男は憤っていた。
神のように崇めていた存在を殺され、
その上後釜を取らんとした男に対して。
男は怒っていた。
己の野望を夢と言う言葉で飾り立て、
一度は主君が築いた天下統一を汚してきた嘗ての同胞に。
男は不愉快だった。
天下分け目の関ヶ原を前に、
堕天司を名乗る存在に殺し合いへと招かれて。
そして───
「東軍が勝つ、だと……?」
「学校は程ほどの俺でも知ってることだぜ?
まあつっても、めっちゃ細かいとこまでは知らねえけどな。」
黒を基調とした羅刹学園の学生服に身を包む、
紺色の髪の少年こと一ノ瀬四季はそう返す。
彼も学歴の都合特別歴史に明るいわけではないが、
関ヶ原の戦いと言えば余りにも有名な話になるだろう。
天下分け目の戦いを全部とは言わずとも多少は知っている。
西軍は小早川秀秋の裏切りをトリガーとして、
瓦解して一日を待たずして関ヶ原の戦いが終わると。
それが戦国時代から遥か未来を生きる現代人の認識である。
その時代の最中の中心人物である銀髪の男、石田三成には与り知らぬことだ。
(もっとも、四季も小早川秀秋が裏切って瓦解したとかまでは覚えてないのだが)
「貴様……絆などと言う偽りの言葉に惑わされ集った、
そのような軍勢に! 家康に! 私が! 西軍が! 敗北すると言うのかッ!!」
「いや俺は昔の話として聞いてるだけだっつーの! つか顔近ぇ!」
恐ろしく早い動きで胸倉をつかまれる。
戯けたことを抜かして殺しに来ると言う、
短絡的行動に出ると言う理性のなさは言動とは裏腹になく、
少しの間凄まじい形相で睨みつけ、常人なら腰を抜かすだろう。
オカルトとか怖いものが苦手なところがあるので少し怖くは思うものの、
睨むのが終われば、その手を離して数歩歩いた後、空を見上げていた。
少々戸惑うところもあるものの、意外と理性的だなと襟を直しつつ彼は思う。
「私から秀吉様を奪い……そして秀吉様から天下をも奪い、
嘘で塗り固められた絆で、あの男は二百年以上も泰平の世を築いたと言うのか。」
秀吉の天下は明智光秀の天下と比べればはるかに長かったが、
家康の天下は死後も続いていると言うことが受け取れる。
だが自分はどうだ。秀吉の死後その天下を家康に奪われて、
惨めな敗北者として終わり、秀吉の仇も取れずに死んでいく末路。
全てを奪った家康が勝利者として、後の世にも語り継がれていく。
腸が煮えくり返りそうなぐらい、彼の中で怒りと言う炎に油が注がれたかのようだ。
(あれ、もしかしてやべえこと言っちまったか?)
考えたらこれって歴史を変えてしまいかねない、
とんでもないことをやらかしてしまったのではないかと。
それもあるが、同時に彼が殺し合いに乗るきっかけを作ってしまったのではないか。
要するに自分は秀吉の跡を継げず負けて死ぬ未来です、と言ってしまったようなものなのだから。
相手が殺し合いに乗るなら戦うことはできる。四季も桃太郎機関と戦って人を殺している以上は。
しかし今回は敵対する組織ではなく、自分が乗せてしまったようなものではあるので後味が悪い。
できれば乗らないでほしいと静かに願いながらも、血蝕解放の準備だけは怠らないでおく。
「……貴様。名前は何という。」
「名前……いや最初に名乗っただろ!? 一ノ瀬四季って!!」
三成はどうでもいいものは基本的に物覚えが悪い。
彼を追い続けていた伊達政宗のことを欠片も覚えてないように、
打倒家康に関係のないことは、どうでもいいかのようでもある。
因みに最初はベリアルに憤り声を張り上げた三成を見つけて、
それを四季が聞いたことで何とか説得と言う名の会話に参加させ、
多少強引ではあるが戦うことなくとりあえず叫ばせるのをやめさせたのが始まりだ。
なので、割と一方的に四季が名乗っていると言うところは否めなかったりする。
「一ノ瀬、私の邪魔をするな。」
「は?」
その一言を言って何処かへと歩き出す。
言いたいことだけ言ってスタスタと何処かへ行く。
どこか皇后崎のことを思い出させるようなむかつく行為ではあるが、
「いや待てよ! 口数がまじで足りねえ! おめーより皇后崎の方がまだわかるぞ!」
肩を掴めばすぐさま手に持っていた刀で斬りにかかる。
幸い相手が加減していたからなのか特に何事もなかったが、
今の剣閃は素人目で見ても並の実力じゃないことが伺えた。
「貴様、死にたいのか?」
「だから話聞けって! 皇后崎じゃなくて屏風ヶ浦かよ!
