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私の人生の主人公は、私じゃなかった。
それを悔しいとも、思えなかったあの時から。

私はずっと、脇役のままだ。


殺し合い。
その意味に実感も沸かないまま、姫崎莉波は呆然と歩いていた。

目の前で起こった人の死に、私はどのような感情を向ければいいのだろう。
真っ先に浮かんだのは、"ああなりたくない"という至極真っ当な想いだった。
脳裏に焼き付く死のイメージは、明確な恐怖となって私の足を駆り立たせる。

でも、だったら。
死にたくないのなら、殺す?

最後の一人になるまで、この催しは続くのだという。
それなら、どれだけ傍観を貫いたとしても、手を汚さないまま――潔白なままでなんて、いられるはずがない。

「……できないよ。」

目を閉じたまま、首を横に振る。
争いごとは、苦手だ。

アイドル養成校、初星学園。
自身の夢のために駆ける日々には、苦しいこともたくさんある。
辛いレッスンや、忙しい生徒会業務――などではない。
オーディションに通過するために、誰かの夢を蹴落とさないといけないことだ。

誰しも夢を抱いて、この業界に足を踏み入れている。
それなのに、明確な夢と言えるだけのものを持っていない私が、そんなアイドルの卵を押し退けていいのだろうか。

星南会長が一番星になった、H.I.Fの舞台。
あの時の私は、喜んでいた。
一年生の時から同じクラスで、星南会長の努力も人望も知っているからこそ、そんな彼女の実力が認められたのが嬉しかった。

麻央や燕ちゃんが抱いていた"悔しい"なんて想いは――私の中には、なかったんだ。

「私には、できない。自分が生き残るために、他の人を殺すなんて。」

そして――私には、なれない。
この殺し合いを打開するような"主人公"にも。
はたまた、そんな主人公の障害として立ち塞がる"敵役"にも。

廊下で偶然に出会って、少しだけ道案内をしたプロデューサー科の新入生。

キミは、もしかして――って。
その既視感に、気づいた時から。

アイドル活動に未来を見出せなくなった時に、都合よく駆け付けてくれる白馬の王子様なんていない。
仮にこれが物語であったとして、私は"脇役"なんだ――って、分かってしまったから。

私が、アイドルになりたいと思ったキッカケ。
キミと一緒に手を繋いで見た、あの花火の音が――段々と、遠のいて。

「……私、どうすれば。」

死にたくないけれど、殺したくもない。
そんな矛盾した想いを胸にしたまま、手持無沙汰に歩き回った。

そんな中――木々の生い茂る森の奥、誰かの気配を感じた。

「……誰だろう。」

今にして思えば、気が緩んでいた。
殺し合いを命じられたというのに、どこか抜けない"ゆめみごこち"が、私をその場へと無警戒に導いたのだ。

そこにあったのは、二人の人影だった。
黒髪の少女が、倒れた人を介抱しているように見える。

「大丈夫っ!?」

私は思わず、叫んだ。

「っ……!」

「あっ……待って!」

その声に驚いたのか、黒髪の少女は弾かれたようにその場から逃げ出した。
もう一人の人影は、支えていた少女が手を離したことでその場にどさりと"落ちた"。
自立するだけの体力もなかったのだろう。

……本当に?

足元のぬめりに気が付く。
地に伏せたもう一人の少女から流れ出ているそれが、私の足の裏にまとわりついた。

「……えっ?」

呆然としたままの私の脳が、次第に現実に追いついていく。
もう一人の人影が、どういう状態なのか。
黒髪の少女は、果たして本当に、倒れた人を介抱していたのか。

そして――黒髪の少女に"殺された"であろう目の前の"遺体"が、誰なのか。

「星南……会長……?」

初星学園の一番星にして、私の友人は――死んでいた。


【十王星南@学園アイドルマスター 死亡】


(支給品までは回収できなかったのが痛いところですが……ひとまずは良しとしましょう。)

木々の合間を走り抜けながら、四宮かぐやは次の立ち回りを考え始めていた。

ベリアルと名乗る存在がこの催しをどうやって開いたのか、その手段に覚えはなかった。
だが、そのようなものに巻き込まれる理由ならある。

総資産200兆円を誇る日本の4大財閥のひとつ、『四宮グループ』の令嬢。
その身柄ひとつが、グループの総帥、四宮雁庵への交渉材料になり得る……と、"そう思う者"がいてもおかしくはない。

それならばまだ、いい。
巻き込まれているのが自分だけなら、それでいい。

だが――もしもこれが『四宮グループ』ではなく、『秀知院学園』に所属していることに由来する案件だったら?

私の、初めての友達。
後輩に……初めてできた、"気になる人"。

巻き込まれているかもしれない"大切"を意識してしまえば――躊躇っていることなんて、できなかった。

(これなら、やれる。)

私は特に戦闘術の心得などない、ただのいち女子高生だ。
けれど、支給されていたのは大型の弓矢だった。
これならば、扱える。
弓道部で得た知見を以てすれば、相違点は的ではなく人に当てるという一点だけ。
その一点こそが集中を乱す最大の要因だが――自己暗示の要領で、撃つ己の肉体の動きにのみ意識を向ければ、不可能ではない。

会長に近づいても平常心を保つためのルーティンを身に付けるにあたって、意識のコントロール術は一通り嗜んでいる。

そうして木々に隠れ、背後から不意打ちで一人を仕留めることはできた。
時間が経てば集団が形成されていくことだろう。
そうなれば殺すのは一気に難しくなる。
せめて人数だけでも、減らしておかなくては。

(会長……。)

この催しに、愛だの、恋だのは、要りません。

だからどうか――あなたたちが、無事でいますように。


【姫崎莉波@学園アイドルマスター】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品 × 2~6
[思考・状況]
基本方針:これからの方針を考える

※参戦時期は初星コミュ4章4話~4章15話のいずれかです。

【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい】
[状態]:健康
[装備]:オーディンボウ@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品 × 0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝し、元の日常に戻る。
最終更新:2026年03月23日 01:28