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幻想より生じた少女が対峙したのは、喪った幻想(あい)を現実に変えんとする一人の男だった。
愛する者を喪った彼に、正気など既に持ち得ない。
我往かんと相打ちした男の言葉は既に無意味となった。
幻想(ゆめ)に手を届くチャンスが目の前にあるとするならば、男は全てを燃やし尽くしてでも願いの果てにひた走る。
幻想の少女が、間違った手段によるものを認めるはずもなし。
彼女と彼に、対話の余地はなし。戦いは避けられなかった。

「『嬢ちゃんの服よ、燃』ーー」

「ッ!」

男が『言葉を口にする』前に、凛々しき少女騎士の斬撃が振るわれる。
男の力では『相手そのものは燃やせない』。燃やすのならば『衣服』か『所持物』。
対象を三秒注視しなければならないが、その三秒を許してくれる相手ではない。
距離を離した所で、即座に詰め寄って中断させてくるか、そもそも注視させてくれないだろう。

「はあっ!!」

「だが、今回ばかりは『燃やす』だけが手札じゃねぇ!!」

身の丈に似合わぬ、己の身体以上の大樹を軽々と引き抜き、投げつける。
男がその手に填めた手袋の名は『スーパー手ぶくろ』。
21世紀で開発された夢と希望のひみつ道具。身に着けるだけでかくも容易く怪力を手にする。

「その程度でーー」

「『大樹よ燃えろ』!」

投げつけられた大樹が轟々と燃え盛る。
避けるには遅い、ならば成すは切り裂き道を切り拓くのみ。
木々もろとも轟炎を切り払い、火の粉を振り払う。

「このっ!!」

この程度ならば目眩ましにもならない。
大方背後に回って『燃やす』事を考えているだろう。
それとも不意を狙ってーー
視界の端に、飛んでくるナイフが見えた。

「ーー『ナイフよ、燃えろ』!」
「なるほど、ですがっ!!」

鉄すらも容易く『燃やす』その力に多少は感心しながらも、少女に動揺はない。
何本かに自分を直接狙う本命を交えているのは分かりきったこと。
数本ほど飛んできた燃える刃を弾き飛ばし、更に飛んできた炎を纏っていないナイフを最小限の動きで回避。
その際に何本か髪の毛が小さく切り裂かれたが、見た目にも戦闘にも問題はない。

「どのような策を講じたかは知りませんが、貴方の種は割れています。大人しく殺し合いに乗るのを諦めるのであれば降参は受け入れましょう」

そして少女は、冷酷非道というわけではない。
アーサー王伝説に登場する御城、幻想より顕現した存在であるキャメロット城。
清廉潔白、正しき王、正しき騎士の如く。その存在こそ幻想でありながら真っ直ぐに。
誰かの物語を守ろうとする彼女にとっても。

「降伏勧告ってか、あいつもそうだったが全く持って甘ちゃんだな」

男が姿を表し、拒否の態度を取る。

「誰がなんというと俺は、俺の幻想(あい)を諦めねぇ」
「どうしてそこまで」
「俺の好きだった女は、腐った人間だったよ」

男が愛した女は、腐った人間だった。
父親に酷使され続け、一時の衝動とばかりに闇バイトようなものに付き合い何の罪のない家族を殺したような。
ーーそんな女に一目惚れをした。
奥伝達(おくでん いたる)は、愛した女のために地獄の底まで付き合うと決めた。
彼女と同じ場所に堕ちる為に人殺しになって、仲間すらも裏切って殺した。

「愛に理由なんていらねぇんだよ。物語のご都合主義に理由なんていらねぇのと同じみたくな」
「ーーっ」

彼の意思、強固なもの。
城壁都市の鉄壁の防御のようにか。それはまるで自分の矜持にも似た、譲れないもの。
それが正しくない道であったとして。捧げるべき大切な何かのために。






