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分からない。
考えれば考える程深みに嵌り、正解が見えなくなる。
少年、泉研の顔に浮かぶのは年相応のソレとは程遠い。
世の数学者達が難問を前にしたような、非常に険しい表情だった。

(あのベリアルという奴は、何者なんだろう?)

自分を含めた大勢を拉致し、爆弾付きの首輪を装着し生殺与奪の権を我が物に変え。
殺し合えと一方的に命じた挙句、反抗に出た女を殺害。
無邪気と残酷の区別も付かない子供が、蟻を踏み潰すのと同じ感覚で。
余りにもあっさりと、人が殺されたのだ。

もしも一連の首謀者が、自身の宿敵たるジュラル星人なら。
地球侵略の一環で殺し合いを開いたのだとすれば、話はそう複雑じゃあない。
実際、研も最初こそジュラル星人の卑劣な罠に落ちたのを疑った。
しかしベリアルの立ち振る舞いと言動を目にする度に、違和感は膨れ上がるばかり。
確かな根拠があっての事でなく、されどこれまで数多のジュラル星人を撃破して来たからこその。
言うなれば、直感が告げたのだ。

この男は、今までの敵とは何かが違うと。

仮にジュラル星人でないとすれば、人間の悪党だろうか。
銀行強盗やハイジャック等、犯罪現場に居合わせた経験はそれなりにある。
伊豆の囚人島に収監されて然るべき、凶悪犯というのなら。
殺し合いを始めるのも分からんでもない。

(いや、違う。あの男は僕が過去に見て来たどの悪者よりも、恐ろしい気がしてならない……)

地球侵略という目的を果たす為に、あらゆる非道な作戦に出たジュラル星人や。
人間が本来持ち得る欲望で、手を汚し続けた犯罪者とは。
根本的な部分で、悪意のベクトルが異なる。
自身の価値観に当て嵌める自体が間違いの、人の皮を被った悪魔だと。
稚雑な喩えだが、研から見たベリアルとはそういった男だった。

人の形をしているが、人間と思って良いのか分からない。
殺し合いを何故始めたのか、自分をプレイヤーに選んだ理由も何かも分からない。
人間とジュラル星人、相容れない両者の構図で完結していた研の知る世界へ。
突如毛色が全く異なる存在が現れ、自由気ままに蹂躙を始めたかの理不尽さ。
完全に未知の相手であり、分からないが故に恐ろしいのだ。

勝てるのだろうかと、一抹の不安がよぎる。
地球よりも500年進んだジュラル星人の科学力にさえ、互角以上に渡り合う自分の。
チャージマン研の力は、ベリアル相手にどこまで通用するか不明。
いいやそもそも、あの男の元に問題無く辿り着けるかだって断言は出来ない。
仮にジュラル星人が参加者にいて、尚且つ殺し合いに賛同の立場なら。
得物たるアルファガンが火を吹くだけだ。

(けれどもし、相手が人間だったら……)

殺さずに無力化する方法なら、研にだって取れる。
だが忘れるなかれ、ここはベリアルの庭も同然なデスゲームの会場。
伊豆の囚人島のような、凶悪犯を閉じ込める為の施設など存在しない。
人間が起こした犯罪を取り締まる、公的機関だってある筈がない。
拘束ないし意識を奪い、ベリアルを倒すまでの間どこか一ヶ所に監禁し。
事件が解決したら、改めて警察に引き渡す。
なんて方法が如何に困難かを、分からない研ではない。

ならば、手っ取り早く悪人は殺して無力化へ追い込むのか。
ジュラル星人にして来たのと同じく、熱線を撃ち焼き殺すのか。
馬鹿げてると、浮かんだ考えに吐き捨てる。
悪人を止める大義名分を掲げ、私刑を正当化するなど許される訳がないだろうに。

