野原ひろしが殺し合いに巻き込まれて出会ったのは、空色の髪をした少女型のロボットであった。
確かに金属らしい部分は見え隠れはするが、それ以外は人間の少女と変わりないほどの精巧な造りをしていた。
「解析中――型番:野原ひろし。種別:平凡型父親ロボット」
「そんな型番あったのか、俺……本名なんだけどな」
少女はひろしに出会うと、ひろしをじっと見つめて先ほどのような台詞を読み上げていた。
殺し合いの参加者として、色々とこちらを調べ上げているらしい。
「敵対的な感情は皆無。対話は可能と判断します」
「そうか。よく分からねぇけど、疑いが晴れたならよかった」
「私はイネファと申します。掃除、料理、会話用モジュールを搭載していますが、今は緊急事態ですので戦闘モジュールも即時使用可能です」
「あんたも色んな機能持たされてるんだな……」
「デイパックより存在を確認できたため、こちらも紹介します。本機はビルギッタ。多機能スマート補助ユニットです」
「ロボにさらにお手伝いロボまで付いてんのか……みさえが欲しがりそうだなぁ……」
少女――イネファはひろしに自身の名を名乗る。
カチャカチャ・クルムカケ工房の主が開発した人型の家庭用ロボットであり、至高の領主の呪いに打ち勝ち、新たに帰る場所を手に入れた者である。
彼女の懐では、小型ロボットであるビルぎったが挨拶をするように、頭部の映像に笑顔を作ってひろしに向けていた。
「それにしても、少々私に対して興奮しているかのような反応を観測できますが、理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「おい、その分析いるか!?」
イネファは自己紹介を済ますと、さらりととんでもないことを言ってきた。
確かに、美人好きなひろしが綺麗な人だと思うくらいには、イネファは魅力的な外見をしている。
ここに妻のみさえや娘のひまわりがいれば、さぞ白い目で見られていたことだろう。
「失礼しました。同じロボットとしては初めて観測する感情モジュールからの反応でしたので」
「そうか……俺が、ロボットだからか」
しかし、ここにいるのは「野原ひろし」ではなかった。
剥き出しの金属で覆われた洋ナシ体型のボディに、手足の人工筋肉。
その身体は人間ではなく、野原ひろしの人格と記憶を植え付けた、しんのすけ曰く「ロボとーちゃん」――ロボットであり、もう一人の野原ひろしであった。
ひろしは寂しげな目をしたまま、空を見上げる。
「私では判別できない複雑な感情を検知……少なくとも感情モジュールは貴方の方が優れているようです」
「ははっ、当たり前だ。俺は……野原ひろしだった男だからな」
「検索中――かつて、ナタの至高の領主が似たようなことをしていたデータがあります。つまり貴方は――」
「ああ、お前の推測した通りだよ……けど、いいんだ。俺は負けた。野原家は『野原ひろし』が守ってくれる……これでよかったんだ」
思い返すのは、今も大切に思っている家族のことだ。
もう一人の野原ひろしは、もう一人の野原ひろしに負けた。
そのまま機能を停止して自身の役割は終わるはずだったが、気づけばベリアルが眼前におり、殺し合いの参加者になっていた。
「俺のいる場所は、もうないんだ」
生きているからこその未練を吐き出すような言葉をぽつりと呟く。
「そうでしょうか?」
「……へ?」
すると、イネファから予想外の答えが返ってきて思わず彼女の顔を見る。
「帰るべき場所の定義は、貴方次第です。貴方の選んだ場所こそが、貴方の帰るべき場所ではありませんか?」
「帰るべき……場所」
ひろしの帰るべき場所。
それは言うまでもなく、春日部で家族のために購入した、まだローンの残っているマイホームに他ならない。
「でも……」
しかし、そこには既に「野原ひろし」がいる。
そこに、自分が入る余地はあるのだろうか。
もう一人の自分が本物となった世界にいていいのだろうか。
「……私は、それを見つけました」
「見つけたって……」
イネファは、自分の創造主であり、カチャカチャ・クルムカケ工房の主である小さな女の子の姿を思い浮かべる。
ナタを離れて2000年の放浪と破壊を経て、もう一度自身に命を宿してくれた、大切な家族。
今はもうない至高の領主の席よりも、そここそがイネファの帰るべき場所なのだ。
「私の家族――アイノが待っていますから。私はそこに帰還する必要があります」
ひろしはハッとして、自分を敢えて野原家から遠ざけようとしていたことに気づく。
意識が闇に落ちる刹那、しんのすけは自分のことを「とーちゃん」と呼んでくれた。
もし、「野原ひろし」になれなくても。
最愛の妻みさえの夫になれなくても。
「……そうか。……そうだな」
野原家のみんなが「ひろし」を家族だと思ってくれていれば、そこがひろしの帰る場所なのかもしれない。
「ありがとな、イネファ。俺もやっぱり、家族が恋しくなっちまった。帰って『ただいま』を言って、あいつらを驚かせてやるのも悪くないかもな!」
「提案――これより先は大きな危険を伴います。共に行動することを推奨します」
「おう、俺もそのつもりだぜ!」
俄然やる気が出たのか、ひろしは張り切った様子を見せる。
「俺だけじゃねぇ。俺も一家の父親だからな……あんたにも家族がいるんなら、できるんなら帰してやりたい……そのつもりで協力させてくれ」
「同盟成立を確認しました」
そう形式的に言うイネファの声は、どことなく明るくなったような感じがした。
【ロボひろし@クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん】
[状態]:機能正常
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:浮島から脱出して、野原家に帰還する
1:受け入れてくれるかは別に、帰るべき場所に帰りたい。
2:できれば、イネファも元居る場所に帰してやりたい。
3:まさか、家族も一緒に巻き込まれてないだろうな……。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
【イネファ@原神】
[状態]:機能正常
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2、ビルギッタ@原神
[思考]
基本方針:浮島から脱出して、カチャカチャ・クルムカケ工房に帰還する
1:帰るべき場所に帰ります。
2:野原ひろしと協力します。
3:アイノが巻き込まれていたら……。
[備考]
※魔神任務「空月の歌」第八幕終了後からの参戦です。
【ビルギッタ@原神】
イネファに本人支給。
イネファに常に同行している多機能スマート補助ユニットであり、良き助っ人の小型ロボット。
自律移動して放電攻撃をしかけたり、ビルギッタをロケットパンチにして攻撃できる。
最終更新:2026年03月20日 15:34