新・十二支決定戦
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:新・十二支決定戦』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は1/22(水)~2/8(土)までです
新・十二支決定戦
[[エトランド王国]]は王国を名乗ってはいるが王はいない。
かつて存在したとされる国祖にして真なる王より付託を受けた『十二支族』。
それぞれの支族長による合議で国家運営がなされていた。
子室家、丑久家、貴寅家、卯水家、鼓辰家、巳雲家。
露午家、黒未家、申飛家、香酉家、戌塚家、亥賀家。
これら12の家々が、現在の『十二支族』となる。
現在の、と注釈がつくのは、過去においては違っていたからである。
六十年に一度行われる、十二支族の入れ替え戦。
入れ替え枠はたった一枠のみだが、戦いに敗れてしまえばすぐさま十二支族から除名されるのだ。
そうなれば、次の入れ替え戦。つまり六十年後まで、その支族は国政に参加できない。
完全に蚊帳の外に置かれるのである。
平民同様、というわけではないが。
それでも多くの権限は失われ、あらゆる名誉は引き裂かれるのだ。
十二支族入れ替え戦、『エトワール神殿 早詣りレース』。
今年、この戦いが六十年ぶりに行われることとなった。
前回敗北し、六十年に渡り苦汁をなめ辛酸をなめてきた『五名家』。
半世紀を越えるその雌伏の時間を、ついに精算するときが来たのだった。
まず、『五名家』による予選が行われ、その結果が出た。
猫石家、土亀家、鯨井家、蟻間家、雪燕家。
以上の『五名家』による、血で血を洗い骨身を削る予選会である。
そこで十二支族への挑戦権を得たのは、揃いの猫耳で気合を見せた『猫石家』だった。
十二支族は当主を筆頭とした一族のみでレースを戦うようだが。
猫石家は必勝を期すため、傭兵を募集している。
新たな十二支族を決める戦い、『エトワール神殿 早詣りレース』。
猫石家を応援するなら、参加やむなしである。
『マップ:[[エトランド王国]]』を発見しました
[[エトランド王国]]
王政ではない。それどころか王さえいない。
それでもエトランドは王国を名乗り続けている。
建国の王エットーリオ・エトランドは『十二支族』に国を任せ姿を消した。
数百年に渡ってその後も玉座を空位にしたままにしているのは、いつでも戻ってくれて構わない、という彼らの意思である。
あくまで、預かっているという立場を崩すつもりはないようだった。
したがって現体制を維持したまま、六十年ぶりとなる入れ替え戦が予定通り行われようとしていた。
王都エトガルドには、その許容量を越えた人々が流入してきている。
この世紀の一戦にして、自分たちの国を治めるものを決める戦い。
それを自身の目で見届けようと、国中から多くの国民が集まってきていた。
小さな揉め事は絶えず起こっている。
だがそれが大きなものに発展しないのは、誰しもがそれを望んでいないからだろう。
みな、入れ替え戦『エトワール神殿 早詣りレース』の邪魔をしたくないのだ。
つつがなく始まり、終わる。
王都に集まる国民たちは、全員がそれを祈り願っていた。
子室家、丑久家、貴寅家、卯水家、鼓辰家、巳雲家。
露午家、黒未家、申飛家、香酉家、戌塚家、亥賀家。
彼ら『十二支族』に『猫石家』をくわえた、十三の家による争い。
この中で勝つのは十二家。負けるのはたった一家のみである。
『十二支族』内での序列が決まるので、一つでも上の順位は目指すべきである。
だが、最も優先されるべきは負けないこと。13番目にはならないこと。
それだけは絶対に、絶対に避けねばならなかった。
ダメなら次頑張ればいい、は有り得ない。次は60年後である。
当主の座は一世代、ないしは二世代は変わってしまっているだろう。
これは1位を争う戦いではない。
最下位を回避するための戦いである。
行くぞ決勝戦!
『エトワール神殿 早詣りレース』
王都エトガルドにある議会前広場をスタートし、エトワール神殿へと向かう。
いつもは閉じている城門は開き、レース準備はしっかりと整いつつあった。
レース開始を待つ間。
スタート手地点である議会前の広場に置かれた巨大スクリーンには、先日行われた予選会の様子が映し出されていた。
猫石家、土亀家、鯨井家、蟻間家、雪燕家による『五名家』。
この中で勝ち上がったものが、十二支族に挑戦することができる。
優勝候補は六十年前の入れ替え戦に破れ、名家落ちしていた鯨井家。
六十年ぶりに十二支族へと返り咲くべく、金と人をずいぶんと集め投入していた。
予選会は『エトルリア火山 早登りレース』で行われた。
それは火口の際際タッチをゴールとする、とても危険な勝負である。
レースは白熱し、様々な妨害工作が五人の当主に襲いかかった。
各家の当主が脱落する中、山頂付近で最後まで残った二人のマッチレースとなった。
鯨井家当主、鯨井マッコウ。猫石家当主、猫石アイニャ。
両家の争いは火口ギリギリまで続き、最終的にはタッチの差。
猫石家当主、猫石アイニャの長い爪の先が、火口の際に誰よりも早く触れていた。
その、ゴールシーンがスローモーションで何度も画面に流されている。
VARチェックに十分以上を要した、際どい場面だった。
そんな白熱の予選結果もあり。
猫石家に対する声援は、どの十二支族よりも大きいものだった。
私をゴールに連れてって
議会前にある広場をスタートし、目指すはエトワール神殿である。
その奥にある『女神エトランゼの石像』。
その前で二礼二拍手一礼を決めることで『お詣り』成立、それがゴールとなる。
これはレースなのだから、当然速いもの勝ちである。
先着十二家が、新たな六十年の『十二支族』となる。
そしてそれに漏れたただ一家が、『五名家』として六十年を過ごす羽目になるのだ。
全ての運命を決めるレースのスタート時間が近づいている。
すでに十三家の当主は全員揃い、スタート地点でその合図を待っていた。
実際にレースを走るのは、それぞれの家の当主である。
神殿の女神像に当主が『お詣り』を果たせば、すなわち家の勝利となる。
走るのは当主自身だが、『家』に所属するものたちによる補助や妨害は自由だった。
実力、甘言、罠、買収。毎度、あの手この手が行われるという。
とにかく自家の当主が早く女神像に辿り着けば、それで勝ちだった。
スタート地点に、その彼らの姿は殆どない。
十三人の当主の他には、準備を手伝うものが数名程度いるだけだった。
王都の中ではパレードのように、ゆっくり走り妨害なども行われない。
国民たちに見られている間は、醜い争いはしないのだ。
だからレースは、ぬるっと始まった。
一人ひとりが周囲に手を振りながら、それぞれに歩き出す。
そこには、これからの六十年を決める戦いが始まるような雰囲気はなかった。
十二支族ではなく、それを目指す猫石家の当主だけが硬い表情をしていた。
広場からメインストリートをまっすぐ、エトワール神殿へと続く路。
王都の城門が近づいてくると、十三当主の走りもスピードが上がってきていた。
いよいよ、始まるのである。あの城門をくぐり、外に出れば。
十三の『家』同士の戦いが、六十年の時を経て再び巻き起ころうとしていた。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
十二支族に遭遇した!
