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 魔法少女、由比鶴乃は疲れていた。
 別にNPCと戦い続けたからだとか、
 いきなり勝ち目の薄い強敵と出会ったからだたとか、
 そういうわけではない。ベリアルの言うことは従わない。
 それだけは間違いないし、そのつもりで行動もしている魔法少女だ。

 問題は、招かれた時期といったところだろうか。
 メルが、みふゆが、やちよが、ももこが、皆が離れ離れになって。
 離れ離れと言っても時折やちよは連絡をくれるし、ももこにも何度も会うことはある。
 みんながバラバラになっても活動し続けてきていたし、正義感は強い人物であるのは確かだ。
 でも、別に彼女は無敵の魔法少女ではない。寧ろメンタルにおいては弱い部類になってしまう。
 明るそうでも中では疲弊していた。自分一人でも戦った。戦って戦って戦って、戦い続けて。
 結果、精神的にはかなり摩耗している。魔女やウワサには至ってないのはいいものの、
 このまま放置し続けていれば、いずれはそれらになってもおかしくはないのだろう。

「何故そのような足取りかは知らないが、余り無理をしない方がいい。」

 そう声をかけてきた男がいて、ふと彼女は顔を上げる。
 学生であるのも相まって、頭一つは抜けてるだろう身長差。
 渋みのある、年上好きの女性であれば惹かれる部分もあるのだろう。
 今時見ることはないちょんまげや古めかしい衣装は全体的に侍のようだ。

「私でよければ、茶でも嗜みながら伺うが、どうかね?」

 殺し合いの場で男、それもおっさんにお茶に誘われる。
 一種のナンパに見えるそれだが、特に彼女は疑わなかった。
 というよりも、疑うだけの判断能力が鈍っているのもあるか。
 元々疲弊してきたのも相まって魔法少女が救われるためのマギウスの翼に入ったのだから。






 近くを散策していると古風な茶屋があり、
 趣のある外の座席で茶と菓子を軽く嗜む二人。
 支給品で腹を満たすのもいいが、有限なそれを使うのは危険が絡む。
 手間はかかるものの、材料やらすでに商品として用意されていたものを選び、
 出来立てのお茶と店頭に並んでいた饅頭を手に、鶴乃の話を彼は伺っていた。
 勝手に食べるのは忍びないが、人気のないことから殺し合いのための空間なのだろう。
 人の気配はろくになく、静かに食べられる環境だ。

「ふむ……強くありたい、と。」

「最強の魔法少女とか言いながら、こんな有様で。」

 もうしわけなさそうに後頭部をかく鶴乃。
 魔法少女であることは特別秘匿するべきではないし、
 この先人前で変身なんていくらでもするだろうしとも相まって、
 包み隠さず自分が何者であるのかについて軽く語ることとした。

「気に病む必要はあるまい。私のいた場所にも、
 最強を名乗る存在がいた。しかし最強にも弱点というものがある。」

「弱点ですか?」

「───恐怖だよ。彼は最強でありながらも仕える主がいた。
 最強と言えど、主を喪う恐怖には抗えないということなのだよ。」

「恐怖……」

 確かに、自分がいくら強くあっても。
 もし人質がいたらその人を喪う恐怖は存在する。
 いろはでも、やちよでも、メルでも、無関係な人間でも。
 言われればそうだと納得せざるを得なかった。

「ゆえに、最強を求めること自体は止めはしない。それが君には似合う。
 最強になれども、脆弱な部分は必ず存在するということを知ってもらいたかった。」

 目指す最強とは、そんな過酷なものなのか。
 そう思うと、またどうしたらいいのか余計にわからなくなってしまう。
 どうしたらまた前のようになれるのかとかと思わずにはいられない。

「と、君が割り切れるのであればそうはならないだろう。
 人とは矛盾を、相反する感情を抱きながら生きていくものだ。
 君の肩の荷が下りる言葉ではないが、別に珍しいことでもないのだよ。
 絆を掲げる男は絆を持たず。絆を否定する男は自身の絆に気づきもしない。
 乱世に限らず、人の生きる世にはままあることだ……と、私は思うがね。」

 心を見透かされたような言葉に、鶴乃はさらに言葉を詰まらせる。
 普段ならば会話をしまくるのは快活な彼女であるはずなのに、今ではまるで逆だ。
 加えて、どこか彼と話していると安心するというのも影響があるともいえるだろうか。

