世の中にはいくつの平行世界が存在する。
同じようで、違う道を辿った枝分かれした世界。
空の世界にもそういうのが無数に存在していることがある。
最終的にそれらを統合することになったこともあったりするのだが、
詳しいことを話すとこの話は確実に無駄に長くなるので割愛させていただこう。
重要なのは、子供が駄々をこねるような声が周囲へと響く今の状況の方だ。
「ずるーい!!」
桃色の髪に焦げ茶色の制服の少女はじたばたと草原の上で暴れている。
暴れているとは言うが、少女の幼さもあり完全に子供の駄々をこねる構図そのものだ。
とは言え、幼いと言っても十代中頃に入りそうな彼女がやっては、中々に痛い光景である。
残りの二人も憐れむような眼で彼女を見ているのだから。
「どーして! なんで私だけが死んでるの!!」
暴れるのをやめて起き上がると同時に二人へと詰め寄る。
少女たちはよく似ている……を通り越して、三つ子のように似ていた。
一人だけは例外で白い制服ではあるものの、髪型、瞳、体格。
服装以外の容姿については、僅かな差異があれどほぼ同じである。
「いや、私もこっちと違って死んでるんだけど。」
ジト目になりながら、同じ制服の少女の方が否定の声を上げる。
こちらは暴れていた少女とまったくと言っていいほどのふり二つだ。
違うところを探す方が難しいレベルなそっくりさんであるものの、
否定するところはそこなのかと言うツッコミを待ってるかのようだが、
それを答えてくれる相手は何処にもいなかった。
「だとしても、私は戦えないまま終わっちゃって一番不遇だよね。
この状況で言うのもなんだけど、私が一番幸せってことなのかな。」
「パパやママにも会えたんでしょ?」
「うん。長くなるから簡単に言うけど、別に見捨てたわけじゃなかったよ。」
「……そっか。」
白い制服の少女が答えると、
残る二人もどこか寂し気な顔をする。
少女達の名前は『全員揃って燕結芽と言う名の少女』だ。
折神親衛隊に属し、若くして命を落とした天才の名を欲しいままに生きた刀使。
ただし、彼女達が辿ってきた人生の軌跡については少々異なるのだが。
最初に駄々をこねていたのは、衛藤可奈美と戦うことなく死んだ燕結芽。
他の二人と違って、何一つ救われてない刹那の人生を歩んでいった存在。
一番何も報われてない存在であり、一番納得ができないでいる状態だ。
ジト目で訂正していたのは、衛藤可奈美と戦って死んだ燕結芽。
可奈美達と戦うところは似ていたが、最期の顛末は結構違っており、
前述のとおり望んだ相手と戦うことができ、最期は相楽学長に看取られてなくなった。
終わりこそ迎えたものの、戦うことが、刻むことができたのだ。本人にとってこれ以上は贅沢だと思える。
他の二人よりも僅かレベルではあるが大人びていて、
白い制服で唯一服装が違うのは、死んだ後に生き返っている燕結芽。
特殊な経緯で生き返ったことで彼女は他の二人よりも先の未来を生きている。
ただ、日高見派と言った新たな問題にぶつかったりもしたりもするのだが。
最初出会った三人は揃ってドッペルゲンガーか何かかと思ったが、
唯一制服が違う結芽の話を聞いて、互いに同じ燕結芽だが顛末が違うことを知った。
俗にいうパラレルワールドの類であり、それぞれ異なる顛末を迎えている同一人物だと理解する。
ベリアルが言うにはほかの世界云々とは言ったが、並行世界の類だとは想定してなかったが。
ややこしいので、身もふたもないが以後彼女達はそれぞれアニメ版とゲーム版と漫画版と区別する。
「それにしても、色んな私がいるんだねー。」
暢気に結芽(ゲーム版)は呟く。
この中で一番人生を生きているのは彼女であり、
タギツヒメ以外の災厄やら何やらをいろいろ経験している身だ。
生きていると言う点も相まって、一番達観して落ち着いている。
もっとも、根本については結芽であることには変わりはないので、
どことなく楽観的な部分が見受けられるような声色ではあるのだが。
三人とも顛末は異なれどもおおよその生き方は同じである。
天才と持て囃され、しかし病に侵され、ノロを受け入れ、戦うことを選んだ。
だから殺し合いだどうだと言う極限状況に陥ってたところで全員焦ることはない。
仕事であれば人との戦いであった舞草壊滅だって特に遠慮はしなかったし、
これについては長生きしてる結芽(ゲーム版)も関係者には特に謝ってない。
だからベリアルにより人同士による殺し合いを宣言された状況ではあるのだが、
この先も人を相手することになるとしても「そっかー」程度の感想に近かった。
(なお舞草関係者には真希達が頭を下げてはいるし、本人も罪悪感自体もあるにはある)
「でもまあ、私なら考えることは結局一つじゃない?」