[[エトランド王国]]
レース終盤を迎え。
(PC名)が与する猫石家は現在、最下位争いをしていた。
だが、実のところそれで何ら問題はない。もとより優勝などは狙っていなかった。
十二支族に選ばれること。それはつまり、12位以内に入ることである。
そう考えれば、その最下位争いに勝つことさえできれば、それで目標は達成だった。
そしてここまでの状況は、多くの国民が予想していたことでもあった。
現行の『十二支族』が六十年にわたって作ったアドバンテージは大きく。
簡単に崩れたり覆ったりするものではない。
『五名家』猫石家の逆転は難しい、というのが世間の声だった。
そして大方の予想通り、上位陣は次々とゴールしてその順位が確定していた。
十二支族の枠、その椅子が一つずつ埋まって減っていく。
優勝は狙っていない。焦る必要はない。
猫石家当主である猫石アイニャはそう自身に何度も言い聞かせる。
だが、いくらそうしても、分かっていても、焦る気持ちは抑えられなかった。
最初に王によって選ばれた十二支族。そこに猫石家はいなかった。
その時も勝負が行われたのだが、当時の当主は参加しなかったのだ。
戦わずして負けた。逃げたと揶揄する声もあったという。
真実は誰も知らない。国民たちはもとより、家にも伝わっていなかった。
その頃は『家』ではなく、あくまで当主個人による争いだった。
そもそも、今のように巨大な一族を形成などしていない。
王と17人の側近だけによって、最初の十二支族と五名家が作られたのだ。
日付を間違えた。場所を間違えた。ボイコットした。
あれこれ理由を考えることもできたが、本当のところはわからない。
猫というのは気まぐれな性格で、実のところ理由などないのかもしれなかったが。
だが少なくとも、猫石アイニャは気まぐれな性格ではなく、勝つ気もあった。
60年どころか、建国以来一度も十二支族に入ったことのない唯一の家の当主として。
この最大のチャンスに長い爪を伸ばし、勝利を掴もうとしていた。
イベントマップ『[[エトランド王国]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
新・十二支決定戦
エトワール神殿に立つ石像。女神エトランゼ。
その姿は城壁を出て神殿を正面に見据えた、その瞬間からずっと見えている。
王都を見守るように、その動向を見張るように。
右手に鞭、左手に松明を持った姿で悠然と待ち構えていた。
彼女を目指して始まった『エトワール神殿 早詣りレース』。
11までの順位は決まり、女神像の周りでそれぞれの当主たちが決着を見守っている。
残る『十二支族』の椅子は1つ。猫石家はいまだ、走っていた。
神殿へとたどり着いた猫石家当主、猫石アイニャを最後の攻撃が襲いかかる。
その攻撃は明らかに、準備段階から彼女を狙い撃ちにしたものだった。
すでに言ったが、これは最下位にならなければいい戦いである。
全員に勝つ必要はなく、誰かに勝てばいい。
その誰かは自ずと最下位候補である『五名家』猫石家となり、他の家からすれば『対猫石家』の策というのが必勝法と言えた。
隠れていたものが、神殿に入ってきた猫石家の当主に狙いをつける。
その必殺の一撃、それは『マタタビ』を詰め込んだ散弾銃だった。
猫石アイニャの眼前に、大量のマタタビがばらまかれる。
果実に粉末を足した念の入れようで、その面攻撃から逃れるすべはなかった。
猫石家が狙われる。それは当然のこととして彼女自身も分かっていた。
ならば当然、その対策を取らない理由はない。
あらゆる猫グッズの流通を裏表ともにチェックし、各家の仕入れ状況を把握。
そしてそれらを使われた際の対策も、彼女たちは完璧に行っていた。
鼻栓をして目を瞑って息を止める。あとは強い心で突っ切るのみだった。
マタタビの霧を突破し、彼女は目を閉じたまま女神像へと突撃していった。
体当たりを跳ね返され、空中を吹っ飛びながら二礼二拍手を連続して決め。
最後に地面に土下座ポーズで膝から突き刺さり、その一礼によってゴール『二礼二拍手一礼』が完了したのだった。
猫石家当主のゴール。それで、全ての決着がついた。
ゴール地点に観客となる国民はいない。審判もいない。
十二支族の当主、それぞれが見届人だった。
新たな十二支族に猫石家が加わり、今後60年の国政を担うこととなったのだった。
「うにゃーーーーーーーーー!」
猫石アイニャが喜びを爆発させ、すぽーんと鼻栓が勢いよく抜け鼻血を吹き出す。
女神像に顔面から突撃した、その鼻が少し凹んでしまっていた。
その彼女のもとに、猫石家の一族が一斉に集まってくる。
先にゴールしていた当主たちが、彼女と彼らを拍手で祝福していた。
そこに、一陣の風が吹いた。
風に運ばれた、粉末状のマタタビがその一団を包む。
その霧が晴れた時、そこには頬を染め恍惚とした表情で転がる、笑顔の猫石家の面々の姿があった。
ミッション『新・十二支決定戦』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『携帯マタタビ』を手に入れた
(PC名)は魂片:『猫石家家宝『招き猫』』を手に入れた
- フェイズ5
- フェイズ6
- 当日夜(休息処理後に表示)
新・十二支決定戦
イベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
略奪は風に吹かれて
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:略奪は風に吹かれて』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/18(水)~4/4(土)までです
略奪は風に吹かれて
『春一番』。
春を告げる風のことを、その地方ではそう呼んだ。
