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 え~……『火の用心』。
……皆さんは、この言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか?

一つは、この文字が書かれているのは大抵、……張り紙だということ。
もう一つは、その配色。
赤地に白、あるいは白地に赤。
まず、パステルカラーの『火の用心』なんてものは、……お目にかかったことがありません。
それから、ガソリンスタンド。
……あそこには絶対に貼ってありませんね。
ええ。だって用心してどうにかなるレベルじゃありませんから。

まぁ、要するにですね。……この言葉は『喫煙所』にあるものなんです。
タバコを吸わない方にとっては、一生、視界に入れる必要のない四文字。
ざっと、そんなイメージです。


……ところが。……私、先日すごいものを見ちゃいましてね。


 貼ってあったんですよ。
偏差値がおよそ20台と思われる高校の、廊下に。

……一体、誰に向けての、メッセージだったんでしょうか……?


【古】─────────────
【畑】──────────
【任】【三】【郎】──


【古畑任三郎@古畑任三郎】


────────────【a】
───────────【z】
──────────【u】
────────【r】
──────【e】
────【s】
──【k】
【y】



■  □


【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ@天空の城ラピュタ】

【──『たとえ主催者が神を気取っていようとも関係はない』『……この兵を動かす鍵の真理を知るのは、古文書を継承したこの私だけだ』】




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『あなたが何をしようと勝手です。……私は別に倫理とか法律の話をしたいわけじゃない』
【Ah hell welcome to my feast】

『初対面でこう言うのも妙ですがね。……要するに、言い換えると、こうです』
【Yes tonight my take the lead】



【『焔の眼』】

 ラピュタが地上へと堕ちて七百年。
私の胸奥に潜んでいた野心へ、決定的な『火種』を投じたのは、斯の少女が携えていた青き結晶。
――あの冷ややかで、慈悲を欠いた輝きだった。

少女──リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ。
トエルの末裔が、何ひとつ知らぬまま安眠を貪るその裏。
我が一族──パロ家は解読すら拒む古文書を抱え、文字通り闇の中で時を待っていたのだ。
その淀みにも勝る暗晦は、先祖代々の『研究・解読を成し遂げれず寿命を迎えた無念』『ラピュタへ戻れなかった悔い』により、重く積み重なっている。
私がラピュタの話をするたび、愚かな人畜共にロマン家とバカにされることが多々であったが、これは私一個人的趣味というわけではない。
王の末裔としての矜持──すなわち一族の執念を背負っての重みであるのだ。


 私の名はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。階級は大佐に位置する。
現在の私は、一介の特務機関員として、カレンダーの日付を塗りつぶす毎日だ。
無論、本来ならば空中都市の王である私が、斯様な現状に満足しているとは方便でも言うつもりはない。

軍の驕慢な連中に頭を垂れ、無能な上官の機嫌を取り続ける日々。
軍部は、あの空飛ぶ城を巨大な兵器と信じ、特にモウロという無能は略奪の幻想で、既に酔い痴れている。
──救いようのないゴミとは、まさしく彼らを現すものだ。
知恵を継がぬ者どもに、城が秘める真の神罰。
すなわち、世界を支配する絶対の力を理解する脳も、扱う資格もあるはずがない。
とどのつまり、私とは、豚の餌に紛れ込んだ『真珠』──……などといっては、自惚れと思われそうだが、決して構わない。
この屈辱はすべて、『あの瞬間』へ至るために設えられた、安っぽい舞台装置に過ぎないのである。

 パズーという少年を使い捨て、少女の心を折った今、封印は解かれ、歴史の歯車は再びパロの手に戻ろうとしている。

孤独な研究の日々。
一族の憎悪にも酷似する執念。
そして政府の犬として啜ってきた泥の味。
そのすべては、まもなく天上より落ちる雷によって、余すところなく焼き払われることだろう。

空は、再び王の帰還を待っている。
我らラピュタの真なる王家が、世界を統べ直すその日は――


────すでに、目の前にあるのだ。


「…………何故、これが……。──ロボットの兵隊……」


 ──繰り返そう、『目の前に』あるのだ。
 今の私は、あろうことか殺し合いなどという、野蛮極まりない遊戯に参加させられている。
しかし、皮肉にも支給品として私の前に鎮座しているのは、他でもない『あのロボットの兵隊』なのだ。

