戦場跡──。
この、殺戮だけが置き去りにされた場所を言い表す言葉は、それ以上に必要ないだろう。
城と呼ぶには未完成、廃墟と呼ぶには過剰な、建設途中で世界から見捨てられた瓦礫の山。
その無価値な骸の隙間にて、──一人の哀れな東洋人が、火事場泥棒さながらに這い回っていた。
「ヒッヒヒィ……! あったね……! お宝があったね……!」
私は、そのボロ雑巾の如し男の名を知らぬ。
いや、仮に知っていたとしても、饒舌に語ることはなかっただろう。
奴は数行で消費されるために存在する、取るに足らぬ消耗品に過ぎないからだ。
ゴォォオオ、ゴォォォォォ……。
重く淀んだ硝煙に、不気味な風鳴り。
私のように波紋法を修めた者であれば、肺に取り込むことすら躊躇するほどの異様な気配を察知し、即座に臨戦態勢へ移行するだろう。
だがこの哀れな小悪党は、最期の瞬間まで、己の死の香りを理解することすらできなかった。
瓦礫の隙間で鈍く光る──『奇妙な仮面』。
奴がそれへ手を伸ばした、その刹那。
「──ぎいいっ!!? ぐぎゃぁあああっ……がああァァッ!!!」
待っていたと言わんばかりに、瓦礫の闇から伸びた『太い腕』が、奴の細い首を掴んだ。
それは、瞬きほどの時間である。
人間とは本来、呑気に血を吸う蚊を、意識する間もなく叩き潰す生き物だ。
だがこの瞬間、奴の脳裏には、もはや抵抗という二文字すらも浮かび上がる余地がなかっただろう。
抗う術もなく血を吸われ、東洋人は木偶人形の如く、砂利上にて事切れた。
瓦礫の深淵。
そこに潜む、爛々と燃える二つの赤い眼。
それは知性を宿す存在なのか。
あるいは、ただ飢えだけで動く捕食者なのか。
──どちらにせよ、確かなことが一つある。
「フシュゥゥゥ…………」
「フシュゥゥゥ…………、ガハ……ガハハハッ…………」
この『不可解な獣』こそが──今から私が語る【奇妙な冒険】。
そのすべてを回転させる『枢軸』との存在なのだ。
【ワンチェン@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
回想するは、城がまだ“城”としての形を保っていた数分前のことである。
城内にてこの時の私は、すでに亡き師――トンペティより授かりし訓戒を、静かに脳裏で反芻していた。
『ふと、壁を見てみるがいい。──』
『──蝸牛(かたつむり)が、片方の触覚を引っ込めていた時。その瞬間こそ、己の行いを省みよ。──』
『──それは、災厄と呼ぶには至らぬが、……往々にして“面倒な事象”が起こる兆しである……」
かつての修行時代。兄弟子ダイアーと並び、拝聴した至言である。
当時の私は、それを東洋の風水に根ざした、根拠薄弱な警句と捉えていた。
だが後年知った限り、蝸牛という生物は、暴雨の到来を察した際、触覚を引っ込める習性を持つという。
──では、師は『蝸牛は天気予報の代わりになる』と言いたかったのか。
────断じて、否である。
人間を辞めた今なお、私はトンペティ師を、唯一無二の超越者として敬愛している。
師が戒めたのは、自然現象そのものではない。
自然の微細な変化にすら気づけぬ――『己の心の揺らぎ』であった。
……そう。私は、迂闊であったのだ。
吸血鬼の肉体には必需品であるとの、思考停止かつ何となくな判断で、支給品の『サングラス』を着用したこと。
その行為こそが、まさしく私の心の揺らぎそのものであったと、今は認めざるを得ない……。
──まさか、壁を這う蝸牛ならぬ、『巨大なカタツムリ』と、
「アゲェッ? ちょっと陛下、ほら参加者ゲスよ!」
──軽薄という概念をそのまま具現化したかのような『一匹のペンギン』に、
「おぉああァアアア!!?? …………。──」
「──ガハハハ!! これはこれはカスタマーサービス君~! 貴様も『ばとろいわる』参加とは……まるで運命の出会いZOY!」
「一ミリも形容できてないのになにが“まるで”でゲスか」
──絡まれることになろうとは────。
「…………」
……暗黒の生を得たこの私にとって、これほどまでに【予測の外】にあり、これほどまでに【知る由もなき屈辱】は、
かつて、一度たりとも存在しなかったのである。
「ちょうどよかったゾイ! 今すぐここから脱出する魔獣を注文するZOY!」
「あーもうお前は黙ってろゲス!! アホなんだから!──」
「──……おいカスタマー、魔獣とか贅沢言わねぇゲス。なんでもいいから、脱出できるドア的なモンを出すゲス!」
「あぁあ~~? そんなドラえもんの神回みたいな都合いい道具、こいつが持ってるわけないZOY?!」
「どこでもドア回が神回は知らんでゲスが、とにかく言う通りにするゲスよ!!」
「もちろん、金なら気にするなゾイ! 百億デデンでも一兆デデンでも、王のポケットマネーで十分ZOY!──」
「──税率百パーセントにしてプププビレッジの愚民共から搾り取り! たりなきゃ奴らの家財道具一式をオークションにかけて、手数料も全部ワシがいただきZOY!──」
