己の生が再び現実に降り立ったことを自覚したその直後のこと。
燕結芽という少女は殺し合いに乗ったある青年に襲われた。
しかも襲いかかってきた理由が言ってしまえば「苛立ちの八つ当たり」だとのこと。
別の理由自体はどうでもよかった、それはムカつくのはムカつくというのは確かであるものの。
それ以前にまた戦える機会が訪れたという喜びと、何故か蘇ってしまったという困惑はあれど。
そんなモヤモヤを早々に解決してくれる相手が向こう側から来てくれたことに。
「どーしたのかなお兄さん? 思ったより弱くてつまんないんだけどー?」
「ハッ、生意気なガキめ」
適当に打ち合った結芽が、襲いかかってきた男に対しての感想は「普通」。
手足から黒い炎を自在に出して闘うという、まるでサーカスの見世物みたいなのには驚いたものの。
その実、戦ってみたら意外に普通というか、普通に戦変える程度には、ぐらいである。
それ以上の面白みもなければ、驚かせてくれるような相手でもない。
にっかり青江ではないものの、皮肉にも御刀ではないが『雷切』の名を持つ刀剣が手にあり、それで戦えてしまう程に
(まあこんな挑発はしてみたけど、まーだ底が見えてないんだよねぇ)
「オレが弱いなどと、たかが人間風情でほざくか」
とは言ったものの、相手の偉ぶった態度、おそらくは不相応の粋がりというわけではない。
少なくとも彼の扱う黒い炎は、ノロとは全く違う不気味な何か。
神力にも似て非なる、神力がそのままノロに変貌したような。
神聖さと邪悪さが同伴した不気味さを、この青年は併せ持っている。
「じゃあ弱くないって証明できるぐらいに頑張ってくれると嬉しいんだけどねっ!」
「ならお望み通り見せてやるっ!」
下から上へと斬り上げる一撃、そして男の黒い炎が鍔迫り合う。
男の不可解な力に対抗できるのは『雷切』の力もあってのうえか。
いや、ただ男の実力がそこまででもない、からか。
滑り込むように身体を崩し、今度は足を狙う結芽の一撃を、今度は炎を足に纏わせ防ぎ、男は距離を取った。
「こいつならどうだっ!」
男が手のひらに黒い炎を少し貯め、放たれるは一回り大きい炎の球体。
ただし直線の軌道で分かりやすく、結芽の駆け抜けの一閃で軽く切り裂かれる。
勿論そんな単純一手で終わるわけがないと、全方面に警戒は怠らなかった。
「ごほっ⋯⋯! ⋯⋯はは、流石にただで、ってわけには行かない、かぁ」
吐血。赤黒い血が結芽の口から零れ落ちる。
蘇ってなお、この身を蝕む病魔は未だ結芽という少女の中に坐したまま。
その強さの代償と言わんばかりに突き刺さる。
「ーーなるほど、手を抜いていたか」
「⋯⋯っ!」
そして、悪寒がするほどに気持ち悪い粘ついたような声。
今まで結芽には明かさなかった転移。この場では短距離の転移しか出来ぬものだが。
それでも戦闘内において攻撃の回避に、相手の不意を打ったり程度の事は出来る。
「あがっ!?」
追い打ちを掛けるかのように、結芽の胸元を蹴り上げる。
血反吐が空を舞い地面を汚す中で、その血反吐を更に転移して回避、結芽の上空に
「いや、違うな。『使いたくない』だけとは、宝の持ち腐れとは笑えるなぁ」
その台詞の直後に、急降下した男の足が、文字通り結芽の頭を地面に叩きつけた。
地面に多少の罅が入る、それほどの衝撃をその身に受けた結芽の頭部からは血が流れ落ちていた。
「⋯⋯何だ、お前の方が弱いじゃないの? まあ病人だからか? 何勿体ぶって「力」を使わないわけ?」
「あんたに、何が⋯⋯私の何がわかるの⋯⋯っ」
見下ろしながら嘲り、蔑む男の言葉。別にそれまでは兎も角、男は結芽が「ノロ」の力を使っていない事に途中から気づいていた。それがあればまだマシに戦えたはずなのに、と。
その言葉は結芽を怒らせるに十分、いや結芽はその力に頼ることだけはしたくない
「それは私の力なんかじゃないっ⋯⋯私が、私自身じゃないとだめなんだからっ⋯⋯!」
誰かから与えられた力、あくまで病弱な自分が生きるための手段。
ノロなんかに頼らず、己の力で存在を示す。
余命短い彼女が、世界にその痕跡を刻むために。
「私がやらないと、私の力で、そうすれば、みんな私のことを覚えてくれる、から⋯⋯!」
「⋯⋯⋯⋯つまんないやつだな。そんな意地張った所で、誰にも見てもらえなかったら意味ないんじゃないか?」
結芽のその言葉にだけ、男は嗤わなかった。
それを嗤えば、己を犠牲に男自身の存在を消したいけ好かない『奴』に負けた気分になるから。
