「怖くない、殺し合いなんて怖くないんだから……!!」
狡知なる堕天司ベリアルが開いた殺し合いの会場の森の中、腰と頭部に生えた小さい黒翼と浮いた光輪(ヘイロー)が特徴的な少女、下江コハルは銃を持ちながら歩いていた。
「銃を持たずに活動をするのは、裸で歩くよりも珍しくて恥ずかしい」と言われる学園都市キヴォトスの環境で生活しているコハルにとって、
聞き慣れない名称ながらも銃を支給された事は多少なりとも安心できる事ではあったが、それでもいきなりの出来事の連続に気持ちが不安寄りになってしまうものがあった。
また、自分がこうして殺し合いに巻き込まれたという事もあり、ともに退学の危機を乗り越えた補修授業部の皆や、羽川ハスミを始めとした正義実現委員会の尊敬すべき先輩たちも巻き込まれているのでは無いかという事も、不安を消せない事の要素の一つであった。
(皆、こんな事に巻き込まれてもアイツの言う通りに従うなんて思わないけど…、
ハナコだって、普段はふざけているけど人の命に関わる事はしたこと無かったし…)
何度も死線を乗り越えている先輩達やエリートたる自分はともかく、補修授業部の仲間達の方を心配するコハル。
阿慈谷ヒフミ、白洲アズサ、浦和ハナコ。普段はどちらも気にしなければ忘れられている可能性もあるが、一つ年上の先輩達。
ハナコは自分の事をよくからかいエッチな事ばかり仕掛けてくる危険人物だし、ヒフミもアズサもよくわからない部分がある。だからといって死んでいいなんて全く思わない。
もし巻き込まれているなら、合流して一緒に元の学園に戻る。それがコハルのスタンスであった。
「どうやって戻るのかとか、首輪の外し方とか、何も思いつかないけど、私が頑張らなきゃ…!私はエリートなんだから……!!
だ、だから……一人で森の中を彷徨ってるなんて、なんともないんだから……!!」
そう言い聞かせるように、軽い涙目になりながらもコハルは森の中を歩いていく。
程なくして、人の気配を察知し一層気を引き締めるコハル。
幸い森林の中の為、身を隠せる大きさの木々はあり、近くまでは何とか近づく事は出来た。
この殺し合いの舞台で初めての参加者との接触。おそるおそる木の陰から覗いたコハルの目線の先には―――
「あーー、ヤニうめぇ…」
左手にサングラスを持って煙草を吸っている、2メートルはあるのではないかという長身の男がそこにいた。
その男は、特徴的な要素を多々持つコハルから見ても個性的としか無いような格好をしていた。
上半身の筋肉を見せつけるかの様な、黒コート一枚のみの上着の着こなし。
三白眼を通り越して白目しかないように見えるギラついた眼光。
そして、眉間についているシンプルだがそれ故わかりやすい謎の水晶。
どうみても初見では不審者としか見えないだろう男、アダム・ブレイドがそこにいた。
「あ、アンタ何やってんのよ!? なんで上着はコートだけなのよ!!身体を見せつけてるの!?この不良変質者!!」
「ア?何ってタバコ吸っている所だが……、!?!?」
男の全身を一通り見たコハルは、反射的に銃を構えながら彼の前に姿を現した。
不良じみた目の前の男の姿に、恐怖心よりも正義実現委員会としての責務の意思が勝ったのだろう。
ただし、鍛え抜いた筋肉をさらし出すスタイルは少々刺激が強かったのか、頭部の翼で少し目元を隠していた。
一方コハルの声に反応して顔を向けるブレイド。だが即座にコハルの姿を見るなり目を見開いた後、即座に膝をつき始め、どこからか花束を取り出すなり世迷い言を言い始めた。
「一目惚れしました!!付き合って下さい!!」
いや違う!!俺の名前はアダム・ブレイド、貴方を守らせて下さい!!」
突然告白をしたブレイド。告白を受けたコハルは完全に思考停止をしてしまった。
10秒ほど続いた沈黙を破ったのは、カチャ、というコハルの持っていた銃の音。
「………………イヤーーーー!!」
そして、コレが私の答えだと言わんばかりの銃声と、脳の活動を再開したコハルが絞り出して浮かんだ2文字の大声が響き始める。
「ロリコン!!変態!!性犯罪者!!声の時点でなんか気持ち悪い!!最っ低!!」
「うおっと」
コハルは顔を真っ赤にしながら思いつく限りの罵声をあげていき、ブレイドに銃を放ち続ける。
これに関しては、コハルのリアクションが間違ってないだろう。初対面の相手に告白をするのは、普通の人間は行わない。
ブレイドは銃弾を全発避けつつも、訂正の言葉を紡ぎ始める。
「ありがとうござ……いや待ってくれ、俺はこう見えても神父をやっている身。この殺し合いで巻き込まれて寂しい思いをしているか弱き乙女達を守りたいだけだ。それどころがあのベリアルってヤツをぶん殴りてえくらいだぜ」
「し、神父様……!?」
突如自分に告白してきた変態であるブレイドの聖職者発言と対主催宣言に、脳が困惑を覚えコハルは銃を撃つのを止める。
