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 赤髪の少年──グランにとって、この戦いは負けられないものであった。
 敬愛する父によってエイリア最強の戦士として育て上げられた自分は、こんな場所で腐っている場合ではない。
 グランという戦士には、責務があるのだから。

「……円堂くん、君との再会は少し後になりそうだね」

 ジェミニストームを破り、イプシロンを破り、ついには自分の所属するマスターランクチームとも対等に戦えるようになった雷門イレブン。
 故郷を、日本を救う為に立ち上がった彼らの成長ぶりは、理屈で説明できないほどのものだった。
 それこそ、エイリア石の力という禁忌に触れれば、自分たちをも超越した存在になるかもしれない。
 もっともそれは彼らの性格上ありえない話だが──と、グランは一人薄ら笑う。

 ともあれ、雷門イレブンは力をつけた。
 日本最強といっても過言ではないほどに。
 それを真っ向から打ち倒し、世界へ力を示す。
 それこそがグランにとっての使命であり、唯一の恩返しであった。

(さて、ひとまずは────)

 そんなグランにとって、停滞は許されない。
 この戦いは、雷門イレブンとの決戦へ向けたウォーミングアップでしかないのだから。

 ──人の集まるところへ行ってみようか。

 あのベリアルという男は気に食わないが、首輪という形で生殺与奪の権を握られている以上、下手なことはできない。
 常軌を逸した状況を前にしても冷静さを欠かず、方針を定めたグランは赤髪を揺らして振り返る。
 とりあえずは人の集まりそうな大きな建物を目指そうか、なんて年相応の考え。
 だがそこに、大人を頼るなんていう幼稚な発想は毛ほども存在しなかった。

(みんなに力を示さなきゃね)

 自分は選ばれた存在だ。
 お父様は正しいんだ。
 最高傑作である自分が敗北するなど、あってはならないのだから。
 力を持つものとして、相応しい振る舞いをしなければならない。
 奇しくも『特異点』と同じ名前を冠する少年は、そう決意を固める。

 グランは歩き出す。
 艶やかに逆立つ赤髪を揺らし、翡翠色の双眸は不気味に細まる。
 雑木林にびっしりと生える緑を踏み潰しながら、四歩進んだところで。


「────ヒロト?」


 突如、背後から声を掛けられた。
 反射的に振り返る。
 声を掛けられたことに、ではない。
 その『名前』を呼ばれたことに、総毛立つような感覚が襲いかかったのだ。

「やっぱり! ヒロト、ヒロトじゃないか!」
「キミは……レーゼか」

 振り向いた先にいた緑髪の少年には、見覚えがある。
 同じお日さま園で育てられた孤児であり、エイリアの戦士であった。
 いわばグランとは同郷の仲間。

 細まった視線はレーゼと呼ばれた少年へ。
 次いで、その少年の隣に並ぶ少女へと向けられた。

「その子は?」
「ああ、この人は秦谷美鈴っていうんだ。高校生らしい」
「……よろしくお願いします」

 月光映える紺髪を軽く揺らして、ゆったりとした所作で美鈴が頭を下げる。
 どうやらレーゼ──緑川リュウジとは殺し合い開始と同時に出会ったらしい。
 共に行動している様子からして、この催しに乗り気というわけではないのだろう。

 緑川としては出だし好調と言える。
 秦谷美鈴という自分と同じく殺し合いを反対する者と出会い、そして基山ヒロトという信頼できる仲間と出会った。
 三人集まれば文殊の知恵、このまま仲間を集めればベリアルの打倒も夢ではない。
 本気でそんな希望を抱いていた。


 しかし────


「セカンドランクのキミまで呼ばれていたとはね。なんの用だい?」
「な……っ!?」

 グランの目は、仲間を見るような目ではない。
 路端に転がる空き缶を見下ろすような、なんの感慨も滲ませないひたすらの闇だった。

「何言ってるんだよ、ヒロト! エイリアの悪夢はもう終わったじゃないか……!」
「終わったのはキミだけだよ、レーゼ。エイリアを追放された今のキミは戦士じゃない。そんな弱い人間と行動を共にしているのも、堕落した証さ」
「なにを、……どうしちゃったんだよ! 一緒に世界へ旅立とうって、約束したじゃないか!」

 知らないね、と一蹴するグラン。
 グランの目から見て、今のレーゼは異質だった。
 昔から変な言い回しをする奴だとは思っていたが、今対峙している存在はそれとはまた別方向で話が通じない。
 身振り手振りを交えて必死に説得を試みようとする姿は、滑稽を通り越して不気味だった。


