老人が歩いている。
黒い帽子を被り、杖をついている老人だ。
老人は、背を向けながら歩いている。
老人らしく、ゆっくりと歩いている。
その老人の姿を発見し、追いかけようとする者達がいる。
この殺し合いの舞台において、最初だけ存在するNPC達だ。
参加者達に対し、ただ襲いかかって戦いの覚悟を決めさせるためだけの存在だ。
そんな彼らだからこそ、弱そうな老人相手でも気にせずに問答無用で襲いかかりに来る。
今回ここに現れたのは、ボコブリンという種類の魔物だ。
豚鼻をした小鬼のような魔物だ。
ここにおいては、体色が赤いものが2体と、青いものが1体だ。
彼らは武器として、赤いやつの内1体は木の棒、もう1体はボコ弓という小さな弓を、青いのは丈夫な木の棒を武器として持っていた。
もう少し追記しておくと、彼らは採取すれば武器にも利用できそうな程の角の長さを持つ時代のボコブリン達だった。
話を戻す。
老人を発見したボコブリン達の内、まず早速として、弓を持つ個体が老人に向けて矢を発射しようとした。
『ザクッ』
肉の切れる音がした。
弓の弦につがえていた矢はあらぬところへと飛んでいった。
弓を引こうとしていたボコブリンはそれが何の音なのかをすぐには認識できなかった。
『……GYAAAA!!』
認識できたと同時に、そのボコブリンは悲鳴を上げる。
矢を持っていたボコブリンの指が、切断されていた。
これを切断したのは、刃物でも弓の弦でもない。
その凶器を、ボコブリン達は発見できない。
ここでボコブリンの指を切ったのは、一枚の葉っぱだった。
普通に落ちただけでは豆腐も切れないような、柔らかい葉っぱだった。
けれどもここでは、ただ風に乗って落ちてくるだけで、確かに生物の指を骨ごと切断するという現象を引き起こしていた。
『GUAAAA!』
痛みに悶えて苦しむ仲間を尻目に、もう1体の赤いボコブリンが老人の方へと向かう。
手に持った木の棒を振りかぶり、これで老人を殴りに行こうとした。
『コテッ』
そのボコブリンは、ただの小石に足を躓いて転んだ。
『ドスッ』
転ぶと同時に、彼自身が手に持っていた木の棒が、彼の顔に突き刺さった。
彼はただ木の棒を振り上げていただけだったのに、転んで落とした時に、先端がいつの間にか彼の顔に刺さる位置までに来てしまった。
こうして絶命した彼の死体は、角を遺して肉体が黒く変色して崩れさって消え失せた。
『GUEAAAA!』
唯一無傷の青のボコブリンは、これを見てもまだなお相手に向かおうとしていた。
仲間の死を悼むこともせず、ただ視界にいる標的に対し攻撃することしか考えてなかった。
「ふむ……君たちのような知能の低そうな生き物では、流石にこれだけでは分からないか。それとも、どれだけ見ても理解できないか」
このタイミングで、老人が振り向いた。
その顔には深い皺が多く刻まれていた。
他に老人の顔の特徴的な点としては、右目にモノクルをかけていることが上げられる。
『GYYYYY!!』
青ボコブリンは老人の言葉を無視して攻撃しようとする。
『バキッ』『ドスッ』
『GYAA!?』
青ボコブリンが振るった丈夫な木の棒は、彼自身の頭の上の角をへし折った。
折れた二叉槍の先端のような形状をしたその角は、彼自身の背中に落ちて突き刺さった。
自分の角でダメージを受けた青ボコブリンはその場に倒れ付す。
「ふむ、君は赤よりも頑丈なようだが、この状況ではあまり意味の無いことだな」
老人は苦しみに悶えているボコブリン達を観察しながら呟く。
「私を『追跡』したり『攻撃』しようとしたりするからこうなるのだが、君たち程度ではそれも理解できずにすぐ死ぬだろう。……別にそれでも構わないが、せっかく最初に会ったのだ。少し実験に付き合ってもらいたい」
そう言うと老人は、懐から何かを取り出す。
それは、奇妙な形をしたメモリとベルトだった。
それらは禍々しい形状をしていた。
メモリの方には、大きくアルファベットで『U』の文字が書かれている。
その文字は、2人の人間が向かい合って手を組んでいるデザインのようにもなっていた。
しかしよく見れば、組まれている手は右手と左手、つまり片方の人だけが自分の手を組んでいることが分かる。
老人はベルトを腰に巻き付ける。
その次に、メモリに付いた小さなボタンを押した。
『UTOPIA』
そんな音声が流れた後に、老人はメモリをベルト…ガイアドライバーに突き刺した。
すると次の瞬間、老人の姿が変わった。
そこにいたのは皺だらけの老人の姿ではない。
機械的なようにも見えなくない、くすんだ金色をして裏地の赤いマントも着けた、奇怪な風貌の怪人の姿があった。
老人の時と同じく杖も持っていたが、その杖もまた別のものに変わっていた。
この怪人の名は、ユートピア・ドーパントと言った。
「まずはこの能力を試させてくれ」
ユートピアはそう言うと青ボコブリンに近付き、頭を鷲掴みにする。