「──ガーハッハッハッハッハッハッハッハァァァァァァァーーーー!!!!」
「ほら聞いたでゲスか? 財源はこのバカでゲス! だからさっさと持ってくるゲス!!」
「……」
喋るペンギンに、毒を吐くカタツムリ。
神から言葉を授かった奇跡的生物共は、その知能の高さを疑わざるを得ないセリフを発し、私に絡んできたのだ。
名を『デデデ陛下』、『エスカルゴン』と言う。
そして私を、『カスタマーサービス』なる便利な存在と誤認しているらしかった。
……私は、今この瞬間ほど、己の指先より放たれる『波紋』を、この厚顔無恥な肉塊どもに叩き込みたいと思ったことはない。
だが、今の私は人間を辞めた吸血鬼。
師より受け継ぎし太陽の力を振るえば、滅びるのは私自身なのだ。……皮肉なものだ。
サングラスの奥で、沸き立つ殺意を必死に抑え込む私をよそに、馬鹿二匹は今日も今日とて軽薄極まりない会話に興じている。
「ワシはサウナ1時間はいれるZOY」
「陛下に裸見せるの恥ずかしいからイヤゲス」
「ぉあああ?? まだ何も言ってないのにZOY……」
「そう」
「グフフ……! 貴様はバカだから知らんだろうが、サウナって70分くらいから本番なんZOY……!」
「それより銭湯って服脱ぐとき、誰に教わったわけでもないのにフンッて深呼吸しちゃうの、あれなんででゲショうな~~?」
「わかるZOY! カービィみたいになるZOY!!」
「でもお風呂上がりはやっぱりコーヒィ牛乳って感じゲスな!」
「おいおい貴様コピーされとるZOY!?」
「「ガーハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」」
……何故、『吸血鬼』である私が、こやつらを『波紋』で殺したいと思ったか説明してやろう。
ゾンビにも程度の劣る脳漿、そして色んな意味で薔薇色な血液を、網膜に入れたくないためである。
会話のドッジボールどころか、お互いに違う競技のボールを投げ合っている惨状……。
鼓膜を炙り、精神を摩耗させる拷問的雑談……。
ジョースター一族が血反吐を吐きながら吸血鬼対策を練っているその裏で、このバカ二匹は、いとも容易く対吸血鬼策を完成させてしまったのである。
……感服というわけか、もはや拍手の一つや二つせざるを得ないものだ。
「公園ってブランコあるでゲしょう」
「あぁ深夜にカワサキのやつが座ってるやつZOY」
「……慰めてやれゲス」
「……」
もはや本来の目的である私(カスタマーサービスとやら)は、完全に置き去りにされている。
無論、当然の疑問が生じるだろう。
『なぜ貴様は苦痛と思う会話を聞いているのだ』『黙って去ればいいのに』──
──正論である。返す言葉など、すでに人間を捨てた私には見当たらぬ。
────ならば、正論には『師の言葉』で返すまで。それが私の流儀だ。
……愚かな珍生物二人どもめ。
鼓膜が破れようとも構わぬ。師の訓戒を、その脳髄へ直接叩き込んでやろう。
『人は『毒』を嫌う。なぜなら、平穏という名の現状維持こそが、人間にとって最大の歓びだからだ。──』
『──しかし、その現状維持は、人が思うほど容易ではない。高く飛びすぎず、かといって地に堕ちもせず、水平を保つこと。それは、私とて未だ完全には成し得ぬもの。──』
「──ゆえに、人は『毒』を自ら喰らうしかないのだ…………ッ」
「……あ?」 「なんだ急に我だしてきて……。寂しいのかZOY?」
…
……
………
『毒には毒なりの、人々の視線から守り抜かれてきた“神秘”というものがあるのだ────』
………
……
…
「──カスタマーだか何だか知らんが、よく聞け。脱出道具などより、よほど『面白いもの』を私は見せてやろう」
「面白いもの……ゲスか?」 「ワシの作った最強のクソアニメ・星のデデデより面白いのかZOY?」
「……特にデデデとやら。黙って聞いていれば、王だの陛下だのと、随分と偉そうだが……私には、貴様は奴隷にすら値しない存在にしか見えん」
「ぁあああ!!? き、貴様……商品よりも先に喧嘩を売り付ける気かZOY?!」 「……! ……っ!ww」
「売り付ける? 笑止。私は貴様らに金はねだらん。……それに――」
私は、静かに言葉を継ぐ。
「――すでに、貴様らの手中に商品は『ある』のだからな」
「あぁ? ぁあああ~~~~????」 「はいぃ??」
「デデデ。貴様が持っている────その『仮面』。はめてみろ。──」
「──…………『王位の復権』、私に見せてみるがよい」
「「え???」」
私の鼓膜が、ファーストコンタクトの瞬間から捉え続けていたものは、ただ一つ。
愚物には、あまりにも不釣り合いな支給品──『石仮面』のみ。
このストレイツォ────どうやら実に都合のいい実験台に、出会ってしまったのである───。
………
……
…
◆
【♪BGM 『王位の復権:D.D.D.』】
「ククク…………」
「ゲヒヒ……ヒヒヒ…………」
廃れた城──。
瓦礫の頂にて、重なり合う二つの下卑た笑い声──。