金属なのか粘土なのか、それすら我々の科学力では判別できない──このボディ。
ラピュタの絶対的テクノロジー──その核心の生命反応を示す点滅。

疑いようがない。
こいつは本物だ。しかも完璧な状態だ。
……私は思わず、乾いた笑いを吐き出さざるを得なかった。


「……はは、ははははは! はは……、はは…………。──」

「──……死ね…………ッ」


 ……クッ、この私に呪詛を吐かせるとは、実に腹立たしい。
ベリアルなる男の素性など知ったことではないが、私にとっては癪に障って仕方がない存在だ。
何せこの主催者とやらは、まるで子供がおもちゃ箱から取り出すかのように、無造作にこの聖なる兵を用意してみせたのだ。
私でさえ、現物の確認はティディス要塞地下に眠る、あのマリオネット同然の動かぬ死体しか許されなかったというのに。

……何者だ、主催者は。
いや、それ以前に。
この殺し合いという概念――今この場にいる八十名余りを等しく縛り上げている、この支配構造そのものが、私の理性を蝕み、脳髄を掻き回す。

パロ家が七百年を費やして追い求めてきた『神の片鱗』。
──それを、まるで道具のように差配する力。
その感覚は、かつて私が手にするはずだったラピュタの全能感に酷似しており、
──同時に、私自身が『見下ろされる側』に回っているという事実に、激しい吐き気を覚えた。


──だが、だ。


「……だが、いいだろう。このロボットが動くというのなら、話は別だ」


そうだ。
たとえ主催者が神を気取っていようとも関係はない。
この兵を動かす鍵の真理を知るのは、古文書を継承したこの私だけだ。
この屈辱、まずはこの場にいる八十名のゴミどもを掃き溜めに届けることで、晴らさせてもらうとしよう。


「──……最高のショーを今、お見舞いしてやる」


私はそっと、ロボット兵の冷徹な外装へ指をかける。
――まさしく、その瞬間だった。


「……お忙しいところ、少々よろしいですか?」

「──ッ。…………なにかね」


 背後から掛けられた、粘り気のある穏やかな声。
振り返ると、そこには黒いスーツに身を包み、いかにも場違いな男が立っていた。
自己紹介は割愛する、とでも言いたげな間を置き――
やがて『古畑』と名乗ったその男は、弔問に来たかのように首をわずかに傾け、私を見ている。

「……申し訳ない。私は今、支給品の確認で忙しいのだが」

「ええ、ええ。分かっております。──」

「ですが、その……まあ、軽い雑談というか、ええ、忠告のようなものを少し」

「……なに?」


古畑は懐から取り出したセロハンをいじりながら、視線を私の手元から、さらにその上へと向けた。


「いいですか、ムスカさん。世界には、あなたの知らない『目』が至る所にあるんです。──」

「──どこで誰が、あなたのその指先の動きを見ているか分からない。……そういう場所なんですよ、この世というのは」

「……結論から言ってくれないか。視力の話をしたいのなら、私はあいにく自身があるほうだ」

「ほうほう~、いやあ申し訳ない。……無駄話が悪癖でしてね、私」


私が冷笑まじりの皮肉を浮かべると、古畑は深い溜息をつき、額に手を当てた。
……こいつは、私の内奥に渦巻く理不尽な殺意と、その実行意志を見抜いているのか。
それとも、ただ勘の鋭い厄介者に過ぎないのか。
『では本題を』──と、底の知れぬ男は、声の温度を落として続ける。


「あなたが何をしようと勝手です。……私は別に倫理とか法律の話をしたいわけじゃない」

「……」

「その上でいいですか? この『殺し合い』という異常な状況は、人間の思考をひどく短絡的にさせます。──」

「──……大佐、あなたは頭の切れる方だと思っているんですよ。初対面でこう言うのも妙ですがね。……要するに、言い換えると、こうです。──」


「──よろしいのですか? 言ってしまえば、『たかが殺し合い』で、将来を捨てる真似をして」

「…………」



「『目』は、いたるところにあるんですよ。……目はね」



 男は言え終えると、背を丸めて闇の中へ消えていった。
……古畑。
あの男が、どこまでを見透かしていたのかは分からない。
そして私もまた、性分として、視界に入るすべての言葉を真に受けるほど殊勝ではない。
ましてや、あの――ぱっと見、蟻のような男の忠告など、頭の片隅に留めるはずもなかった。

そう。
なかった、はずだが。


「…………何が目だ。……無駄話が過ぎて、潰目しそうだ」


私は、今この瞬間に限って言えば――
ロボット兵から『目を逸らす』という選択を取るに至る。



【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康
[装備]:軍用拳銃、予備弾倉
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×2
[思考]:
1:この殺し合いは不快だが、ロボット兵を得た以上、利用価値は計り知れない
2:今後に関しては冷静な判断の上で行動。

【古畑任三郎@古畑任三郎】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1
[思考]:
1:今は深入りせず、観察に徹する。
最終更新:2026年02月08日 14:24