「アイツは……魔人族、なのか?」
――天之河光輝は動揺していた。
彼は人間の死に慣れていない。魔人族が人間だからと躊躇してしまうほど甘い人間だ。
そんな魔人族を南雲ハジメが殺した時、光輝は彼に八つ当たり気味に怒りをぶつけた。ハジメの殺人行為を許されることじゃないと断言した。
相手が魔人族という人間を蹂躙する“敵”なのに人間だからという理由だけで、光輝は殺害を躊躇し、ハジメの行為を責めたのだ。それが人として当たり前のことだと考えたのだ。
しかし実際は人の死を見たくなかっただけ。
見たくないものを見せられ、自分が出来なかったことをあっさりやってのけられた。だから光輝はハジメが無抵抗の相手を殺したと論点をズラし、八つ当たりをした。まるで正しいことを言っているかのように。
そして光輝自身にはその自覚すらない。
ハジメの行為に対してメルドは責めることなく、光輝に“人を殺す覚悟”を教えていなかったことを謝罪した。
そのせいで光輝達を死なせるところだった、と。
そんなメルドの言葉に光輝は何一つ言い返すことが出来なかった。
天之河光輝とはそういう人間だ。
勇者の癖に勇者としては、あまりにも正義感が強過ぎる。
それは良いことなのかもしれないが、時として悪い方向にも働く。そしてハジメ曰く“息をするように都合の良い解釈をする、冗談のような存在”でもある。ご都合主義な頭、とも言われている。
事実として白崎香織がハジメに好意を持ってると知った際は彼が何かしたと思い込むほど、光輝には問題点がある。
幼馴染でずっと傍に居た香織が自分の元から離れることに対して強い拒否反応を示し、ハジメの行いや性格を否定した上で彼の仲間達に「俺は南雲のような扱いはしない。俺と一緒に行こう!」と言うなど独善的な面を持つ勇者が天之河光輝だ。
結果的にハジメに戦いを挑み、情け無い敗北を味わっている。
そんな光輝だからこそ、ベリアルに対して怒りは込み上げた。名も知らぬ少女が命を散らす瞬間を見たのだから当然だ。
しかし同時に魔人族と交戦した際の経験から、ベリアルもまた彼女のように人間なのではないかと思ってしまった。
単純に正義感が強いのならともかく、そうでもないのが光輝である。ゆえにベリアルを討伐するとすぐに決めることは出来ず、ただただ彼に怒りをぶつけながらも動揺するしかなかった。
人の死を見たくない。他者を殺したくない光輝にとって、殺し合いはあまりにも相性が最悪だ。
だから勇者の身でありながらも、ベリアルを討伐するということになかなか思考が踏み切れない。躊躇してしまう。もしもベリアルも魔人族ならば、人間だ。殺すわけにはいかない。
「俺は……俺はどうしたらいいんだ……っ!」
八つ当たり出来る相手もおらず、怒りを拳に込めて大地に振り下ろす。
拳に痛みが伝わるが、それでもなかなか思考はクリアにならない。
(そういえばこの殺し合い、南雲もいるのか……?それなら俺が止める必要がある……!)
南雲ハジメ。
魔人族を容赦無く屠ったクラスメイト。
殺し合いと聞いて思い浮かべたのは、彼の姿だった。
もしもハジメがいるならば、彼を止める必要がある。南雲ハジメは天之河光輝にとっては危険人物なのだから。
だからこそ光輝はハジメが無差別的に他の参加者を襲ってるなどという想像をして、勇者として彼を止めようと思ったのだ。
もちろん命は奪わない。そんなことをしたら彼と同じだし、光輝にそんなことは出来ない。
しかし南雲ハジメの存在が許せないから、天之河光輝は彼を止めようと。勇者たる存在であろうとより一層、心に誓うのだった。
(とにかく南雲は止める。殺し合いも止める。難易度は高いが勇者の俺なら出来るはずだ……!そのために仲間を集めよう。南雲の危険性も周知する必要があるな)
光輝はとりあえずの目標を決める。
もしもハジメが参加していた場合、彼はスタンスに関係なく危険人物だと言い回られることになる。
そして光輝はハジメほど覚悟や強さもないのに、殺し合いを止めるだなんて目標を決めた。
危険人物を相手に殺害以外の手段で平和的に解決出来る方法など少ないのに、彼は危険人物を相手にしても命を奪わないつもりだ。
勇者としてはあまりにも甘い決意を胸に、天之河光輝は歩み始める。
――ベリアルを殺す覚悟すらないままに。
【天之河光輝@ありふれた職業で世界最強】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:勇者として殺し合いを止める。南雲や危険人物も止めるが、殺人はしない
1:南雲が参加していたら他の参加者に危険性を伝える
2:殺人だけは絶対にしない。誰かがやろうとしたら、俺が止める
3:仲間を集めたいな
[備考]
※参戦時期は南雲ハジメの見た目や性格が変化した後に初めて再会して、彼と別れた直後
最終更新:2026年03月19日 22:39