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 わざわざ俺を『こんなゲーム』に引っ張り出した理由は、聞かなくてもわかる。
「お前のそのゴツい『拳』で、参加者を皆殺せ」──主催者の言いたいことはそれだけだろう。
……全くだ、反吐が出る。
なあベリアル。俺を、ベトナム戦争帰りの血に飢えた狂犬だとでも思ってるのか?
親友のポーリーだって、酒に酔い潰れた時でもこんなジョークは言わねえよ。


……いいか、教えてやる。よく聞け。

俺の左拳──こいつは、孤独なリングの中で唯一の道標となる【ガード】。
俺の右拳──それは這い上がろうとする俺の意志。そのすべてを乗せて叩きつける【ジャブ】。
この両拳──。
──この俺は、血生臭い死体を作る道具でも、ましてや今一番拳をぶち込みたいお前如きを殴る為でもないんだ。

だがな。
この『ボクサー』って生き物が、どうやって地獄から這い上がってくるのか見たいってんなら、ファンサービス欠かすつもりはねぇ。

あんたが用意したその薄汚いゲームとやらを──、
俺は俺のやり方で──、
罫線───正真正銘の『スポーツ』に叩き直してやる、その瞬間を────。
瞬き、……すんなよ。


「……俺の『アメリカン・ドリーム』を……──その目に焼き付けてやる!」



《Rocky Balboa ── “The Italian Stallion”》
《ロッキー・バルボア──『イタリアの種馬』》

《57戦 44勝 13敗 0分》
《KO勝ち:39回》
《世界ヘビー級王座:2度獲得》



……
………


 ……そうとなると、まずやるべきことは一つ。──トレーニングだ。


俺はスーパーの棚から卵のパックをデイバッグに放り込むと、そのまま奥の冷凍コーナーへと足を向けた。
かつて、ポーリーの許しを得てやらせてもらった『吊るし肉』への打ち込み。
あの凍てつくような冷気の中で、拳の感触を確かめる。
それが俺の原点だ。


「スゥゥゥゥ……。──」


……正直なところ、こんな悪趣味なゲームのために己の肉体を引き締め直すなんてのは、アポロはおろかドラゴにすら失礼な話だ。冒涜的と言ってもいい。
……どうか、俺の流儀ってやつを許してくれ。
冷え切った空気を切り裂くような一撃を、俺は目の前の巨大な吊るし肉へとぶち込んだ──。


「──フンッ!! …………………。──」


「──…………あ? ああ?」


いや、正確には、『ぶち込むつもりだった』だ。
振り抜いた拳の先、俺の瞳孔が捉えたのは──、



「……おい、あんた……そこで何やってんだ?」

「え?」


その何百キロもあろう『冷凍肉』を、まるで羽毛布団でも担ぐかのように軽々背負い、帰ろうとする──、
ピンクヘアーの『少女』だった────。



「あぁ、これ? ……シャミ子、きっと喜ぶと思って」



vs

《Momo Chiyoda ── “The Fresh Peach”》
《千代田桃──『フレッシュピーチ』》

《9876回の世界救済を経験》
《握力:計測不能》
《備考:魔法少女》



──READY……?

 ──FIGHT!!


………
……




【Training Time】

【🐎Gonna Fly Now〜俺はまだ、高く翔べるはず。】

【🍑Gonna Fly Now〜高く跳ぶとは、『浮遊魔法』。】




【①】

【Morning Routine:生卵と衛生管理】

〜ロッキーは卵の殻を割り、コップに落としていく。ドロリと重なり合う五つの黄身。
〜彼はそれを一気に喉へと流し込んだ。喉仏が上下し、生の滋養が五臓六腑に染み渡る。
〜これこそが、勝利を掴むための荒々しいプレリュードなのだ。