が、嗤わないのは、その言葉だけだった。
存在の証明。それに伴う『己の力』のみでの証明。
男にとってはーー斎祀にとっては。
心底、どうでもいいこと。
だからこそーーもっと残酷な思いつきを実行することにした。
「ーーそうだ、使わないんだったらオレが貰おうか」
「貰うって⋯⋯ッ?」
斎祀が歪んだ笑顔を見せたと思えば、『掠め取る』ように結芽の身体を炎を纏った手刀で軽く切り裂いた。
切り傷自体は無い、ダメージが無い用に見えた。
「ただの虚仮威し」かと思い、結芽がようやく動くようになった身体を起こそうとしてーー
「あ⋯⋯ご⋯⋯ごほっ⋯⋯! ごはぁっ⋯⋯⋯!?」
先程よりも多く、血反吐を撒き散らした。
その血は運悪く斎祀の履いている靴の先端を赤く染める。
簡単な話、斎祀は燕結芽からノロの力を奪ったのだ。
斎祀の子孫たるアッシュ・クリムゾンは、その力を以て神楽ちづるの三種の神器の力を奪い取ったことがある。
子孫に出来た事が斎祀に出来ないはずもない。
力の強奪、それが斎祀という存在が持ちうるアドバンテージの一つ。
生命活動の補助と病状の抑制を担っていたノロが失われたことで、結芽の病状は急激に悪化する。
身体が重く、胸も喉も苦しい。
「おい、誰が俺の靴を汚して良いと許可した?」
それ以上に、「自分の靴を汚された」斎祀の怒りが、今の結芽に向けられた。
「ゴミがッ!」
苛立ち混じりに、顔面蒼白な結芽の土手っ腹を蹴り転がし、風に飛ばされる小石のごとく転がっていく。
「がっ⋯⋯ごっ⋯⋯!?」
血が撒き散り、燕結芽は醜態を晒す。
地面に叩きつけられた時のダメージも相まって、まともに立ち上がれる状態ではない。
それでも刀を離さなかったのは、刀使としての矜持か、燕結芽としての本能か。
「あ゛⋯⋯あ゛っ⋯⋯⋯ま、だ、わた、じ、は⋯⋯⋯!」
それでも、雷切を杖代わりに立ち上がろうとしていた。
ノロの力を失ったのはまずいが、逆に言えば不純物がなくなったので「自分の力」だけで戦える。
が、それでもダメージや病状の悪化が致命的過ぎるのだ。
「ゴミだな」
だから、斎祀そう吐き捨てる。
既に死に体。頭から血を流し、足元すら覚束ない少女。
いつでも殺せる、今でも殺せる。
そうだ、まだ立ち上がるというのなら、殺し合いに巻き込まれた憂さ晴らしのサンドバッグにでもなってもらおう。
そう、斎祀が彼女への良い嬲り方を考え始めた所で。
「ざぶーん!」
「は?」
まるで、大海が押し寄せたか如く。
津波が襲いかかった
いや、水のない場所で津波が起こっているだとか、本来ならおかしすぎる事態などどうでもいい。
それを起こせる参加者が一人や二人ぐらいいてもおかしくのないのだから。
問題はーーそれを燕結芽ごとではなく、自分だけを狙った津波であること。
指向性を持った、明確な意思を以て自分のみを攻撃しにやって来た水が、そこにあった。
「ーーものは試しにちょうどいいか」
ふと、先程の女から奪った力の試運転にはちょうど良いと。
両手のひらから、黒い靄ーーノロを出現。
それを両手に装甲のように纏わせ、刃の形へと変化。
「ほらっ!」
黒い呪いの斬撃が、襲いかかる津波を引き裂き、霧散させる。
裂かれた津波の向こう側の景色、杖を携えた、先の刀の少女よりも小さな少女が一人。
雰囲気からしても、緩い。まるで、揺蕩う海月のように、純粋な力の塊のようにも。
内包するその力は、全く緩くなどなかった。
(あのガキーーオロチと似た類か)
ただの人類よりも、ランクが2~3段階上。
人類ではなく地球という命の判断材料として動くあれと酷似した存在だろう。
あんなものまで参加者としているとなれば、流石に話は別になる。
(ーー気に入らねぇ)
正直、目の上のたんこぶだ。
巻き込まれただけでもムカつくというのに。
あんな規格外まで来てるのは、つくづくベリアルとやらは埒外というやつだろう。
(今なら、殺れるか? ーーいや、殺るか)
今なら出来るか? という慢心か、自信か。
自信の黒い炎とノロを混ぜ込んだ、黒い槍を生成。
気付かれない内に、狙いを定め、投擲。
(くたばれ、オロチもどきのガキがーー)
「⋯⋯⋯⋯ほーい」
投擲されたそれは、少女から伸びたクラゲの触手のようなものに、軽く弾き返された。
弾き返されたそれを、直前でガードした斎祀諸共、その身体を吹き飛ばしたのだ。
「な、なにぃぃぃぃーーゴバッ!!!!!!!!!!!!!!!???????」
