ティンタンジェルにキャメロット。
本来ならば地名や城名であるはずのものが名簿に載っている。
ただし、トラロックもとい都市の擬人化テノチティトランの一例を知っている以上は特に違和感を抱くことはない。
見知った名前もいるようだが、重要なのはそこではない。
そこではない上で、この藤丸立香という少女は、運命の分岐点に立っている。
「ーー久方振りだな、カルデアのマスター」
「……妖精國の、って認識でいいんだよね。ーーモルガン」
女王モルガン。しかもその雰囲気と言い回しはカルデアのモルガンではない。
ブリテン異聞帯におけるモルガン。妖精國の女王。かつてトネリコであった少女。
その最期は、側近の裏切りにあって死んだ。としか聞かされていない。
彼女が真にどのような最期を迎えたかなど、藤丸立香は知りすらしない。
「……私が知らぬ間に、地獄を見たか」
「……」
「いや、詮索をするつもりはない」
それでも、その昏き双眸は藤丸立香という復讐者が経た旅路になにがあったかを、ある程度は見当がついている。
彼女をここまで変えたのは、それこそ自分と同じく「大切なもの」を奪われたから。
最悪の裏切りを以て、かつての救世主は愛する者を喪失した。
唐突な悲劇を以て、人類最後のマスターは最愛の家族と大切な"色彩"を喪失した。
(それに……)
モルガンがこれ以上藤丸立香の内情を探ろうとしたなかったのは、分かるものなら分かる魔力の淀み。
人格へと作用する暗示に近しいものが施されたのだろうか。それともそういう支給品(ぶつ)のせいであるか。
(厄介ではあるな)
普段ならいざ知らず、首輪によって科せられた制限がある以上。
この自分と同じく「振り切った」側にやってきた、藤丸立香を安易に殺すことは出来ない。
仮に彼女を殺したとして、その後の対処を考えるならば。
彼女にそうさせた、もとい感情の天秤を傾けさせた元凶に自分が被害に会うだろう。
「モルガンは、何も変わらないんだね」
「ーー何も、変わらない。ですか。……そうですね」
藤丸立香にそう問われて、モルガンが吐息交じりに言葉を返す。
思い知りはしたが、その本質は何も変わってはいない。
救うという行為の愚かさも、ただ唯一愛したあの娘への思いも。
「ーー何も変わらない。妖精共の醜悪さも。すべてを奪われた悲しみと憎しみも」
上辺だけ取り繕い、何度救おうとも気紛れに悲劇を齎す。
その理由がただ「気に入らない」という理由だけで。
聖剣作りをサボり世界がセファールに滅ぼされる元凶となり。
救いを与えた祭神の巫女をバラバラにする。
救いようがない、余りにも。
「私は変わらない。私が守ろうとしたのは己の國だけ。その國すらもう滅びたのだろう?」
「…………」
「何。ーー最初から期待などしていない。大方ノクナレア当たりは足掻いていたのは予想しているがな」
沈黙。それはもはや肯定との同義である。
モルガンの死後、新たにブリテンの女王となるはずだった王の氏族ノクナレアは殺害された。
それを皮切りに妖精國は大厄災の現出を以て滅亡した。
ノクナレアすら切り捨てた妖精たちに、救いなどないことは、分かりきっていたことだ。
「だが、全ては終わった。だからもう、どうでもいい。私が愛した彼女以外、全てがどうでもいい」
そして今、モルガンは妖精國の女王でも。ブリテンを救う救世主トネリコでもない。
ただのモルガンとしてここにいる。
今度は、自分の望みだけを叶えるために。
「カルデアのマスター、今の貴様に用はない。ーー"今"死にたく無ければ疾く去れ」
「……そうだね。私だって死ぬつもりはない。私は私が奪われたものを、家族を、キリエを取り返したいだけだから」
藤丸立香の瞳に映るそれは、燃え盛る炎。
全てを燃やし尽くす恩讐の炎。
恨みを晴らし、過去に決着を付けんがための漆黒の意思。
この彼女に、そこまでの決意をさせるとは。
後付けの原因はあるにしろ、それはかつてのモルガンの、トネリコがモルガンへと為った運命の分岐点にも似ている。
「……だから、私と契約しない?」
挙げられた提案は、予想自体はできたこと。
モルガン側にとってもメリット自体はある。マスターによる魔力供給というのは今の制約が掛かった状態で考えるならば悪くない誘い。供給があるというだけでもやることが増える。
この身は既にサーヴァントではないが、それは考慮する問題ではない。
断られた場合のデメリットも覚悟したうえで、藤丸立香はこの提案をしたのだろう。
思い切りの良さと、誰であろうと真正面から向き合うその姿勢は、狂ってもなお健在。
「……」
勿論、悪くない誘いだとして、彼女自体をどうするか。
不純物混じりの彼女を、どう扱うか。
はっきり言って、彼女の願い自体はモルガンにとってはどうでもいいこと。
だが、大切なものを取り戻したいという願いだけは、モルガンだからこそ否定はできない。
それに、彼女は「キリエ」という名前で呼んでいたが。
『初代妖精騎士』には、モルガン/トネリコは悪い感情を持っていなかったから。
少しばかりの熟考を経て、答えを返す。
「ーー今の貴様と、契約を結ぶ気はない」
「……っ」
