アットウィキロゴ
「これが……空……?」

参加者としての首輪の下にも無骨な首輪を付けた白い髪の少女は、その赤い瞳で空を見上げていた。

「青くない……黒い……」

時刻は深夜。この空は青くない。星の瞬く夜空も美しくはあるが、本に書いてあったような眩しい青空ではなかった。
空に浮かぶ島などという超常的な現象には目もくれず、少女は無表情に夜空を眺める。

「違う……私は……私は、こんな風に空を見たかったんじゃありません……私はただ、博士と……」

白い患者衣のようなシンプルな装いと、機械仕掛けの翼と天使のような輪っか(ヘイロー)。

Artificial Angel…A.Aは、人工的に魔女を作る実験で生み出されたホムンクルスだ。産まれてからずっと実験施設にいた彼女は、空を知らない。

本来なら感情も心も持たないはずの彼女は、いつしか自分を生み出した科学者の女性を母のように慕うようになり、やがて彼女と一緒に「空を見たい」という夢を持つようになった。

けれど彼女……メルティーユ博士は教皇に殺された。理由は分からない。自分を連れて逃げようとしていたからな気もするし、教皇の口振りでは心の実験の一環として最初から殺すつもりだったようにも思える。
けれどメルティーユが死んだ時、何も見えなくなって、何も聞こえなくなって、足が震えて立っていられなくなってて、胸が痛くて……何も、何も考えられなくて。

「博士……博士博士博士博士博士博士博士博士博士博士博士博士博士博士ぇっ!」

メルティーユの死を思い出して、本来自分には存在しないはずの「悲しみ」に襲われたA.Aは、あれだけ見たかったはずの空ではなく地面に蹲る。

制御できなくなった魔女の力の暴走で、周囲が錆びついていく。錆の魔女……それがA.Aの魔女としての能力だ。本来なら国一つを錆で覆う程の力のあるA.Aだが、制限によって周囲の民家が錆に包まれる程度だった。

「私には、心なんてないのに……なんでこんな……こんなに苦しいのなら……なぜ博士は、私にこんなものを……」

ただの魔女とは逸脱した力を持つ、世界を滅ぼす「クリファの魔女」として覚醒するために必要なのは激しい感情。とても苦しいけれど、それでも「彼女」がくれた大切な不純物。

この殺し合いに呼ばれなければ、悲しいということすら理解できないまま激情に溺れ、哀歌(ラメント)を歌いながら災厄になってしまえた。今まさに全てを錆びつかせる存在になろうとしていた瞬間に殺し合いに呼ばれ、制限の弱体化のせいで厄災になりきれず、『心』も捨てられない。

周り全てを錆びつかせて、思い出に浸って、大して長くない寿命を使い切るまでそうしていれば楽だったのに。

「……寿命?」

『えーちゃん』

蹲りながらそこまで考えた時、メルティーユの悲しそうな声を思い出す。

「私は実験用ホムンクルス。魔女に覚醒したホムンクルスの寿命は、著しく短い……博士はこの話をする時、悲しそうでした」

『えーちゃん……ごめんね』

メルティーユは衰弱していくA.Aを見る時、いつも悲しそうだった。思い詰めたような表情をしていた。

けれどメルティーユが死んで、その時の感情でただの魔女ではなく、世界を滅ぼすクリファの魔女として目覚めて、絶大な力を手にしてから。



「博士……この錆の力に目覚めてから……調子が以前より良いんです。貴女がいなくなって、胸が苦しくて、頭が真っ白になってるのに、体だけは元気なんです」

─自由に動ける体なんて必要なかった。どこも痛まない肉体なんて嬉しくない。私が欲しいのはひとつだけ。
あの声を、あのまなざしを、返してくれれば、それだけで。

「私は人形。感情も願いも持たない、実験用ホムンクルス。使い捨てられるだけの存在。なのになぜ、こんなにも、願ってしまうのですか……」



「あのベリアルという男の言っていたこと……クリファの魔女を越える力なら、私の願いも……」

彼女は自分含めて『命』というものに執着していない。
メルティーユが声明活動を停止して「悲しい」けれど、自分が悲しいと感じているということを理解できない。もう会えない、もう話せない、もう色んなことを教えてもらえない。
それがどうしょうもなく胸を締め付けるのに、もう一度会いたいと狂おしいほど思っているのに、それが「大切な人が死んで悲しい」のだと分からない。

