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御金賀アリスは、恐怖していた。
突然爆弾付きの首輪をつけられて殺し合いを強制された上、目の前で人が死ぬのを見せられた。
大富豪とはいえ一般人の範疇である彼女がそんな経験をすれば、恐怖するのは当然のことだ。
だが恐怖の原因は、それだけではなかった。
ゲーム開始からものの数分で、NPCと遭遇してしまったのである。
それは、熊だった。
出展などは特にない、現実にいる熊である。
何せ2025年は、日本各地で熊による被害が社会問題と化していた。
ベリアルがそれに影響を受けて、NPCに熊を起用した可能性は否定できない。

まあここに熊がいる理由など、アリスにとってはどうでもいい。
彼女には、目の前に迫る命の危機が全てだ。

「だ、だ……誰かーっ! 助けてーっ!」

恐怖にのまれながらも完全に屈しなかったのは、名家の明日を背負う者としての自負ゆえか。
アリスはこわばる体を強引に制御し、精一杯叫んだ。
その行動が、必ずしも良い結果につながるとは限らない。
バトルロワイアルという状況下では、危険人物を呼び寄せてしまう可能性も低くない。
だがこの瞬間においては、天は彼女に味方した。

「任せろっ!」

救いを求める声に応じ、一人の青年が駆けつける。
自分なら必ず助けを求める人を救えると言わんばかりに、青年は不敵な笑みを浮かべていた。
実際、薄着の上半身からのぞく筋肉は、凡人よりはるかに鍛えられたものだ。

「って、熊ぁ!?」

しかし戦うべき存在を認識した瞬間、笑みはあっけなく消え去る。
彼もアリスと同じく、カテゴリーとしては一般人。
熊の存在は、非日常である。

「くっ、人間相手ならそうそう負けない自信はあるが……。
 熊が相手じゃ分が悪いぜ!」
「そりゃ普通はそうですわよ!
 助けに来てくださったのは嬉しいですけど、早く一緒に逃げましょう!」
「まあ待ちな、お嬢ちゃん。
 俺は、勝てないとは言ってないぜ。
 素手では無理でも、武器があれば!」

アリスにそう返した青年の顔には、すでに余裕が戻っていた。
その手にはいつの間にか、朱色の棒が握られている。

「武器って……その棒きれ1本ですの!?」
「ただの棒じゃないんだなあ、これが!」

力強く大地を蹴り、青年は熊に向かって走って行く。
両者の距離は縮まっていくが、まだ打撃が届く距離ではない。
にもかかわらず、青年は棒を振り上げた。

「伸びろ、如意棒ーっ!」

アリスは、我が目を疑った。
青年の叫びと共に、棒がみるみる長くなっていったのだ。
それにより届くはずのなかった棒の先端は、したたかに熊の脳天を打ち付ける。

「が……」

悶絶の声を一つ残し、熊はその場に倒れ込んだ。

「ざっとこんなもんよ!」
「すごいですわね……。音声入力で伸縮する仕組み……?
 どんな技術なのかしら」

得意げに胸を張る青年をよそに、アリスは如意棒を興味深そうに見つめる。

「あっと、私としたことが……。
 お礼もまだでしたわね。
 助けてくださり、ありがとうございます。
 私、御金賀アリスと申しますわ」
「いいってことよ! 困った時はお互い様だからな!
 俺は雲童塊だ!」
「うんどうかい……。スポーツが得意そうな名前ですわね」
「そっちは、お金持ちっぽい名前だな」
「…………」
「…………」

なんとなく、微妙な空気が二人の間に漂う。


「おっと、こんなことしてる場合じゃない!
 たぶん、熊はまだ死んでない。
 目を覚ます前に、ここから離れないと」
「まあ! たしかにそれは急がないといけませんわね」

その場からの移動を開始しようとする二人。
だがそれを阻むように、その場に銃声が響いた。

「っ!」

突然の物騒な音に、アリスは立ちすくむ。
銃弾は、彼女の着る制服をわずかにかすめて飛んでいった。

「ちっ、外したか……。
 補正も何もない、原始的な銃……。おまけにこの暗さではな……」

そうつぶやきながら、銃弾を放った本人が姿を現す。
それは、わずかにヒゲを蓄えた外見年齢30歳ほどの男性だった。
顔立ちも服装も整ってはいるのだが、どこか古くささを感じさせる出で立ちである。

「何だ、おまえは! 銃なんて、その、あれだ……。
 卑怯だぞ!」
「何を生ぬるいことをほざいているんだい、君は。
 ここは殺し合いの場だよ?
 卑怯も何もあるものか」