冬の終わりに、南から吹いてくる暖かい風。
それは冬の寒さを北へと運び去り、代わりに温もりを残していく。
春が来れば吹くのか、あるいはその風が吹けば春が来るのか。
鶏と卵の話ではないが、そのぐらいには密接なつながりを持っていた。
ただそれは、暖かくはあったが、優しく包み込むような穏やかなものではない。
強く激しい、嵐とも呼ぶべきものだった。
家が吹き飛ぶほどではないにしろ、何事もなく立っていられるものではない。
何かに捕まっているか、もしくは大人しく頑強な家に閉じこもるか。
いずれにせよ『春一番』が吹き荒れる間は、町は完全に活動を止めるしかなかった。
だが、春とともに、春を告げに来るのは『春一番』だけではなかった。
風に乗って、彼らはやってくるのだ。
空賊集団『春風小僧』。
自らそう名乗る嵐のような盗賊たちはまさに今、仕事の時を迎えていた。
無法者らしく。風の向くまま気の向くまま、というわけでもない。
気の向く向かないとは関係なしに。
『春一番』の吹くままに、それに乗って彼らは移動しその途中で略奪を行う。
強襲、略奪、逃走。その全てに嵐を利用し、彼らは空賊として長い間捕まることなく盗みを繰り返していた。
しかし、ついにその彼らを捕らえるチャンスがやってきた。
進路の予測の難しい『春一番』だが、今年は比較的素直に吹いており。
このまま進めば、城塞都市グロンツキールにぶつかる。
そこで、彼らを捕らえようというのだ。
空賊たちは風に乗ってやってくる。
だから『春一番』が吹けば、自動的に彼らも来ずにはいられない。
町の城壁を利用し、彼らを封じ込めるのである。
街の人々を避難させている時間はない。
『春一番』は城塞都市のすぐ近くにまで、すでに空賊たちとともに迫っていた。
『マップ:[[春の嵐の城塞都市]]』を発見しました
[[春の嵐の城塞都市]]
城塞都市グロンツキール。
大きく発展した街を、高い壁が囲っている。
壁が途切れる場所はもちろんない。
東西南北、4つの城門のみを出入り口として街は完全に閉鎖されていた。
かつてその壁は、外敵から街を守るためのものだった。
だが、その外敵を全て討滅し、彼らにとっては平和な時代が来てしまう。
壁自体は残ってはいるが、機能としての守備能力は薄い。
城壁の上に登って歩いているものもなく、ましてやそこで嵐と戦おうとする兵士などまったくいなかった。
『春一番』の到来、そしてそれに乗ってやってくる空賊『春風小僧』。
それらの存在は街にも当然伝えられていたが、正直なところ警戒は薄い。
かつての大戦に勝利したことから来る驕り、高い城壁対する信頼。
それらが街の人々から、正常な恐怖心を奪ってしまっていた。
だからその日も変わらず、街全体が活動中だった。
市場が開き、商店が開き、大通りを人が歩き、王族がお忍びで喫茶店に来る。
怠惰な平和の時間。それを破壊したのは、ついに到来した風の音だった。
城壁にはそもそも小さな風の通り道があり、自由にそこを通り抜けてくる。
その勢いが強すぎて、隙間を抜ける際にピューと高い笛のような音が鳴っていた。
『春一番』は南から吹いてきていたが、城壁にぶつかり渦を巻き。
四方八方から風が壁内に入り込むこととなり、そこら中でぴゅーぴゅー鳴り続けていた。
それは空賊襲来を告げる警笛がごとく、街中に響き渡っていた。
風と共に来たる
壁に空いた隙間は、風は通すが空賊は通さない。
だが、四方を高い城塞に囲まれた都市であっても上方向はガラ空きだった。
地上付近を吹く風は城壁に阻まれたが、風は街の上空をも自由に吹いていた。
風が吹く場所に彼らは現れる。風が城壁を越えるのであれば彼らもまた越えるのだ。
風と共に来たる。
空賊たちは、軽々と壁を越えて上空から街に現れたのだった。
街は城壁では守られず、『春一番』も空賊もともに空から襲いかかっていた。
彼らご自慢の城壁が、壊されるどころかあっさりとスルーされ。
そのプライドが傷つく時間的な余裕もなく街はパニックに陥った。
空を見上げながら逃げ惑う人々。その脇を突風がすり抜けていく。
風が抜けたあと、同時に財布も抜かれていた。
街に入り込んだ空賊たち。
その略奪は、風に乗ってすでに始まっていた。
春の風が強く吹いている
空賊たちは飛行能力を持つものに搭乗、もしくは騎乗している。
中には、翼など自身の力で飛んでいるものもいたが。
つまり全員が空を飛び、風をつかまえ高速で街中を移動していた。
「そぉら! 目につくもの、全部掻っ払っちまいな!」
しゃがれた女性の声が、甲高い笛の音に紛れて響く。
その物言い、そして雰囲気から彼女が空賊『春風小僧』の首領と思われる。
小僧とわざわざ名乗っておきながら、それを率いているのは太った老婆だった。
彼女とその小僧たち。そのようなイメージが『春風小僧』としては適切か。
それをどれだけ彼女たちが意識しているかは、知れたものではないが。
彼女、老婆が乗っているのは体の細い戦闘機だった。
コックピットは前方に風防があるだけで、筒状の機体に穴が空いているだけである。
そこに、彼女は腰から下を突き刺して半身がむき出しの状態で操縦していた。
操縦桿は中にあり、僅かな隙間から腕だけを中に入れている。
コックピットに太った体をギュウギュウに押し込んでおり、全て終わったあと、ちゃんと抜けるのか少し心配だった。
「あれもこれもそれもこれも、ぜーんぶあたしの物さぁ!」
そんな心配など知る由もなく、彼女は戦闘機を自在に操縦している。
空賊『春風小僧』の首領、その名は伊達ではないということだった。
壁を抜けた風、越えてきた風、それらが全て壁の内側に入り込み渦巻いている。
その勢いは枯れることなく、彼らに翼を与え続けていた。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
空賊『春風小僧』に遭遇した!