彼女にとって一番身近な聖職者達は、自身が在籍しているトリニティ総合学園の部活の一つであり、補修授業部の退学危機の騒動の際には助けてくれた一大派閥組織・シスターフッド。
しかし定期的にカウンセリングやミサを行い、啓蒙的に慈善活動を行うシスターフッドという組織は、コハルの脳内では模範的で由緒正しき人達しかいない。
とてもじゃないが、このいきなり一目惚れの告白してきた得体の知れない男が、同じ神に仕える職についた存在とは思えなかった。
そんな様子のコハルの様子を知ってか知らずか、ブレイドは言葉を続ける。
「まあとにかく俺はこんな殺し合いには乗ってねえ。あのスカシ野郎はこの俺をいきなり拉致って巻き込むどころが褐色美少女をグヘへせずにぶっ殺しやがった。
元のチョーカーと併せて首輪2つなんて邪魔過ぎるし、お嬢ちゃんみたいな妹系美少女も参加させてやがる。スリーアウトどころがフォーアウトで許せる要素なんて一つもねえ」
「え、妹系って私の事言ってる?」
「それに、お嬢ちゃんに銃なんて物騒なものなんて似合わねえ。これをやる。持ってると効果があるらしい」
ブレイドは自分のデイパックから、自らに支給されたアイテムを取り出す。
アイテムの名前は「ラムのみ」。ポケモンが持っている状態で状態異常になると回復してくれる便利なきのみだが、このデスゲームではポケモンが持ってなくても効果が発動してくれる仕様だ。
見た目は普通の木の実ゆえにコハルは普通に受け取るが、その後すぐに調子を戻しブレイドに詰め寄る。
「あ、ありがと……って、そうじゃなくって、アンタはどうするってのよ!
そんな筋肉丸出しで、身体一つでどうするつもりって言うの!?銃も持ってなくて!!」
「心配いらねえ、俺はニードレスだ。銃なんてオモチャは逆に邪魔だ」
「ニ、ニードレス……?」
「「「キシャァァァ!!!」」」
キヴォトスの常識に反する立ち振る舞いとニードレスという単語にコハルは疑問が出てき始めるが、この疑問を質問で返す事はなかった。
突如として、ブレイドとコハルの2人の前にNPCとして用意されたモンスター達が現れたからだ。
正義実現委員会として人間相手の武力制圧はよくある事だが、ゲームに出てくるようなモンスターを相手取る経験はない為、聞いた声に振り向くなり数秒びっくりしてしまった。
「モ、モンスター!?これってもしかしてアイツがいってた―――」
「ウオオオオ!!か弱き乙女を手にかけるスライム以下の知能の淫獣どもが!!尺稼ぎの雑魚は黙って死んどけ!!!」
「「「ギャアァァァ!!!」」」
驚きつつも銃をモンスター達に向けて攻撃態勢をとろうとするコハルだが、それ以上の早さでブレイドが前に出てモンスター達に拳を突きつけ、攻撃を始める。
元々道行く所にチンピラや野盗が出てくるなら、暴力で粉砕していくのがアダム・ブレイドという男である。女相手でも攻撃しようとするなら尚更だ。
そして、ニードレスとしての超人的身体能力と全身に後天的な骨格強化を施された肉体を持つブレイドの前では、見境なく襲うだけのNPCなど敵ではない。
ある1匹はパンチ一発で心臓部が破壊され、ある1匹は強烈な蹴りを顔面に食らって顔が潰れ、ある1匹は腕力だけで身体が引き散らかれた。
「雑魚が、二度と出てくるんじゃねぇぞ」
「す、凄……」
10秒経たずに物言わぬ亡骸となった後塵となり消えていくモンスター達に罵声を浴びせつつ、吸い終わった煙草をモンスターがいた場所に捨て足で残り火を消すブレイドと、思わず感嘆の言葉を漏らすコハル。
速攻でモンスター達が鏖殺された暴力的な光景ではあったが、ブレイドの生身で戦う圧倒的な戦いには委員長である剣先ツルギの姿を想起させるものがあった。
「この通り、そこらの雑魚共なんて俺が全て片付けてやるから、お嬢ちゃんが戦う必要なんてない。
それに、俺はこの殺し合いに巻き込まれる前に弱点を克服してきたからな。今の俺は負けるイメージなんてまったくねえ」
「じゃ、弱点……!?」
「あぁ、俺はこの殺し合いに巻き込まれる前にちょっくらムカつく野郎の最後っ屁を食らっちまってな。
大爆発に巻き込まれた後、あてもなくBLACKSPOTを彷徨うハメになっちまったんだ」
会話の中で知らない単語が再び出てくるが、コハルは質問を仕返す事はしなかった。
この神父を名乗る不審者が今さっき見せた圧倒的な実力と放つ雰囲気と勢いに、コハルも気を取られていたのかもしれない。
「その過酷を乗り越えて、俺は新しい進化の道を切り開いた!最大の弱点だった『全裸に靴下の女の子』は既に過去の話だ!」
「……へ?何?全、え……?」
今の真面目そうな話の流れからは考えられない単語が出てきた事に、コハルの脳の思考が急停止し何度目かの困惑を始める。
そんなコハルの様子をお構いなしに、ブレイドは言葉を続けていく。そして同時にトーンも大きくなっていっていた。
「俺は辿りついた!!これまでの『全裸に靴下』を越える性癖を!!それよりももっと好きなものを!!