「ーー恨まないでくださいね。容赦はしません」

男には是非もなかった。心残りもなかった。
だからこそ、彼の物語がこれ以上変わりようのない悲しい何かであることを悟りながら。

「それでも、貴女が歩んだ物語を、『そういうものだから』と切り捨てたくはない、とだけ言っておきます」

そんな物語であろうと、その人が歩んだ物語をどうでもいいものとして切り捨てることだけは、したくない。
それは、幻想から生まれ、幻想ゆえに物語を大切に思うキャメロットという城娘だからこその、理想にして信念。

「⋯⋯大層ご立派な信念だこと。⋯⋯⋯⋯虫酸が走る。憐れんじゃねぇぞ」
「あなたがどう思うのかあなたの自由ですが、だからと言って私は私の在り方を曲げませんので」
「ああそうかよ」

そういう頑固なところが気に入らない。あいつを思い出すようで気に入らない。
そういう『まっすぐに伸びるように曲がらない信念』というところが気に障る。
だからこそ、確信したかのように、奥伝達は笑顔を浮かべた。

「もう分かってると思うが、俺の動詞(ちから)は『燃やす』。ただ、人体は直接は燃やせねぇが、嬢ちゃんから『分離』したものは燃やせるんだ」
「何をーーッ?!」

気付いた時には既に遅い。先程のナイフで、切られた己の髪の毛が身体に付着している。
奥伝達の『異能(ウェルベルム)』、対象を3秒以上注視することで、万物を『燃やす』動詞(ことば)の力。
『衣服を燃やす』事が相手の技量の上で難しいとなれば、不意を付くはこの手段。
あの時のように相手が『事実を曲げる』力を持っているならこの時点で詰むが、この城(しょうじょ)がそんな力を持っているはずがない。
何せ、髪は人体の一部であるが、切り離された髪は、一部ではなく別個の物質。
だからこそ、ワンテンポでも行動が遅れたならば上出来。

「ーー『髪よ、燃えろ』!」

キャメロットが動こうとするも、時既に遅し。
服や鎧に付着した髪の毛が、地面に落ちて散らばった髪の毛が、業火となってキャメロットを包み込む。

「ぐうああああああああああああああ!!!」

髪の毛が衣服に燃え移り、幻想の少女の身体を焼き尽くす。
これが『燃やす』の常套手段。物体を介し延焼させればいい。相手が見えて、何か身に着けていればそれでいい。
それだけで焼き殺すには十分。
単純ながら強力だからこそ、『人体は直接燃やせない』という制約がある。

「ま、だ、だーーまだ、私はーー」

燃え盛る少女が、その手に持った剣を地面に突き刺し、初めてその剣の力を行使する
何処からともかく吹雪が彼女の元へと吹き荒ぶ。
炎が凍り付き、結晶となって鎮火。崩れ去る炎の結晶を振り払いながらも、火傷に塗れたキャメロットが剣を支えてなんとか立っていた。

「ま、そう簡単にはいかねぇか」

隠し玉、というよりもこの程度の手種は最初から使うのは控えていたのだろう。
最初から「そういうことが出来る」という情報アドバンテージを見せびらかしはしない相手なのは分かりきっていたこと。
なぜなら、それが分かっていたなら「氷よ、燃やせ」と言ってしまえば全てが無意味になる。

「だが、これでこっちが優勢ってやつだ」

だがこれで、相手もだいぶ消耗した。
氷や雪を発生させる剣は厄介だが、相手の傷も加味してパワーてぶくろの怪力によるゴリ押しがより有効になる。
『燃やす』のはほぼ無理になったが、こちらの有利が出来上がったことには変わりはない。

「諦めな、今ならこれ以上苦しまないように殺してはやる。どうせ終わる幻想なんだろ」
「ーー確かに、この身は在りえぬはずの幻想。ですが、貴方に終わり方を決められる道理は、ない⋯⋯っ!」

