願い。ベリアルの言葉に黒江と言う少女は冷めた感想しかなかった。
願いのために魔法少女になって、戦って。けれどその先はろくなものではなく。
最終的に行き着いたのはどうしようもないどん詰まりの状態からの死で幕を引いた。
彼女は強くない。環いろはのように、諦めの悪さも持ち合わせてもなかった。
どこまでも惨めで、生き恥を晒し続けて生きていただけとしか言えない人生。
魔法少女と言う耐えきれない重責も、死によって終わったかと思えば生きている。
転生したとか思えばそうでもない。懐にはソウルジェムが入っていたので今も魔法少女で、
変身してみればいつもの衣装も出てくる。それは何も変わっていない。それは、魔女化も含めて。
「……ッ。」
元の姿へと戻り、
胸元をぎゅっと握りしめながら歩いていく。
死んでも魔法使いから逃れることは許されない。
いつまで魔法少女を続ければいいのかと思ったら、死んでもこれだ。
どこにも逃げることは許してくれない。そう言われてるかのようでもある。
だから優勝して何とかしてくれ、と言うことで呼ばれたのかもしれない。
けれど彼女は自分の弱さを自覚している。魔法少女としての実力もやちよ程高くはない。
少なくとも生身の人間よりはずっと強い。マギウスの下っ端辺りの魔法少女ならある程度戦えた。
でも優勝となれば競争だ。上を目指さなければならない。いずれは格上と当たることもあるだろう。
それに勝てると思い込むだけの自信が、彼女は持ち合わせることはなかった。
かといって、魔法少女らしく殺し合いに反抗するかと言えば実行することもできない。
どこまで行っても強くあることができないだけの、どこにでもいるような普通の人間。
踏ん切りがつかない中途半端さ。どこまで行っても惨めに生きることしかできない半端者で。
なら、死んだことをきっかけに変われるか? そんなことも、できるとは到底思えなかった。
それができていれば、彼女はあのような結末を迎えて死ぬことだってきっとなかったのだから。
きっかけはいくらでもあっただろう。でも悉く彼女はその光へと手を伸ばすことができない。
少しだけ夢に思ってはいた。
いろは達と、並んで笑い合えるような光景とか。
もしかしたら、そんな可能性もあったのだろうと。
でもそうはならなかった。昔も今も自分の弱さを呪い続けるだけ。
他人を責めたりしないだけ、彼女はまだましなのかもしれないが。
「……そこにいるの、誰?」
それでも彼女は一応のレベルで魔法少女になる。
気配の隠し方が下手な相手であれば、気づくことはそう難しくはない。
後方の物陰に隠れているであろう相手は、足音もうまく消せてなかった。
気配を悟られてもいい相手にしては、ものすごく下手な行動としか受け取れない。
この辺の考えが出る程度には、戦いが身についているのだろうと乾いた笑いが出てくる。
弱いのに、そういうところだけは身に沁みついてる自分を自嘲したくなってしまう。
「わ、わたくしのことに気づくとは、さぞ名のある方とお見受けいたしますわ!」
出てきたのは子供だった。しかもかなり幼い。
赤いフリル付きのドレスと高そうな帽子の少女は、さながら人形のような愛らしさがあるだろう。
だが相手は小学生どころか、生後から程ないぐらいの身の丈しか彼女は持ち合わせてなかった。
とは言えちゃんと二足歩行で立ってるし、言葉遣いは少し独特だが声もちゃんと発せている。
耳は横に尖っているいわゆるエルフ耳で、その異様な体格も相まって人間でないようにも見受けられた。
ただ、此処は他の世界とも何かしらの関わりがあるようなので、他の世界ではそれが普通なのかもしれない。
「……違うわ。私は、そんなに強い人じゃない。」
「そうなんですの?」
「うん。もしかしたら、貴女でも殺せると思う。」
殺し合いで参加者と出会ったとなれば交戦は確実。
しかし変身はしなかった。と言うより、黒江には今抵抗する気がなかった。