『GUYYY!?GYAAAA!!?』
ユートピアに掴まれた青ボコブリンは更に悶え苦しむ。
何かが、手の平を通じてユートピアの方に吸われていた。
「ふむ……この程度の生き物からはこれだけしか取れないと」
ユートピアはそう呟いた後、青ボコブリンから手を離す。
再び倒れた青ボコブリンの顔は、特徴的な豚鼻も消えた、のっぺらぼうと化していた。
ユートピア・ドーパントは、他者から希望などといった生きるためのエネルギーとなる感情を吸い取り、自身の力へと変換・蓄えることができる。
もっとも、意思の希薄な魔物相手では、吸い取れた量は微々たるものだったが。
『グシャ』
倒れた青ボコブリンの脳天にユートピアは杖を突き刺す。
これにより青ボコブリンは完全に絶命した。
その死体は先の赤い方と同じく、角を遺して消滅した。
「後は、この姿でも『厄災の流れ』がそのままかどうかを確かめたい。君程度の知能なら、こちらに向かってくれるのだろう?」
青ボコブリンが消え去った後、ユートピアは最初に指を失った弓持ち赤ボコブリンを一瞥する。
『GY……GYAAAA!!』
ユートピア/老人の言う通り、赤ボコブリンは敵意を向け続けていた。
弓を持てなくなった代わりとして、その辺に落ちている石を拾い、投げつけようとしていた。
『ブンッ』『カンッ』『ドゴォッ』
赤ボコブリンが投げた石はユートピアの頭に当たった。
しかしそれは大したダメージにはならない。
跳ね返ったその石は、赤ボコブリンの方に戻って来た。
そうして彼の顔を逆に貫き、その命を絶った。
「ふむ……問題無し、か」
これらを見届けたユートピアは、メモリを抜いて元の老人の姿に戻る。
そうして何事もなかったように、背中を見せながら何処かへと歩いて行った。
◆
「……アレを使っても、『流れ』には問題無し、と」
そう呟く青年が1人いた。
渦巻きの模様の入ったキノコのようなアフロヘアーをした青年だ。
この青年の名は、透龍。
岩人間という、人間と似た姿だが別の生き物である存在の1人。
先ほどボコブリン達を始末した老人…明負悟が持っていた、ユートピアメモリとガイアドライバーの本来の支給先の参加者だ。
そもそも、明負悟はこの殺し合いの参加者ではない。
透龍はスタンド使いと呼ばれる能力者の一種であり、明負悟は彼の能力が生み出した虚像のようなものだ。
明負悟の正体は、彼のスタンド「ワンダー・オブ・U」が姿を変えたものだ。
彼は、自身のスタンドにガイアメモリのユートピアメモリを渡して使わせ、ドーパント怪人へと変身させていた。
これは全て、実験だった。
スタンドでもガイアメモリを扱えるかどうか、ドーパントに変身していてもスタンド能力は使えるかどうかのだ。
ワンダー・オブ・Uの能力は、『厄災の流れ』を自分のために利用すること。
ワンダー・オブ・U=明負悟や透龍のことを追跡したり攻撃したりしようとする者達に対して、何らかの形で厄災をぶつける能力だ。
遠隔自動操縦型のこのスタンド能力は、本体とどれだけ離れていても継続する。
もっとも今のところは、地図で言うとエリア1マス分しか離れていないが。
始まったばかりだからそこまで遠くまで行けてないのだ。
そして今、本体の透龍から離れた場所で、ワンダー・オブ・Uは見事自身の能力とユートピアメモリの能力の確認をしてくれた。
スタンドでもドーパントに変身できたし、ドーパントになっていてもスタンド能力はそのままだった。
そのようにした目的は、自分自身がドーパントにならないためだ。
自分が怪人となって、他の者達に警戒されたりすることがないようにするためだ。
そういった負の役割を、自身のスタンドであるワンダー・オブ・U/明負悟に押し付けようとしていた。
厄災の流れがそのままならこんな未知の小道具は必要ないと思えるかもしれないが、念には念を入れてだ。
もしかしたら、こちらの方から誰かに近付かざるをえない出来事だって起こるかもしれない。
本来のワンダー・オブ・Uだって、そういった事態に岩昆虫を持ち込んで利用することはあった。
「ガイアメモリってのは、他にも種類があるのかな」
透龍は、ガイアメモリに興味を持った。
説明書にも、ユートピアメモリはガイアメモリの一種だと、他にも種類があるかのような書き方がされていた。
ガイアメモリにも特殊な力があるのは分かった。
もし他にもたくさんのガイアメモリを手に入れる手段があるのなら、量産する方法があるのなら、新たな「ビジネス」の可能性になるかもしれない。
透龍は元々ロカカカという果実を利用したビジネスを行っていた。
これは食べることで体の異常な部位を他の健康な部分と「等価交換」できる特殊な果実だった。
ガイアメモリの研究ができれば、こちらの方も新たな発展をさせることができるかもしれない。
透龍は、自身が手に入れたガイアメモリのことも何とか持ち帰れないかということも考えていた。
