いかん。これは余、死んだ。
多摩川のゴミ姉貴、もといその内世界を征服する偉大なる闇の一族リリスとして。
今日も日課のゴミ拾いに出かけようとした所、あのベリアルとか言う変なまぞくに連れ去られ。
いきなり殺し合いなんてウェルカムくれいじーたいむな島に放り出され。
その矢先に出会ったのが────
「何だ、ベリアルの野郎はこんな雑魚まで呼んでやがるのか」
余が闇の一族として全盛期だった頃のめそぽたでもそう見ない。
横も縦も余の数人分のムキムキマッチョな身体、頭に生えた角、睨まれただけで気絶しそうな目。
現代ならラスボス確定なド級の怪物、ド怪物が余を見下ろしていた。
それも、その手に握った余よりも大きそうな金棒を振り上げて。
「タ、タイム!攻撃禁止!!な、何故貴様……えぇっと……お名前は何ですか?」
「カイドウだ」
「そ、そうカイドウ!何故お主は初対面の余の頭の上にそんな黒光りするブッとい物を振り下ろそうとしているのだ!!」
「決まってんだろ、間引きだよ。突然呼んだのは業腹だが、折角の戦争に生きてるだけの弱者はいらねェ」
余に告げるカイドウの視線は虫けらを見る目そのもので。
金棒を振り降ろして余の身体を爆発四散させることなんて何とも思ってない。
そう思わせる視線だった。こんな所でも余、セミみたい……
不味い、このままではマジで死ぬ。世界を統べる事も定期的に秘湯めぐりをする事も無く死んでしまう!
「ををををを、落ち着け!話せばわかる!
お主中々強そうではないか!何故大人しくベリアルなぞに従う!余と一緒にベリアルをぎゃふんと───」
「何ができる」
「へ?」
「お前は組むに値する武力を持ってるのかって聞いてるんだよ。タダ飯喰らいは必要ねぇ。
それとも、俺達の命を握ってるこの窮屈な首輪をどうにかする技術でも持ち合わせがあるのか?」
当然ながら、そんなものはない!
今の余、昆虫くらいの戦闘力しかないのに……
「あのベリアルの野郎は落とし前を付けさせてやるが、
このバカ騒ぎ事態は悪くねぇ、テメェみたいなどうしようもねぇ雑魚もいるようだが───
殺りあったら楽しめそうな奴もいると俺の見聞色が教えてる。ベリアルの野郎が言ってる願いを叶えるってのも興味があるしな」
「じゃ、じゃあ、余とその願いを叶える権利を分け合おう!ついでに余が世界を征服した暁には貴様にも世界の半分を───」
「冗談だろ。宝を分かち合う海賊が何処にいる。総取りするのは一番強い奴、戦争に勝った奴でいいんだよ」
だから、例え最後にベリアルと殺り合うとしても俺の傘下に下らねぇ雑魚はいらねェ。
そう言ってカイドウは余を突き放してくる。
ぐぬぬ……何て取り付く島もない輩だ!
ダメだ、このままではBADENDまっしぐらだ。何か……何かないのか、此処から入れる保険とかは!?
「ほ、ほら…余、5000歳だし、貴様と同じで角とか生えてるし……同胞とか親戚かもよ~?」
「そうか………で?」
必死の説得(アジテーション)を欠伸をしながら流された。屈辱すぎる!
いよいよヤバい。余に残された解答権も多分次が最後。
もう破れかぶれだった。喚きながら余は慈悲を乞う。
「ヤダヤダヤダヤダヤダ───ッ!一生のお願いだから───ッ!
