アットウィキロゴ
「うわああああああああああああん!!ああああああああああん!!」

 幼い少女が、泣き叫んでいた。

「くく……くはははははははは!!そうだ!!この感覚だ!!この殺し合いは俺にこそ相応しい!!」

 白い鎧を来た男が、狂った笑い声を上げていた。

「ママああああああっ!!パパああああああっ!!」

 少女の前に、二人の男女が折り重なるように死んでいた。
 もはや骸となった二人は、少女――市原仁奈の両親だった。

【市原仁奈の母@アイドルマスターシンデレラガールズ 死亡】
【市原仁奈の父@アイドルマスターシンデレラガールズ 死亡】



§



 家族全員が殺し合いに巻き込まれて、偶然三人で合流できたのは奇跡と言ってもよかっただろう。
 そこに、殺し合いに乗っている狂人がいなければ、の話しだが。
 家族の無事を喜び会っているところに現れたのは、マントの付いた物々しい鎧を身に付けた男。
 凶悪な笑みを浮かべており、明らかにまともな人間ではなさそうであった。
 その結果が、これだ。

 所詮仁奈の両親は、何の能力も持たない一般人でしかない。
 それでも、愛する娘を守ろうと奮闘した。
 しかし、この男――ルカ・ブライトの前では、一太刀の元に斬り伏せられてしまったのだ。

 ハイランド王国の皇子にして白狼軍の第一軍団長。
 その残虐非道さから狂皇子と呼ばれながらも、武勇と軍略両面において隙のない武人。
 そんな戦乱の世の只中に生きる男の前に、力なき両親の愛は無力でしかなかった。

「えぐっ、ぐしゅっ、うわあああああん……」
「ふふっ、くくっ、くはははは!!貴様らが斬られる瞬間の目……なかなかに滑稽だったぞ!!戦場の血……悲鳴……苦痛……そして絶望!それだけが俺の渇きを癒してくれる……!!」
「うわああああん……ママぁ……パパぁ……目を開けてくだせー……仁奈を一人にしちゃだめでごぜーます……!」

 ルカは禍々しい大剣を片手に、恍惚とも取れる笑いを上げながら、倒れたまま動かない両親を前に泣き続ける仁奈に目を向ける。

「ふん……後はこのガキだけか。キィキィと耳障りな声で鳴きやがる……」
「……ひっ!」

 ルカの獰猛な猛獣の如き目に仁奈は怯み、尻もちをついて後ずさる。
 本能的に悟る。この男は、仁奈をパパやママと同じように斬ろうとしていると。
 仁奈は恐怖で小鹿のように震え、ルカを見上げることしかできなかった。

「あ……あ……あああ……!!」
「喜べ!!今こいつらと同じようにしてやる……その血で殺し合いの場を彩るがいい!!」
「こないでぇぇぇ……こないでくだせぇぇぇ……」

 まだ動いていた仁奈の両親は、ルカにどうか娘の命だけは、と懇願していたがそんなことは狂皇子ルカ・ブライトにとっては取るに足らぬことだ。
 己の望むがままにその手を血で染め上げ、狂ったように笑う。
 ルカ・ブライトはそういう男であった。


(どうしようどうしよう……このままじゃ仁奈は……!)

 これまでの思い出が走馬灯のように脳裏に蘇ってくる。
 仕事で忙しい両親と一緒にいられず、寂しい思いをしていたこと。
 母の意向でアイドルをすることになり、共にいてくれる仲間をたくさんみつけたこと。
 そんな中、年長のアイドルから言われたことを思い返す。
 確か、危ない人に会った時に声に出すべき言葉――。

「たす……けて……」
「ああ?」
「助けて……くだせー……」

 蚊の鳴くような声であった。
 本当は大声で助けを求めるように言われていたが、これが仁奈の出せる精一杯の声であった。

「泣き喚く次は命乞いか……おいガキ、そんなに死にたくないか!!」
「はっ、はい!死にたくねーでごぜーます!なんでもするでごぜーます!」

 剣を向けられて、仁奈は声を上擦らせながら必死に返事をする。
 この男の言うことを聞いていれば、助かるかもしれない。
 そんな儚い希望が胸の内に湧き、仁奈はルカに縋りつくように見上げる。