父である泉博や、吉阪博士といった頼れる大人も傍におらず。
ジュラル星人の仕業とはまた異なる事件に巻き込まれた緊張感が、早まった選択を脳裏に浮かばせたのか。
奥歯を噛み締め、険しさの増した顔で頭を振る。

「研くん、大丈夫?恐い顔してるけど……」
「な、何でもないよ。全然平気さ!良子ちゃん!」

パッチリと開いた目に覗き込まれ、意識を引き戻された。
身振り手振りで問題無いと伝える研を見つめるのは、頭一つ分小さな少女。
会場に送り込まれた研が最初に出会った、吉田良子と名乗る参加者。

出会い自体は特別ロマンチックでも、運命的でもない。
偶然スタート地点が同じだった為、ばったり遭遇。
建造物のガラス窓に姿が映ることからも、ジュラル星人じゃあないとすぐに判明。
何より不安気に震えている少女を、放って置く薄情な性根に非ず。
安心させるように話し掛け、近しい年頃なのもあってか向こうも警戒を解くに至った。

とはいえ、双方に一切の困惑を齎さなかったと言えば嘘になる。
まず第一に、良子はジュラル星人の存在を一切知らない。
研のいた地球では度々ジュラル星人が事件を起こし、時には大規模な被害に発展する事態も珍しくない。
今や小学生と言えども、知らないのは有り得ない地球外の侵略者の話を。
初見の物語を聞く顔で耳を傾けていたのが、ついさっき。

一方で良子の話も、飲み込むのには少々苦労した。
光と闇の一族、まぞくと魔法少女が共存する街。
水で薄めたカルピスよりも殺伐さは薄い、日常からはみ出た不思議で賑やかな日々。
ジュラル星人という、超常の存在と日夜戦う研と言えども。
良子の話に出て来る者達は、流石に初耳だ。

お互い、良くできた作り話と一笑に伏すのは容易い。
されど良子は齢9歳とは思えぬ程、聡明な少女。
研もまた戦いの日々を送り、時に大人顔負けの洞察力を発揮する少年。
自分達の命が掛かった場で、創作話に夢中になる意味が無いに等しいくらいは理解出来る。
だから疑問はあれど、嘘と決めて掛かって不和の引き金を引く真似はせず。
共に事実を話してるという形で落ち着いた。

「研くんが恐い顔になったのは、やっぱり良の話を聞いたから?」
「えっ?どうしてそんな風に思うんだい?」

内心の不安が顔に表れた原因は、ベリアルという得体の知れない男。
良子が語った内容は驚きと困惑こそあるも、負の念を抱かせる類じゃあない。
何故彼女はそう思ったのか、不思議でならなかった。

「研くんにとってジュラル星人って人、じゃなくて宇宙人達は倒さなきゃいけない相手なんだよね?」

それは勿論だと、肯首。
連中の目的が地球侵略であり、大量破壊や大虐殺も厭わない以上。
言葉で解決する段階はとうに過ぎた、力で以て対抗する他ない。

「けど良の知ってるまぞくは、偶に変な感じのひともいるけど……でも、みんな悪いまぞくじゃなくて……」

人間と、そうでない種族が深く関わる。
研は敵対、良子は共存という形でだ。
ジュラル星人の事を話す時、自分より一歳年上の少年は。
実年齢以上と思わせるくらいに、非常に真剣な顔になっていた。
宿敵の脅威を、ジュラル星人の犠牲になった数多の人々を誰よりも知るが為に。
自分と同じ小学生の彼が、無邪気さを放り投げた声色にならざるを得ないのだと察しは付く。

だから、自分が住まう多魔市の話は。
姉を始め、まぞくが人間の日常に溶け込み。
時に騒動を起こしながらも、最後には笑って事が済むような。
緩やかで、優しさに満ちた街角での日々は研にとって。
遠い世界の出来事であり、良い感情を抱ける類ではないのではと。
そう思ってしまった。