形勢はイタルの優勢へと変化したが、火傷に塗れたままでもキャメロットの白亜の心は挫けない。
このままどう責めるか、どう崩すか、イタルが思考を張り巡らせていた、その時の事。











「ーー!!!」

その気配を、奥伝達のみが感じ取った。
いや、『自分にのみ』気配が感じ取れるように、"それ"が飛ばしたように見えた。
背筋の凍るような、深い穴の底に引きずり込まれるような、全身に虫が這いずり回るような。
気持ち悪い感覚が。ーー恐怖が。

「ちい⋯⋯⋯っ!!」
「なっ、待ちなさーーくうっっ!?」

全身が鳴らす警鐘に従い、手負いの城娘を眼にもくれず、逃げ出した。
キャメロットが追いかけようにも火傷のせいで膝が付く。
いや、あのまま戦闘が続いていた場合、どうなっていたかを考えれば、助かったのかもしれない。

「ーー話は軽く聞かせてもらった、危ない所だったみたいだね?」
「⋯⋯あな、たは?」

そして、姿を表したそれは。キャメロットと同じく、『幻想』の存在。
童話の王子様のような華麗な衣装を身に纏い、その背中に蝶の羽を携える。
言うなれば、それは妖精。
その王子様じみた風貌、軽々とした態度は、どこまでも底が知れなかった。

「⋯⋯名乗るほどの名前ではないけれど。今はオベロン、妖精王オベロンって呼んでもらえれば」
「オベロン⋯⋯」

オベロン。その名自体はシェイクスピアの『夏の夜の夢』を知るものがいればすぐに分かるだろう。
中世フランスの騎士物語においてもその名は有名であり、かの魔女モルガンの息子という説まである。
アーサー王が住まうキャメロットが人と成した彼女に、時にはモルガンの息子と定められる妖精王が対面したのは。偶然か、はたまた運命か。

「でもまあ、さっきの彼の言ったことも分からなくはないよ。どうせ終わる幻想はさっさと終わるべきだと」
「⋯⋯⋯」
「これ以上、汚れる前に終わるのもまた物語の為なんかじゃないのかな?」

幻想が穢れる前に終わらせるのも慈悲と、この妖精王は告げる。
確かに、それもまた物語の結末としては一つの在り方だ。

「⋯⋯否定は、しません」

幻想たる彼女だからこそ、それもまた、と。
確固たる否定の言葉は投げつけることは出来なくても。

「ーーですが、約束されてしまったもので。『ずっと側にいてくれ。』と」

それは、交わした一つの約束。消滅が定められた幻想であろうと、思い出は残ると言ってくれた彼の。
ずっと側にいてほしいと願ってくれた彼のために。
結末は避けられないとしても、語り直す事ができるように。
数多の物語の数だけ、紡げる道があるように。
いつの日か、願わくば、我が王の名が物語に刻まれ、その隣の歩んだキャメロットという騎士の名が。
彼という名の王の思い出として、物語として、残ってくれるなら。

「その為にも、私自身のエゴの為であっても、誰かの物語のためにも。私はそんな物語(みんな)を守りたいのです。例えどんなものであっても、意味がないとは言わせはしない。」

物語を守りたい。その言葉に。
ーーその言葉にだけ、ほんの少しだけ、妖精王は微笑んで。

「⋯⋯ああそうですか、そういう感じの頑固なやつですかって事か!」
「機嫌を損ねたのなら、申し訳ございません」
「いやいいよ、気が変わった。キミに付き合ってあげる!」
「え?」

照れ隠しのように妖精王が告げた言葉。
予想外の答えにキャメロットも瞳を丸くする。

「⋯⋯何せみんなの物語を守るなんて大口叩く頑固騎士なんだ! どっかの誰かさんみたく本当放っておけないからね!」
「そういうことではなく、何故⋯⋯」
「僕だってあのベリアルっていうのは反旗を翻すつもりなのさ」

