――僕はもう疲れていた。
世界中の能力を全て奪い取り“あいつ”の元に帰るっていう約束だけが脳裏にこびり付いて、世界中を旅する日々。
寝る暇も、休む時間も与えられずにひたすら能力者達から能力を奪い取る。その度に僕は攻撃を受けて、銃口を向けられることはもはや日常茶飯事だった。
――正直、今の僕には“あいつ”が誰かもわからない。
きっと、たぶん、大切な人間だったんだと思う。
名前も、声も、見た目も、性別すらも思い出せないけど。
でも僕がこうしてわざわざこんな大変なことをしてるのは、きっと“あいつ”のためなんだっていう――そんな謎の確信だけはある。
だから僕は“あいつ”を大切な人だと考察した。なにもかもがわからない――思い出せない“あいつ”を。
でも正直、僕はもう疲れた。疲れたんだよぉ!
僕はこれまで死ぬ気で頑張り続けた。どんな能力者が相手でも能力を奪ってきたし、銃弾の雨の中でも諦めなかった。
――そう、僕は諦めずにここまで来たんだ。
だからもう十分だろ?これだけ頑張れば、もういいだろ!
どうして僕一人がこんな大変な目に遭わなきゃならないのさ!もう何も思い出せない“あいつ”のために、どうして僕が……!
だから誰か代わってくれよ!
こんな辛い役割を僕だけに押し付けるなよ!
この世の中に神なんて存在するなら、まずは真っ先に僕を救うべきだ!
――そんなことを考えてるうちに僕はいつの間にか、見知らぬ場所に着ていた。……何故か身体が動かない。
……能力者の仕業か?それとも組織か?無自覚に寝ている隙でも狙われた……?
色々と頭の中で考えながら僕は、主催者の男――ベリアルの演説を聞かされた。
◯
ベリアル曰く、これは殺し合いらしい。
演説が終わり次第、僕は意識が暗転して――気付けばよくわからない場所に転移された。……これがベリアルの能力か?いや、能力は思春期を過ぎたら消えるはずだ。どう見ても成人のベリアルが持ってるはずない。
それに何故かベリアルには“略奪”が効かなかった。
何がどうなってる?わけがわからない。
でも――1つだけ確かなことはある。
それは、この殺し合いで優勝したら願いが叶うということだ。
事実として演説の最中、あの命知らず以外は誰も動けなかったし僕の“略奪”も効かなかった。
それは全能の僕すらそんな状態にされた時点で、ベリアルはもう神にも等しい存在だ。
だからもしも願いが叶うなら――僕はこの役割を誰かに押し付けたい。
クズとか外道と罵られても、どうでもいい。僕は全能だ。神みたいな存在だ。
それに僕だけにこんな地獄みたいな役割を与えるなんて酷いだろ!どうして僕が何も思い出せない“あいつ”のためにそこまでしなければならないのさ。
「――そうだ」
他にもいい願いが思いついた。
“あいつ”のせいで僕が妙な使命感を覚える必要があるなら、その約束すら綺麗さっぱりなくしてもらえばいいんだ!
そうしたらきっと僕は解放される。この使命から、この地獄から、この役割から――解放されるはずだ。
それなら――この殺し合いはむしろ好都合かもしれない。
ようやく僕に“ゴール”が与えられたんだ。だから僕はこの殺し合いに優勝して、ゴールしてみせる。
僕は全能だけど、今回はベリアルの言いなりになってやってもいい。それでこの役割から解放されるなら、僕は喜んで参加者達を皆殺しにする。
……昔は誰も殺さないように注意してた気がする。もしかしたらさっきまでもそうだったかもしれない。
だけど。
この殺し合いに参加した人達を殺すだけで願いが叶うなら、僕はもう殺人も厭わない。
それで楽になれるなら、それでいい。
僕はもう疲れたし、十分に頑張った。だから、それでいいんだ。
……ただし問題が幾つかある。
スマホの説明を読む限り、僕の“略奪”はバランス調整で制限されているらしい。
一度使うと、次に使うまでかなりのインターバルが必要だし……相手の能力を“略奪”しても相手には能力が残り続ける。要するにコピー能力みたいにされた。全能の僕にそこまで細工が出来るということから僕はベリアルを信用している。
それと意識の乗っ取りは5秒から更に秒数が減っている。これは単純に取れる手段が減るからめんどくさい。更にいえば略奪の能力で意識を乗っ取るわけだから、必然的にインターバルが必要で連発も出来ない。今まで通りの運用方法は無理だと悟る。
そして――僕が今まで略奪した能力は一部を除いて、消え去った。
念動力とか、一部の能力は残ってるけど……ほとんどの能力が消えた。残念ながら今の僕は全能じゃない。
……でも、それがどうした?
僕には意地でもこの殺し合いで優勝するという執念がある。
それに略奪は弱体化されてるだけで、別に消え去ったわけじゃない。一部の能力も残ってる。それなら十分に僕は強いはずだ。
「うへ、うはははは!これでようやく僕はこの役割から解放されるんだ!!」
――優勝したらようやく“あいつ”との約束を忘れて自由になれる。そう思うだけで自然と笑いが込み上げてきた。
僕にとって“あいつ”は呪いだ。だからこんな呪いからはさっさと解放されたい。
殺し合いの参加者を皆殺しにする。
そんなこと、僕にとっては造作もないはずだ。
僕は今まで大量の能力者から能力を奪い取ってきた。色々な組織を敵に回したし、そもそも世界中の能力者の数に比べたら殺し合いの参加者数なんてたかが知れてるに決まってる。
だから僕は、この殺し合いに優勝する。
隻眼の死神なんて勝手に付けられた二つ名通り――死神として、殺しまくってやる!
「はははは!僕は正真正銘の死神!隻眼の死神だ!!」
――どこかで監視してそうなベリアルにもわかりやすく、軽く決意表明をした後。
僕はデイパックを開けて、支給品を――。
「……ッ!また、これか……!」
そこには色々な言語と日本語が書いてある、ボロボロの単語帳があった。
この前、蹴飛ばしてやったら……何故か大切に思えて回収してしまった単語帳が。
僕にはこんなもの、価値がない。
それなのに……蹴飛ばした時に後悔したのを覚えている。
まるでこの単語帳は僕にまだ“頑張れ”と言ってくるようで――。
いってしまえば一種の呪いなのに。
僕はまたしてもその単語帳を捨て切ることが出来ずに、デイパックに戻した
【乙坂有宇@Charlotte】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2、乙坂が友利にもらった単語帳(ボロボロ)@Charlotte
[思考]:優勝して“あいつ”との約束を綺麗さっぱり記憶から消してもらう。僕はもう十分、頑張っただろ!
1:隻眼の死神として殺しまくってやる!
2:“略奪”を使うタイミングはよく考える
3:なんだよっ、この単語帳は!僕はどうしてこんなものを……っ!
[備考]
※参戦時期は最終回の途中。精神が狂っている最中です
※制限により今まで略奪した能力はほとんど失っています。少なくとも年動力は残っています
※略奪は制限により一度使用すると長時間使用出来ません。また相手の能力を略奪するわけではなく、相手にも能力が残り続けるコピー能力のようになってます。厳密な時間は採用された場合、後続の書き手にお任せします。また意識を乗っ取れる時間も少なくなってます
最終更新:2026年02月13日 00:04