虎杖悠仁が上空からの自由落下を経験するのはこれが初めてではない。
一度目は空の世界に飛ばされた時。とはいいつつ、虎杖悠仁が空の世界での思い出を『思い出した』のは、この殺し合いに巻き込まれて会場に飛ばされた後の事。
「うおおおお!?」
自分が上空へ吹き飛ばされ、二度目の自由落下を行うことになったきっかけを思い出す。
渋谷コロニーに突入したと思えば、ベリアルとやらが開いた殺し合いの説明会を聞かされる。
しかも見せしめとも言わんばかりに褐色肌の女の子が殺された。
この時点でフラストレーション溜まりまくりだと言うのに、いざ始まれば、あの時の際限とばかりにいきなり上空に放り出される始末。
(ベリアルって何者だ!? これも死滅回遊の一環ってことか!?)
もしベリアルとやらが羂索の協力者の一人だと仮定するも、ベリアルのあの説明で違うというのは分かる。
コガネの存在を確認する余裕もない、逸れた伏黒との合流や、日車という術師を探すことも。
まずこれが死滅回遊ではない、全く前提の違う催しというのであれば。
(いや違う。ベリアルは星晶獣という単語を出した。ということはあいつは団長の関係者(てき)ってことか?)
記憶という名のパズルのピースが綺麗に嵌る。ただの曖昧だった夢の如き残響を鮮明に思い出す。
どうして今まで忘れていたのかなど、どうでもいいこと。
少なくとも、団長の関係者(てき)とおぼしきベリアルが一体何者なのかと考えたい所だが。
(そうなったら俺だけ呼ばれたのか、伏黒たちも巻き込まれたか知らねぇけど。こうなったら団長たちを探すのが先決だ)
まずはあの団長やその関係者を探すことが最優先。死滅回遊でないどころか元の世界ですらないのなら日車のことは一旦後回し。
といいつつもこの自由落下の中で何処に着地すればいいのかという難問。
幸いにも己の肉体+前回と違って着地できる地面が下に用意されている。
(っておい、ありゃ⋯⋯?)
着地地点を何処にしてやろうかと、落下しながら思考していた所。
その目に映ったのは、人の姿と、獣人?の姿。
(あの獣っぽいのは、いやでも空の世界だから獣人とかいてもおかしくないよな。あっちの人は襲われてるのか?)
サメが襲いかかってくるだとかがよくある空の世界、そうなれば獣人ぐら居ても違和感ないと割愛しながら。
明らかに襲われている誰かを放っておけるような性質ではないが故に。
(この落下速度じゃ、考えてる時間はねぇ! 勘違いだったら後で謝ろう!)
★
「ぐえぇ!?」
「えっ、何っ!?」
自らにとどめを刺そうとした鳥の魔物が、空から降ってきた男性の急落下をもろに直撃し、潰されたカエルのような鳴き声を上げ地面に叩きつけられた姿を、ゼタは目の当たりにした。
ベリアルという弩級の危機案件。イルザ教官がかつてベリアルが関わった事件の対処に向かっていたというのは聞く。
アルベスはなく、代わりにはがねの槍が辛うじてあったまではまあ許容範囲。問題は最初に出会った他の参加者が、どう考えても人間を皆殺す気満々の黄色い鳥の魔物であることと、そいつがアルベスの槍を所持していたこと。
契約者で無いものが封印武器を使おうものなら身を焼かれてしまうというのに、おそらくベリアルがそういう事を無視して、平等に封印武器を適正関係なく一定は使えるように調整したのだろうか。
過程の話で、ベアトリクスの「エムブラクスの剣」が何処の理由の分からない奴の好きなように扱われたとなったら間違いなくベアはブチギレる。
ベアとエムブラクスの絆ほどではないが、ゼタも相棒(アルベス)が勝手に使われる事実にはどうにも怒りが込み上げた。
少し平静さを失っていたのか、武器の差もあったのか、ゼタは眼の前の魔物に追い詰められてしまい、殺されそうになったところで、先の落下しながらやって来た乱入者、虎杖悠仁。
「そこのあんた、無事か!?」