靴とか舐めるから────ッ!!カイドウちゃま見逃して────ッ!!!」
「いらねェよ。じゃあな」
それが最後だった。
スローモーションになった世界が、金棒の黒一色に塗りつぶされる。
あー、これで終わりか。5000年の生も、終わってみれば実に呆気ない。
何となく直感している。今のボディが壊されれば封印空間に戻されるのではなく。
多分、存在そのものが無に還る。つまり死ぬ。余の可愛い子孫にも。
───シャミ子にも、もう会えなくなる。
「シャミ子、」
シャミ子は、余のことを一度も馬鹿にしなかった。
何時も余の味方だった。
そんなシャミ子の事だ、突然余がいなくなればきっと悲しむだろう。
「もう…会えぬみたいだ」
何故だろう。
自分が死んでしまう事よりも。
シャミ子の悲しむ顔が浮かんでしまう事の方が嫌だった。
でも、許せシャミ子。余の力ではどうする事もきんのだ。
嫌だけど。本当に嫌だけど、そうして己の終わりを受け入れぎゅっと目をつぶる。
────会えるさ。
────何故かって?
けれど、金棒が余をのしイカまぞくに変える事はなく。
十秒程経ってから、恐る恐る瞼を開けると。そこには、
────私が、来た。
◆
弟子にしてください。
手伝わせてください。
───バカ言え、"個性"もないんだろ?
───棒切れで半径三メートルを守ってな。
皆が笑って暮らせる世の中にしたいんです。
その為には象徴が必要なんです。平和の象徴が。
皆は半径三メートルで手一杯だから………
だから、私がやるんです。
◆
受け止められていた。
ひとつなぎの大秘宝を求め争う海の世界で四皇と恐れられた百獣海賊団船長、百獣のカイドウの一撃が。
手を抜いたとはいえ、リリスはおろか彼女よりも数倍屈強な海賊であっても叩き潰される一撃を受けて。
カイドウのよりも遥かに小さな上背にも関わらず、強大な金棒を片手で闖入者は受けて止めていた。
人間の体躯を遥かに超えるカイドウに比べれば小柄であるものの、その筋肉量は劣らず。
掘りの深い顔に、触角の様に伸ばした二本の金髪がトレードマークの、ナンバーワンヒーロー。
「私の名はオールマイト………君の名前は?」
凡夫のヴィランなら、聞いただけで戦意喪失する名が響く。
しかし金棒を振るったカイドウはその名にも眉一つ動かさず。
腹の底に響く低い声で、誰何の声にカイドウと返答を返した。
「そうか、カイドウ。一応聞いておくが君はこの殺し合いに………」
「乗ってる。テメェにゃ嬉しくねぇ話だろうがな」
言葉と共に、カイドウは振り下ろしていた金棒を引き上げる。
その行動は無論のこと、戦闘の終結を意味するものではない。
むしろ逆、この空白は次の衝突の準備期間でしかなく。
剣呑な雰囲気を漲らせたまま、カイドウは対峙するオールマイトに選択を迫る。
「とは言え、だ……俺の攻撃を止める実力は見どころがある、お前が俺の傘下につくなら転換も考えてやらねぇでもねぇ」
「…傘下に付く事は難しいが。条件次第では共闘は───」
「条件なら簡単だ、後ろのガキを殺せ。そうしたら話ぐれェは聞いてやるよ」
カイドウとて、海賊団を統べる船長。
この場に百獣海賊団の船員がいる可能性を考えていないわけではない。
その場合は殺し合いに欲求のままに興じるのを厭う思いはある。
だがベリアルに反抗するにしても足を引っ張るだけの役に立たない弱者は必要ない。
力こそ全て。暴力こそ全て。それこそがカイドウの海賊としての信条。
それを枉げる事は、極めて容易ではなく。
決裂。その二文字しかオールマイトに選択の余地はなかった。
「そうか、カイドウ。生憎だがその提案を受け入れる訳にはいかないな…俺は─────!」
「そう言うと思ってたよ、テメェの様な目をした奴はな────!!」
「そうさ、私は────ヒーローだからな!!!!!」
カイドウが再びその手に握った金棒を振りかぶり。
オールマイトが拳を鋼の様に振りかぶると共に、圧力でクレーターを伴う程地面を踏みしめ────!