理由自体は分かった。あの問いかけもこちらの覚悟を問うものだと納得させる。
キャメロットとしても、元凶を倒すための仲間が増えるのは嬉しいことではある。
モルガンと縁があるかも知れない妖精王、というのが心配の種ではあるが。






「⋯⋯全てを信頼出来た訳では無いですが、あなたもまた、私が守るべき誰かの物語でもありますから」
「へぇ、そう言ってくれる分には嬉しいな」

妖精王と白亜の城娘。王道ではあるが異質な組み合わせ。
心配もある、不安もある。だがそれでも彼がほんの少しだけ浮かべた微笑みを信じて。
幻想の少女は、数多の物語を守り、この殺し合いの元凶を討ち果たさんと立ち上がる。

【キャメロット城@御城プロジェクト:RE】
[状態]:全身に火傷(中)
[装備]:ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエスト2(HD-2D版)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:一人でも多くの物語を守る。
1:オベロンを名乗る男と共にゆく。不安もあるが、あの微笑みに思う所もあるから
2:出来るだけ多くの仲間がほしい
3:先の逃げ出した男(奥伝達)には警戒
[備考]
※参戦時期は無限航海6-3 赤竜伝説で賢者マーリンとの対話後
※最低でもイベント3は経験済みです









奥伝達だけが、その気配の中に輝く瞳に気づいた。

あれは誰の味方でもないもの。誰もかもを利用するもの。

すべてを終わらせるもの。あれは存在してはならないモノ。

「ははっ、あんな化け物がいるだなんて」

副支配人に出会った時のような、体が冷える感覚。

だが、それでも。

あんな化け物がいるような舞台を勝ち抜かなければ、望みは叶えられない。

「⋯⋯やってやるよ、どんな手を使ってでもな」

ならば覚悟を決めろ。心を燃やせ、命を燃やせ。

たとえ全てを燃やし尽くしてでも、最後に愛が勝つと証明してみせろ。

「ベル、もうちょっとまっていろよ。今度こそ、お前との未来を、取り戻してやるからな」

【奥伝達@ウェルベルム-言葉の戦争-】
[状態]:オベロンに対する恐怖(大)、MP消費(中)
[装備]:スーパー手ぶくろ@ドラえもん、投げナイフ(7/10)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1
[思考]:優勝して、ベルとの未来を取り戻す
1:あの化け物(オベロン)には最大限の警戒、あんな化け物までいるのか⋯⋯
2:嬢ちゃん(キャメロット)とはまた戦うことにはなりそうだ
[備考]
※参戦時期は死亡後






















「ーー変わったやつだよ、彼女」

「キャメロットだっけ? よりによってその名前か」

「せっかくの本番を邪魔されるだなんて思ってなかった」

「ああでも、彼女の言葉は、ちょっとばかし感心したかな」

「だから、殺さないで、協力してあげるよ」




「どうせすべて終わるんだ、その時には、きみの物語ぐらいは綺麗なもので終わらせあげるよ」





【オベロン@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:どうせ終わらせる事には変わりはないだろ?
1:彼女(キャメロット)、中々悪くないことを言うじゃないか。当分は協力してあげるよ
2:カルデアの連中いないよな? いたら困るんだけど
[備考]
※参戦時期はモルガンの攻撃で一旦退場した後から
※宝具『彼方とおちる夢の瞳』は基本的に使用不可、もしくは使用が出来たとしても出力が大幅減となっております


『支給品紹介』
【スーパー手ぶくろ@ドラえもん】
奥伝達に支給。手袋型の秘密道具であり、両手に装着すると怪力を発揮できる。

【投げナイフ@現実】
奥伝達に支給。単純な投擲用のナイフ。支給されたものは10本入り。

【ふぶきのつるぎ@ドラゴンクエスト2(HD-2D版)】
キャメロット城に支給。紫の柄から真っ直ぐに伸びる蒼い刀身を持つ直剣。
道具として使用することでヒャダルコと同じ効果を持つ。
最終更新:2026年02月09日 17:47