「無事っていうか実のところ⋯⋯結構ギリギリだったり」
そう気丈に告げるゼタの言葉を裏付けるように、その身体に刺さる赤い羽根。
地に膝を付けて、何とか持ちこたえているような状態。
地面に叩きつけられた鳥の魔物の方も即座に立ち上がり威嚇とばかりに羽根を広げる。
「誰かは知らないけど気をつけて⋯⋯あいつの羽根食らったら体力持ってかれる」
「この人間風情がぁぁぁ! この俺を踏んづけやがって!」
「あんたが何も悪くないんだったら謝るつもりだったけど、その様子じゃ杞憂みたいで俺としちゃ助かる」
ゼタが鳥の魔物に追い詰められたもう一つの理由。その赤い羽根は曰く相手の体力を奪う代物。
その魔物は勝ち星を妨害した乱入者に対して怒りを見せている。
だが、虎杖としては、あの鳥の魔物が「善人」ではなく「敵」なのはある意味助かった。
人をなんとも思わない、正しくは憎しみが混じった蔑みの視線。
人類という種を敵視し、見下している。
「舐め腐りやがってこのクソガキ! 一撃食らわせた程度でこのガルダンディー様に勝てると思うなよ!」
「舐め腐ってはねぇよ、ただ焼き鳥にするには不味そうだって思っただけだ」
「てんめぇぇぇっ!!!」
己をガルダンディーと名乗った鳥の魔物。
文字通り鶏冠のように怒りで顔を真っ赤に染めながら、その黄色い身体から赤い羽根を発射する。
先程ゼタが警告した「相手の体力を奪う」赤い羽根である。
それだけでなく遅れさせるように白い羽根も発射され虎杖に狙いを定め飛んでいく。
(あのガキから妙な力を感じる。念の為白い羽根を遅れて飛ばしておいたが、避けたら避けたでまあ構わねぇ)
体力を奪う赤い羽根、そして遅れ飛ばした魔力を奪う白い羽根。
乱入してきたガキから感じる不気味な力の気配を見定めようと白い羽根を放った。
それが魔力であるなら素直に作用してくれるし、魔力でなかったとしても何かを警戒して何かしらの対応をしてくれるなら接近してのこの槍で一刺し。
(さぁ、てめぇはどっちを選ぶ?)
ニヤニヤと笑みを浮かべるガルダンディーを尻目に、ゼタの忠告を受け最初の赤い羽根を拳で軽く捌く。
赤い羽根が死角となった為か、白い羽根に直前まで気付かず、背後に下がろうとして何本か刺さる。
刺さった直前に虎杖が膝を付き、ガルダンディーは勝ちを確信。
アルベスを向け、そのまま突貫。
「ッ⋯⋯!」
「勝った! 焼き鳥になるのはてめぇの方だぜ!」
膝を付いたということは、あのガキは魔力を保有していたと想定。
おそらく先の落下で五体無事寄りだったのも、魔力で身体強化をしていたものだと。
それが覚束なくなったというのなら、もうただのガキ。
ただの人間(ガキ)に、負ける道理など無いと考えてーー
「こうしたらやっぱ乗ってくると思ったよ」
「あ? ⋯⋯が、あっ!?」
ガルダンディーの突進を股抜きして避けた虎杖の拳が、ガルダンディーの土手っ腹にぶっ刺さっていた。
「て、てんめぇ、あ、がああああああああああああ!?」
そしてもう一つ。アルベスの力を完全に制御できないがゆえに、下手にアルベスの力を解放しようとしたガルダンディーの身体は燃え始めたまま、その燃焼を推進力代わりとなり、吹き飛んでいったのだ。
「⋯⋯焼き鳥になるのはあんたの方だったな」
「いや~助かった~! しかも団長と知り合いってのも運が良い!」
「騎空団にはいっぱい仲間や知り合いがいるって聞いてたけど、ほんと多種多様だよな⋯⋯」
あの団長の騎空団の仲間や関係者は、空の世界に迷い込んだ当時の虎杖悠仁が出会ったものたち以外にも沢山いる。
ミュオンというレーサーもそうであるが、このゼタという彼女もまた団長の知り合い。
「組織」に属する少女、封印武器「アルベスの槍」の所有者。
最も今は、あの黄色い鳥の魔物に借りパクされたままではあるが。
「もう何人いるかあたしだって分かんないわよ。団長とは付き合いは長い方だけど、一体何人連れ込んでるのかしらね?」
