられるまでのマハトの魔法行使と遜色ない速度で、一切の淀みを生じさせず。
瞬く間に黄金化は完遂され、会敵から数秒で最強の式神は黄金の木偶へと変わった。
「…さて、早速首輪の実験に移るか」
特に感慨も抱くことなく、黄金の魔像と化した魔虚羅を尻目に。
マハトは先んじて黄金化を達成した宿儺の元へと歩み寄る。
そして、近づいた瞬間直感した。
この環境下では、自分の魔法も永くて半刻(30分)ほどしか効果を発揮し得ないであろうという事を。
魔法とはイメージの世界。術者本人以外の不確定要素が絡まない限り、その直感は術者本人すら不可避の事実となる。
とは言え、命のやり取りをする場ではそのアドバンテージは決して小さな物ではない。
それを証明するが如くマハトは宿儺の首輪に手をかけ……、
────ガコン
史上初。地球外の術式に対する、魔虚羅の"適応”が始まる。
「……成程、ならば"こう"しよう」
黄金化を破られた事にはいささか驚いたが。動揺はない。
マハトの思考は凪いだまま、最も効果的な一手を導き出す。
魔虚羅に対する追撃?否、無効化の種が分からない以上これ以上黄金による追撃は悪手だ。
ならばどうするか、簡単だ。使い魔ではなく無防備な担い手を狙えばよい。
「さらばだ宿儺。生きていたらまた会うかもな」
黄金の槍で魔虚羅の視界を遮りつつ、飛行魔法で上空まで飛翔。
魔力を集中し、周辺の大気すら黄金に変える。
純金の輝きは瞬く間にその版図を広げ、生み出された黄金は槍から濁流…津波の如く変貌し。
そして、圧倒的な衝突力を伴い、宿儺を飲みこんだ。
◆
全く、死ぬところだった。
呪いを反射される事には経験があったが。
黄金化そのものを物ともせず、黄金のままの肉体で襲ってくる相手。
そんな相手は初めてだった。
それを目にした時、薄々抱いていた予感が確信に変わる。
「ここは、俺の知らない術理が存在するらしい」
ゼーリエと呼ばれていた神話の時代から生きる魔法使いとも違う。
呪いを反射したり、無効化した訳ではない。
動きこそそこまで早くは無かったが、黄金化した状態でも動けるように"成った"かのような…
「俺の魔法に順応したのか……或いは、黄金化による肉体の変質そのものに順応したのか」
どちらにせよ、あの宿儺の使い魔に万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)を過信するのは危険だろう。
事実、使い魔が何らかの手段で俺に襲い掛かってきた時に。
防御ではなく、黄金化の物量を以て津波のように宿儺ごと別の地点に押し流していなければ恐らく死んでいた。
次会った時は腐敗の賢老クヴァールが作り上げた人を殺す魔法(ゾルトラーク)。
その最大火力で一撃で屠る。それが一番確実かつ安全たと俺は判断した。
『貴様に決定的に足りない物がある、理想に到達するための"餓え"だ』
宿儺の使い魔の事を考えていたからか。
次いで浮かぶのは、奴が俺にかけてきた言葉。
その言葉を小さく反芻して。確かにな、と肯定の言葉を吐く。
俺はこの殺し合いを心底面倒だと感じているが、同時に。
この殺し合いに可能性を感じつつある。それは否定しようのない事実だ。
────いつか必ず報いを受ける。この私の様にな。
そうだ。
もう少し…あと少しで何かが掴めそうな気が、しばらく前からしていた。
その時が今なのかもしれない。
光栄にも悪として裁きを受け……報いを享受する時が迫っているのかもしれない。
人を理解するための数百年の旅路の成果が、手が届く距離にきているのやもしれない。
もしこの殺し合いの過程で至る事ができずとも……
───元の世界へ返すことと、君の願いを叶えると言うおまけつきだ。どうだい? ギンギンになれたか?
いいだろう、ベリアル。
どうせあてのない旅路。お前の望む通り踊ってやる。
人は殺す。魔族としての本能を背くつもりはない。
だがその結果、俺がお前の元に辿り着いたなら。
その時は実りある答えを期待する。
具体的な目的意識を持って行動するのは、本当に久しぶりだ。
俺は、この殺し合いに乗る。
【黄金郷のマハト@葬送のフリーレン】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
1:殺し合いに乗る。
2:黄金化や首輪の実験を何度か試したい。
3:宿儺の使い魔(魔虚羅)は人を殺す魔法で吹き飛ばす。
※参戦時期は10巻。「ヴァイゼの終焉」直後から参戦です。
※万物を黄金に変える魔法は直接参加者にかけた場合、効果が表れるまで時間がかかります。
※黄金化はマハトと1エリア以上離れる、又は個人差はありますが一定時間経過で解除されます。
「ベリアルとやらも窮屈な真似をする」
しかし、随分飛ばされたらしい。
大方あの黄金の物量でで俺をこの島から追い落とそうとしたのだろうが……
どうやらそれより早く、ベリアルとやらが仕掛けた細工で奴の術式が解除された様だ。
もっとも、俺の呼び出した魔虚羅もベリアルの細工で解除されてしまった様だがな。
再顕現を試みたが、呼び出そうと掌印を作った瞬間首輪からの警告が下った。
六時間は呼び出すことを禁じる、らしい。
「まぁ、いい。折角の宴だ。奴以外にも楽しめる相手はいるだろう」
五条悟を料理する事の妨害は業腹ではあるが、これはこれで良い暇つぶしになる。
最後にベリアルと闘るのも面白そうだ。
生き方を変えるつもりなど毛頭なく。
これまで通り、俺は俺にとって正しい選択を成す。
「鏖殺だ」
【両面宿儺@呪術廻戦】
[状態]:呪力消費(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
1:鏖殺。最後にベリアルと闘るのも悪くない。
2:マハトは殺す。
3:他の獲物を探す。
※参戦時期は25巻。人外魔境新宿決戦開始直前で、所謂"伏黒宿儺"です。
※魔虚羅は一戦闘後自動的に顕現解除されるよう制限されています。
※一度顕現させると次の顕現まで六時間必要となります。
※その他の制限は後続の書き手にお任せします。
最終更新:2026年03月08日 00:12