アットウィキロゴ
あれを例えるならば、きっと運命の出会いと言う他なかっただろう。
人生の伴侶と出会ったその次に、いや勝るとも劣らないその出会いは、その老夫婦は歓喜した。
竹の中から生まれた美しい姫。かぐや姫と名付けた愛娘を、神から授かった預かりものと信じて、精一杯の愛情を注いで育てた。
かぐや姫も老夫婦を本当の両親のように慕い懐き、三人は幸せな時を過ごしていた。
けれども、そんな充足した至福の日々も長くは続かない。

かぐや姫は、あの月へと帰っていったのだ。

その年の、八月十五夜を忘れることは一生ないだろう。
やってきた月の使者に、大勢の腕利きの侍達を雇い迎え撃つ筈が一切の攻撃もできず制圧され、かぐや姫はあの夜空で一際大きく輝く月の都へと、使者達と共に帰っていた。
長寿の薬を残して去っていったかぐや姫を想いながら、老夫婦は火の中にそれをくべてしまった。
愛娘のいない世界で、長生きしても仕方なかったからだ。

だから、ベリアルと名乗る天狗のような男、当時の日本の庶民層からは見慣れない容姿であったために外国人という認識すらなく、驚きはしたもののその男に殺し合いを命じられようとも、特に動じもしなかった。
若い、これまた見慣れない女性が命を落としたのは気の毒に思えたが、非力な老人にできることなどなかった。
何より、生きる活力がなかったのだろう。
命の薬を燃やし、「おまえがいないのに長生きしてもしかたがない」と嘆いていたように、老夫婦に残された寿命も短く、また未練になりそうな愛する娘も、目の前から何もできないまま消え去ってしまった。

不幸中の幸いは、バトルロワイアルが始まってからすぐに老夫婦が再会できたことだろうか。
どうせ死ぬのなら、二人一緒の方が良い。
二人は腰をおろして、夜空に瞬く月を眺めながらその輝きを浴びて、心ここにあらずといった様子で座っている。
彼らが想っているのは、やはり月の都にいるであろう自分達の娘の事なのだろう。
寂しさを抱きながら、もうじきそれも終わるのを予感して、最後に眺める光景として遠くにいる娘の姿を、瞳に焼き付けようとしている。



「……………………また、出会えるといいな」



もう一人、これまた見慣れない容姿の若い男性が、しんみりと感慨深く老夫婦に言葉を掛けた。
この若者は自分達を気遣ってくれるのだろう。
最初に出会った時、やはり当時の日本では珍しい大きな体躯に筋骨累々の肉付きを見て、畏怖を感じたものだったが、「どうした?」と穏やかに語り掛けてくれたのをきっかけに老夫婦は、かぐや姫の事を話した。
この男が殺し合いに乗っていたとして、月のかぐや姫をこんな空に浮かぶ島に連れ去ることなど出来るはずもないし、最期に誰かに身の上話をしたくなったのかもしれない。
男は静かに頷きながら、このような珍妙な語りを聞いてくれた。

「そろそろお迎えじゃな」

おじいさんが呟く。
男は立ち上がり背を向けると、右腕を伸ばし開いた手には光が収束していくのが見えた。
あれが何なのかは、老夫婦には分からない。分かりやすい刃物のような凶器とは異なるが、それでも自分達の命を奪い去るものである事は想像に難くない。
恨みはなかった。ベリアルなる男のせいで、最後の一人にならなくては生き残れない以上、この男が殺し合いに乗ったのは致し方ないことだ。
むしろ、年寄りの戯言を最後まで真摯に聞いてくれたことが有難いくらいだった。
支給品というのも、中身を確認していなかったが、この男が有意義に使ってくれるのなら、持っていってもらって構わない。

二人は笑みすら浮かべて、振り返った男が掬い上げるように投げる光に照らされ、穏やかな死に顔で長い人生に幕を下ろそうとし──────



デデーン!!



老夫婦に向かっていく光弾は、突如として軌道を変える。何かと二人は思った。
もしや、こんな老いぼれに同情して殺すのを躊躇ったのだろうか?
そんな必要はない、そう声を出そうとして、二人は言葉に詰まる。
光弾は天高く空に舞い上がり、それは月を貫く。その次の瞬間、この世界から月という惑星は爆破し消滅したのだった。

老夫婦は瞠目して、息を呑む。

これは、夢を見ているのだろうか。狐に騙されてやしないか。

おばあさんが腰を抜かして、それからようやく震えた声を喉から絞り出す。


「お……鬼じゃ……」

「鬼……? 違う。オレは……悪魔だ」


この男は、自分達に同情などしていなかった。今こうして口角を吊り上げて笑うのを、ずっと堪えていたのだろう。
愛する娘が住まう場所を、破壊したらどんな表情をするのか想像して、心の中でほくそ笑みながら。
まさしく鬼のような、あるいは自称する悪魔のような残酷な男。
そんな男に、かぐや姫の事を話してしまった。話したところで、どうにかなるものではないだろうと、口を滑らせた。
死ぬはずだったのは自分達だけだった筈なのに。

二度と会えないどころか、もうこの世にすらいない。
老夫婦が、かぐや姫の事を話してしまったばかりに。


──────せめて、向こうでかぐや姫に……。


二人は手を繋いで踵を返し、悪魔に背を向けた。支給されたデイバックすら放置して、島の縁へと歩んでいく。
そして悪魔の視界から、老夫婦の姿が消えた。その数秒後には、ボンっと小さな爆破音が二つ重なって響き、肉が焼ける匂いが漂う。


「馬鹿な奴らだ……」


悪魔……ブロリーは、せせら笑った。


──────ただの道具もあるかもしれないが、色んな世界から調達してきたものでね。


ベリアルは、さも複数の世界が存在するかのように話していた。
そして、老夫婦の話す平安時代の日本はブロリーにとって、まさに異世界である。
月が一つ、そして重力も軽い。
この浮遊大陸が地球である可能性は極めて高いが、もし、あの老夫婦がいた地球とは別の、並行世界の地球だとしたら。


「謝れるといいなぁ……」


ブロリーが破壊したあの月には、手塩にかけて育てたかぐや姫など、最初からいないのかもしれない。
特に、戦闘力に制限を受けているブロリーは、現状では惑星を破壊できる力などない。
それなのに、あれほど脆く壊れたあの月は本物ではなくレプリカである可能性があり、ブロリーはそう強く確信している。
きっと、元の世界でかぐや姫は、今もあの自ら命を絶った老夫婦の事を想いながら、生き延びているに違いない。



「”あの世”で」



何も知らずに。



「フ……フフ、フフ……ワッハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」



ギュピギュピ……と、幼児用サンダルのような足音を立てながら、ブロリーは歩みだす。
バトルロワイアルにある全てを、ベリアルすらも破壊し尽くすために。




【おじいさん@まんが日本むかしばなし 死亡】
【おばあさん@まんが日本むかしばなし 死亡】

【月@蒼空ロワイアル 消滅】




【ブロリー@ドラゴンボールZ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3~9(おじいさんとおばあさんの分込み)
[思考・状況]
基本方針:全てを破壊し尽くす。
1:カカロットは必ず殺す。
[備考]
※参戦時期は「燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦」終了以降です。
※戦闘力が著しく制限されています。細かい制限は、採用された場合に後続の書き手さんにお任せします。
最終更新:2026年03月15日 11:59