「そうか……」

 ルカは剣を下げ、少しだけ考えるそぶりを見せる。

「それならブタのマネをしてみろ……」
「……へ?」

 予想外の指示に、一瞬だけ仁奈は戸惑いを見せる。

「ブタのマネをしてみろと言ったんだ!!」
「は、はい!!」

 しかし、ルカに一喝されて、仁奈は唯々諾々と従うしかなかった。
 だが、いきなりブタの真似をしろと言われてもどうすればよいか分からない。

(ブタさんのマネをしなきゃ……!でもブタさんのキグルミがねーです……)

 仁奈は元々、着ぐるみを着てその動物になり切ることは得意分野ではある。
 しかし、そんなに都合よくブタの着ぐるみがここにあるはずもない。

「え、えっと……」
「……」
「や、やるでごぜーます!今からやるでごぜーましゅ!!」

 汗も涙も鼻水も、何かもを噴き出しながら
 仁奈は死に物狂いで考える。
 ルカの機嫌を損ねれば、仁奈の命はない。
 だからこそ、躊躇している余裕はなかった。

(ブタさんの気持ちになるですよ……!!)

 仁奈は、「本当の意味」でブタになりきったのだ。

「ブー……ブー……ブブブー……!」

 仁奈は、服をすべて脱ぎ捨てた。
 可愛らしい服も、黄色いシミのついたびしょ濡れの下着も。
 すっぽんぽんの丸裸になって、四つん這いになりながらルカの前で無我夢中でブタを演じていた。

「ブー……ブヒッ……ブヒヒィッ!」

 何故なら、ブタは服を着ていないからだ。
 色仕掛けでもなんでもなく、ただ仁奈はブタになるために自分から人としての尊厳を捨てたのだ。

「ブーブー……プギィィッ!プギッ……フゴフゴッ!」

 無様に、自ら命の軽い家畜であることを知らしめるように、ルカの周囲をブタらしく、トコトコと四肢を地面につけて走り回る。
 時には、あられもない姿を見られることも厭わずに、ゴロゴロと転がって自分から泥にまみれ、服従のポーズを晒すこともあった。

「ふ……ふはははは!!ふはははははは!!!!弱い故の生への執着か……おもしろいな……」

 ルカはそんな仁奈を見て、おかしそうに笑っていた。

「ブヒヒッ!ブブー、ブー、ブヒヒヒィィッ!!」
(でへっ、でへへへっ……ブタさんの気持ちになって笑ってもらえたでごぜーます……!)

 ルカが喜んだことを悦ぶように、仁奈はブタの鳴き声の真似をして、恐怖で作り上げた笑みを浮かべながらルカを見上げる。
 これで本当に満足してもらえたか、確かめるためだ。

「――ブタは死ね!!!!!」
「え――」

 しかし、あのルカ・ブライトに弱者を見逃す選択肢など有り得なかった。
 この世には強い者と弱い者がおり、強い者は全てを奪い、弱い者は死んでいく。
 そんな弱肉強食の思想の元、ルカは支給された魔王の剣で、呆気に取られている仁奈をブタのまま葬ろうとした。

「……なに?」

 しかし、振り下ろしたルカの剣は、何者かによって弾かれる。
 その刃を、風で生成された刃が受け止めていたのだ。

「何者だ!!」
「あの狂皇子とあろう者が、随分といい趣味をしているんだね」

 ルカが振り向くと、そこには緑のコートを羽織った少年がいた。
 少年という割には達観した様子で、どこか冷めた目で世界を見ているような目つきだ。
 少年は、卓越した風の魔法により、仁奈をルカの凶刃から守っていたのだ。

「む?貴様は……」

 すると、ルカも少年が何者かに勘づく。

「覚えているぞ……たしかあの戦いの時に……」

 ルカの脳裏に描かれたのは、ハイランドの皇王として軍を率いて、都市同盟軍の本拠地を落とそうとした戦いの時。
 突如として戦場に現れ、軍全体を巻き込むような強大な風魔法で大損害を与えていった同盟軍の魔法使い。
 同盟軍の間では、ルックと呼ばれていた。

「あいつ……兄さんがまだ何も知らなかった頃のことだね。ベリアルの酔狂な催しに巻き込まれるならまだしも……まだ生きている君を見られるなんてね」
「”まだ”だと?ごちゃごちゃと何を言っている!!そんなに死にたいなら貴様からこの剣の錆にしてくれる!!」