「緑川さん、この方……本当にお友達なのですか?」
「ああ、そのはずなんだ……! けど、どうして……」

 エイリア学園を追放されて、レーゼの気がおかしくなったのかと思った。
 それならば奴の意味不明な言動にも辻褄が合うし、落ちこぼれの末路としてはお似合いだろう。
 マスターランクの下の下、セカンドランク程度の実力しか持たぬ者など会話の価値もない。
 こんなところで時間を浪費するよりも、一刻も早く力を示さなければ。

「──ヒロトッ!」

 耳障りな声が響く。
 グランの目は初めて、敵意という色に染まった。

「その呼び方、やめてくれないかな」
「やめないよ、お前の大事な名前だろう」
「セカンドランクのお前が、いつからそんな口を利けるようになったんだい? レーゼ」

 いい加減苛立ちが勝る。
 並の人間であれば後退るであろう気迫を出したのに、レーゼと呼ばれた少年は一切怯まずに踏み込んだ。

「オレはレーゼじゃない、緑川リュウジだ!」

 その様を見て、グランは認識を改める。
 当初は見逃してやろうかと思ったが、気が変わった。
 追放などという措置ではなまぬるい。
 グランという生き方を、父さんの考えを否定したこいつは生かしておく価値がない。

「もういい、黙れ」
「っ……ヒロ──」

 名前が最後まで紡がれることはなかった。
 サッカーという体裁を保った上で発揮されてきた膂力は、今この瞬間人を傷つける為に振るわれる。
 ルール無用のバトルロワイヤルは、決してスポーツなどという生易しいものではないのだから。

 瞬歩の如く詰め寄ったグランは、宵闇の半月を思わせる流麗な回し蹴りを放つ。
 頸を狙ったそれに一切の加減はなく、並の格闘家であれば反応さえ許されない。
 ましてやそれが落ちこぼれならば、首輪越しの衝撃に意識を刈り取られるのが運命。

 その、はずなのに。

「っ──、!?」

 驚愕したのは攻撃を受けた緑川リュウジではなく、下手人であるグランだった。
 鋭い蹴りは空を切り、生じた真空波が彼の前髪を揺らすだけに終わる。

 ──馬鹿な、完全な不意打ちだった。
 ──あれを見てから躱したのか。

 目を見開くグランに対し、緑川は険しい顔付きで見据える。
 蹴りの体勢から戻れていない今は反撃の好機なのに、緑川はそれをしない。
 それどころか、緑川は流し目で秦谷美鈴の安否を気にかけていた。
 遥かに格下であるはずの存在に手心を加えられているという事実が、彼の苛立ちを加速させた。

「秦谷さん! 君はできるだけ遠くへ離れてくれ!」
「それでは、緑川さんが……」
「任せてくれ、少し友達と話をするだけだ! 大丈夫、『舟は船頭に任せよ』ってね!」

 一瞬戸惑ったような表情を見せたあと、美鈴は意を決したように背を向け走り出す。
 遠ざかる足音が完全に聞こえなくなった頃、緑川は安堵する余裕もなく前方を睨む。

「本気なのか、ヒロト」
「だったらどうするんだい」
「そんなの……止めるに決まってるだろう!」

 怒号は開戦の合図。
 緑葉を透かす星灯りの下、二人の少年がぶつかり合う。
 ボールもグラウンドもない今、彼らが我を通す手段は──これしかない。







 紫色の疾風となり、グランは瞬足を披露。
 華麗な足捌きから放たれる足刀は、闇のエネルギーを纏っているような錯覚さえ覚える。
 剃刀じみた鋭さのそれをステップでやり過ごし、緑川がグランの肩へ掴みかかる。
 グラウンドでは一発ファールとなる行為も、この場では止める者はいない。

「っ……!」
「ヒロト! 目を覚ましてくれ!」

 左肩を掴まれ、そのまま体重を掛けられた。
 背中から地面へ打ち付けられたグランは、信じ難い光景に歯噛みする。
 視線は自分に覆い被さる緑川の顔ではなく、天に輝く星々に向けられていた。

「調子に……乗るなっ!」
「ぐっ!?」

 膝を屈ませ、力任せに緑川の腹部へ蹴りを放つ。
 胃から迫り上がる唾液を散らして、強制的に距離を取らされた緑川。
 その隙に跳ね起きで体勢を整えたグランは、即座に追撃を仕掛けた。
 噎せる緑川の脛を狙った細やかなローキックはしかし、片足を上げて防がれる。

