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「……ねえ、リュグナー様。そのお酒。ワイン」

「ん?」

「……いつも、飽きもせず摂取しているけれど。……美味しいの? それとも、そうでもしなければ理性を保てないということ? ──この、不快な状況下では」

「おやリーニエ、君が興味を示すとは珍しい。……忠告しておくが、止めておきたまえよ? 君の繊細な魔力回路を、わざわざ毒物で汚染する必要はあるまい」

「…………」

「…………別に、芳醇だのヴィンテージだの、人間たちが心血を注いでいるという矜持には興味はないけれどもな。ただ、学習した結果を実践しているに過ぎないんだよ。──」



「──こうして酒が好きなフリをすれば、『莫迦』が勝手に釣れる」


………
……


 グラスの中で揺れる葡萄酒は、まるで引き抜いたばかりの鮮血の如し滑らかだ。
今宵のような無駄に輝かしい満月をその水面に映し込めば、──ふと、記憶の隅に沈殿していた詰まらない過去が浮き上がってくる。

“魔族とは、言葉を模倣するだけの獣に過ぎない”
“奴らは人を欺くためだけに形を成した、尊厳なきバケモノだ”

……誰の言葉だったか。
思い出すことすら忌々しい、実に低俗な独白だ。
もっとも、これを発したのが『人間』──……あるいは我々を激しく嫌悪する側の種族であることは疑いようもないがね。
そして、その指摘自体は至極真っ当だ。否定する気も起きないほどの正論。
我ら魔族は、対立種族から見れば唾棄すべき、嫌われて当然の摂理の中に生きている。

──だが、不思議だとは思わないか?
人間が必要とあらば平然とその肉を屠る犬や猫たち。
彼らだって、機会があれば同じ主張を叫びたいだろうに。
神が与えた生存競争という摂理に対し、これほどまでに『被害者』を演じたがる人間という生き物は、なんと背徳的で傲慢なのだろう。

……おや、失敬。
もしかして人間は犬猫を食さないのだったかな?

「ではリーニエ。先ほど『打ち合わせた』通り、頼んだよ」

「…………理解できない。人間なんて脆い生き物なのに。さっさと根絶やしにすれば済む話を……あまりに無意味で、非効率な方針」

「……手厳しいね。だが、我先にと本能を剥き出しにして暴れ回り、早々に無残な骸と化した『檻の莫迦』の末路を忘れたのかい?」

「……」

「……彼は彼なりに、身を挺して貴重な教訓を遺してくれたのだよ。──」

「──知性を欠いた暴力は、ただの屠殺に過ぎないというね」

「…………」


 『最後の一人になるまで、殺し合え』。
堕天使だか何だか知らないが、どこかの哀れな暇人が仕掛けた悪趣味な遊戯に巻き込まれたものだ。
この無益な余暇に参加させられた我々──私とリーニエは、まず何よりも先に『基本方針』を策定した。

参加者の数は八十人余り。
八十人八十色、それぞれが矮小な人生を積み上げ、濁った思考を撒き散らしている。
……確かにリーニエの言う通り、私の『血を操る魔法(バルテーリエ)』と、彼女の魔法を以てすれば、この稚拙な殺し合いなど瞬く間に終止符を打てるだろう。
遠き地で我らを待つアウラ様を思えば、効率至上主義も決して間違いではない。


「……けれど」


ふっ、と。
私は口角を上げ、彼女の言葉を先回りするように紡ぐ。


「“けれど”。……そうだろう? リーニエ」

「……」


「────何より、この場の人間たちは、我々に『その役割』を期待しているようじゃないか?」


「……分かった。じゃあ、また十分後に」

「ああ、期待しているよ」



────人間を欺き、希望を与え、その土壇場で鮮血に染めてこそ、アウラ様への手向けに相応しい。


……それが、我々魔族流の『余興』というものだ。
リーニエと共有したこの方針は、いわば一種の『コンペティション』。
どちらがより「使い甲斐のある、質の良い獲物」を釣り上げ、懐に引き込めるか。

感情の欠落した足取りで去りゆく背中を見送り、私は優雅に、この死の庭を散策することにした。


………
……



 公衆便所の汚濁に、一級品の葡萄酒をすべてぶち撒けてから、しばしの時が経った。
吐血のごとく赤黒く染まった水面を冷徹に眺め、私は独りごちる。
吐き出したのは、重く、淀んだ溜息だ。


