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 ここに二匹の怪物がいる。
 両者、遭遇と同時に戦いとなった。
 先に仕掛けたのはどちらか覚えていない、もしかしたら同時だったのかもしれない。
 ただ分かるのは、このまま戦っていても埒が明かないということ。

「手を組まないか?」
「それ、俺も言おうと思ってたんだよねぇ」

 切り出したのは、紫色の怪物。
 重厚な外殻を纏っていながらも、その全身には幾らかの凍傷と切創が刻まれている。

 応じるのは、虹色の瞳を持つ鬼。
 今なお再生中の肉体には至る箇所に鮮血が付着し、欠損していた指先は何事も無かったかのように元に戻る。

 戦闘開始からどれほどの時間が経過しただろうか。
 少なくとも、10分程度はそうしていた。
 互いの防御力と再生能力に対して決め手に欠け、疲労だけが蓄積されていった。

「私は乃木怜治、君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「俺は童磨だよ、いやぁそれにしても驚いた。鬼でもないのにここまで戦えるとは!」
「なるほど鬼か、それが君の種族……興味深い」

 紫色の怪物、カッシスワーム──別名、乃木怜治は値踏みするかのように童磨の身体を視察する。
 ワームとはまた違った強靭な生き物だ。餌にするにしても手駒にするにしても、上手く使えば野望達成の助けとなるだろう。
 当の童磨は不気味な笑みを浮かべたまま、まるで普段と変わらない様子で空を見ている。
 煩わしそうに首輪を引っ掻く姿から、童磨もまた突然の殺し合いに乗り気ではないのだろう。
 それならばなぜ出会い頭に戦闘になったのかという話になるが、殺気を隠さない胡散臭い男同士が鉢合わせたとなれば無理もない。

「童磨、単刀直入に聞くが君はどう思う?」
「どう、というと?」
「この殺し合い、優勝と反逆どちらの方が利があるかということさ」
「それは難しい質問だ。けれど、君のような怪物がわんさかいるんなら、全員殺すのは骨が折れそうだなぁ」

 鬼の言葉に乃木も同意する。
 あのベリアルという下劣な男と、それに立ち向かい爆破された少女もまた、並の人間を超越した存在なのだろう。
 この殺し合い、参加者の戦闘能力アベレージはかなり高いと予想できる。
 あまりにも情報が少ない今、無闇に力を振るい鏖殺を目指すのは馬鹿のやることだ。


「まあ、俺はいつも通り女の子が喰えればそれでいいさ。ここで死んだとしても、そういう運命なんだろう」

 率直に言えば童磨と乃木は反りが合わない。
 互いに人間を餌にするという共通点を持ち合わせてはいるが、根にある気質はまるで別。
 ワームの種族繁栄、世界掌握という偉大なる野望を抱える乃木と、目的を持たず気ままに生きる童磨。
 敵に回すと面倒だから、という理由一点で手を組むに過ぎない、氷上のタッグ。

「情報収集が最優先だ、暴れてくれるなよ」
「ああ、それなら他の参加者を探そうか」

 ──女の子だったら嬉しいなぁ。
 そんな童磨の言葉は、凄まじい轟音に遮られた。



 空間が割れる。
 紫色の稲妻が迸る。
 大地が震え、空気が泣き叫ぶ。

 裂けた空間に、紋章が生まれた。
 中から這い出て来たのは、緑色の悪夢。
 3メートルを越える巨体を持つそれは、まるで悠久の幽閉から解き放たれたような、形容しがたい『禁忌』の気配を放っていた。


「私は破壊と殺戮の神、ダークドレアムなり」


 上弦の鬼とワームのボス、二匹の怪物は状況を正確に理解できなかった。
 ただそこにあったのは、感じたことのない特大なる恐怖と威圧感。
 狩られることを知らぬ種の頂点に近しい二匹は、この瞬間理解させられる。

「お前たち、相応の実力者と見える。私の相手になってもらおうか」

 こいつは、この魔神は。
 絶対に呼び覚ましてはいけない存在だと。

「フリーズ」

 最初に動いたのは乃木怜治、カッシスワーム。
 支配種である己が恐怖を抱いたという事実を否定するかのように、左腕を胸の前に構える。
 その刹那、彼を除いた全ての時間が静止した。
 時は自分のために流れているという彼の思想を体現した異能を前に、たとえ魔神であろうとも指一本動かすことは叶わない。

 フリーズの能力で止められる時間は10秒前後。
 0.1秒とて無駄にするつもりはなく、乃木は一飛びで魔神の首元へ到達し、稲妻を纏った回し蹴りを放つ。
 途轍もない衝撃が止まった世界の中で爆ぜた。
 しかし、苦悶の声を上げたのはダークドレアムではなく、乃木の方だった。

 ──堅い!