「いや連れ込んでるっていうのはどうなんだその言い方?」
「冗談よ。でもあたしはそんな団長だからこそ気にってる所もあるんだけど」
男女ひっきりなしにその魅力と性格でたらし込む、という表現は語弊を生みかねないのであるが。
その純粋さと善性とお人好しに惹かれた部分があるのも否定できないわけで。
ゼタもまた、そんな団長のことが色々と放っておけなくなった。
そういう姉貴分とか好意とかが混じった部分の上で、団長を彼女は気に入っているのだ。
「どっちにしたって団長探すのはこっちも同じなんだ。それと同じく伏黒も探したい。あいつが巻き込まれてるかはわかんねぇけどよ」
「伏黒って子はわかんないけど、団長は必ず巻き込まれてる。なんとなくのカンだけど」
ベリアルという堕天司をゼタは直接知ってるわけではない。
彼が起こした事件に上官であるイルザが事態の対応に当たっていたのは知っている。
それでも、彼がグランに対して特別な何かを求めてると言うことだけは何となく感じ取れた。
「だから虎杖も安心しなさいって。アルベスは無いけれど、頼りっぱなしってのも良くないし」
「あれ、俺の名前もう話してたっけ?」
「あ」
かつて相棒(エムブラクス)をなくしてなお文字通り不屈であった相棒(ベアトリクス)の自慢げな顔を思い出しながらも。
まだ虎杖側からは教えていないはずの彼の名前を発言したのに疑問を持たれて思わず「やっちまった」という顔に
「初対面だよな俺達、団長から聞いた?」
「あー、うん。あ⋯⋯実はさ、支給品にあんたのこと書いてあって」
虎杖側は疑いだとかではなく、単純な好奇心で聞いてきたのはあるものの。
流石に黙っていても仕方もなく、だからといって実のところ言いづらいであろう言葉を口に出す。
「⋯⋯渋谷。両面宿儺。」
「ーーー」
虎杖悠仁に宿る特級呪霊「両面宿儺」。
死滅回遊の前、新宿事変において、両面宿儺は結果として渋谷にて虐殺を引き起こした。
今この殺し合いで両面宿儺がどうなっているかなんて分かるわけがない。
この状況を愉しんでいるのか、萎えているのか、それすら分からない。
それでも、両面宿儺の行ったそれは、虎杖悠仁にとっての永劫に癒えぬ呪いである
「⋯⋯ごめん。でも、あんたが悪くないっていうのは分かってるから」
「いいや、俺のせいだ。俺が悪いんだ。俺が弱いせいで、みんな死んだんだ」
「でも、それは」
「⋯⋯あんたが俺のこと気遣ってくれるのは分かるけど。これは、「俺のせいじゃない」って理由にはいかないんだ」
乗っ取られたから、だとか単純な問題ではない。
虎杖悠仁にとってそれは自分でやったことと何ら変わりはないと認識している。
赤の他人が庇った所で、それこそ先輩に諭された程度で救いにはならない。
殺した分、呪いを祓わないと。人を助けないと。
例え、部品に成り果てようとも。
「だからさ、わりぃ」
「⋯⋯⋯」
失言だった、とゼタは心底後悔した。
理由を問われて、思わず返してしまった。
でも、その答えを聞けたことだけは幸運だった。
そして、やっぱり「そういう事が好きじゃない」というのも自覚して
「⋯⋯じゃあさ、あたしの事助けてくれない?」
「それ、伏黒のマネか? いや伏黒と出会ってねぇから偶然だよな」
「まああたしは伏黒の事知らないから本当に偶然ね」
そんな唐突な発言が、伏黒のマネだと反応した虎杖の顔がほんの少し軽くなって。
そんな重いものに縛られている彼のことをこのまま放って置くのが後味が悪いと感じてしまったからで。
「だからその代わり、あたしは虎杖の助けになるってことでいい?」
「は? いやなんでそういう話になんだよ!? いや助かるっちゃあ助かるんだけど!?」
そんな悪戯っぽく囁いた発言に、虎杖悠仁は日を見るよりも明らかに動揺する。