今は満月が過剰なまでに自己主張を続ける深夜である。
だが、かつてこれほどまでに“朝焼け”の到来を待ち望んだことが、私の内にあっただろうか。
無論、その意味合いは断じて、私の視界を占拠する二体の『吸血鬼』の死滅を願ってのことではない。
「ハッキリ言って私は、アンタの語るディオだの柱の男だの、サッパリでゲス。その妄想センスを本にすれば芥川賞なんて買えたも同然ゲスよ」
「…………」
頂より私を見下ろす大臣。
嘲笑を浮かべる、────Dr.エスカルゴン。
「だが礼を言うZOY。我が旧愛にして、有能の化身──カスタマー・S・サービスくん……!」
「……『ストレイツォ』をミドルネームにするな」
そして、瓦礫を玉座代わりに座す王。
仮面の奥から、満足げな気配を滲ませる──マスクド・デデデ。
「……愚かな」
「「うお! メタナイトのセリフ!!!wwww」」
「……」
──私は、この二人にこそ相応しい神輝を、皮肉抜きで求めていたのだ。
…………感涙しているわけではない。
だが、奴らの背後に揺らめく“何か”を感じ、そのせいで輪郭が滲んで見えるのは何故だろう。
「だが聞けS……!」
「……ミドルネームで呼ぶな」
デデデは、ゆっくりと口を開く。
「今貴様の目の前にいるのは……王っ…………! まぎれもない、純度100%の放射性物質ゾイッ…………!」
「……」
かつてのディオ・ブランドーは、そのカリスマ性によって、イギリスを影から蹂躙したものだが。
──だが、これは違う。
「──ディオ? トンペティ? 男柱? ……ガハハハハ! 笑わせるな! そいつらはもう死んだ……! 過去の遺物ゾイ…………!」
「……」
「ククク……! 伝記もいいけどたまには『リアル』を見るべきゾイよ? Sくんっ…………!」
確かに、ディオのそれとは異なる。だが、それでいて──確かに『同質』。
私が見上げるデデデには、『王』としての光が、確かに宿っていた。
奴に比べれば、今の私など、人間を餌とするだけの血食生物。もはや有象無象に過ぎぬ。
かつて忌み嫌っていた言葉の一つ一つが、今は甘美な響きを伴って、鼓膜を撫でるのだから、不思議で仕方ない。
──ならば。
王に従う愚民が為すべきことは、ただ一つ。
「──ワシと、このエスカルゴンこそが……真の巨悪にして……最大の独裁者……。悪魔、鬼、ヒトデなしのデブサディスト……。──」
「──この世の全ての参加者が恐れる【ナイトメア】であることを…………、──」
──言うまでもない。
王のありがたい宣戦布告を、ただ拝受するのみだ。
「────『証明』するまでZOYッ!!!──」 「あ、ついでに私も被せるでゲス!」
「「──ガーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!! ダーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」」
……ジョセフ・ジョースターよ、聞け。
貴様が未来、相対することになる敵は、一筋縄ではいかん。
──否。
その“一筋縄”で、貴様自身が首を吊ることになるほどの、人類史上最大の『独裁者』が、デデデ陛下なのだ───。
「…………木登りもできぬようなバナナ猿がッ」
無論、以上全ては皮肉である。
【デデデ陛下@星のカービィ(アニメ)】
[状態]:吸血鬼(石仮面装着)、全能感(MAX)
[装備]:メカハンマー、石仮面
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1
[思考]:
1:王の挑戦ZOY!
2:血をたくさん飲んで、ヒルになるZOY! 行く末は南ちゃんを追放して『ヒルナンデデ』をプププビレッジ住民全員に強制視聴させるZOY!
3:吸血鬼パワーで、サウナに140分くらい入れる気がしてきたZOY!!!
4:メタナイト! お前のそれも石仮面かZOY?!?!
【Dr.エスカルゴン@星のカービィ(アニメ)】
[状態]:吸血鬼(粘液が猛毒化)
[装備]:基本支給品一式
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1
[思考]:
1:吸血鬼の力があれば、陛下にバレずに反旗を翻して、私が真の独裁者になれるゲス!
2:とりあえず、このスカしたサングラス野郎(Sくん)の資産を全部差し押さえるでゲス。
3:歴史の教科書に「ストレイツォを顎で使った名宰相」として名を残すでゲス。
【ストレイツォ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:吸血鬼
[装備]:シュトロハイムのサングラス@ジョジョ
[道具]:基本支給品一式
[思考]:
1:この保健所に連れられた犬畜生にも劣る低能二匹で『実験』。
2:殺し合いなど知らぬが、ディオを超えた惨状の暁には、永遠の美を願うまでだ。
※参戦時期は戦闘潮流。スピードワゴン財団殺した直後あたり。
最終更新:2026年02月25日 19:19