「……やれやれ。どうやら私の負けのようだね、リーニエ」


あれから随分と歩き回ったものだが──…これは、この場の人間共にとっての福音であったというべきか。
あいにく、私の食指を動かすような『目ぼしい獲物』には、一人として出会えなかった。
誰でも良かったのだ。
鼻を垂らした無知な子供ですら、私の妥協の範囲内だったというのに、視界を掠めるのは虚空ばかり。
……実に私らしくない。
これを人間たちは『人恋しさ』などという言葉で定義するのだろうか。


「はは……」


……生理現象とは実に嘆かわしいものだ。
こうも退屈を極めると、柄にもなく欠伸などという無駄な動作を漏らしてしまう。

さて、リーニエのやつは一体どんな獲物を、その死んだ魚のような瞳で射止めてきたのやら。
汚らわしいタイルの床へ、グラスを投げ捨てた私は早速足を運ぶことにした。
……向かう先は決まっている。
獲物たちの血の匂いと、リーニエの淡々とした報告が待つ、あの場所だ。




……すると、どうだ。



「……は?」


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──「可愛さレベル:❤❤❤」

「最高だよぉ、リーニエちゃん! 素晴らしいよぉ! 滾る、滾るよぉぉお!!」パシャパシャ📸☆

「……」

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──「ダラダラ度:」

「じゃ、リーニエちゃん~~! ほら、さっきの、お姉さんの言葉! 真似してみて~! はい、チーズ!!」

「……“せーしゅんって、いいよねー”」😐


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──feat.リーニエちゃん♥😍
──「神聖さレベル:神神神神神神」

「~~~~~っ!!! かわいさ世界一だよ~~最高だよ~~~!!! 天才級の魔族だよリーニエちゃんは~~~!!!」

「…………」 「……」


「はぁ……はぁ!! じゃ、次が……ラストね! これ終わったら、とびきりのアップルパイ作ってあげるから……! はぁはぁ!」

「うん。約束」

「とっておきだから……驚かないでよねぇ!!」



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──feat.リーニ……


「おいそこまでだ。…………何を、している?」

「ひっ!!!?? ぴ、ひぃっ!!!」

「……何って。…………服屋さんになった、気持ち」

「あ?」


 ……リーニエの奴は、とてつもなく莫迦のような格好に次々と着せ替えられ、
……そして途方もなく知性の欠落した人間に、餌一つで懐柔されていた。

リーニエが十分という限られた時間の中で、『一番利用価値のある』と見込んでつれてきた、
その人間は────、

「……あ、ぁの…………す、すみませせじだぁ!!! ……ま、ま、魔族の……えと、お貴族……様……ですよね……」

「あ?」

「ゎ、私……ゎゎ…………あのっ!! この罪、どうぞ殺し~……で精算して構いません!! ま、全く恨みとか……し、しないので! お、お構いなく…………!!」

「は?」 「……もぐもぐ🍎」

「た、ただ!!──」


「──用済みになるまで、どうか私を最下層の配下としてぇ~……! 死ぬまでリーニエちゃんの撮影を継続させてください!!! お願いしますリュグナーさん!!──」


「──命より、シャッターチャンスなんです!!!」





────名を、『星野みやこ』と言った。

……酔いが恋しいものだ。

【リュグナー@葬送のフリーレン】
[状態]:深刻な頭痛、価値観のゲシュタルト崩壊
[装備]:不明
[道具]:不明支給品×2
[思考]:対話で『終わらせる』。
1:この人間(星野みやこ)は一体何なのだ。恐怖も、絶望も、対話も通用しない。
2:……早くアウラ様の元へ帰らねば。
3:↓というかリーニエ。お前は何故、魔族の秘匿すべき真意をこうも莫迦正直にバラしたのだ。

【リーニエ@葬送のフリーレン】
[状態]:満腹
[装備]:王道セーラー服フルセット
[道具]:不明支給品×2
[思考]:対話で『終わらせる』(@「いただきます」と「ごちそうさま」で完結)。
1:次は「スクール水着」か「体操服」……。布の面積が減ると動きやすい。効率的。
2:この人間(みやこ)の作るお菓子は模倣できないほど美味しい。
3:↑バラした理由?だってバカだから。

【星野みやこ@私に天使が舞い降りた!】
[状態]:超絶トランス状態
[装備]:デジタルカメラ、重装備の着替えセット
[道具]:不明支給品×2
[思考]:リーニエちゃん♡(と、リュグナー様)に魂の忠誠を誓う。
1:天使だ……!! 本物の天使が、ここにいる……!!
最終更新:2026年03月11日 07:58