 緑色の甲冑がない顎を狙ったはずなのに、まるで玉鋼を蹴ったような感触だった。
 驚愕と共にフリーズが解け、平等な時間が流れ始める。

「私でも捉えられぬそのスピード、見事だ」

 当の魔神は、それだけ。
 身動ぎ一つ見せずに感嘆の声を漏らしたかと思えば、虫でも払うかのようにカッシスワームを叩き潰す。
 弾丸のように地面へ打ち出された乃木は、血反吐を吐きながらゆらりと立ち上がった。
 破壊された甲殻から血を流し、再びフリーズを発動しようとする。
 反撃の為ではなく、この場から撤退するために。


「ギガデイン」

 しかし、それよりも先に雷鳴が轟く。
 落雷──と称するのも馬鹿げている、極太の雷撃が降り注いだ。
 大地を焼き焦がし、空気を熱に変えて、処刑は完了する。
 断末魔を撒き散らして爆破するカッシスワームは、存在していたことすら嘘に思えるほど跡形も残らなかった。


 ──血鬼術・結晶ノ御子


 熱された空気は瞬く間に冷え込む。
 童磨の冷気によって生み出された4体の分身体が、主の動きを模倣する。


 ──血鬼術・粉凍り


 合計5体分から放たれる極大の冷気。
 絶対零度の霧曇が満ちる領域は、もはや生命が活動できる環境ではない。
 どんな強靭な個体でも、眼球や内臓を凍らせてしまえばいい。
 普段の余裕を捨て去って、童磨は迅速に戦いを終わらせようと最適解を取った。

 対して、魔神は涼しげに笑う。
 全身が総毛立つ感覚を覚えながら、童磨は只管に冷気を強めてゆく。
 一秒後、魔神はまるで飽きたかのように冷霧を『掴み』、投げ返した。

 轟速で打ち出された風は質量を伴い、分身体が砕け散る。
 その中心にいた童磨もまた体幹を崩し、吹き飛ばされた。
 空中で体勢を立て直すと共に顔を上げる。

「えっ」

 童磨が目にしたのは、魔神が深く息を吸い込む姿。
 凍てついた空気を丸ごと肺に吸い込み、その胸は大きく膨らんでいた。

「────」

 吐き出される。
 風速20メートルを越える風は、それだけで厄災に相応しいというのに灼熱を伴う。
 なぜ冷気を吸い込んで焔が出てくるのか、なんて当たり前の疑問は浮かべるだけ無駄だ。
 陽光にも匹敵する熱風は童磨の身体を焼き尽くし、辺りは焦土と化した。






 ダークドレアムがその場を立ち去ってから、およそ一分前後。
 所々を炭化させた焼死体は、煙を立ち上げながら再生を繰り返す。
 骨や筋組織まで露出されていた肉体は徐々に肌を形作り、活動に支障のない範囲にまで再生された。

「いやぁ、まいったまいった。まさかあんな化け物まで呼ばれていたとはなあ」

 朗笑する童磨のそれは、死にかけた者の態度ではない。

「乃木殿は死んだだろうか、まぁ今となっては分かるまい。やっぱり、俺は誰かと組むなんて向いてないようだ」

 死闘、というよりも蹂躙が行われた戦場は命一つ芽生えぬ焦土と化した。
 こんな場所に長く留まっている理由もなく、童磨はふらりふらりと歩き出す。
 あの魔神は、鬼舞辻無惨をも凌ぐ存在であると断言出来る。
 そんな状況で、最後まで生き残るというのはかなり絶望的と言えるだろう。

「さて、次は何をしようか」

 童磨としては女を喰えればそれでいい。
 そして、ほどよく戦いを楽しめればいい。
 虚無に等しい心の隙間は、この殺し合いにおいても埋まりはしなかった。




【乃木怜治(カッシスワーム)@仮面ライダーカブト 死亡】



【童磨@鬼滅の刃】
[状態]:全身に火傷(小)、疲労(小)、再生中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:さて、どうしようか。
1:とりあえず傷を癒す。
2:あれ(ダークドレアム)みたいなのが他にもいるのかな。

※参戦時期は少なくとも死亡前です。

【ダークドレアム@ドラゴンクエストⅥ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:闘いを楽しむ。
1:強者を探す。






 黒く凹んだ爆心地。
 その中心にて、何かが蠢く。
 紫色の破片を掻き集め、やがて人型の何かが形成される。

 全体に攻撃的な棘を生やし、甲殻はより強固に。
 両腕から伸びる剣のような部位は、名刀に匹敵する切れ味を誇る。
 あらゆる必殺技を吸収し、己の必殺技としてコピーするという反則的な異能も習得した。
 そんな超越的な生物は、誕生と同時に己の無力に打ち震えた。

「おのれ……! この俺が、こんな醜態を……!」

 乃木怜治、カッシスワーム。
 種の頂点に君臨する彼は今、生まれて初めて味わう屈辱を呑み込めなかった。
 それでも、なけなしの理性が彼に生存の術を導かせる。

(ベリアルめ、何を考えている。あんな化け物を投入するなど、殺し合いどころではない……!)

 戦闘力の平均値が高い、とは予想していたがあそこまでのものがいるとは誰が想像できようか。
 この短い時間の中で、当初自分の力を過信していた乃木怜治の思考は全く別のものへ移り変わった。

「優勝か、反逆か……どちらにせよ手駒を増やさねば……」

 この殺し合いにおいて、自分は一人で大きく状況を動かせる力は持っていない。
 プライドと命を天秤にかけて、己の立ち位置を理解した乃木は人間態へ戻る。
 種の姿では信頼を勝ち取るのは難しいと、そう判断して。
 乃木怜治は自らの意思で人の姿に擬態し、散策へ赴いた。

【乃木怜治(カッシスワーム・グラディウス)@仮面ライダーカブト】
[状態]:人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:生存優先、状況次第で反逆も視野に。
1:手駒を手に入れ勢力を増やす。従わない者、邪魔になる存在は餌にする。
2:目立つ行為はせず、流れの把握に努める。

※参戦時期は41話、ハイパーカブトに勝利した後です。
最終更新:2026年02月08日 14:28