「……嬢ちゃん、そんな目で見てくるなって……」

「……いや、別に。…………ポテチごはんを食べてたあの頃を思い出して、少しシンパシーを感じただけ。……あなたにも、シャミ子のご飯を食べさせてあげたい」

「おい、憐れんでるのか?──」

「──これはな、魂に火を点ける儀式だ。強くなりたきゃこういう『野性』も必要なんだよ」

「儀式。……一理はあるかもしれない」


〜対して千代田桃。
〜ストイックな筋トレ信奉者として、彼の野性味に魂を焼かれてしまったのか。


「おい!? 待て、何をしてる?!」

「何って……真似してるだけだけど」


〜生卵六つを『殻のまま』、喉を鳴らして流し込んでいった。


「(バリバリ、ジャリ……ゴクンッ)…………吸収効率はともかく、コストカット面では合理的な選択だね……!」

「ふざけるなっ!!? こんなもの……カタツムリか、夏休みのヒマしたアホ小学生しか食わん!!」

「カタツムリ? ……全身の筋肉含有率が八割を超えるという、あの軟体生物。……魔法少女として目指すべき高みは、そこにあるかもしれない」

「アンタの脳を支配してるのは筋肉か?! それともロイコクロリディウムか?!」


【②】

【Dash:早朝の駆け走り】

〜フィラデルフィアを彷彿とさせる、白白明の街並みを二つの影が切り裂いていく。
〜片方は、全身の筋肉を重々しく震わせ、地響きを立てる。
〜そしてもう片方は、巨大な生肉の塊を担ぎ、足音を刻む。
〜あまりに異様、あまりにシュールな光景。
〜だが、かつてアポロ・グリードと波打ち際を駆けた、あの黄金色の記憶がフラッシュバックしてしまうのは何故だろう。


「……おい。……なぜ、俺についてくる」

「ついてきている自覚はない。……追い求めている『光』の軌跡が、たまたま一致しただけ。物理学的な必然」

「…………そうか。……なら、いい」

「……」


「その『光』ってのは……例のシャミ子の嬢ちゃんのことか?」

「…………うん」

「……どうだ。光はまだ遠いか?」

「遠いね。まるで磁石だよ。私が一歩踏み出すたびに、彼女は計算外の角度へ遠ざかっていく。多摩市一の迷子名人だよ。──」

「──それはお互い。私も、あの子も」

「…………」

「でも、立ち止まっているのも違う」

「……っ!」

「光の速さっていうのはね、思いのほかあっさり追いつけるものだから。──」


「──だから。私は走り続ける。……それがたとえ、光速を超えた筋肉の修羅道だとしても……」

「……たいした詩人だな。お前はペン一本で食っていけるんじゃないか」

「私がダンベルを増やす度、シャミ子は加速度的に遠ざかっていく。……これは完全な比例関係だね」

「お前のせいじゃねえか」


【③】

【Muscle Musical:ジムで筋トレ】

〜滴る汗が乾く間も惜しみ、二人は最寄りのジムへと足を踏み入れた。
〜クロストレーナーの駆動音、パワーラックがきしむ音。
〜ロッキーは使い古したバンテージを巻き直し、計画的に、己の肉体を追い込んでいく。


「クッ……! フンッ、フンッ……! ハァハァ……ッ!」

「……」

「ハァハァ……モモの嬢ちゃん、アンタも熟練者と見受けた。アンタはダンベル、何kgまでいける口だ?」

「……文献によれば、江戸時代の女性は六斗に及ぶ米俵を持ち上げたらしい。……あながち、不可能な数値だとは断言できないね」

「……あ? まだ何も言ってないのに何が不可能だ? ……つまりなんだ、アンタは200kgくらいなら余裕で挙がるって言いたいのか?!」

「……そんな人を、まるで救急車かのように……」

「救急車をダンプカーと同じ括りで言うな! 重い荷物運ぶ車じゃないだろ!!」


「まぁでも、2500キロくらいなら、いけるよ?」

「あ?!」


〜返答の代わりに、桃は静かにジムの屋外へ。
〜そして、あろうことか──『ジムの施設』そのものを土台から引き剥がし、ウェイトトレーニングを開始した。


「……」

「……よいしょっと。──」

「──…………おかしい。魔力が制限されているせいか、普段以上に筋肉へのストレスが激しい。……これも、主催者が仕組んだハンデかな」

「おい、今『普段』って言ったか?」



【④】

【Skipping rope:縄跳び】

〜ボクサーがトレーニングで行う縄跳びは、単なる遊びではなく。
〜足捌きを鍛えるという意味で「Footwork drill」の一部として語られることが多い。


「……飛ばないのか?」

「私が本気で地面を蹴ったら陥没しちゃうよ」

「…………主催者の『制限』ってやつを、もう少し信じてみることだな」


〜※割れませんでした。


【⑤】

【Chopping wood:薪割り】

〜それは極寒のロシアでロッキーが辿り着いた、文明に頼らない野生の訓練。
〜背筋、体幹、そして折れない心を研ぎ澄ます『聖域』だ。


「さあ、やってみろ。……もっとも、アンタの規格外のパワーじゃ、丸太じゃない限り物足りない……か」

「斧かぁ……。道具の強度が足りない」

「あぁ? バカを言うな。俺はこの相棒一本で、あのイワン・ドラゴ戦を乗り切ったんだ。使えないなんてことはな─」

「……あぁ、そう」


〜桃は斧を構え……ることもなく。
〜その鋼鉄の刃を素手で掴むと、リンゴを握りつぶすように「メキメキッ」と圧縮。
〜超高速で何度も何度も金属を捏ねくり回し、謎の化学反応による摩擦熱で、真っ赤な火花を爆発させた。


「……暖かいね……!」

「言っておくぞ。俺はなァ、結果よりも過程を重視するタイプなんだよ!! 過程を!!」



【⑥】

【Chasing a chicken:ニワトリとの追いかけっこ】

〜伝説のトレーナー、ミッキーが授けた『究極のフットワーク』。
〜"If you can catch this thing, you can catch greased lightning!"
〜(こいつを捕まえられたら、稲妻だって捕まえられるぞ!)
〜ロッキーにとって、この泥臭い『追いかけっこ』こそが、奇跡を呼ぶための原点だった。


ガシッ、ガシッ、ガシッ
 コケー!!