[[春の嵐の城塞都市]]
城塞都市グロンツキール。その街中を飛び回る空賊たち。
彼らは空を飛びながら『盗み』を行う。
だからその行動範囲は、風が吹く場所に限られていた。
だから基本的に、屋内は安全地帯である。
ただ、大きなガラス窓のあるような建物であればその限りではない。
風の力で割って、中へと入り込む。
体の大きなものでは無理だが、空賊『春風小僧』には様々なものがいた。
飛行機乗り、ペガサスライダー、グリフォンライダー。
巨大な猛禽類や羽根を広げた蟲たちなど、なんともバラエティに富んでいた。
一緒になって飛んでいるだけと思われた小鳥も、鋭い滑空で物を盗んでいる。
咥えたそれを飛行機まで運んでいる姿は、どこか巣に餌を運ぶ姿を思わせた。
そのような小型のものが屋内へも入り込み、根こそぎ盗んでいこうとしていた。
彼ら空賊たちにとって、全ては風まかせである。
襲う街も、そのタイミングも。
そこに彼らの意思がほとんど介在しないからこそ、通常の捜査方法ではその予測と捕縛を困難としていた。
もちろん、風を読めれば彼の動きも読むことができる。
今回はそれができたことで、こうして先手を取れたのだ。
このようなチャンスが、今後も何度もあるとは限らない。
最初にして最大、最後の機会となる可能性も大いにあるだろう。
だが、このように襲撃を予想できたとしても、まだ障害はある。
その襲撃中の時間、逃げるタイミングもまた風まかせなのだ。
欲をかいて逃げ遅れる、なんてことはない。風がやんで逃げられなくなることもない。
全ては風の赴くままに、言うなれば自動的に、颯爽と現れ颯爽と去っていくのだった。
それはつまり、思考停止だったとも言えた。
『春一番』という独裁者にすべてを委ね、任せ、依存し。
その独裁者の機能不全に気づけなかった。
思考を止め、仕事に没頭する。奪う。それを繰り返す。そのうちに。
風向きは、すでに変化していた。
イベントマップ『[[春の嵐の城塞都市]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
略奪は風に吹かれて
『春一番』の進路を読まれ先手を取られ、彼らの仕事は捗ってはいなかった。
いつもよりも少ない稼ぎに、もう少しもう少しと。
それで、タイミングを失った。風を読みそこね、彼らは翼を失った。
とはいえ風そのものは残り、壁の内側で飛ぶことはまだできたのだ。
それが逃げるタイミングを逸した、一つの原因である。
だが、風は壁の中だけを舞っており、壁を超えるだけの勢いはもうなかった。
逃走のゴーサインは出ていない。そう勘違いしていた。
風はそもそもそのようなサインは出さない。ただ自由気ままに吹くのみである。
それを勝手に、彼ら『春風小僧』たちが独裁者に仕立て上げただけだった。
意思を捨て、風の吹くままに。だがその風はもう、彼らの知る風はなくなっていた。
彼らの中で最初にその失敗に気づいたのは、首領である老婆だった。
「……こりゃいけないね。ちょいと調子に乗りすぎたみたいだねぇ」
コックピットに腰から下をぶっ刺した格好で風を浴びながら、ニヤリと笑って呟く。
自嘲したものだったが、面白いと笑う素直な感情にも見えた。
旋回する彼女の戦闘機に近寄る機影が一つ。
そのコックピットから男が身を乗り出し、彼女の機体後部に手を伸ばす。
その手には、ハンマーが握られていた。
「あばよ! ボス!」
男が叫び、そのハンマーで老婆が乗る機体の最後尾を思い切り殴りつけた。
その衝撃で、老婆が刺さったコックピットの下にある椅子に火がつく。
それは彼女の戦闘機にのみつけられた脱出装置だった。
すぽん、とシャンパンのコルクが抜けるように老婆が飛び出す。
あるいは樽に剣を刺された黒ひげの海賊のように。
椅子に座ったまま、その椅子が火を吹いて。彼女は空へと打ち上がっていった。
戦闘機をぶん殴った彼の顔を睨むように見つめながら、ついに高さは城壁を越え。
最後に白い歯を大きく見せ、
「じゃあねぇ! 春になったらまた来るよ!」
その声を街全体に届かせて、彼女の姿は小さくなっていった。
空を見上げて空賊首領の脱出を見送る『春風小僧』。
表情を見れば、それぞれの目に宿る感情が違うのはよく分かった。
緊急時には彼女の脱出を最優先と決めていた古株たちは誇らしく満足した表情で。
他は様々に、呆然としているものから怒りを表しているもの、涙を見せるものまで。
その共通点は、翼を失ったということと。
そのうち完全に風がやみ、やがて地上に落ち。
そして街の人々に袋叩きに合う、という未来だった。
ミッション『略奪は風に吹かれて』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた
略奪は風に吹かれて
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『』が修得可能になった
狙われた田園
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:狙われた田園』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/13(水)~5/30(土)までです
狙われた田園
見渡す限りに広がる田園風景。
いくつもの十字を作るあぜ道に区切られた水田が整然と並んでいる。
傾斜があるような部分では段差のある棚田になっており、あぜ道以外の隙間はなくびっちりと作られていた。
水の張られた水田。
今は田植えの季節であり、すでに終えていてもおかしくはない。
少なくとも手つかずというのは考えにくかった。
だが、その色は全面濁った茶色のまま。
苗は一本も植えられておらず、まっ平らな水面が広がっていた。
無論、そこは農村であり、少ないが家もある。
その村人たちがサボってこうなっている、というわけではなかった。