次瞬、同エリア内の大気が、揺れる。
四皇とNo.1ヒーロー。
対極的な武と武の極致が、異空にて相まみえる。
───雷鳴八卦。
DETROIT───────SMAAAAAAAAASH!!!!
大気に劈く轟音が響き。
空間が爆縮し、超局地的に空が割れる。
膨大な圧力によって生まれた光は夜でありながら昼の様に周囲を照らして。
世界が白く染まった。
「なるほど……やっぱりそれなりに面白くなりそうな戦争じゃねェか」
吹き飛ばされた。
四皇であり、最強生物と恐れられたカイドウが圧力によって吹き飛ばされたのだ。
彼の傘下である百獣海賊団の部下たちが耳にすれば耳を疑う不条理だろう。
もっとも、カイドウの玉体にダメージは殆ど無く、吹き飛ばされたのも半ばわざとではあるが。
「あぁ、だが惜しいなオールマイト……テメェはここで死ぬしかねぇ」
カイドウはオールマイトの力をこれ以上なく評価していた。
雷鳴八卦と激突してなお自分を吹き飛ばす威力の拳には俄かに驚かされたが、吹き飛ばされたのは殆どカイドウが見逃した形でしかない。
一度交錯しただけで分かってしまったからだ。彼は恐らくこの空島で最期を迎える。
己の見聞色と激突の際伝わって来た感触で確信できた。オールマイトの肉体は既にボロボロ、風前の灯だと。
そんな身体で、カイドウがこの地で初めて出会った小娘の様な弱者を守って生きていける筈がない。
引きずられるべきではない情に引きずられ、自分に敗れた光月おでんと同じだ。
「オメェは……俺を倒すジョイ・ボーイにはなれねェよ」
やはり強者の足を引っ張る弱者は必要ない。そう結論付け。
せめて次に相まみえる事があれば少しでも自分との戦いで負った傷を癒している様にある種の願いを抱きながら。
カイドウは独り言ちたあと、酒と次の獲物を求め進撃を再開する。
【百獣のカイドウ@ONE PIECE】
[状態]:健康、メンヘラ状態。
[装備]:八斎戒@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝後、ベリアルも殺す。
1:次の獲物と酒を探す。
2:大看板や飛び六砲の連中がいたら殺し合いに乗るのは考えるが、弱者は必要ない。
[備考]
※参戦時期は79巻793話、ワノ国篇以前より参戦です。
◆
満身創痍。
オールマイトの現状を形容するなら、その一言で事足りた。
カイドウの凄まじいパワーとの競り合いに勝ち、敵を吹き飛ばせたのは良い。
だが、四皇の暴力と真っ向から激突し、余波からすら少女を守るという無茶は、オールマイトの肉体に容赦なく牙を剥いた。
真実の姿(トゥルーフォーム)に戻り、がくりと膝をつく。
「おおおおお、お主大丈夫か!?助けてくれて感謝!だが何なのだ!その画風すら変わっている姿は!!」
「気に……しなくていい。それよりも…私を置いて逃げなさい………」
「なんば言っとか!お主を置いて逃げてさっきのラスボス大魔王が戻ってきたらどうする!?」
守られた少女リリスが、地面に崩れ落ちたオールマイトの脇を支える。
さっきまであんなに筋肉を漲らせていたはずのオールマイトの身体は骨と皮しかないのかと思う程軽く。
セミ並みの戦闘力しかないリリスでも襟首を掴んで何とか引きずっていく事は可能だった。
だがしかし、周囲はオールマイトとカイドウの激突で荒れ切っており、瓦礫や木片、ガラス片が散乱している。
この中をオールマイトの弱った身体を引きずっていけばずたずたにしてしまうだろう。
追い詰められたリリスが縋れるのは、最早支給品をおいて他になかった。
「くそっ!何かないか!何かないかー!!!」
夢中で荷物を開き、食糧や水を掻き分け支給品を検める。
彼女の指先が強力な魔力を感じ取ったのは、その直後のこと。
祈る様な気持ちで引っ張り出したそれは、一本の鞘だった。