「あのベリアルってやつになにかされたんだろ!? エイリア石のようななにかで操られているんだろ!?」
「悪いけどそんなものは関係ない、これは僕自身の意思だ」
「じゃあ、なんで……っ!」

 二度、三度。
 蹴り技の攻防が繰り広げられる中、彼らの会話が噛み合った瞬間は一度もない。
 それもそのはず、彼らは違う時間軸から連れてこられたのだから。

 レーゼ──緑川リュウジがここまでグランに食らいつくことなど本来ありえない。
 少なくともグランの知る時代では、レーゼとは天と地ほどの差があった。

 けれど、今は違う。
 雷門イレブンがエイリア学園に終止符を打ち、FFIアジア予選を勝ち上がった世界。
 日本代表選手として抜擢され、人一倍努力を積み重ねてきた今のレーゼは──エイリア最強の戦士にも遅れを取らない。

「オレは忘れてないぞ! お前がオレに掛けてくれた言葉を!」
「だからっ……なんのことだ!」
「みんなについていけなかったオレを、勇気づけてくれたのはお前だろ! ヒロト!」

 それどころか、ともすれば。
 エイリア最強のハイソルジャーをも、上回っているかもしれない。
 杞憂であれと、そんなグランの願望は間もなくして散ることとなった。

「っ、くらえっ!」

 MF(ミッドフィールダー)相手に正面からの近接戦は分が悪いと踏み、グランは傍らの地面を蹴り上げる。
 大抵の者が土埃を巻き上げるだけに終わるそれも、ハイソルジャーの脚力が合わさればもはや散弾銃も同然。
 秒速100メートルにも迫る土砂と小石の群れは、緑川の身体を貫かんと飛来した。


「──ライトニングアクセルッ!」


 ──稲光が迸る。
 名前の通り、雷速にも近しい閃光がグランの傍を駆け抜けた。
 反応など出来ない、出来るはずもない。
 瞬き一つした覚えもないのに残像すら拾えない事実だけを、グランの脳は理解した。

「っ、ぐ──!」

 咄嗟に背後へ振り返り、防御姿勢。
 両腕に伝う重い衝撃、中学生が放っていいレベルの蹴りではない。
 辛うじて直撃を防いだものの、グランの身体は大きく吹き飛ばされる。

「……やっぱり、言葉だけじゃダメなのか」

 なのに、緑川の声はどこか悲哀に満ちていて。
 エイリアの頂点に優勢のはずなのに、ちっとも誇らしそうじゃなくて。
 哀愁とも、自嘲とも取れる表情を見て、グランはなぜか動くことが出来なかった。

「オレも円堂(キャプテン)を見習って、『これ』で目を覚まさせるしかないみたいだ」

 そう言って、緑川はデイバッグに手を入れる。
 取り出されたのは酷く馴染みがあるように見えて、目を凝らしてみれば記憶にないもの。

「それは、まさか……」
「ああ、そのまさかだよ」

 とん、と『それ』が大地に弾む。
 青と白の模様に彩られた球状の物体。
 ザナルカンドという異世界にて繰り広げられる、ブリッツボールというスポーツに使われる道具。
 たかがスポーツ用品と侮るなかれ、使い手によってはモンスターをも屠る強固さを誇る。

 本来の使用者はこれを投擲用に使う。
 なるほど確かに、これ以上ないほど投げることに特化している。
 けれど、『蹴ってはいけない』なんていうルールはどこにも存在しない。


「アストロ────」


 ボールの側面を軽く後ろへ蹴り、回転を生む。
 回転は次第に勢いを増して、ボールを中心に強烈な引力が生じた。
 その様はまるでブラックホール──黒い稲妻を纏う球体へ、砂塵や木の葉は必然的に吸い寄せられていく。

 グランは驚きを隠せない。
 この莫大なエネルギーは、たかだかセカンドランク程度では作り出せるはずもない。
 マスターランクの合体技を持ってようやく拮抗できるかといったパワーは、グランに冷や汗を伝わせた。


 十全なエネルギーを蓄えたボールへ、あとは蹴りを打ち出せばいい。
 この必殺技がまともに繰り出されれば、今のグランに防ぐ手立てはない。
 たったそれだけで、緑川の勝利は確約されるのだ。






『少しは信じろよ、自分のサッカーをさ』





「っ──、ブレイクッ!!」


 闇色の奔流が、矢の如く突き進む。
 半円状に地表を削り、木々をへし折り、グランに照準を定める引力の集合体。
 迫り来る魔弾を前にしたグランは、恥も外聞も捨てて必死の形相を浮かばせた。

(避け──いや、ダメだ! ここで退くわけにはいかない!)