一度は植えたのだ。全ての水田に、心を込めて苗代で育てた苗を。
だが、それらはなくなってしまったのだ。
例年通りの季節、いつも通りの方法で行われた田植え。
去年と同じ、あるいはそれ以上に美しく新緑の稲田が出来上がっていた。
それが数日後、その全てが消えた。
残された茎の一部などを見れば明らかに、それは齧られ食われていた。
害虫や害獣の存在はもともとあった。被害もあった。
だが、これだけの短期間にこれだけの規模でというのはなかったことである。
すぐに植え直した村人もいたが、それも一晩でやられてしまった。
もはや、村全体が完全に『餌場』としてロックオンされてしまっていた。
このままでは新たな田植えは不可能である。
幸いにして育てていた苗の予備分は無事だった。
再び全面に、というわけにはいかないが充分な収穫は可能になるだろう。
だが、それもこれも、新たな田植えができなくては話しにならなかった。
すべてを喰らい尽くす害虫、害獣たち。
虫か獣かすら分からないが、それらの駆除を手伝ってもらえないだろうか。
『マップ:[[害蟲天国の大水田]]』を発見しました
[[害蟲天国の大水田]]
トンボが飛び交い、カラフルな蝶々がひらひら舞い飛ぶ。
草の中に潜む虫たちの姿は見えないが、ジージーと鳴く声は聞こえる。
かなり近づかなければ鳴きやむつもりはないらしく、自分たちの存在を全力でアピールし続けていた。
水の張られた田んぼを覗いてみれば、小さなオタマジャクシが泳いでいる。
足が生えたり手が生えたり。これらが鳴き出すのも時間の問題だった。
他にも探せば、アメンボウやイモリなどいくらでも見つかるだろう。
初夏の暖かさの中で、水も食べ物も豊富にある。
命を育むには充分過ぎるものが、この水田には揃っていた。
ティカラ村にある、のどかな田園風景。
そう見える。そうとしか見えなかった。
ただ、あらゆるものが揃う中、足りないものが唯一ある。
他にもあるかも知れないが、見てすぐに分かるのは水田が空っぽであること。
そこになければならない、苗や稲の姿が一本もなかった。
稲刈りを終えた秋の風景であれば、これでよかったのだ。
だがそれにはまだ数ヶ月早い。収穫はまだ先にも関わらず稲はなくなっていた。
食われたのだ。田畑を荒らす、害蟲どもに。
一見すれば、風は暖かく柔らかで、優しい空気に包まれている。
しかし、そのぬるいヴェールに隠された裏側では生存をかけた闘いが行われている。
行われた、その惨劇の跡が今目の前に広がる禿げ上がった水田だった。
虫取り少年捕物帖
苗の刈り取られた水田。
その間を切り分けるあぜ道に、小さな村人の姿を見つけた。
そのあぜ道の雑草が全くの無傷で伸び放題なのは、どこか皮肉げだった。
虫取り網を持って、子供がトンボの尾っぽを追いかけてあぜ道を走っている。
それも『のどかな田園風景』の構成要素の一つであろう。
だが実態は、その子供の表情はとても『のどか』とは程遠い。
獲物を手にかける時の山賊のような、欲望丸出しの顔をしていた。
「あのね! 虫を捕まえたらね! お金をくれるって!」
山賊のような顔を、子供のそれに戻して。
少年は右手にトンボを握りしめ、嬉しそうに答えてくれた。
村では懸賞金制度を用い、害をなす虫や獣などを買い取っているらしい。
一山いくら、というざっくりしたものだが、対象は村の内外問わず誰でももらえる。
それを聞いた少年は虫取り網を手に家を飛び出し、村を走り回っていたのだ。
ちなみに、トンボはどちらかと言えば益虫とされる。
それを見せつけてくる少年の笑顔を見ていると、指摘はできそうになかった。
村人、あるいは(PC名)のように村の外から来たもの。
あらゆる者の力を借りて、ティカラ村は害蟲駆除にあたっていた。
それが功を奏しているのか。
少年が村を走って回ることができる、その程度には状況は落ち着いて見えた。
だが、それは彼らの目的が人ではないと言うだけのことであり。
何かが好転しているという話ではなかった。
彼らの食欲は、今もなおとめどなく溢れ出ている。
それは村を飲み込んで、まるごと溶かし込もうとしていた。
喰い逃げ害蟲犯科帳
彼らにも言い分はあるだろう。
害だなんだと言われるが、それは一方的な物言いである。
悪意があってそうしているわけではなく、そういう生態なのだ。
生きるために食べる。ただそれだけのことである。
ただその数が多く、さらには個々の食欲が大きすぎただけのことで。
それをもって悪と断ずることはできなかった。
とはいえ、相容れない、という事実は何も変わらないが。
「ここが最後の砦だ! ネズミ一匹入れるなよ!」
村人の多くが集まり、様々な農具をそれぞれ手にしている。
水田を見下ろす事のできる高台、そこには巨大な倉庫が建っていた。
その建物は稲の苗を育てている建物で、村で共同で使用している。
つまり、この村の全ての苗がここにあるということだった。
この春に育てた苗はすべて使うことなく、予備分が残っており無事である。
これを死守することが、村としての絶対的な勝利条件だった。
だが、水田に植えた苗をすべて食べ尽くした彼らが。
それでもなお飢えた腹を満たそうとするならば、ここを狙い襲うのは必然だった。
だから彼ら村の者たちもまた、ここに集まっていた。
絶対防衛線。決戦の場はここである。
育むものと屠るもの。その争いの結末など決まっている。
それを覆すには、どちらにも属さない(PC名)の力が必要だった。
ガサガサと草の擦れる音。耳障りな羽音。土の下の僅かな震動。
気配が近づいている。包囲が狭まっている。
狙われた苗床を守る。決意を秘めた目を真っ赤に滾らせ、農夫たちはぐっと自身が最も得意とする農具を握りしめていた。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
米好き害蟲に遭遇した!