「これ。あと何羽捕まえれば、目標値に達するのかな?」

「アンタ……もしかして今、サルモネラ菌の心配しかしてないだろ?」



【⑦】

【ABS:腹筋】

〜トレーニング。


 バババババババババババババババババババババガガガガガガガガガガガガガガガガガ
 ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ

「やめろッ!! それはもう腹筋じゃねエッ!!」

「……主催者の嫌がらせかな、この音は」



〜幾度とない、常識を置き去りにしたトレーニングの末。
〜ボクサーと魔法少女の間に、言葉を超えた奇妙な『絆』が結ばれていく。
〜そして、とうとう、彼らは最終段階(ファイナル・ステージ)へと辿り着いた──。


………
……




【⑧】

【Stair Workouts:伝説の階段(フィラデルフィアの奇跡)】



 ……厳密に言えば、ここはフィラデルフィアじゃねえ。
だが、そんなことは今の俺には関係ねえ話だ。
目の前に立ちはだかる、天を突くような長い石段。
そこに階段があり、俺の足が動くなら、そこはいつだって、
──無名のボクサーが誇りを証明するため駆け上がる、『栄光への架け橋』に変わる。


「……行くぞ」

「……うん」


俺と、そしてモモは、一度も止まらなかった。
太ももが焼き切れるような悲鳴を上げようが。
肺の中が焼け付くほど息が上がろうが。
意識が遠のくほどくたくたになろうが。──ただひたすらに昇り続けた。
一段、また一段。
これまでの悔しさを土踏まずに込めて蹴り飛ばし、俺たちは上を目指した。


「ハァ……ハァ……ッ!」

「はぁ、はぁ……」


ああ、バカな真似だと笑いたきゃ笑え。
文明の利器も魔法も使わねえ、無意味なトレーニングだと、鼻をほじって笑っても構わねえ。
そいつは個人の自由だ。
他人の感性にケチをつけるほど、俺は暇じゃねえな。

──だが、俺にも『自由』はある。
──勝手にさせてもらうぜ。


「ハァハァ……ッ!」

「はぁ、はぁ……」

「ハァハァ!!」

「はぁ、はぁ」


「ハァアアアアアアアアアッ!!!!」


……ただ、
最後の一段を蹴り上げた瞬間に広がる、あの景色──。
胸を突き破るような雄叫びと、痺れるような喜びを知らぬまま死ぬなんて──、
……俺から言わせりゃあ、人生を半分損してるようなもんだけどよ────。


「……ハァ、ハァ!!!」


隣で涼しい顔をしながらも少しだけ上気したモモに続いて、俺は最上段へ飛び込んだ。
そして、拳を天へ突き上げ、恒例の叫びをぶちまけた。


「ヤッタァ!! ヤッタアアアアアアアア!!!」

「え? ……やった? ……あ、うん。やったね!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! エイドリアァァァァァァァンッ!!!!」

「…………? …………シャミ子ぉ〜〜!」


……さて、準備は整った。
運命だか主催者だか知らねえが、来るなら来やがれ。

────このタッグマッチ、KO負けのゴングを鳴らす暇なんて、これっぽっちも与えねえからよ。

………
……




【⑨】

【Scream to Hell:まるで井戸に沈んだ蟲毒の羨望。溜まった膝の水の─



「やめろッ!! 一体どんなトレーニングをする気だ!?」




【ロッキー・バルボア@ロッキー】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明支給品×2
[思考]:
1:主催者をリングに沈め、10カウントを聞かせる。
2:モモの嬢ちゃんと協力し、迷子名人のシャミ子を探し出す。
3:……魔法少女……? ああ、日本ってのはとんでもなくクレイジーな国だ……。
※参戦時期は3か4あたり。でもロッキーは『ファイナル』以外ワンパタだから、『1』だけ履修でOK。

【千代田桃@まちカドまぞく】
[状態]:健康(※半端じゃない能力制限済み)
[装備]:不明
[道具]:冷凍肉、不明支給品×2
[思考]:
1:筋トレ命。
2:シャミ子が心配。今すぐこの茶番を終わらせて多摩市に帰りたい。
3:ロッキーの肺活量が異常すぎて、少し引いている。
最終更新:2026年02月16日 10:28