 懐かしむように言うルックだが、せっかくの余興に水を差されたルカはまったくもって面白くない。
 怒りの向くままに、ルックの身に剣を突き立てようと向かってくる。

「戦う気はないよ。余程運命に好かれた奴じゃないと君とは正面たって戦おうとは思わない」

 そう言って少年は、自身に宿した紋章から魔法を発動する。
 それは真なる風の紋章ではなく、支給品の封印球から自身に宿した瞬きの紋章。
 制限により常時使用はできないが、魔法の対象を何処かへとテレポートさせることのできる魔法だ。

「なに――?」

 ルックの非常に高い魔力と魔法の素質により、ルカの身はその場から消え失せ、浮島のどこかへと飛ばされる。
 そこには、素っ裸の仁奈とルックだけが残された。


【ルカ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:健康、余興を邪魔された怒り
[装備]:魔王の剣@ドラゴンクエスト11
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]
基本方針:破壊と殺戮を振り撒き、己の望むままに殺し合いを楽しむ
1:殺し合いを楽しむ
2:邪魔してくれた魔法使いのことは許さん
[備考]
※原作にて死亡後からの参戦です。



『支給品紹介』
【魔王の剣@ドラゴンクエスト11】
魔王ウルノーガが勇者より奪った力と、勇者の剣を利用して自分用に作り上げた剣。
禍々しい外見に、鍔の部分にはギョロギョロと動く目玉があるという悪趣味な外見をしている。
しかし勇者の剣としての機能は失われていないらしく、闇を祓う性質自体は残されている。



§


 ルックは、一部始終を見ていた仁奈に近づいていく。

「ひっ……ば、バリアっ」

 怯えている仁奈は、縮こまって両手を前に押し出してルックを拒もうとする。
 当然、魔法とは何の関わりもなく暮らしてきていたため、バリアなんてものは存在せず、触れられるほどの距離にまで近づかれてしまう。

「……」

 ルックは冷徹とも取れる目で仁奈を見下ろす。
 ぎゅっと目を閉じていた仁奈だったが、ほんの少し目を開けて哀願する。

「世界の歪んだ理の縮図だね。弱き者はすべてを奪われ、ただ運命に身を委ねるしかない……特に、君のような子供は」

 ルックの視線は、どこか憐れみを帯びていた。

「……15年前、君と似た境遇の子供を見たことがある。その子もただ、剣と盾の紋章の争いに翻弄された不幸な子供に過ぎなかった」

 何かを風を通して思い返すように、浮島を見下ろす空を見上げる。
 そのままルックは、ほんの少し考え込んだ後、仁奈の元に跪いて視線を合わせてくる。

「に、仁奈になにするでごぜーますか?おねげーです……痛いことは……」
「いいから、手を出して」

 今も、仁奈は服の一片も与えられていない。
 正真正銘の丸腰。
 こんな状況で襲われたら、今度こそ死は免れないだろう。

「ん……」

 言われるがままに、仁奈は右手を差し出す。
 すると、ルックは懐から水晶玉のような球体を取り出す。
 その中には、まるで稲妻のようなマークが浮かんでいた。

「じっとしていて」

 そう仁奈に指示すると、ルックは球体を凝視しながら強く念じる。
 ルックの持つ球体は、「雷の封印球」であり、その内部に封印された紋章を宿した者に雷魔法を操る能力を与える支給品であった。
 すると、封印球は妖しい光を放ちながら、中身の紋章が仁奈の右手に移っていく。

「ひっ……!?」

 仁奈は見たことのない光景に驚くも、今動けばもっと酷いことになる気がして、動けなかった。
 やがて、紋章が仁奈の右手に完全に宿ると、封印球は跡形もなく砕け散った。

「……ふぅ、慣れないことはするものじゃないね」

 仁奈は息をついているルックと、右手に宿した雷の紋章を交互に見比べていた。
 もしかしたら、先ほどの怖いおにーさんから助けてくれたのだから、この人はいい人なのかもしれない。
 そう思い、声をかけてみる。

「あの……仁奈を助けてくれるでごぜーますか……?」
「君は……そう見えるのかい?」

 ゆっくりとした動作で、ルックは立ち上がる。

「……それは大きな勘違いだよ」
「……ふぇ?」

 すると、ルックの周囲を、突如として風圧の強い暴風が回り始める。
 仁奈が戸惑いながら見上げると、ルックはまるで虫けらをみるかのような目で仁奈を見下ろしていた。

「まさか僕がいつまでも君を助けるとでも?ただの気まぐれが、結果として君の助けになっただけだよ」
「あ……あう……ああ……!!」

 腰を抜かしたまま、仁奈は少しでもルックから遠ざかろうとする。
 既に、ルックをいい人だと思う考えは仁奈の中から消え去っていた。

「ああ、言い忘れていたけど、僕は――殺し合いに乗っているんだ」

 まるで、仁奈の目の前にいるのは人殺しであることを証明するかのように、無慈悲に宣告する。

「早く逃げた方がいいんじゃないか?僕の気の変わらないうちに」
「えぅ……あ……うわあああああああっ!!」

 仁奈は立ち上がり、ルックに背を向けて一目散に走り出した。
 満足に動かない四肢を統率の取れない動きでばたつかせながら、どこへ行くかも分からずにただただ逃げ惑っていた。