[[害蟲天国の大水田]]
羽虫や鳥たちが空を飛び、獣たちは野を駆ける。
地中を進み、倉庫の床下からダイレクトアタックを仕掛けるものもいた。
その全てを、すんでのところで防いでいく。
空行くものを叩き落とし、地を駆けるものを弾き飛ばし、地中を進むものを刺し貫き。
それを続けることで、害敵たちは目に見えてその数を減らしていた。
大きく広がる水田地帯である。そのすべてを守ることは難しかったろう。
だがその狙いが一つに絞られたことで、守りも集中できた。
数の優位性はもちろん彼らにあったが、最大限に発揮することはできない。
ただ待ち構えればいい、その状況では数に劣る農夫たちに大きな分があった。
問題は時間だけだった。
日が傾いて、頭の上を小さな虫が群れで飛んでいる。
彼らには倉庫の苗を襲う意志はないらしく、何が楽しいのか知らないがずっと頭上をくるくると舞っていた。
耳を澄ませば、昼間とは鳴く虫の種類が違う。
なんとなく夕焼け空に似合う、『終わり』を歌う声だった。
害をなすもの。益をなすもの。そのどちらでもないもの。
彼ら自身にはあまり大きな違いはないが、こちらの都合でふるい分けられる。
欲するものが同じだった。それだけで、友人にはなれない。
だから戦うしかないのだった。
そしてその戦いにもいよいよ終りが見えてきていた。
稲の苗を守り切る。そのために必要なのは、彼らの数を減らすことである。
最後の一匹まで狩り尽くす必要はないのだ。
大事なのはバランス。制御しうる、バランスである。
イベントマップ『[[害蟲天国の大水田]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
狙われた田園
これは佃煮だ、これは天ぷらだ、これは干物だ、などと。
農夫たちが楽しく話しながら、捕獲したものを取り分けている。
食べられるもの、頑張れば食べられるもの、絶対に食べられないもの。
おおむねその3つに分けて、2つは袋に1つはゴミ箱に放り込む。
害虫、害鳥、害獣。それらを一緒くたにして。
かつて害敵だったものたちが、敵味方とは異なった理由で別々に分類されていた。
農夫たちと害敵たちの戦い。
それは古より、あらゆる時代、あらゆる場所で行われてきた。
勝ち星はいったいどちらに多いだろうか。
無論、何を持って勝ちとするかにもよるだろうが。
ときに作物を守り、駆除にも成功し。
それでも彼らを完全に駆逐するには至らず、作物を奪われ続けた歴史がある。
だが、今日に至るまでどちらも生き残ったのだから、引き分けといったところだろう。
そして今回のこれも、決着はつかない。
今年に関しては農夫たちの勝ちだとしても、来年にはまた起こる永遠の戦いだった。
守りきれた苗。それらの新たな田植えは、後日行われることとなった。
様子見の意味合いもあったが、本題はそれではない。
勝利を祝う。まずは、そこからだった。
変に得たものがあったせいか、収穫を祝う祭りのような空気に村はなっていた。
早すぎる収穫祭。その肴は害敵たちである。
村の主婦たちの手により様々な形に調理され、その姿を劇的に変えていく。
日が落ちきる頃には、いくつもの料理ができて村を彩っていた。
初夏の村に秋の雰囲気を漂わせながら。
秘蔵の酒も次々と出され、一風変わった収穫祭が始まろうとしていた。
ミッション『狙われた田園』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『害敵のごった煮』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『名鍬『水田守稲光』』を手に入れた
狙われた田園
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
蝉時雨の夜に
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
『時限ミッション:蝉時雨の夜に』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は7/8(水)~7/25(土)までです
蝉時雨の夜に
夜。空を一条の光が切り裂く。
流れ星かと、普通はそう思うだろう。
実際見たものの中でも、そうだと信じているものも多そうだった。
その夜、空を流れた光は星ではない。
空を埋め尽くすほどにこぼれ落ちるそれは、流星群などではなかった。
真っ赤に燃えながら降ってくる、その正体。
夏という季節の間けたたましく騒ぎ立てる蝉たちだった。
その現象は、『蝉時雨』と呼ばれていた。
雨のように降り注ぐ、その様子を例えたものである。
だが降るのは水滴ではなく、億千万の蝉たち。
しかも蝉たちの落下速度は音速を超え、自ら燃えながらの降りっぷりだった。
その光景は、この地方では夏の風物詩の一つとして楽しまれていた。
ただし、楽しめていたのは、それがあくまで風景であったからである。
空を流れて、どこか遠くに落ちる。
風景、景色であればよかったのだ。
だが、そうでなくなれば、当事者となれば楽しめるものではなかった。
ある町の上空を黒い雲が覆い始める。
それはけたたましい羽音を立てて飛ぶ、一塊となった蝉の群れだった。
あれが全て、真下にある町めがけて落ちてくることになるのだ。
一匹一匹はただの蝉でも、この数となれば大きな被害は免れないだろう。
そして、それらはただの蝉でもなく、音速を超えて飛来する凶器そのものだった。