◇
「しかし、アイツはいったいどうやって『厄災』に逆らって僕を連れてきたのかな……」
今回最後に透龍が気にすることになったのは、自分をこの殺し合いに巻き込んだ方法だ。
透龍はワンダー・オブ・Uの能力のおかげで、厄災によって守られている。
殺し合いに巻き込むだなんて、攻撃的な行為をしたならば厄災の流れの中に組み込まれないとおかしい。
爆弾入りの首輪を着けるだなんて尚更だ。
「そう言えばあいつ、この首輪は強力な力を縛り付けるとか言ってたよな……それか?」
思い出すのは最初に殺し合いの
ルール説明をしたベリアルと名乗った男の言葉だ。
その男の言う縛り付ける力で、ワンダー・オブ・Uの能力を弱めることができたのかもしれない。
透龍にとってはとても厄介なことだ。
この縛り付ける力の秘密も解き明かし、何とかしなくてはならない。
(とりあえず、僕自身はしばらく大人しくしておこうか……)
透龍の一先ずの方針は、しばらくの間は殺し合いには積極的な様子は見せず、大人しくすることを決める。
もし本当にワンダー・オブ・Uの能力が縛り付けられているのなら、まずこれを何とかするのが先決だ。
首輪についても、何とか外したいと考える者だっているだろう。
自分を連れて来れているということは、主催陣営はワンダー・オブ・Uの能力についても分かっている可能性がある。
向こう側の実情も知らなければ、無事に殺し合いをやり過ごせることもできないだろう。
『無事が何より』それが透龍のモットーの1つだと言える。
ガイアメモリについても持ち帰って研究したい、そうすることで新たな利益を得たい、首輪や主催陣営・殺し合いについても何とかしたい。
優勝すれば願いを叶えられるというのは魅力的だし手に入れられるのならば欲しい。
今はまだ絶対にそんなことができる保証が無いため積極的にはなれないが、本当にチャンスがあれば掴み取りに行く。
これら全てを、自分の無事を確定させた上で実現させたい。
そのためならば、どんな手段をとっても、何を犠牲にしても構わない。
主催陣営の言うように、最後に生き残るのが自分1人だけになっても良い。
最後に残るものは夢と思い出。
そう語る岩人間の男が手にしたのは、人から希望(夢)を奪う一人きりの理想郷の力。
積極的な破壊は無くとも、彼がもたらせるものは厄災の流れだけ。
岩人間は決して、人間とは本当の意味では相容れない。
【透龍@ジョジョリオン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:とりあえずは生還優先としておく
1:とりあえずしばらくは静観して殺し合いの流れの様子を見る
2:ワンダー・オブ・Uは別行動させておく
3:首輪を外す方法を探りたい、縛り付ける力とやらを何とかしておきたい
4:ガイアメモリはなるべく持ち帰りたい。他にもあるなら欲しいし作る方法とかも知りたい
5:手に入れられそうな利益あるものは是非欲しい
[備考]
※参戦時期は、少なくとも死亡するよりは前としておきます。他の細かい参戦時期は後続の書き手にお任せします。
「特殊状態表」
【明負悟(ワンダー・オブ・U)@ジョジョリオン】
[状態]:
[装備]:ユートピアメモリ&ガイアドライバー@仮面ライダーW
[道具]:
[備考]
※現在は透龍からエリア1マス分離れたところにいます。
※基本的には、ユートピア・ドーパントに変身してもワンダー・オブ・Uの能力はそのままとしておきます。
※何処かに木の棒、丈夫な木の棒、ボコ弓(+矢が何本か)、ボコブリンの角×2、青ボコブリンの角(いずれも出展はゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム)が落ちているかもしれません。
「支給品紹介」
【ユートピアメモリ&ガイアドライバー@仮面ライダーW】
ドーパントという種類の怪人に変身することができるガイアメモリの一種。
使用者をユートピア・ドーパントという怪人に変身させる。
ユートピア・ドーパントの基本的な能力は、触れた相手から希望などといった生きるためのエネルギーを吸い取り、自身の力とすることである。
また、変身した際に出てくる「理想郷の杖」を振るうことで重力操作をすることもできる。
変身するために必要なガイアドライバーという変身ベルトもセットで支給されている。
「NPC紹介」
【ボコブリン@ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム】
ハイラルにいる魔物の一種。
色ごとに更に種類分けができ、今回は赤と青が登場。
強さは基本的に赤<青<黒<白銀となっている。
倒すと素材として角などの体の部位を落とすことがある。
角は武器に付ければ攻撃力を上げられる
最終更新:2026年02月01日 21:40