光の魔力で満ちているその鞘は、闇の一族であるリリスが扱うには躊躇われる物だったが。
それでも、やるしかない。リリスは賭けに出た。
「頼む……!」
腹をくくり、その鞘を骸骨の様にやせ細ったオールマイトの肉体へと押し当てる。
5000年を生きる夢魔のリリスには分かった。この鞘には持ち主を癒す効果があると。
だが同時にその力を引き出すには持ち主と接続されている必要があり、今この状況では。
魔力の扱いに長けた者でなければ、その力を引き出すことはできないだろう。
今のセミ並みの自分にできるのか……その思いを無理やり抑え込んで。
できる!できるに決まっている───余を誰だと思っている!と、無理やり自分を鼓舞し一か八かの勝負を挑む。
「この者を助けてくれ……アヴァロン………!」
祈りと共に、鞘の魔力を励起させる。
祈りを受けた聖剣の鞘は、鈍いけれど暖かな光を発し。
傷ついたヒーローの肉体の修復が始まる。
「これは……!?」
オールマイトの目が見開かれる。
効果は劇的、と言える物だった。
激突の時に負った、筋繊維や骨へのダメージが急速に癒されていく。
握った拳に、力が戻る。
オール・フォー・ワンの戦いで失った臓器や手術で低下した体力については如何ともしがたいものの。
この回復があれば、ワンフォーオールの力を維持することが可能かもしれない。
「フハハハハハハハー!!成功だ!
余の手にかかればこの程度ちょちょいのちょいよ!シャミ子が見れば余への尊敬がきっと鰻登って天まで昇ってしまうだろう!」
賭けに勝ったことで昂っているのか。
ハイテンションで鞘の治癒に夢中になっているリリス。
その横顔を見て、オールマイトは考える。
───カイドウ、君が弱者だと斬り捨てようとした少女が今、私を救ったよ。
【オールマイト(八木俊典)@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:右腕のダメージ(大)、疲労(中)、トゥルーフォーム、アヴァロンによる急速回復中。
[装備]:全て遠き理想郷@Fateシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]ベリアルを全員捕縛して、この殺し合いを終わらせる。
1:リリスや戦えない者達を守る。
2:カイドウは必ず倒し、止めて見せる。
[備考]
※参戦時期1巻、緑谷に能力移譲前から。
※アヴァロンによる回復で失った臓器や体力までは回復できません。
※なお、マッスルフォームの時間制限やインターバルが多少軽減されるかもしれません。
【リリス@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]生きてシャミ子の元へと帰りたい。
1:殺し合いはできればしたくない。だって余、セミ並みの戦闘力しかないし…
2:治してやるぞオールマイト!フハハハハハー!!
[備考]
※参戦時期は5巻、大蛇の祝福(のろい)を受けて以降。
『支給品紹介』
【全て遠き理想郷@Fateシリーズ】
約束された勝利の剣の鞘にして結界宝具。
強力な治癒効果を持ち、対象に埋め込むことで時に致命傷であってもごく短い時間で完治させる治癒能力を有する。
更に、この鞘の持ち主と接続された上で真名解放を行えばあらゆる攻撃・干渉を跳ねのける結界宝具を展開するが、
持ち主である騎士王と接続されていない現状、当然その効果を発揮する事は出来ない。
また、治癒効果も低下しており、完全な致命傷は治癒が間に合わず死亡する。
【八斎戒@ONE PIECE】
カイドウの獲物。中腹から先端部にかけて疎らに大きな棘が取り付けられている黒鉄の巨大金棒。
規格外のカイドウの剛力に振り回されても折れるどころか僅かに曲がる気配すら無く、
棘の一つさえ掛ける事も無いという驚異的な耐久力を誇る。
最終更新:2026年03月22日 09:04