「ぶべっ!!」

 そんな安定しない姿勢で走っていたからか、盛大に頭から転んでしまうも、すぐに立ち上がって再び駆け出す。
 服も下着も身に付けず、噴き出した汗を夜の冷気が撫でて凍えるように寒かったが、今の仁奈にそれを不快に思う余裕すら残されていなかった。

「ああああああああああっ!!」

 その股の間からは汗とは別の液体が漏れており、走りながら二度目の失禁を犯し、その太腿を濡らしていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 永遠とも思える時間を走り続けて、ついに体力の限界が来た。
 剥き出しの肌を伝う汗を拭いながら、ようやく少しだけ落ち着きを取り戻す。
 同時に仁奈の心を覆ったのは、心細さだった。
 服もデイパックも置いてきてしまった。
 今の仁奈には、身一つしか残されていない。


「パパ……ママ……あ……」

 そう言ったところで、思い出す。
 仁奈の両親は、既にこの世にいないのだ。

「あああああ…………」

 仁奈はその場で跪き、くすんくすんと憚ることなく嗚咽する。
 誰も守ってくれない。身を守るものもない。
 運命に翻弄された小さなアイドルは、殺し合いの中でただ「その時」が訪れるのを待つことしかできなかった。



 ……それは、仁奈が「本当に何も持っていなかったら」の話だ。
 実際には、その手の中にすっぽりと収まる形で、偶然デイパックから取り出してからずっと隠し持っていた支給品がある。
 それが、絶妙なタイミングで仁奈の命を伸ばす契機となった。

「誰……いえ……まさか……」

 どこか病んだような、少し疲労を帯びた声色の女性の声がする。
 その女性は仁奈を見つけると、その顔が驚愕に彩られる。

「嘘……こんなことって……!」
「誰……?」

 仁奈が女性の方を向くと、その女性はまるで感動の再会を果たしたように、嬉しそうな笑みと涙を浮かべていた。 

「ああ……こんなところで会えるなんて……!本当に生きてるのね……!」
「わ……」

 女性は仁奈に駆け寄ってくると、優しく抱き寄せる。
 戸惑いを隠せない仁奈だったが、もう感じることのできない母性的な温かさに心が癒されるのを感じて、思わずそれに甘えてしまう。

「もう絶対に話さないわ……アリシア……命に代えても守って見せる」
「アリシア……?」

 聞きなれない言葉に仁奈が聞き返すと、女性は微笑みながら言う。

「ええそうよ、アリシア……。私のかわいい一人娘……絶対に離さない……!」

 女性――プレシア・テスタロッサは、仁奈のことを完全に自身の娘であるアリシアだと思い込んでいた。
 一瞬だけ、訂正しようとした仁奈だったが、すぐにその気は失せてしまった。
 もし自分がアリシアでないとバレたら怖いというのもあるが……まるで二度と会えなくなってしまったママが、また自分の前に現れてくれたと思えたのだ。

「ママ……怖かったよ……ママ……」
(もう……ひとりぼっちはいやでごぜーます……)

 仁奈は、偽りのアリシアを演じて、プレシアに縋りつく。
 きっと、これは悪いことだと思いつつも、孤独を癒してくれる偽りの母を、手放したくなかった。

 そう言えば、今も隠し持っている小さなタマゴのような支給品の説明書に書かれていたことを思い出した。
 その名は「カッコータマゴ」。所持してさえいれば、他人の家の子供に成り代わることのできる、未来のひみつ道具。
 プレシアは、そのカッコータマゴを所持している仁奈を今は亡きアリシアと誤認してしまい、偽りの感動の再会に涙していたのだ。