それでもちょっと立ち直ってくれたと思ったゼタが不敵に笑って、覚悟を秘めてこうも告げた。
「そういうの好きじゃないのよ、ってだけ」
【虎杖悠仁@呪術廻戦】
[状態]:健康、精神的疲労(ちょっとだけ)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:人を救う。呪いは祓う。
1:団長との合流が優先。伏黒とも早く合流したいけどいるのかどうか分からないのが不安
2:助けてほしいから代わりに自分も俺のこと助けるって⋯⋯いや有り難いけどさぁ
3:ーーそれでも、あれは俺のやったことなんだ
[備考]
※参戦時期は東京第1結界突入直後です
※グラブルコラボ及び虎杖&伏黒フェイトエピソードの記憶が蘇っています
※虎杖の中にいる両面宿儺の扱いは後続の書き手にお任せします
【ゼタ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康、ダメージ・中(体力消耗・中)
[装備]:はがねの槍@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1、ジャッジマンの証拠(渋谷事変)@呪術廻戦
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:団長や仲間のみんなを探す。それにいたら虎杖の仲間を探す
2:アルベスの槍は必ず取り返す
3:虎杖のことが色々と心配
4:ーーあたしはやっぱり、仲間が傷つくのが嫌なのよ
[備考]
※参戦時期は最低でも「Spaghetti Syndrome」以降
★
「くそったれがぁぁぁぁ!!!」
本当に焼き鳥になってしまうかと思い、悔しさと怒りの余り叫びを上げる。
またしても人間ごときにやられてしまった。
あの女はあのガキさえ来なければ勝てたはず。
このアルベスの槍もまだ完全に使いこなせてなどいない。
元より代償ありきだし、もし使うのならラーハルトの方が似合っているとは内心思いながらも。
「ぜってぇ許さねぇぞ人間ども」
バラン様やほかの竜騎将もいない今、人間という種への怒りのままにガルダンディーは再起する。
醜い人間どものせいで、バラン様やラーハルトがどのような目にあったか。
「殺し尽くしてやる。バラン様の代わりに、この俺が人間どもを皆殺しにしてやる!!!」
もう油断はしない、1度目や今回のようなヘマは踏まない。
今度こそ、空の竜騎将は憎悪のままにそれを誓った。
【ガルダンディー@ドラゴンクエスト -ダイの大冒険-】
[状態]:全身に火傷(中)
[装備]:アルベスの槍@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]
基本方針:人間どもは皆殺し
1:あのガキ(虎杖)と仕留めそこねた女(ゼタ)は必ず殺す
2:この槍をもっと扱えるようにしなければ⋯⋯
3:バラン様、必ずや
[備考]
※参戦時期は死亡後
『支給品紹介』
【はがねの槍@ドラゴンクエストシリーズ】
ゼタに支給。シンプルに鋼でできた槍
【ジャッジマンの証拠(渋谷事変)@呪術廻戦】
ゼタに支給。日車寛見が虎杖悠仁との戦闘にて、「裁判の第二審」においてジャッジマンから提出された「虎杖悠仁が渋谷にて大量虐殺を行った証拠」として提出された代物。
実際に記されているのは真の実行犯たる両面宿儺に関することではある。
【アルベスの槍@グランブルーファンタジー】
ガルダンディーに支給。本来ならゼタが保有する封印武器。
封印武器は選ばれた所有者でなければ身体を燃やしてしまうが、今回の殺し合いにおいては選ばれた所有者でなくとも一定の出力で使用できるように調整されてる。
それでも力を使いすぎたり、適性がないと判断されれば燃やされてしまうことには変わりはない。
最終更新:2026年03月15日 11:32