このまま殺してくれれば、なんていう淡い期待すら心のどこかにあったからだ。
けれど、その期待は薄い。殺気らしいものもなく、隠せない足音や立ち居振る舞い。
全体的に、殺し合いに参加させられたとはとても思えないぐらいに弱弱しく見えてしまっていた。
悪党のような言い方だが、自分でも彼女は簡単に殺せてしまうと認識してしまう程だ。
「そ、そんなこと絶対にいたしませんわ!」
「……もしかして、本当は強いとか?」
何よりも、本人が全力で否定しに入ったからだ。
けれど殺し合いを是としないのであれば反抗する側。
神とまではいかないにしても、雲の上のような存在を相手するようなもの。
それを実現できるだけの力が、自分と違って持ち合わせるのかとも思うものの、それも違った。
「それ、は……」
気丈に振舞っていた様子だった少女だが、あっという間に萎れるように俯く。
態々幼い子供だからと油断してるような相手に此処まで無防備を晒すとは思えない。
言動的にも、多分彼女は戦いがそれほど得意ではないのだろうとも察せられる。
無力な被害者。魔法少女がいなければどうなっていたか分からない、一般人と相違ない。
「なら、これ。」
「え。」
彼女は背負っていたデイバッグを降ろし、目の前の少女に渡す。
相手側からすればわけが分からない。此処では武器が必要だが、
彼女は何も装備していない。と言うよりデイバック手を付けた痕跡すら見受けられない。
つまり、すべての支給品を無条件で提供してきたと言うことなのだから。
「私は、もういいの。悪い人に渡すのもちょっと嫌だから……」
どこまでいっても普通な彼女の、最後の良心の呵責。
殺し合いを受け入れることも拒絶することも選べない。
責任を背負うこともできない彼女にとって、唯一選べる放棄の道。
その考えがこれだ。責任の丸投げ。分かっている。こんなのもただの逃げだと。
理解している。自分の惨めさを。それでも、彼女には選択することができなかった。
彼女を殺すか? 年端もいかないであろう子供を殺せるほどブレーキは壊れてない。
彼女を守るか? 彼女を守れるだけの強さを持ち合わせていない。どちらを選んでも彼女を死なせる。
なら、最初から選択肢に入れない。名前も知らないあの子を助けようとも、協力しようとも思わず、
ただ自分の責任から逃れるように、自分が関与しないと言う選択肢を彼女は選ぶ。
せめて、この子だけは余り死んでほしくない。それが黒江にとっての今のささやかな願いだ。
「貴女は、どうするんですの?」
「私はもういいの。疲れてるから。」
そういって、近くベンチに黒江はもたれかかる。
死に場所としてお誂え向きとかそうは思わない。
ただ、適当に待つ場所が欲しくて探していただけだ。
支給品も手放した今、やることは何もないのだから。
仮に、知り合いが参加していたとしてもみんな強い魔法少女。
自分がいてもいなくても、さして違いはないと。
「なら、仕方ありませんの。貴女の疲れが取れるまで、一緒にいて差し上げますの。」
黒江の隣に彼女の小柄な身の丈に近いサイズのデイバックを何とかして置いて、
それを挟むように、少女がちょこんと相席をするように隣へと座りこんだ。
「えっと、私に構ってていいの? もっと頼れる人とか探した方がいいんじゃ……」
「貴女を放っておけるわけがありませんもの。」
「こういうと失礼なのは分かってるんだけど、私に構ってるほど余裕あるの?」
「……私の知り合いはとっても強い方たちばかりですの。
心配されることはあるとしても、私が心配することはありませんの。」
「なら、なおさら探して守ってもらう方がいいような。」
少女も強くないのであれば、身内と合流する方が賢明だ。
死ぬことを待っているだけの自分に構ってる余裕などない。
なのに自分の弱さを分かっていながら行動していない自分とは違う。
相手は、自分の弱さを分かっていながら此処にいることを選んでいた。
「『普通』は、そうなのかもしれませんの。