【市原仁奈@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:全裸、泥まみれ、疲労(極大)、精神的疲労(極大)、両親を失った悲しみ(極大)
[装備]:雷の紋章@幻想水滸伝シリーズ
[道具]:カッコータマゴ@ドラえもん
[思考]
基本方針:ひとりぼっちはいやでごぜーます……
1:この人(プレシア)に甘えていたいでごぜーます……
2:アリシアって人の気持ちになるですよ……
[備考]
※仁奈のデイパックはルックの元に置いて来ました。

【プレシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:健康、アリシアと再会できた喜び、カッコータマゴによる認識阻害
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:命の代えても娘(アリシアの皮を被った仁奈)を守る
1:娘を守る
[備考]
※参戦時期は少なくともフェイト誕生後です。


『支給品紹介』
【カッコータマゴ@ドラえもん】
市原仁奈に支給。
ドラえもんのタマゴ型のひみつ道具。
このタマゴを身につけてよその家へ行くと、その家の子に成り代わることができる。
この殺し合いでは、以下の人物に対して、所有者を自分の子であると認識させる効果がある。
  • 大人、あるいは大人に近い精神を持つ
  • 子供がいる、あるいは子供に近い立場の者を育てた経験がある



§


「……無事、逃げたみたいだね。持っていた物を忘れたみたいだけど……これは雷の紋章の交換品としてありがたく使わせてもらうよ」

 仁奈の姿が見えなくなったのを確認して、ルックは魔力を抑える。
 そこらに散らばっている、仁奈の衣服を一瞥しながら、付近に落ちているデイパックをすべて回収する。

「そうだ……僕は殺し合いに乗っている。いずれはあの子も……死ぬことになるはずなんだ」

 柄にでもないことをしてしまったと今でも思う。
 まさか、子供を見逃すだけでなく自身の支給品の一つをくれてやるとは。
 ルックの言ったとおり、彼がベリアルの催した殺し合いで「殺す」側に回るのは偽りのない事実だ。
 しかし、ルックはこれまでトラン開放戦争、デュナン統一戦争という2つの大きな戦を見届けて来た。
 その中で、運命と時代に翻弄される無力な者達は嫌というほど見て来た。
 市原仁奈は、その典型例だった。
 だからなのかもしれない。運命に抗うチャンスを与えたくなってしまったのは。
 まだ幼かったセラを、クリスタルバレーから連れ出した時と似た感情が湧いたのかもしれない。

「……僕のいた世界では、シンダル族の残した秘法でしか、僕の魂に宿る真なる風の紋章は破壊できない」

 風の申し子ルック。
 その正体は、27の真の紋章を宿しておくためだけに生まれた器。
 その中でも魂が紋章と融合してしまった失敗作。
 本来の運命では、ルックは自身の真なる風の紋章を破壊するべく「破壊者」として活動していたはずだった。

「しかしベリアルなら……いや、彼でなくてもいい。僕の真なる風の紋章を破壊できる者がいるならば……あるいは」

 自身に宿る真の紋章が見せる、世界の行く末。
 生命も、音も、色も何もない、真の紋章の導きにより繰り返される争いの果てにある、「無」が支配する世界。
 「真の紋章を砕く」という方法でその運命を変えようとした。
 もし、それがこの殺し合いの場で実現できるのだとすれば――ルックはそれに賭ける。


【ルック@幻想水滸伝Ⅲ】
[状態]:健康
[装備]:瞬きの紋章@幻想水滸伝Ⅲ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1、市原仁奈のデイパック(不明支給品×0~2)、市原仁奈の父のデイパック(不明支給品×1~3)、市原仁奈の母のデイパック(不明支給品×1~3)
[思考]
基本方針:真なる風の紋章を破壊する力を求める
1:まずは殺し合いを勝ち抜いてベリアルの言う願いが真の紋章を破壊し得るか確かめる
2:あの子(市原仁奈)については……次に会ったら容赦なく殺す
[備考]
※少なくとも「破壊者」として行動開始して以降からの参戦です。


『支給品紹介』
【瞬きの封印球@幻想水滸伝Ⅲ】
ルックに支給。
封印球に封じられている紋章を宿すと、テレポート魔法を使える。
自身をテレポートさせることは勿論、相手を何処かへとテレポートさせたり、逆に何処かから物をテレポートさせてぶつけたりできる。
ただしこの殺し合いでは制限がかけられており、使用は2時間に一度のみとなっている。

【雷の封印球@幻想水滸伝シリーズ】
ルックに支給。
原作の世界でもメジャーな五行の紋章のうちの一つを封じた封印球。
封印球に封じられている紋章を宿すと、雷の魔法を使える。
最終更新:2026年03月24日 22:00