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世界は、無数に存在する。
その中には、同じ人物が存在する世界も数多い。
そして、似て非なる人物が存在する世界も。


その部屋には、二人の青年がいた。
二人は、驚くほどによく似ていた。
緑の髪も同じ。端整な顔立ちも同じ。その顔にかかった丸眼鏡も同じ。
ただ一つ、違いがあった。
それは、角が生えているか否か。

「しかしまあ、ほんまにびっくりやなあ」
「何回言うんよ、それ」
「いや、何回でも言いたくなるって」

二人は、和やかに言葉を交わしていた。
「アミィ・キリヲ」と「網崎霧緒」。
彼らは容姿だけでなく名前も、歩んできた人生も似ていた。
名門の一族に生まれながら能力の低さ故に冷遇され、唯一の味方だった少女との別れで己の異常性を自覚した。
だがそんな自分を肯定してくれた男に心酔し、彼の下で世界を変えるべく暗躍してきた。
まるで示し合わせたかのように、そっくりだ。
しかしそこまで似ているからこそ、二人の相違点はより際立っていた。

「これだけ似とるのに、なんで君だけ魔法なんて使えんねん。ずるいわー。
 僕にはそういう、オカルト系の能力ないのに」
「いやいや、僕の魔力なんてカスみたいなもんやで?」
「でも、ないよりましやろ」

しかめっ面で、霧緒は恨みがましさをにじませて言う。
その様子を見たキリヲは、何かを思い出したような仕草を見せた。

「そんなら、僕の支給品使ってみるか?」
「え、なになに?」
「何でも、身につければ誰でも特殊な能力が使えるようになる代物らしいんよ」
「うわ、ええやん! ちょうだい、ちょうだい」
「ええよー。はい」

キリヲは無造作に、カバンから取り出した物を霧緒に向かって投げる。
それは、ゼリー状の物体に包まれたオレンジ色の球だった。
その物体は霧緒の胸に接触し、そこに張り付いた。

「なんやこれ? これがほんまに……」

予想外の代物が出てきたことで、霧緒はキリヲを問いただそうとする。
だがその言葉は、途中で途切れた。
キリヲが、心底嬉しそうに笑っていることに気づいたからだ。

(ああ、そういうことか……)

霧緒は理解する。
キリヲが言っていたのは、全くの嘘。
これは、自分を殺すための物なのだと。

(なんで気づかなかったんやろうなあ……。
 そりゃ僕なら、見たいと思ってもおかしくないやろ。
 自分と同じ顔が、絶望する瞬間を……)

最期のあがきで張り付いた物を剥がそうとする霧緒だったが、間に合わない。
次の瞬間、爆発が彼の体を飲み込んだ。

(理想の死に方とは、ほど遠いけど……。
 自分に殺されるっちゅうのも、珍しくて悪くないかもなあ……)

かすかに笑みを浮かべながら、霧緒は事切れた。


◆ ◆ ◆


「そうかあ……。信じた相手に裏切られて死ぬ時、僕はあんな表情するんやなあ。
 ありがとうな、僕。貴重なもんが見られたわ」

霧緒の亡骸を見下ろしながら、恍惚の表情でキリヲはつぶやく。
そこに、己の所業に対する罪悪感はみじんもない。

「さて、これからどうするかな……。
 まあ本当に願いを叶えてくれる言うんなら、優勝を目指してもええんやけど……。
 あかんなあ、どうにも気が散るわ」

キリヲが恍惚の表情を浮かべているのは、目的を果たせたからだけではない。
室内に充満する血のにおいも、その一因だった。

「そりゃこうなるわなあ。あまりに僕に似てたから、そっちに意識がいっとったけど……。
 霧緒くん、人間やもんなあ」

ここで改めて触れるが、アミィ・キリヲは悪魔である。
悪魔にとって、人間の血肉は極上のごちそう。
においだけで、理性を飛ばすには十分だ。

「あかんわ、人間の血が、ここまで惹かれるものやったなんて……。
 本能が抑えられへんわ……」

キリヲの口から、止めどなく唾液があふれる。
その目に、すでに理性の光はなかった。

「あかんって……。初めてはイルマくんにしたいのに……。
 ああ、でもいっぺん経験しておくのもええかもなあ。
 欲望丸出しでがっつくのを見られるのも、恥ずかしいしなあ」

誰に言うでもなく言い訳をしながら、キリヲは霧緒の死体に付着した血を自分の手に塗りつける。
そしてそれを、口に含んでみる。

「っ!!」

その瞬間、キリヲの脳天を稲妻が突き抜けた。
これまで経験したことのない快楽に、キリヲの中に残されたわずかな理性も吹き飛ぶ。
もはや我慢など、できるわけがない。
キリヲは獣のごとく、霧緒の亡骸に食らいついた。


◆ ◆ ◆


「いやあ……僕の胃袋やと、腕一本でおなかいっぱいやなあ」

数分後、そこにはうつろな表情のキリヲがいた。
口の周りや衣服にはべったりと血が付着しているが、気にしている様子もない。

「やばすぎやろ、人間の肉……。こんなにも全身に力がみなぎっとるの、生まれて初めてや。
 しかも、テンションもめちゃくちゃ上がっとるし……」

人間の血肉は、悪魔にとってただ美味なだけではない。
その力を大きく上昇させ、さらに原始的な本能を抑えられなくする。
悪魔の本能に忠実な「元祖返り」であるキリヲは一般的な悪魔ほどの影響は受けなかったが、
それでも脳を支配する欲望をコントロールしきれなくなっていた。

「貧弱な僕が、こんなこと考えるようになるなんて思いもせえへんかったけど……。
 今はとにかく、暴れ回りたいわあ」

快楽にとろけた声で、キリヲは独りごちた。


【アミィ・キリヲ@魔入りました!入間くん】
[状態]:人肉の摂取による能力上昇&精神高揚
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:優勝を目指す?
1:今はとにかく暴れたい

[備考]
※参戦時期は、収穫祭編終了後
※チューインボム@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズは消費されました


【網崎霧緒@魔入りました!入間くん if Episode of 魔フィア 死亡】
※霧緒の支給品が爆発に巻き込まれたかは、採用された場合後続にお任せします


「支給品解説」
【チューインボム@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ】
投擲すると、当たった相手か地形に張り付く爆弾。
一定時間後に爆発するが、その前に他のキャラとすれ違うと、なすりつけることができる場合がある。
最終更新:2026年03月08日 00:21