ですが、私はめでたしめでたしのハッピーエンドが好きなんですの。」
夜空を見上げながら、少女は手を伸ばして紡ぐ。
幼い身の丈の手では黒江の身長すら超えることはできない。
とても手を伸ばして星を掴めるようなものではなかった。
孤独、絶望、劣等感。彼女はそれに苛まれていた。
何にでもなれる。そう信じてやまなかった子供故の増長。
だが、世界は広い。彼女が身を寄せた組織に関わるものは豪傑ばかりだ。
皇族、貴族、騎士団、名高い軍師や錬金術師……数多の人の上に立つ傑物ばかりが関わる。
そうでなくても、何かしら一芸に秀でた能力を持ち合わせたものもいた。
動物と会話ができる、自身とペットが幽霊、国で奉られていた存在。
数えきれないほどの特別な存在が集まる場所。彼女は井の中の蛙のようなもの。
彼女の思う特別な存在とはごまんといるのだと。そして彼女は特別でもなんでもなかった。
まだ十二歳の子供だから、今はまだ弱いから、これからだから、そう考えもするだろう。
だが、彼女と同じ種族でありながら弱冠七歳で最強の集団の一角を担っている存在もいる。
種族は違えど守護者の役目を果たす少女、特別な武器に選ばれた少女、舞の継承者の少年。
同年代にも非凡な存在は何人もいた。彼女には、それだけの才能も、経歴も何もなかった。
彼女は何処まで行っても普通だ。ほんのちょっぴり計算とかが年の割に得意なだけの少女。
つまるところ、彼女はとても弱い。黒江の考えの通り。まともな武器すら握ったことがない。
ちょっとだけ、短剣を握ったぐらいだ。
「勿論、うまくいかないのは分かってますの。
私が経験した、あの時と違って誰も傷つかないのなんて絵空事とも。」
誰も傷つかない世界なんて綺麗ごとだ。
殺し合いを要求するのだから、願いを懐いて戦いに挑む人もいるはず。
流れる血もきっとある。犠牲者ゼロなんてこともきっとあり得ないと。
「ですが、だからと目を背けたままでは絵空事すら描けないことも知ってますの。」
でも、彼女は。
ドロッセルは特別な存在になれた。誰かにとっての特別な存在に。
なんにでもなれるとは思うことはなくなったが、それでも自分は特別な子になった。
だから彼女はこの殺し合いを止めることを絵空事だと言うことを理解していても、
諦めるような真似はしたくなかった。コルワのような、ハッピーエンドを目指したいと。
「……強いんだね、貴女は。」
「いいえ、全然ですの。」
そんな風になれたらいいのに。でも、私はきっとなれないんだろうな。
弱くとも眩い光を放っているドロッセルは、黒江には眩しい存在に見えてしまう。
ドロッセルが伸ばしたように、彼女も手を伸ばす。無論、星は掴めるはずがない。
地の底に意地汚く居座り続ける自分には、到底叶うことがないことだと分かっている。
誰もが平等で、不平等な殺し合いの中。
それに巻き込まれて此処にいるのは二人の少女。
どちらも特別でない少女であり、同時に特別な少女だ。
【黒江@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:割と虚無
[装備]:ソウルジェム@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:どうしたらいいのかな。
1:何をしたらいいのかな……
2:この子(ドロッセル)、どうしよう。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【ドロッセル@グランブルーファンタジー】
[状態]:不安
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:レディとして、がんばりますの!
1:彼女(黒江)を放っておけませんの。
2:団長さん達と合流したいですの。
[備考]
※参戦時期はSSR版、3アビ習得フェイトエピソード後。
最終更新:2026年02月12日 20:02