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そうか、僕は――俺は負けたのか







五指を見下ろし、握っては開いてを繰り返す。
健常者たる人間が生まれながらに持つ、生きるために必要不可欠な部位。
『本来』の自分には無かったソレは、何の問題もなしに動かせる。

暫し空気を掴む作業を行った後、自身の顔へ持って行く。
頬に触れれば、生命特有の生温かさ。
自分が生きてこの場所にいる、何よりの証拠。

毛髪、五本の指、肌色の皮膚、二つもある目。
よもや、『本来』の姿じゃあなくて。
地球人の皮を被った姿に、一種の安堵を覚える日が来るとは思わなかった。

「本当に、生き返ったのか……」

全身を駆け巡る膨大な熱。
細胞一つ一つが悲鳴を上げ、元の形を失っていく感覚。
子供がビリビリに破いた紙のように、思考すら引き裂かれる恐怖。
全ての生命に必ず訪れる、逃れる事叶わぬ終焉。
あれこそが、死だ。

同胞達が味わった苦痛が自分にも降り掛かり、朽ち果てた。
命がたった一つしかないのは、誰だってそう。
ああすればこうすればと、悔やんだ所でやり直しの機会は訪れない。
だが自分は、その奇跡に等しいチャンスを手に入れた。
いや、この場合は施しを受けたと言うべきか。

ただ一人が生き残れる蟲毒にて、勝者を目指す。
さすれば帰還のみならず、願望成就の権利も与えられる。
地球全土の侵略を目論む自分達からすれば、余りにもちっぽけなスケール。
用意周到な計画で事を進めて来た為か、シンプル過ぎて逆に困惑もある。
なれど、死者の蘇生を可能にする力を我が身で知ってしまえば。
首輪を填められ利用される屈辱以上の、魅力を感じざるを得ない。

(だがもし、仲間やあのお方も参加していたら……)

人間達を何人殺そうと、咎める良心は持ち合わせていないが。
同胞や、自分達を率いる王までもが巻き込まれている場合。
馬鹿正直に優勝を目指す訳には、いかない。

今すぐ他の参加者に誰がいるかを知れるなら、それに越した事はないといっても。
リュックサックを探り、デバイスを動かしたが情報はゼロ。
肝心な部分を教えないでどうするのかと、不親切な運営者に顔を顰める。

とはいえ、『殺し合い』に必須となる物は当然の如く寄越すらしい。
参加者共通のデバイスとは別に、ランダムに与えられる道具。
赤と黒を基調にした機械の、ブレード部分を展開。
内部に備わったスロット部分へ、三枚のメダルを装填。

『Zetton.』

『Pandon.』

『Maga-Orochi.』

流暢な発言の電子音声が告げる、三つの名前。
ここではない、どこかの宇宙で。
地球に危機を齎し、果てに守護者たる戦士に討たれた怪獣の力を一纏めに。

「さあ、早く闇の力を貸してくれ」

『Zeppandon.』

新たな自分へ生まれ変わるように、姿は一変。
衣服を纏った体は黒々とし、胸部には黄色い光を発する部位が出現。
両肩の突起に始まり脚部、側頭部を覆う溶岩に似た色の体表。
頭部も人とは全くの別物、深海魚の如き不気味さ。
ブレードを思わせる爪を振るえば、地面諸共木々を大きく削り取った。

「ハハ……」

今の自分の姿を見れないのが、残念に他ならない。
鏡に映らない種族というのも、困ったものだ。

「ハハハ……!」

元々、人間以上の膂力や打たれ強さを持つ身なれど。
この力は明らかに、自分達の種族を凌駕する力を宿している。
地球人が兵器を持ち出し束になったとて、逆に殲滅へ追いやるのだって可能だろう。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

そして何より、アイツだって殺せる。
滅ぼされた同胞の無念を火炎に籠めて、アイツに灼熱地獄を味合わせ。
死体も残らぬ末路を、この手で与えることだって――

「――――ハァ」

ピタリ、と。
高笑いを止めた顔は、おぞましい怪獣のままであるも。
深く深くため息を零し、人間の皮を被った見た目に戻る。
浮かべた表情に歓喜や高揚はなく、ただ自らを嘲笑い。
不甲斐なさへ憤るような、複雑極まるモノが貼り付けてあった。