 これはレーゼからの挑戦状。
 それを避けるなど、戦士以前にサッカープレイヤーとして失格である。
 残された数秒の中でグランが取った行動に、緑川の顔は吃驚に染まることとなった。


「流星────ブレードッ!!」


 跳躍し、力強い回転と共にボールを蹴り込む。
 紫色の絶光がボールを包み込み、その輝きはすぐさま辺り一面へと撒き散らされた。
 しかし絶大な威力を伴う流星も、アストロブレイクを迎え撃つには役不足。
 そんなことは、こうして苦痛に顔を歪めているグラン自身がなによりも分かっている。

 押し負けるのは時間の問題。
 悲鳴を上げる右足は残り数秒ともたないだろう。
 そうなれば敗北──勝利だけが存在価値である自分の居場所は、どこにもなくなってしまう。

  ならもう、手段は選ばない。

「ハァァァァァアアアアアア──ッ!!」

 制限(リミッター)解除。
 エイリアスーツに施された最終兵器の発動。

 人間という生き物は、体の損壊を防ぐために無意識に安全装置を掛けている。
 普段発揮される筋力は、全力時の2、30%ほどしかないのだ。
 ならば、その100%を意図的に発揮出来るとしたら。
 そいつはもう、人間と呼べる存在ではないだろう。

 エイリア学園が育む戦士とは、そう。
 人間程度で留まっていい生物ではないのだ。

 猛進の限りを尽くしていたボールは、骨の軋む音を奏でながら衝撃を吸収される。
 緑川が必死の形相で何かを叫ぶが、決死に打ち返すグランには届かない。
 漆黒と紫電が織り成す明滅はやがて、後者に呑み込まれた。


 ────音は、ない。


 人間の耳が拾える領域を飛び越えて生じた爆音。
 遅れて届いた衝撃に打ち出されて、地平線へと流星が伸びる。
 アストロブレイクと流星ブレード、二つの宇宙的エネルギーが上乗せされたその威力たるや、砲弾ですら生ぬるい。
 ミニチュアセットの如く崩壊する雑木林を突き抜けて、神々しいまでの輝きが夜を照らした。







 息が切れるまで走ったのはいつぶりだろう。
 心臓が痛くなるほど本気になったのはいつぶりだろう。

 お気に入りの靴を泥と土で汚しながら、秦谷美鈴はそんなことを思っていた。

 乱れた髪の毛が口に入る。
 ──構うものか、今は離れなければ。

 肺が悲鳴を上げて吐き気が込み上がる。
 ──我慢しろ、死ぬよりはマシだろう。

 秦谷美鈴が立ち止まったのは、とうに雑木林など見えなくなった頃。
 大粒の汗を地面に垂らし、生理的な涙で目を潤ませながら、必死に呼吸を整えようとする。
 その姿は誰がどうみても、アイドルとは程遠かった。

 けれど、見た目に反して美鈴の思考は意外にも冷静だった。
 希望的観測などなにもなく、状況把握を完璧にできたと自負するからこそ思う。

(緑川さんは、おそらく──)

 その先を考えるのは憚られる。
 けれど飾り気のない言葉で片付けていいのならば、彼は死んだ。
 あのグランという少年の底恐ろしさを肌で感じ取ったからこそ、美鈴は確信する。
 実力がどうとかではなく、あの少年には目的を絶対に遂行するという揺るぎない決意が瞳に宿っていた。
 美鈴が恐ろしいと感じたのは、彼の強さではなくその意志の強さだった。

 そして、なによりも恐ろしいのは。
 数分前まで会話していた緑川リュウジの死を、あっさりと受け入れている自分。
 死という非現実が身近にない世界を生きてきたのに、なぜこうも適応できるのか。
 動悸のおさまらない胸を満たす、悲しいとも悔しいとも違う感情が、きっとその答えなのだろう。

(──あれが、まりちゃんじゃなくてよかった)

 もし殺されたのが、月村手毬だったら。
 その時はきっと、耐えられなかっただろう。
 無意識のうちに下された命の天秤は、当然のように傾いていた。

 生きたい、殺したくない。
 ただそれだけが願いだったのに。
 人間はやっぱり、なにかに縋りたくて。
 拠り所を探すかのように、美鈴はふらふらと歩き出した。


【秦谷美鈴@学園アイドルマスター】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:生きるために動く。
1:とにかく、殺し合いに乗っていない人を見つけたい。
2:知り合い(特に月村手毬)を探したい。