「……怒ってなんかいないよ。ただ、羨ましいとは思ったかな」
「羨ましい……?」
「うん。僕の知ってるジュラル星人にもね、悪者じゃないやつがいたんだ」

別に、良子の話へ不信感や苛立ち。
或いは妬みといった感情は、微塵も湧いてこなかった。
ただ、一つだけ思い浮かんだことがある。
良子が住まう多魔市でなら、彼らにも居場所があったんじゃあないか。
傷付け合う必要もなく、地球侵略とは無縁の日々を送れたのではないのかと。
今は亡き、二体のジュラル星人を想う。

ジュラル星人と知らぬまま助けたX-6号は、魔王の命令に歯向かってまで研の殺害を拒否した。
優しさと命の尊さを知った彼女なら、良子の済む街でも受け入れてもらえる筈。
剣道場の師範という立場で人間と関わったJ-7号は、同胞達に感情と心を説いた。
本当の兄のように大らかな彼なら、もっと多くの人々から信頼を寄せられるだろう。

もしも、もしもジュラル星人達があの二体のように。
捨て去った心を取り戻し、人間との争いを考え直してくれれば。
武器を向け合うんじゃない、手を取り合い地球で共に暮らす関係になれるのかと。
実現不可能な未来図を、目を瞑って打ち消す。

そんな都合の良い世界が有り得るなら、もっと早くにそうなっている。
X-6号達が粛清されたのは偏に、彼女らのような考えがジュラル星人の中では異端中の異端だからだ。
地球侵略の使命を忘れ、感情を捨て去れという魔王の命に背く反逆者。
連中にとっては人間を滅ぼす事こそが正しく、共存は大いなる過ちに過ぎない。
人間とジュラル星人は敵同士、その構図が覆る事はまず起こらないだろう。

(でも、良子ちゃん達は違う)

自分と、自分の周りの者達。
特に、姉のことを話す時の良子は。
自慢の家族と言わんばかりに、どこか得意気で。
傍らに彼女がいない寂しさと不安を、必死に押し殺すようでもあった。

ベリアルへの恐怖は、簡単に消えない。
人間の悪党を前にした時、どうするのが正解かだってまだ出せない。
しかし、己の為すべき使命は見失わない。
たとえジュラル星人とは異なる敵が相手でも。
悲劇を引き起こし、命を踏み躙り、愛すべき者達を引き裂くのならば。

「約束するよ、良子ちゃん。僕が絶対、君をお姉さんの所に帰してみせる」

チャージマン研は、必ずや悪へ立ち向かう。
光線銃や飛行メカ以上に、決して砕けぬ勇気という武器を持つが故に。

「そうだ!無事に帰れたら僕の家族も紹介するよ。家はロボットも一緒に住んでるんだぜ」
「っ!ロボットさん?凄い未来チック……!」
「お調子者で、いっつもドジばっかり踏んでるけどね」

泉研は、ヒーローなのだから。


【泉研@チャージマン研!】
[状態]:健康
[装備]:スペクトルアロー@チャージマン研!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~1
[思考]:殺し合いを止める。
1:良子ちゃんを守り、家族の元へ帰してあげたい。
2:ベリアルはジュラル星人ではないのか……?
[備考]
※参戦時期は43話以降~最終回前のどこか。
※スペクトルアローが本人支給される代わりに、ランダム支給品を二枠消費しています。

【吉田良子@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考]:殺し合いには乗らない、帰りたい。
1:研くんと一緒にいる
2:お姉たちもいるのかな……
[備考]
※参戦時期は不明。


『支給品解説』

【スペクトルアロー@チャージマン研!】
チャージマン研の強化スーツであり、研の普段着。
デカデカと描かれた「K」の一文字が特徴。
光のエネルギーを吸収し、チャージマン研へ変装する。
変装するとフィスシールド付きのヘルメットを装着し、胴体部分のアルファベットが「V」に変わる他。
アルファガン、ビジュームベルト、ガドロシューズ等の装備一式が自動で出現。
最終更新:2026年03月24日 19:01