小悪魔めいた笑みを浮かべながら結芽(漫画版)が結芽(アニメ版)に語り掛ける。
結局行きつくところは一つ。満足して死ねたので未練はないと思っていたところに、
さらに先を生きた自分がいたのだ。衛藤可奈美と戦えただけでは満足しきれない。
言うなれば自分の未来の可能性を見つけたことになる。そりゃ生き返った顛末は相当難しいが、
数多の世界が交わっているこの舞台なら、今の病を克服手段があるかもしれなかった。
死んだ以上、不治の病が今も残っているのかどうかについては定かではないので、
一応あると言うこと前提として行動することにしている。
「そうだよね、私。」
「生きてても死んでても、生き方が違っても私は根本が変わらないんだよね。」
この殺し合いで優勝して病を治して元の世界に戻る。
それを叶えることも、恐らく可能と言えば可能かもしれない。
ただ、彼女にとって戦いとは、あくまで自分の強さの証明に使う手段だ。
殺し合いがしたいわけではないし、警備隊である結芽(ゲーム版)は特に忌避する。
高津、もといタギツヒメ側になって一時期敵対した夜見との戦いも経験してるのも大きい。
そのことを理解していることもあり、この中では一番忌避している状況だ。
(まあ過去には主君である折神紫を躊躇なく奇襲してたりもしてたのは三者共通なので、
あんまりどうこう言える立場かと言われると、大分怪しいラインにいるのだが。)
「決めた。結芽が結芽の中で一番強いって、証明する!
待っててね、すぐにこの戦いで追い抜いて見せるから!」
一番不完全燃焼である結芽(アニメ版)はそう宣誓して何処かへ行く。
衛藤可奈美と戦うこともできず、道半ばで命が潰えてしまった彼女にとって、
二度と訪れることのないセカンドチャンスだ。生き延びた未来の自分を見たのだから、
まだ見ぬ自分に到達する可能性があると感じるのは、そうおかしいことでもなかった。
「でもまあ、千鳥のおねーさん以上の敵がいたら面白いんだけどなー。」
生前は満足して死ぬことができた。
しかし更なる先を見てしまっては話が別である。
他の世界、他の自分。もっと自分が見えない高みがあるのかも。
そう思うと、結芽(漫画版)もまた自分の実力が何処まであるのか、
それを確かめずにはいられないので、自分の強さを確かめるべくどこかに行く。
二人とも行ってしまって、少し溜息を吐く結芽(ゲーム版)。
親衛隊のメンバーと一緒にいるようになったのも相まって、
ある程度共闘することについて嫌がることはなくなってはいるが、
あくまでそれは今の自分だけだ。過去の自分であれば、そりゃそうかとなる。
群れるのは弱い奴のする事。二人ともきっとその考えを変えるのには時間が必要だ。
様々なことを経験している彼女だからこそ今に行き着いてる部分もあるのだから。
「さて、と。私もがんばろっかな。」
本来は刀使が民事事件に介入することは禁じられているのだが、
流石に殺し合いとなれば、警察とかでは手に負えないだろう。
と言うより、死人が生き返ってる時点で既に異常事態なのは事実だ。
荒事と言うか、人の手に負えない案件であるのだからそうも言ってられない。
別の世界の自分達がどういう感じで戦っていくのか少し楽しみにしながら、
最後に残った彼女も何処かへと走り出した。
三人の燕結芽が舞台を駆け抜ける。
異なる世界から呼ばれ、されど同じ人物である天才剣士の物語。
【燕結芽@刀使ノ巫女(アニメ版)】
[状態]:消化不良、興奮
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:とりあえずいつも通りに。
1:他の私の人生、ずるすぎなんだけどー!
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【燕結芽@刀使ノ巫女(漫画版)】
[状態]:期待
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:強い人と戦ってみたい。
1:千鳥のおねーさんじゃ満足できないってわけじゃないけど……
2:もっと強い相手と戦えるのかもしれないなら話は別かも。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【燕結芽@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火】
[状態]:なし
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:警備隊らしく仕事する。
1:私、多すぎじゃない? もしかしてもう一人いない?
[備考]
※参戦時期はゲーム本編終了後。
最終更新:2026年02月06日 08:11