これまでの例に則れば、蝉の雲の発生からいきなり『蝉時雨』が起こるわけではない。
まず、数十匹から百匹程度の偵察隊がやってきて、着弾地点を調べて回る。
そして彼らが何かを確認した後、『蝉時雨』が始まるのである。
この偵察部隊を退ければ、まだ可能性は残る。町が生き残る、その可能性が。
黒い雲はすでに町の上にあり、そこから動く気配はない。
偵察の蝉たちがやってくる刻は、もうすぐそこに迫っていた。
『マップ:[[セミの降る町オクレム]]』を発見しました
[[セミの降る町オクレム]]
町にとってのセミは、けして敵ではなかった。
むしろ愛されていたと言ってもいいだろう。
『蝉見ヶ丘公園』。
セミ、とりわけ『蝉時雨』を眺めるために整備された公園である。
公園を囲むように、セミが止まりやすい木が植えられている。
それでは死角が生まれ、子どもたちにとって危険だという声も上がったのだが。
セミのためセミのため、ということで植樹が決まったのだった。
中には様々なセミの形をした遊具が置かれ、子どもたちに楽しまれている。
季節外では普通の公園として、情操教育に寄与しているのである。
『蝉時雨』の季節ではもちろん、ここがベストビューポイントとなる。
かくしてこの町で生まれ育てば、みな等しくセミ好きとなるのだった。
公園の木々に止まったセミたち。
彼らは今も、待ちに待った夏が来た喜びを全力で歌っている。
町の上空を黒い雲が、セミたちの群れが覆っているがそれが全てではなく。
そんなものはどうでもいいと、関係あるかと叫んでいた。
それは人も同様に、多くの住人が避難したりしている中で。
そんなものはどうでもいい、関係あるかと叫びそうな顔をして公園に集まっていた。
彼らは今年も『蝉時雨』を見るため、愛するセミたちのために来ていた。
無法蝉の一生
セミとは夏という季節を象徴するものの一つである。
いくつかの種類があり、それぞれ鳴き始める時期が違う。
夏の訪れとともに鳴き始めるものから、終わりを告げるものまで。
その違いを耳で感じながら、心に響かせながら人々は夏を過ごすのだ。
蝉は幼虫のまま、地中で数年を過ごす。
長い長い雌伏の時を経てようやく地上に這い出すと、日の当たるそこでの生活を数週間から1ヶ月ほど楽しむのである。
その中で、変わった行動を取るものたちがいた。
夏終わりを待たずして、燃えながら地上に降り注ぐのだ。
例年、『蝉時雨』が降るのは東に少し行った場所にある山だった。
西側斜面の木々がなぎ倒され、地面が穴だらけにされる。
さらにセミたちは炎をまとっており、延焼して野焼きのような状況となるのだ。
山の生態は毎年リセットされ、草木や生物にはサイクルがすでに出来上がっていた。
それが今度は町を襲おうとしている。
今までも別の山に降ったり、原っぱに降ったりしたこともあったらしい。
町にも、流れ弾のような形で落ちてきたことも。
だが、それらはあくまで一つのアクシデントにすぎない。
盛り上がることができるハプニングだった。
今年はそうではない。
ハプニングと片付けることはできない。楽しむことはできない。
まともな神経を持っていれば、自分の身が可愛ければ、そのはずだった。
蝉時雨どこから見るか
町の上空に居座る黒雲。
セミたちが作った巨大な群れであり、そこは男女の社交場だった。
けたたましく鳴きながら飛び回る。
そこには黒かったりピンクだったり、様々なものが渦巻いていた。
その直下。
例年とは状況が違うと悟った町の人々の行動は、概ね3つに分かれていた。
ひとまず町を離れた人、家に閉じこもっている人。
そして、それでもなお『蝉見ヶ丘公園』に集まっている人々である。
町を離れた人の多くは隣町にいるらしい。
あくまで一時的な避難であり、騒動が終われば戻るつもりだった。
もちろん、その後に町がどう云う状況になっているか、にもよるだろうが。
家に残ったものはやはり、年配者が多い。
今更家を、町を離れられない。それは郷愁でもあり諦観でもあり、ただ面倒くさいだけでもあった。
そして今現在、(PC名)もいる公園には多くの住民が集まっていた。
周囲の顔を見れば、血の気の多そうな男衆が中心である。
雨が降ろうが槍が降ろうが蝉が降ろうが、俺たちゃここを動かねえと。
持ってきたパイプ椅子に腕を組んでどっしり構えて座り、空に浮かぶ黒い雲にガンを飛ばしていた。
待ちきれなかった、それは人の方かセミの方か。
黒い雲から飛び出した一匹のセミが、真下にある町へと頭を向けていた。
一気に加速して、熱の壁にぶつかり自身に火がつく。
燃えながら、燃え尽きながら、それは直下の公園へ落下した。
砂場に落ちて、そこに小さなクレーターを作り周囲に砂を吹き上げる。
それを見て一瞬の静寂が生まれたが、すぐに歓声が上がった。
あの黒い雲を構成する全てのセミがこうやって落ちてくればどうなるか。
その想像力なく、彼らは一様に盛り上がっていた。
そして、雲から分かれた小さな分隊が、それらはゆっくりと町へと降りてくる。
旋回しながら、けして速度を上げないように。
そこが着弾点としてふさわしいかどうか。その値踏みに彼らは来ようとしていた。
最初の一撃と人々の歓声で、公園にいたセミたちは一斉に飛び立っていた。
静寂の中、戦いが始まる。
値踏みを終えれば『蝉時雨』が始まる。それをさせないための戦いである。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
斥候蝉時雨に遭遇した!
