吸血鬼アイビスがこの殺し合いにおいて最初に確認したことは、「自分の体がちゃんと吸血鬼」であるか。
最終的には杞憂で終わったものの、グリムが万が一に残った自分の残骸を利用する、なんてありえそうだったから。
その上で、この舞台で出会った、自分が知らない世界の吸血鬼とやらの話は、耳を傾けて聞くほどの価値があった。
「異界の吸血鬼の話と言うのは、聞けば聞くほど興味深いものよのう」
「これでも苦労はしたんだよ、関係性の順序はちゃんとしないと本当の自分を思い出しちゃうんだから」
アイビスの話し相手、プラム・バトリーという金髪碧眼の若き吸血鬼が話すそれは。
人間を『吸血鬼に仕立て上げる』というかつての実験。
暗示の類に近しい代物であるが、『人間を吸血鬼にする』という限りなく近い手法は、アイビスとて目を見張る内容。
「⋯⋯かつてホロウと言う吸血鬼が一つの街の人間たちを支配下においた実験を行っていた」
「そちらの世界の吸血鬼は、人間の支配だとかポピュラーというわけじゃないんだ」
「あくまで人間は餌という考えを改められぬ連中も多くての。恐怖による人口統制の案は上がってはおったものの、古臭い連中の案では画期的な打開策は生まれん」
アイビスたちを定義する吸血鬼にとって、人間はあくまで下等種であり、餌。
その在り方は時代と共に変化していき、文明の発達とともにそれが脅かされる事となった。
挙句、一部の人間は吸血鬼の不死性に価値を見出し、ついには『人間が吸血鬼を逆に食らう』などという、そんな狂気に満ちた実験に手を出し始めた。
立場が逆転しつつある吸血鬼はどうすればよかったのか、それは誰にも分からなかいことだった。
「我ら吸血鬼は所詮、人間の新鮮な生き血でしか命を繋ぎ止めることが出来ん」
「それで人間とも、人間でも吸血鬼でもないバケモノと手を組んだわけだ」
思想を変えようと、生き方を変えようと。
どちらにしろ吸血鬼という種がこのままでは避けられぬなら、人間と手を組んででも。
それ以外の外法に、骨を喰らい歴史を再生する新種と手を組んででも。
あくまで吸血鬼の血を用いての存続を願ったファウストとは、違うアプローチを。
「⋯⋯どうも口上を垂れた所で、私が敗れたことに変わりはない」
「けれど、ただ敗北者という立場に素直に殉じるやつでもないでしょ」
泥に塗れてでも高潔であろうとした王(ファウスト)と、何であろうと利用しようとした自分(アイビス)。
何が違ったのか、何処で間違えたのか。
それでも、自分が負けて、ファウストが生き残ったという事実は変わりはない。
人間の持ちうる武器の一つ、多様性という手段を、ファウストもまた結果として利用したように。
「⋯⋯まあ、そうではあるな」
だが、負けて死んだと言う経験は、悪くないことだ。
王として吸血鬼の存続を望む責務を、背負わなくとも済む。
好き勝手やっていた頃の、幾多の生と死を無慈悲に。
「王という立場は、視野を狭くするものだ」
今思えば、グリムの企みに乗っていた頃は楽しかったのだと思う。
グリムの願う自由の果てを、見たかったのだと。
「⋯⋯じゃあどうするのかな王サマは。自由気ままに生きるのかい?」
「お前はどうなのだ?」
「ボクはキミと違って、王になりたくてね」
自由であった己の本質を自覚したアイビスに対して。
プラム・バトリーの願いは王になること。
自らを拒絶した世界を、滅ぼすために。
「⋯⋯キミの自由さに比べれば、小さいものだろうけど。ボクにとってはとっても大切なことだ」
ザンマの血の者に再び阻止されて、無様に逃げ回る羽目にはなった。
それでもこうやって再起の機会があるというのなら。
夢を諦める理由にはならないし、もう一度と願ってしまうものだ。
チャンスが与えられる事態に直面した時、やはり欲望というのは歯止めが効かないと。
そんな事を、グリムによって蘇った同胞たちの事を思い出しながら、アイビスがただ一言。