「ただ一つ、君のそれを簡単に解決する方法があるとするならばあるが。」

 茶を飲み終えながら、男はつぶやく。
 今まではそう簡単に解決するものではない。
 そういう前提の話をしていたのにあるのは予想外だった。
 勿論、どこか詐欺くさいとは思うところもある。それでも聞いてみるだけ聞いてみたかった。
 詐欺っぽいと思うのであれば、断ればいいだけの話なのだから。

「そうなんですか? 一体どんな───」










「君からは『渇望』を貰おう。」










「あれ? 私……」

 何をしていたんだっけ。
 記憶が少し曖昧でこめかみに手を当てる。
 ベリアルに殺し合いに巻き込まれてしまって、
 疲れ気味だったところをちょんまげのおじさんと出会い、
 ちょっとお茶をしながら身の上話を聞いてもらっていた『気がする』。
 しかし、何でそこまで疲れていたのかがあまり思い出せないでいた。
 魔女やらウワサやらとの戦いで疲れて疲れてしまったのかと何となく察する。
 せめて、体力ぐらい回復させてほしいものだと軽く文句を言いたくなっていた。

「さて、私は行かせてもらうよ。」

「え、二人で行動した方がいいよ此処は! わざわざこんな話を聞いてくれたお礼もあるし!」

 相席していた男は一人席を立ち、優雅な徒歩で歩き出す。
 だがここは殺し合い。何かがあっては危険なのもあり鶴乃は進言する。
 彼がどの程度の強さなのか理解していないのもある上に茶も用意してくれた。
 恩ぐらいは一つは返したいと思うものの、歩みを止めて男は振り返る。

「すまないが、私は一人が好みでね。
 軍も私に勝手に惹かれてついてきたものだけだったのだよ。
 君の誘いには感謝するが、すまないが他をあたってくれたまえ。」

 軍ってことは侍っぽい姿なのもあるので、
 どこかの世界の武将か何かなのだろうとは察した。
 それなら大丈夫なのかな、とは思いつつも見送ることにする。
 無理に同行を頼んで、相手の嫌がらせになることはしたくなかった。
 マギウスの翼に入ったのも、別にいろは達に嫌がらせしたいわけではなかったのだから。
 あくまで救われる。そのためのものだ。

「不思議な人だったなぁ……でも、なんだろう。何か大事なこと忘れてないかな?」

 肝心な、何かを喪ったことに気づくこともなく。










「凡百の渇望に非ず。その身を壊すに至りかねないほどの強さへの執着。
 覇王と違った力に対する妄執。形は歪では少々物足りなくはあるが、よき宝だ。」

 左手に宿る活力のようなものを感じながら、男はつぶやく。
 無論彼は鶴乃に何かをしている。というよりも奪ったのだ。
 彼女の『魔法少女として強くあらねばという渇望』を。
 この男、松永久秀はそういう概念や感情といったものを奪うという、
 戦極乱世においても説明しがたい何かを奪取する能力を左腕に宿していた。

「所詮は少女だが、少女でこれなのだ。他の魔法少女は、他の者の音色も見てみたい。」

 彼はあらゆるものを渇望する。
 依存、不屈、孤高、名前……欲しいものはいくらでもあった。
 もっとも、欲しいと言っても彼いくら求めようとも満たされることはない。
 梟は常に底がない水瓶と同じ。永遠に求め続けるのだろう。

 因みに。渇望を貰った松永だが、彼はもともと求める欲望に対して底はなかった。
 何が言いたいかというと、もらったところで、何も変わりはしないということだ。
 鶴乃の魔法少女としての渇望を、松永の底なしの欲望と比べてはいけないのだから。
 彼にとっての彼女の渇望とは、そんな程度である。

【由比鶴乃@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:渇望を忘れてる
[装備]:ソウルジェム@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:ベリアルを倒す。
1:何か忘れてるような?
2:知り合いがいないか探さないと。

[備考]
※参戦時期は少なくともウワサになる前。
※松永久秀に「魔法少女に対する渇望」を奪われました。
 このためストレスが大幅に減ってるため、魔女化やウワサになる確率が大幅に下がってます。

【松永久秀@戦極BASARA】
[状態]:鶴乃の渇望(効果ほぼなし)
[装備]:刀@不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:求め続ける。何もかも。
1:狡知からは何を与え、何を貰おうか。

[備考]
※参戦時期は少なくとも4以前の作品から
※鶴乃から渇望を奪いました。
 本人の欲望に比べれば些細なものなので効果はほぼありません
最終更新:2026年02月14日 23:19