※参戦時期は初星コミュのいずれかです。







 感覚がない。
 身体を起こそうとして、全身に力が入らないことに気がついた。
 視界も朧げで、赤と白の混じったような色だけが映し出される。
 辛うじて呼吸はできているが、自分の状態がどうなっているか想像もつかなかった。

 なにか言おうとしても、言葉にできない。
 残された時間が少ないということは、いやでも理解できた。

 ああ、オレは死ぬのか。
 まるで漫画や映画みたいに陳腐なことを、改めて思う。

 分かってるさ。
 オレはまた、役に立てなかった。
 力不足だった、覚悟が足りなかった。
 そんな挫折を味わうたびに這い上がろうとしてきたけれど、どうやら『次』はないらしい。

 ──天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず。

 ジェミニストームとしていくつもの校舎を破壊し、何人ものサッカー人生を奪ってきた。
 その天罰が、今になって回ってきたのかもしれない。
 やっぱり、悪い事はするものじゃないな。

 けれど、神様。
 だからってこれは、あんまりだ。
 友達一人止められないなんて、ひどすぎる。

 これから先は言い訳になる。
 あの時、アストロブレイクを撃つ瞬間、もしもヒロトの言葉を思い出さなかったら。
 全力で必殺技を放っていれば、オレが勝っていたかもしれない。

 けれど、やっぱり出来ないよ。
 大好きなサッカーで、友達を傷つけるなんて。

 なあ、ヒロト。
 オレは正直、嬉しかったよ。
 絶対に手の届かないと思っていたお前を、あそこまで追い詰められたんだから。

 けれど、同時に寂しかった。
 オレに負けるヒロトを見たくなかったのかもしれない。
 だからさ、お前がアストロブレイクを打ち返した時──やっぱりヒロトはすごいな、って思ったんだ。

 頼むよ、ヒロト。
 これ以上、サッカーで人を傷つけないでくれ。
 サッカーは楽しいものだから。
 サッカーは希望をくれるものだから。
 殺すのは、オレで最後にしてくれ。



 ──ああ、やっぱり。
 オレ、悔しいみたいだ。



【緑川リュウジ@イナズマイレブン 死亡】









 何本もの木をぶち折り、岩肌に叩き付けられた緑川。
 打撲と骨折を繰り返し、見るも無惨な状態となった遺体を、グランは複雑な面持ちで見つめる。

「レーゼ、お前の言っていることは本当なのかもしれない。俺たちは雷門に負けて、エイリアは終わる……それが、お前の辿ってきた歴史なんだろう」

 自然と口から溢れる言葉は、かつての同胞への情けか。
 いいや、ちがう。
 あの瞬間にボールを通して味わった気持ちは、嘘ではなかったと確信できたから。
 だからグランは、緑川の言葉を信じることにした。

「だからこそ、オレは歴史を変える。雷門に勝って、父さんに尽くすつもりだよ」

 その上で宣戦布告する。
 たとえそれが正史でなくとも、紡いでみせる。
 絶対なる勝利をもって、父さんの復讐を成功させる。
 それが、今のグランの根底なのだから。

「これは貰っていくよ、……緑川」

 傍らに落ちたブリッツボールを拾い上げ、指で回す。
 続いて焼け落ちたデイバッグから散乱された緑川の支給品を、自身のデイバッグへ移した。

 最後に、健闘を果たした戦士へ敬意を払って。
 ヒロトになれなかったものは、道具の役目を果たすために歩き出した。



【グラン(基山ヒロト)@イナズマイレブン】
[状態]:右足にダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:ザ・ストライカー@FINAL FANTASY Ⅹ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3、緑川リュウジのランダム支給品×1
[思考・状況]
基本方針:ハイソルジャーの力を示す。
1:人の集まりそうな場所へ向かう。
2:円堂くんたちも来ているのかな。

※参戦時期はエイリア編、雷門イレブンとの決着前です。
※リミッターを解除することで限界以上の力を引き出せますが、消耗が大きいです。

【支給品紹介】
【ザ・ストライカー@FINAL FANTASY Ⅹ】
緑川リュウジに支給された武器。
見た目は青と白の模様のボールで、物理攻撃+20%のアビリティが付与されている。
最終更新:2026年02月05日 00:39