「付き合ってやらんでもないぞ、その「王になりたい」という望み」
「⋯⋯どうしてだい? キミに別にメリットがあるわけじゃないはずだけど?」
アイビスの提案に、プラムはただ訝しむ。
本当に唐突で、アイビスが付き合う義理もないことなのに。
何なら、アイビスの態度次第でこの場で殺してやっても良いと考えていた所に。
情が湧いたか、などと思ったが、これに限ってそんなはずはない。
「何、ただの気まぐれじゃ」
「ーー気まぐれとは、ね。⋯⋯分からないよ、異界の吸血鬼の考えは」
「貴様は何かとしがらみに囚われすぎなのだ。一度自由というものを考えてみるのも一興だぞ?」
自由奔放、深淵に蠢くが如く。
そんな吸血鬼としての格も、何もかもが格上な混沌の王の戯れの言葉に。
それを何の疑いもなく受け入れてしまうプラム自身も。
だからこそ、アイビスという吸血鬼の底知れなさが、何よりも怖いものだった。
「そういえば、言い忘れておった事があってな」
何かを思い出したかのように、吸血鬼の王が、その気まぐれを口に出す。
「お前と出会う前に、適当な輩に絡まれたものでな。戯れに『石仮面』というのをそいつに使ってな」
「石仮面⋯⋯?」
「柱の男とやらが作り出した、人間を吸血鬼へと作り上げるものだと」
人間を安易に吸血鬼に変える仮面。
そんなものまで異界には存在するものなのか。
つくづく吸血鬼に縁あるアイテムには変なものである共通点でもあるのかと。
「⋯⋯一回使っただけで壊れてしまった。まあその代わり、私の血を混じらせておいたら、良い手駒になった。今は別行動をさせてもらっておる」
そう、フラットに明日の晩ごはんを語るかのような単純さで語るアイビスの姿こそ。
やはり恐ろしいものだと、プラムはほんの少し身震いした。
【アイビス@銀狼ブラッドボーン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]
基本方針:かつてのように自由に、無慈悲に。王の役割は存外窮屈だったようだ
1:この小僧(プラム)の手伝いをしてやろう。まあ戯れというやつだ
2:グリムのやつがいたら、挨拶ぐらいはしておくべきか
3:あの手駒には好きにやらせておこう
[備考]
※参戦時期は死亡後
【プラム・バトリー@大番長 -Big Bang Age-】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:王になる。今度はザンマには負けない
1:アイビス⋯⋯ボクの願いに手を貸してやると言うが、その底知れなさこそが一番恐ろしい
[備考]
※参戦時期は狼牙に敗北し逃走した直後
☆
夜を彷徨う、幽鬼が如き女が一人。
彼女は戦士だった。
北の大地を守るはずの。
「アアーー」
今の彼女に、その気高き心はない。
石仮面によって、アイビスの血を混じらされて、卑しき吸血鬼へと変貌した。
「ーーアイビス、サマノ、タメニ」
彼女の名はウルルカ。
エゾの大地を蹂躙した女吸血鬼の、その真実を目の当たりにし。
己の憎しみに決着を付けた戦士。
既に、彼女は終わっている。
【ウルルカ@@大番長 -Big Bang Age-】
[状態]:吸血鬼化、奉仕(アイビス)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]
基本方針:アイビスサマノ、タメニ
1:ジャマモノハ、コロス
[備考]
※参戦時期は久那妓ルート、カミラ特別イベント4番達成後
※吸血鬼になりました。
『支給品紹介』
【石仮面@ジョジョの奇妙な冒険シリーズ】
アイビスに支給、既に消失。被せた人間に適正がある場合、その装着者を吸血鬼へと変える。
適性がない相手に装着させた場合は殺人器具での殺害と何ら変わらない結果に終わる。
最終更新:2026年03月21日 10:00