「こんな物に頼らなければ、チャージマン研には勝てないのか……」

忌々し宿敵の名を口に出せば、思い浮かぶのは散っていった同胞達の顔。
子供宇宙ステーションでの、人質の大量確保。
気象ミサイルを用いた、光源を奪い奴の力の完封策。
50年もの時間を掛け、殺人蝶の一斉解放による大虐殺。
その全てをご破算に変え、作戦の悉くを無に還した少年。
泉研……チャージマン研こそ、地球侵略における最大の障害だ。

自分もまた、あの少年に敗れた内の一体。
顔を偽り、同い年の人間として奴に接近し。
一騎打ちの果てに、熱線の餌食と化し焼き殺された。

肉体がグズグズと溶け出し、完全に死ぬまでの僅かな猶予で。
己の弱さを恨まずにはいられなかった。

自分がチャージマン研を倒せていれば、同胞達は地球侵略を完遂出来た筈。
偉大なる王が率いる、我らジュラルの民がこの先も。
チャージマン研との死闘を繰り広げ、一体どれ程の同胞が力尽きるのだろうか。
刺し違えてでも奴を仕留める事すら出来なかった己の、何たる無能なことか。
やり直しの効かない一度きりのチャンスで、何一つ為せなかった自身を罵り。

そうして現在、チャージマン研を殺せるやも知れぬ力が手に入り。
だというのに喜びは、呆れる程に萎みつつあった。

もしもこの未知の機械が、ジュラル星人の科学力の結晶であれば。
或いは、自分自身の強さによるものだったとしたら。
何の憂いも抱かず、むしろ誇らしさを覚えた筈。
ジュラルの魔王直々に手渡され、チャージマン研の抹殺を命じられた場合でも。
疑問を挟む余地はなく、使命遂行に集中できた。

しかし現実には、ベリアルとか抜かすどこの誰とも知れぬ輩に。
遊び半分の施しで、強大な力を渡された。
ジュラル星人の使命も何も関係無い、殺し合いの駒の一つとして動けという。
そんな理由一つで、だ。

確かな脅威ではあれど、本来自分達と何の関りもない力が手に入って。
チャージマン研への勝機を見出す、それはつまり。
地球よりも500年進んだジュラル星人の文明では、奴に勝てないと。
得体の知れぬ輩の手を借りねば、自分達は地球人の子供一人にすら勝てないと。
そう自ら敗北を認めたのも、同じじゃあないか。

弱い、情けない、不甲斐ない。
みっともなくて、無様で、悔しくて堪らない。

自分達の主は、感情を捨て去る事がジュラル星人のモットーと公言した。
絶対的と崇めるお方の言葉を、疑うつもりは微塵もない。
ただ今になって、魔王たる彼の言葉はやはり正しかったのだと。
改めて、実感している。

「魔王様、あなたが仰った通りです。僕は……」

いっそ、自我を持たない兵器であれば。
ジュラル星人に歯向かう者どもを、滅ぼす事だけが存在全ての機械であったら。
こんなものを考える必要も、なかったろうに。

不要な筈の感情に足を引き摺られ、一喜一憂する様はまるで。
酷くありふれた、ちっぽけな人間のようだった。


【星くん@チャージマン研!】
[状態]:健康、鬱屈とした思い
[装備]:ダークゼットライザー+アクセスカード+怪獣メダル(ゼットン、パンドン、マガオロチ)@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]:優勝し、地球侵略の悲願を叶える
1:魔王様やジュラルの同胞達がいるのか確かめたい
2:チャージマン研は今度こそ仕留める
[備考]
※参戦時期は死亡後。


『支給品解説』

【ダークゼットライザー@ウルトラマンZ】
ヘビクラ・ショウタがウルトラゼットライザーを媒介に生み出したコピーアイテム。
アクセスカード及び、三枚の怪獣メダルとのセットで支給。
メダルのスキャンで怪獣に変身可能であり、付属した三枚を使えばゼッパンドンになれる。
制限として、変身後のサイズは等身大にまで縮められている。
最終更新:2026年03月24日 19:02