【弱肉強食】。
兵器という牙を研ぎ澄ませた現代において、捕食の頂点に君臨するのは人間のみとなった。
万物の霊長を謳う我々が──、
同種同士で──、
それもこれほど無慈悲に貪り食い合う──地獄。
神とてまさか、人が人を『喰らう』ことなど、想像だにしていなかっただろう。
◆
パンを焼くこと──と──人を壊すこと。
その男にとっては、どちらも同じ『丁寧な手仕事』に過ぎなかった。
ターゲットに選ぶのは決まって、善男善女の高校生たち。
彼は道端で、あるいは店先で。
至極まっとうな大人としての仮面を被り、彼らの懐へ入り込む。
毒がじわじわと回るように、自然かつ確実にだ。
連れ去った先は、誰の耳にも悲鳴が届かない、静かな作業場だ。
彼はそこで、獲物たちをじっくりと拷問していく。
ある被害者には爪を剥ぎ、ある被害者には耳穴に熱した鉄を突っ込む。
二十四人分、一人として例外なく、男はその苦悶を最後まで見届けるのだ。
命の灯火が消えた後、彼は遺体を物言わぬ『素材』として扱う。
備え付けられた焼却炉。
轟々と音を立てる炎の中に、彼はかつて誰かの宝物だったはずの身体を投げ入れる。
骨が砕け、肉が灰へと帰していく時間は、彼にとってこの上ない安らぎのひとときだった。
焼き上がった灰は、一粒たりとも無駄にはしない。
彼はそれをバケツに入れ、手入れの行き届いた自宅の庭へと持ち帰る。
「いい色に咲いてくれよ」と。
二十四の命を吸い上げたその証拠隠滅の庭は、彼にとっての墓標であり、そして同時に何物にも代えがたい『自分だけの楽園』だった。
しかし、そんな彼にしては珍しく、ある日決定的な『綻び』が生じる。
それは、これまでの緻密な計算からは考えられないような、あまりに初歩的なミスだった。
捜査の手が伸びてきた時、彼は驚きもしなければ、逃げようともしなかった。
どこか遠くを眺めるようなその瞳には、焦燥感すら浮かんでいない。
むしろ、長く続いた精緻なルーティンに飽き飽きし、自らその幕を引くために、わざと痕跡を残したのではないかとさえ思えた。
あるいは、庭の土がこれ以上、新しい灰を受け入れられないほどに肥えすぎてしまったからか。
彼は現在、東京拘置所の奥深くにて、死刑の時を待っている。
社会という名の安全な檻の外にいる僕らが、夜道で彼の影に怯える必要は、今のところどこにもないのだ。
しかし。もし。
何かの手違いか、あるいは神が退屈しのぎに仕掛けた悪戯か。
その鉄扉が音もなく開き、彼が再び街の雑踏へと放たれるようなことがあれば。
それは、『デスゲーム』などという言葉が、おままごとに思えるほどの、終わりのない悪夢の幕開けとなるだろう。
彼が恐ろしいのは、その手首に血がこびりついているからではない。
その指先が、香ばしい小麦粉の匂いに満ちているからだ。
まどろみの中にいるような優しい眼差しの、『パン屋のおじさん』なのだから────。
「……叶さん、だっけか。ヒカリちゃんのお姉さん。心配かい?」
「…………」
「彼女ならきっと大丈夫!──とは断言できないけどもね。……それでも、状況が状況だろう?──」
「──今は自分の心配を第一にすればいい。……お腹が空いていては、正しい判断もできないからね」
「……」
「ほら、メロンパン! お食べ!」
「!! はい……!!──」
「──榛村さん……!」
【榛村大和@死刑にいたる病】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:『遊ぶ』。
1:金剛ヒカリの精神を完全に掌握し、自分なしでは生きられないようにする。
【金剛ヒカリ@干物妹! うまるちゃん】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:お兄ちゃんに会いたい。でも、一人じゃ怖い。
1:とりあえずパンを食べる。榛村さんの言うことを聞く。
◆
僕が、榛村大和と出会ったのは、勉強漬けだった中学生の頃。
塾に行く途中のベーカリーで、優しい店主の彼と会話したことが、僕にとって唯一の温かい思い出だった。
彼と長らく接し、そして彼が捕まったのち、事件を調べていくことで、僕は分かったことがある。
榛村大和の被害者は共通して、『真面目そうな』高校生のみ。
──言い換えれば、『不真面目そうな輩』には、一切とて眼中にないのである──。
「はあ?! いやキショイキショイキショイ!! エグイっちゃおっさん!! ガキ、お前も何バカ正直に餌ば食いよるんか、これ絶対毒やろが(笑)」
「え……?」 「…………」
「つかおっさん何なん? 今の時代にパンて……せめてピザやろ! ボケ!!」
「「……」」
「……まぁよか、ガタガタ震えんなガキ。ベリアルだか何だか知らんけど、あんなスカした野郎。土俵(ここ)に引きずり下ろして顔面から埋めてやるんよ!!──」
「──この『猿桜』様がなっ!!!──」
「──Foooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!🖕🖕」
【猿桜@サンクチュアリ -聖域-】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:この『場所』の横綱になる。
1:弱そうなガキ(ヒカリ)とキモいおっさん(笑)を『俺の部屋』の付き人扱いして守る。
2:ベリアルとかいうスカした奴を土俵際まで追い込む。
3:腹が減った。
※支給品はすべて即メルカリに転売しました。
最終更新:2026年02月02日 21:55