☆
空の世界に、元素を保つ六つの竜がいる。
その内の一体が、この可愛らしい少女にしか見えない彼女。
斎祀を追い払い、燕結芽を助けたこの彼女が。
「六竜」が一体。「碧」。
水の理、ワムデュスである。
「うーん。ちから、うまくつかえない。⋯⋯でも、この女の人、この杖のお陰で、いまのワムでも、治療できる」
星晶獣コスモスの代行者の一体が殺されるという緊急事態。
そしてかつて空の世界を巻き込んだ事件の元凶の一体であるベリアルが開いたこの殺し合い。
自分まで巻き込まれ、六竜としての力は制限が科せられた。
事態の終結、そして特異点を探していた最中にこの戦いに巻き込まれた。
多少ワムデュスが乱暴に助けた形になったのは、斎祀の危険性を正しく理解していたから。
あの黒い炎には簒奪の力がある、奪われる前に徹底的にアウトレンジというか物量で押しつぶしてやればいいかというわけで。
黒い槍には少し冷や汗なったとはいえ、まだあの段階ならどうにでもなった程度。
撃破までには至らず、それでもこの少女(燕結芽)が死ななかっただけでも良しとした。
「⋯⋯⋯」
「ついでに持病っぽいのも治したし、安静にしたら勝手に目覚めるかも」
現状の燕結芽は、ワムデュスに助けられたのがトドメになって気が抜けたのか、糸が切れたかのように気を失った。
傷の方は支給品の助けもあってか何とか治療できたし、目覚めるまではそっとしておくのが良いだろう。
「⋯⋯⋯この娘の友達も、探した方がいいかも。でも特異点も心配。ワム、どっち選ぼうかな」
それはそれとして、特異点探しか、彼女の知り合い探しか。
ワムデュスはまずそっちで悩むことから始まった。
【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:気絶中、ノロ喪失、(ダメージ治癒済み)
[装備]:雷切@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]
基本方針:ーーー
1:ーーー
[備考]
※参戦時期は死亡後
※ワムデュスの処置によって持病は治りました
※斎祀によってノロの力を奪われました
【ワムデュス@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康、消耗(小)
[装備]:いやしのロッド@ファイナルファンタジーⅨ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]
基本方針:ベリアルの野望止める、ワム頑張る
1:特異点早く見つけたい。でもこの娘の知り合いも探したい。ワム、どっちにしようかな
2:ちから、うまく使えない。この首輪のせい?
[備考]
※参戦時期は最低でもLimited版フェイトエピソード2の後
※殺し合いが崩壊しない程度に制限が科せられています。少なくとも六龍としての姿になることは出来ません
☆
弾き返された自分の攻撃を防いだはいいが、こんな所まで吹き飛ばされてしまった。
こうなってしまえばもうこの殺し合いは舐めた態度ではいられない。
さらなる力と、体よく利用できる手駒が必要だ。
あの女から奪った力だけでは足りない、もっと力を得なければ。
「ーー殺す、あのガキは絶対に!!」
【斎祀@KING OF THE FIGHTERSシリーズ】
[状態]:消耗(中)、ダメージ(小)、怒り(大)、靴のつま先に血痕付着
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:利用できるやつ以外は最終的に全員殺す
1:あの地球意思もどきらしきガキ(ワムデュス)は絶対に殺す
2:あの女(燕結芽)は⋯⋯まあどうでもいい
3:もっとだ、もっと力を付けなければ
[備考]
※参戦時期は消滅後
※燕結芽からノロの力を奪いました
『支給品紹介』
【雷切@グランブルーファンタジー】
燕結芽(アニメ版)に支給。
柄を握る持ち手の掌から伝わる気によって切れ味が変化する難解な刃を持つ、熟練者向けの一振り。涼やかな青刃に纏う雷が美しい。
【いやしのロッド@ファイナルファンタジーⅨ】
ワムデュスに支給。
「アレクサンドリアはじまって以来の美姫」と称されるガーネット・ティル・アレクサンドロス17世が装備するロッドの一つ。装備者は治癒系の特技・魔法が習得可能となる。
最終更新:2026年03月19日 01:47