それは! 全裸に、手袋だーーーーーーーーーーー!!!」
最後まで大真面目な雰囲気を醸し出しながら、結果として性癖の暴露を大声で行ったブレイド。
言い切ったその顔には恥じらいなどの様子はなく、むしろギラギラとした独自の熱を放っていた。
一方で、彼の発言を最後まで聞いてしまったコハルは顔を真っ赤にして口をパクパクとさせていた。
もしもブレイドの仲間である山田(クルス・シルト)がこの発言を聞いていたら、盛大にツッコんでしていただろう。
それか彼の事をよく知る者がいたのなら、「コイツまた何か言ってるよ」的にスルーをしてくれていたのかもしれない。
しかし、初対面のコハルがそんなツッコミスキルを発動出来る筈もなく。
むしろ、卑猥な事には人一倍関心があるのに風紀を守る立場故に過剰な反応をしてしまう、いわゆるむっつりスケベな彼女がこんな発言を見過ごす筈もなく。
「な、なななな……なんでそうなるのよ変質者!!
死刑ェーーーーーーーーーーーー!!!!」
コハルは口癖のように言う卑猥な事に対する死刑宣告を、ブレイドの「全裸に手袋」発言に負けない位の大声で発したのであった。
【アダム・ブレイド@NEEDLESS】
[状態]:健康、いつものサングラス
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1 煙草@現実?
[思考]基本方針:対主催。ベリアルとかいうヤツの顔面を殴る
0:全裸に手袋、それが俺の新しい進化だ!
1:イヴや下僕(仲間)達がいるのなら合流を目指す
2:そういやこの子の名前まだ聞いてねえ
[備考]
※参戦時期は、シメオンビル戦後からクルス達と再会するまで(11巻序盤)の間
※ブレイドに支給された煙草は、他の作品の出典に変わっても構いません。後続の書き手に任せます
【下江コハル@ブルーアーカイブ】
[状態]:健康、꒰𑁬(⸝⸝ↀᯅↀ⸝⸝)໒꒱顔
[装備]:オモチャの兵隊(トイソルジャー)@とある魔術の禁書目録、ラムのみ×3@ポケットモンスターシリーズ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]基本方針:怖いけど、殺し合いはしない
0:エッチなのはダメ!死刑!!
1:補修授業部の皆やハスミ先輩達が巻き込まれてないか心配
2:この男(ブレイド)、死刑過ぎる…!!
[備考]
※参戦時期は、少なくともエデン条約編2章パート19以降から
※キヴォトスの神秘は制限によって調整されています。詳細は後続の書き手に任せます
【オモチャの兵隊(トイソルジャー)@とある魔術の禁書目録】
下江コハルに支給。
妹達(シスターズ)が絶対能力進化・第10031次実験にて用いた突撃銃。
銃器としての正式名称はF2000R。弾丸は5.6ミリ。
銃身をぐるりと覆う衝撃吸収用の特殊ゴムと炭酸ガスによって射撃の反動は「卵の殻すら割らない」ほど極限まで軽減されている
【ラムのみ@ポケットモンスターシリーズ】
アダム・ブレイドに支給。3つ支給された
持たせると状態異常(毒、麻痺、火傷、こおり、眠り、混乱)を回復する事が出来る。
本来はポケモンに持たせて効果が発揮されるアイテムだが、この殺し合い内ではポケモン以外の参加者が持っていても発動する
最終更新:2026年02月13日 21:49