「価値を示せ。せめて私に「利用する」気が起きる程度に、な」
モルガンが一度断った理由は、今の藤丸立香に宿る邪な力が原因。
契約のパスを経て不純物の混じりが悪影響を及ぼす可能性を考慮してのこと。
解析が出来れば、また別の話ではあるが。
それと、彼女に限っては「その時」まではしないだろうが、裏切りの対策。
とはいいつつ、半ば放任に近い、それこそベリル・ガッドとの距離感であろう。
あっちと違って、こっちは交流自体は積極的だろうけれど。
「ーー分かった。示せばいいってことなんだね」
「それで構わない。ーー私はキャメロットへ向かう。付いていくなら、勝手にしろ」
そうモルガンが吐き捨てようとも、藤丸立香の覚悟は決まっていた。
自分と同じく、道を選ばず、手段を選ばない。
それが、捻じ曲げられた感情だとしても。
「それにしても意外だった。貴様はそういう「自分のため」に怒り狂うようには見えなかったがな」
「……長く旅をしたら、変わっちゃうものだってある。それだけだよ」
「………フン」
愚問だったな、とらしくもなく心の内でモルガンは呟く。
どれだけ聖人君子だろうと、長く生きすぎればいつかは狂うものだろうか。
自分も、そうだったからか。希望を抱いた果てに、絶望に塗れて全てを諦めた。
妖精たちは救いようはない。どうしようもなく覆せない結末。
「……だが、妖精どもは変わらなかった」
「モルガン?」
「せっかくだ、話してやろう」
そういえば、藤丸立香はあの時起こった真実を何も知らないだろうと思って。
無知であることも愚かしいと、どうせ付いていくだろうというのならと。
ほんの少しの、同情心のような気紛れから、自分の死の前後で起こった事を。
(ーーーああ、そうか。わかっちゃった。)
歩きながらであるが、藤丸立香はその語りを聞き終えた。
女王の最後が、そのような悲惨で無惨なものであることを、全く持って知らなかった。
そして妖精の醜さを、これ以上ないほどに思い知った。
コーンウォールの村での、狂った妖精は知っていれど。
「ここまで悍ましいもの」だとは、思いもよらなかった。
『気持ち悪い……このブリテンが、ですか? 妖精と人間の住む妖精國が、気持ち悪いと……!』
『え。気に入ってたの、マシュ? すごいな。センスを疑うよ。』
だから、分かった気がする。
あの時のオベロンが、マシュの言葉にこう答えた理由が、はっきりと。
マシュはあの國を美しいと思っていたし、自分もかつては同じ思いだったけれど。
オベロンは、頑張っていたのを分かった上で。
(ーー心底気持ち悪いって。救いようのない、最低な世界だ)
モルガンの国は美しかったけれど。
あそこにいる妖精は、須らく終わるべきだった、滅ぶべきだった。
救う価値など、万に一つも存在しなかったと。
狂ったからこそ出せてしまう結論を、今の藤丸立香は肯定した。
【E-6/深夜/1日目】
【モルガン@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、魔力消費(中・回復中)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3
[思考]:願いを手にする。全ては愛しきパーヴァン・シーの為
1:一切の容赦しない。敵は滅ぼす。利用できるものは利用する。
2:付いていくなら勝手にするがいい、カルデアのマスター
3:キャメロット城へ向かう、余り期待はしていないが、念の為だ。
[備考]
※ブリテン異聞帯でのモルガンです
※参戦時期は退場後
※全体的に出力に制限がかけられています。
※藤丸立香(女)に、異聞帯での自身の最期の前後で起こった事を話しました。
【藤丸立香(女)@Fate/Grand Order】
[状態]:ラプソディ・イン・バーサークによる精神への暗示(極大)、憎悪(極大)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2、No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク@遊戯王ZEXAL
[思考]:優勝して、家族をーーキリエと取り戻す。
1:邪魔をするなら、誰も容赦はしない。
2:モルガンに「利用されるに値する」価値を示す
3:妖精どもは救われるべきじゃなかった。
4:キャメロットにティンタンジェル……テノチみたいな感じなのかな?
[備考]
※参戦時期は不可逆廃棄孔イド第十三節、鏡の向こうの自分自身に『キモチがよかった?』と問われた直後
※ラプソディ・イン・バーサークによって精神が影響を受けています。本来の藤丸立香(女)ではあり得ない行動や言動を取るようになっています
※ラプソディ・イン・バーサークの影響で四体のシャドウサーヴァントの操作精度が上がっています。
扱えるシャドウサーヴァントは『竜の魔女』『滅びの調べ』『怨の武者』『恩讐の男』の四体です。ただしオリジナルよりだいぶ弱体化しています。
※モルガンからモルガン自身の最後の前後で起こった出来事を知りました。
最終更新:2026年04月02日 21:35