「……最後まで残れば……また、貴女に、会えますか?」

だから、むしろ本来なら心優しい少女であるA.Aだが、ベリアルの言う「殺し合い」に忌避感はなかった。

人形である自分や30682体の同胞の命よりは、普通の人間の命は重いということは知っている。けれど情報として知っているだけだ。命を尊いと思うには、心が芽生えたばかりのホムンクルスは幼すぎた。

無防備に蹲るA.Aを狙ってか、いつの間にか近くに来ていた、槍を持った白い四足歩行の獣。その白さと槍が、メルティーユを殺した教皇エルフリンデの姿と重なる。

「……戦闘行為を、実行します」

A.Aは自分が怒っていることも理解できず、武器にもなる自らの機械仕掛けの翼……『錆鉄の翼剣』を翻す。

獣は切り裂かれても戦闘を続けようとしたようだが、傷口が錆びついていく痛みには耐えられずに絶命した。

NPC、魔物とはいえ命を奪ったA.Aだが、思っていた通り、何も感じない。
ただ少し、胸の奥がチクリと痛むだけだ。メルティーユが死んだ時の感情に比べれば、些細な痛みだった。

「博士……また、会いたいです……」


それが彼女の願いであり、呪いだった。
そして彼女は自分の中の『感情』の赴くまま、歌を歌う。それは彼女の哀しみそのものと言える哀歌(ラメント)ーー「THE RUST」。
歌い始めた瞬間、彼女の左目にはⅦの数字が浮かぶ。心優しい「えーちゃん」ではなく、7人目のクリファの魔女「A.A」となった彼女は、歌いながら周囲を歩いて、他の参加者を探し始めた。


──朽ちてしまえ全部
どうせ消えるものならば
手招くのは希望の紛い物
だまされたいと願うくらい


【A.A@メメントモリ】
[状態]:健康
[装備]:錆鉄の翼剣@メメントモリ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いで勝利し、もう一度メルティーユに会う

1:周囲を探索して他の参加者を探す
2:でも、本当に博士に会えるのでしょうか……

※参戦時期はメモリー4話終了後。メメントモリはメインストーリーがあってないもうなものなので、A.Aとメルティーユのキャラメモリーだけ見れば書けますよ!!



「む、なんだこの声は……いや、歌か?」

灰色の顔面に異常なツリ目、六角形の口。およそ人間とは思えない異形の姿の男(?)は、聞こえてきた余りにも哀しいメロディーに足を止める。

「歌……音楽、か」

男─凶悪星人ザラブ星人は、突然聞こえてきた歌に耳を傾けながら、かつて交流のあった地球人の言葉を思い出していた。



『あら、絵だって人が生み出した素晴らしい文明のひとつよ。そう、音楽だって心を豊かにする為のね』


「ミツ子が死んだ時の気持ちを思い出させるような歌だ。心動かされはするが、豊かにはなれんな」

自分から「心動かされる」などという言葉が自然と出てきたことに内心驚きつつも、ザラブ星人は歌の方へ足を向ける。あの時は人間の心というものを理解できなかったが、今は違う。

大切な誰かがいなくなるのは苦しいのだ。まるで、自分の身を切るかのように。

(『悪い事』をすると、私はミツ子の家を出ていかなければならなくなる、そういう約束だからな……こんなバカげた催しには参加しない)


この状況で歌なんぞ口ずさむ輩がまともな可能性は低いだろうが、ザラブ星人は幸い戦闘能力には自信……というより単純な事実として、自分たちは地球人よりも遥かに頑丈で強い肉体を持っていると理解していた。

錯乱しているだけならば守り、積極的に危害を加えてくるような相手ならば制圧する。よほどの悪人であれば、まぁ、ミツ子も許してくれるだろう。


「と、この姿で行くと怯えさせてしまうな。だが私はあまり地球人の姿を知らん……もう二度と変身するつもりはなかったが、許せミツ子」

ザラブ星人の持つ能力によって、ミツ子の夫……別のザラブ星人が地球で取っていた、地球人の男性の姿を借りる。

「さて、まずはこの歌声の主を探すか」



【ザラブ星人@ウルトラゾーン】
[状態]:健康。地球人男性に変身中
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いには乗らない

1:歌の聞こえる方へ向かう
2:ベリアル……アイツも異星人か?どこかで聞いた名だが

※参戦時期は本編(ウルトラゾーン6話)終了後。ウルトラゾーン6話は現在YouTubeで無料公開中!
最終更新:2026年02月02日 23:00