邪魔をするなって、そもそもお前の目的が分からねえんだよ!
ちゃんと言えよ! 言わなきゃ伝わらねえことぐらいあるだろうが!」
「決まっている! あの卑猥で矮小で下劣な男を殺して帰還し、今度こそ家康を殺すッ!!
未来で果たせぬと言うならば、生還してそのような未来を変えればいいだけの話だ!」
「じゃあ、なんで俺を殺しに来ないんだよ?」
なら、優勝して家康を殺して未来を変える方が手っ取り早い。
勿論しないでくれる方がありがたいが、しかしそれをしてこないというのは変だ。
生徒の中では比較的学校に通っていた方である四季だが、特別頭がいいわけでもない。
だから二言三言の会話程度では、相手の真意を理解できるものではなかった。
「誰が優勝するなどとのたまった。
奴の絆を否定するなら、私の力で為さなければならない。
秀吉様以外の者に首を垂れ希うつもりなど、最初からありはしない。
あの下劣な男に対して首を垂れるなど、虫唾が疾走することだ!!」
これが秀吉が催したものであれば、彼は躊躇はしなかった。
しかし何処の誰かも知らない奴に殺し合いを強制される謂れはない。
全ては秀吉の為。自分にはそれ以外のものなど何も持ち合わせてないのだから。
「あー、そういうことか。だったら俺もついて……」
「邪魔をするなと言ったはずだ。」
行くと言おうとした瞬間、凄まじい速度で刀を抜かれる。
いつ抜いたのかとか分かりかねる身のこなしに冷や汗が頬を伝う。
これが戦国時代を生きた武将か、なんて感想が脳裏のどこかに出てきた。
「いや、なんつーか……似てるって思っただけだよ。」
「誰がだ。」
「お前が、俺にだよ。」
ポリポリと頬をかきながら四季は呟く。
自分を育ててくれた養父、一ノ瀬剛志は桃太郎機関の男に殺された。
あの時の自分は鬼の血の暴走はあれども相手を殺したいとは思っている。
それと余り素行がよくない彼だが、お人好しな性格であるのは確かであり、
あれだけ憎悪を募らせた相手を放っておくのも、なんだか悪い気がするのもある。
流石に全部を語るには長いので、仇討ちは自分も同じだからと軽く纏めた言葉を紡ぐ。
こんな話他人にするもんじゃないのもあり、彼としては気まずい空気の中、
「貴様の仇討ちなど知ったことか。」
その一言を最後に、もう一度スタスタと歩き始める。
こいつめんどくせえな、そう思わずにはいられない四季だったが、
彼を放っておくことはしなかったし、三成も特に突き放しはしなかった。
(あれ、でも東軍勝てなかったら俺の世界の未来ってどうなるんだ?)
別の世界と言う概念を考えず、一人悩む四季だった。
【一ノ瀬四季@桃源暗鬼】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:生きて戻る。乗るつもりはねえ
1:こいつ(三成)はちょっとほっとけねえ。
[備考]
※参戦時期は少なくとも練馬区編終了後。
【石田三成@戦国BASARA】
[状態]:家康への憎悪(超特大)、困惑、ベリアルへの憎悪(特大)
[装備]:刀@出展不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いなどどうでもいい。生還して家康を殺す。
1:西軍が負けるだと? ならばその未来を変えてやるまでだ。
2:一ノ瀬はついてくるなら構わん。邪魔をするなら斬る。
[備考]
※参戦時期は赤ルート、少なくとも関ヶ原が始まる少し前(少なくとも金吾が宣誓する前)
最終更新:2026年01月31日 22:31