貧弱な語彙で抗議する塊だったが、その言葉は男に一蹴される。

「光栄に思うといい。
 このワルサー様が、直々に殺してあげるんだからね!」
「ワルサー……。悪さをするんですのね!」
「絶対悪いやつだな、おまえ!」

ワルサーと名乗った男のこめかみに、血管が浮かぶ。
本人としてはかっこよく決めたつもりが素っ頓狂な反応をされ、そうとう頭にきたらしい。

「何という単純な思考……。
 私にたてついた地球人共といい、これだからレベルの低い星の人間は……。
 地獄で自分たちの浅はかさを後悔するがいい!」

怒りに声を震わせながら、ワルサーは改めて銃を構える。
だが次の瞬間、その場に響き渡る低いうなり声が空気を変える。

「やばい!」

塊はすぐさま、それが意識を取り戻した熊のものだと気づく。
銃を持った危険人物を前にしながら、熊の相手もするのは難しい。
即座にそう判断した塊は、アリスをお姫様抱っこして全速力で逃げ出した。

「あっ、待て!」

逃げる塊に向かって発砲しようとするワルサーだったが、その前に黒い巨体が立ちはだかる。
熊が、ワルサーをターゲットと認識したのだ。

「ぐぐ、さすがに拳銃一丁では……。
 いや、この私が獣ごときに恐れをなすわけには!」

プライド故に逃走という選択肢を放棄したワルサーは、熊に向かって拳銃を連射する。
銃弾が熊に当たるたびに血が噴き出し、苦悶の声があがる。
だがそれでも、熊は止まらない。
着実に、ワルサーとの距離を詰めていく。

「く、来るな!」

ここまで追い詰められてようやく命の危機を実感したか、顔中に冷や汗を浮かべてワルサーは叫ぶ。
すでに拳銃は弾切れ。反撃の手段はない。
ワルサーは素手で熊と渡り合えるような、超人的な身体能力は持っていないのだから。

何発も銃弾を浴びてふらつきながらも、熊は猛烈な勢いで右腕を振るう。
その腕は偶然か必然か、ワルサーの首輪を叩いた。

「あ……」

ワルサーの口が意味のある言葉を紡ぐ時間すらもたらさず、首輪は彼と熊を巻き込んで爆発した。


◆ ◆ ◆


「おいおい、何だよ今の爆発音は……。
 とっとと逃げて正解だったな」

夜の闇の中を走る塊は、自分たちの北方向から響いてきた音に反応し、そう口にした。

「あの、塊さん……」
「何?」
「そろそろ、下ろしていただきたいのですが……」

若干顔を赤くして、アリスが言う。
だが、その思いは塊に届かない。

「だってアリスちゃん、俺より速く走れないだろ」
「いや、それはそうですけど!
 誰かに見られたら、恥ずかしいじゃありませんの!」
「死ぬよりはましだろ! 我慢してくれ!」

大声で叫ぶと、塊は走る速度をさらに上げる。

「ああ、もう……」

扱いの難しそうなパートナーに、アリスは複雑な表情を浮かべるのだった。


【雲童塊@ハイスクール!奇面組】
[状態]:健康
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:生き延びる
1:これも何かの縁だ。アリスちゃんは俺が守るぜ!
2:体力には自信があるが、それだけじゃきつそうだ……

[備考]
※参戦時期は高1の時期のどこか


【御金賀アリス@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:生き延びる
1:少し不安だけど、今は塊さんに頼るしかないわね……

[備考]
※参戦時期は、単行本10巻終了時点



【ワルサー@空想科学大戦! 死亡】
※ワルサーP38@ルパン三世、およびその他のワルサーの支給品は、その場に放置されています


「支給品解説」
【如意棒@ドラゴンボール】
少年時代の悟空が愛用していた、打撃用の棒。
伸縮自在なのが最大の特徴で、原作では月まで伸びたこともある。
このロワにおいては、さすがにそこまで伸びることはできない模様。
本来は武器ではなくカリン塔と神の神殿をつなぐための道具であり、それが巡り巡って悟空の手に渡っていた。
そのため本来の用途に戻されてからは武器として使われていないが、劇場版やゲームではその限りではない。


【ワルサーP38@ルパン三世】
ルパン三世が愛用する拳銃。
元はドイツの軍用拳銃であり、第二次世界大戦で大量に使われた。
最終更新:2026年03月15日 12:00