[[セミの降る町オクレム]]
斥候として送り込まれたセミたちが町を飛び回る。
それを追い払おうと、駆けずり回る町の消防団。
彼らは町から逃げず、家に籠もりもせず、公園で騒ぎもせず。
この町を守るべく、普段からそうしているように戦っていた。
はるか上空で渦を巻く黒雲からは、いまだ『蝉時雨』の起こる気配はない。
タイミングを図っているのか場所を吟味しているのか。
本隊が降りてくることはなかった。
その間に、斥候部隊が一匹二匹と撃退されていく。
本隊投入も、斥候追加もない。何もないまま、時間が過ぎていった。
斥候たちが町で行おうとしていたのは、人、物、あらゆる存在の排除だった。
だがそれは到底不可能な話である。人も物も多すぎた。
抵抗がなければやれたかもしれないが、この状況ではどうにもならなかった。
どのみち『蝉時雨』が始まれば、町は壊滅状態になるだろうに。
それを行う前に、着弾地点を綺麗にしておきたいようだった。
気がつくと、町に日がさしていた。
見上げれば黒雲の中に青空が垣間見える。そこから漏れた光だった。
雲がゆっくりと晴れていく。
セミたちが一匹ずつ飛んで、町の上空を離れてどこかへ行くようだった。
ここは自分たちが落ちるべき、その終焉の地としてふさわしくない。
斥候部隊による現地調査の結果、そう結論が出たようだった。
雲が徐々に小さくなり、完全に消えた頃には。
公園に戻ってきたセミたちが、またやかましく鳴き始めていた。
イベントマップ『[[セミの降る町オクレム]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
蝉時雨の夜に
あれから数日がたち、北の空に黒い雲が出来上がっていた。
それは町の上空にあったものの数倍の大きさを誇る。
つまり、それだけの数のセミたちがそこに集結しているということだった。
はるか遠くだが、鳴き声が町にまで届く。
サイレンのようなその呼び声に、人々は続々と動き出していた。
あの日町を出た人は皆帰ってきており、閉じこもっていた人も家を出てくる。
当然公園で騒いでいた人も、そして消防団の人たちも公園に集まってきていた。
日の落ちかけた夕方あたりから、それは始まった。
黒い雲の中から最初の1つが流れる。
真っ赤な炎をまとったそれは、夕暮れの空を切り裂きそのまま地面に激突した。
やや斜めに深い穴を開け、その奥でようやく止まる。
そこには表面が焼け焦げた、丸い塊が残って煙を上げていた。
それを皮切りにして、そこからは1つずつではなく。
先を争うように次々とセミが流れ、北の空と大地を赤く染めていた。
遠目には、それは美しい光景だった。
小さな火球が無数に空を流れ、地上に降り注ぐのだ。
地面を埋め尽くしていた草木が燃え、どんどん大きく広がっていく。
この町がああなっていたと想像すれば、美しいというだけではない別の感情も去来するが、公園の人々は素直にそれに見入っていた。
公園では大歓声が上がっている。
いつの間に設営されたのか、屋台でビールなどが飛ぶように売れていた。
花火大会でも楽しむような、町はそんな雰囲気だった。
流れ落ちる『蝉時雨』。
祈れば願い事でも叶いそうな、そんな気さえしてくる。
だが叶わない。流れ星だったら叶うのに、という話でもないが。
それはただの集団自死でしかない。だが、ただそうして滅ぶわけではない。
彼らは卵を抱えて地上に突撃するのだ。
新たにこの世界に生まれる、魂殻を纏った幼い魂を地中深くに穿つ、そのために。
また数年後、太陽の下に無事に出てくることを彼らは願って。
自らの殻を燃やし、破壊し、この世界より解き放たれていった。
その姿は数時間夜空を彩り、人々の目を楽しませたのだった。
ミッション『蝉時雨の夜に』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた
蝉時雨の夜に
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
真夏の回帰大作戦
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:真夏の回帰大作戦』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は9/2(水)~9/19(土)までです
真夏の回帰大作戦
いまだ初夏の頃、その日は一年のうちで最も昼の時間が長くなる。
一年で最も早い日の出、そして一年で最も遅い日の入り。
ダラダラと、その長い昼の時間を太陽が地上を照らし続け。
その熱を自身がいない夜の間中も残すやり口で、常に存在を主張し始める季節『夏』の始まりである。
だがその日を境に、昼の時間自体は徐々に短くなっていく。
そのうち昼と夜の長さが等しくなり、そこからは逆転して夜が長くなっていくのだ。
その頃には季節は、『秋』と呼ばれるようになる。
これは実際の、太陽の動きや気候の話ではない。
完全な自然現象とは細かな部分で少し違う。それは作られたものだった。
[[レヴェッタ・ドームシティ]]。この都市の環境システムの話である。
街全体を一つの巨大建造物とする、閉鎖型の人工都市だった。
高く分厚い壁で外周を囲い、天井は布のようなものがかぶせられている。
その天幕はスクリーンであり、全面に美しい空が映し出されていた。
知っていなければ、それが偽物だとはなかなか気づかないだろう。
ただ青色がベタ塗りされているわけではない。
光学的に、一日の変化、そして四季の移り変わりを表現していた。
空に連動した、気温、湿度、風、雨などのコントロール。
それらすべてが合わさり、ドーム内の環境は自然以上に自然に作られていた。
その異常がこのほど検出された。
これらシステムの維持管理は、この都市の『環境課』の仕事だった。
調査はすぐさま行われ、その原因もすぐに特定された。
だが、実際の修理はすぐとは言えず困難を極めた。原因は街の外にあった。
[[レヴェッタ・ドームシティ]]の環境システムを攻撃していたのは『夏の魔物』。その残暑とでも言えるものたちだった。
夏の魔物は街に入り込み、システムを攻撃し始めた。
昼夜の時間がまた再逆転して昼が長くなり、気温がぐっと上昇する。
ドームの中だけ、『真夏』がまた戻ってこようとしているようだった。
彼らを一掃する。そのためには、都市の環境を『真冬』に再設定する必要があった。
だが、まずはシステムを奪い返さねばならない。
このまま、この都市を彼らの楽園にさせるわけにはいかないのだ。
『マップ:[[レヴェッタ・ドームシティ]]』を発見しました
[[レヴェッタ・ドームシティ]]
[[レヴェッタ・ドームシティ]]。
外壁と天幕による完全閉鎖型の都市だが、閉鎖的というわけではない。
街では循環可能なシステムを構築している。
自然エネルギーを利用し、地下農場で食料を作り、様々な生産工場が稼働し、殆どの廃棄物は再利用される。
基本的に、都市内の生産のみで生活は賄えるようなっているのだ。
だが、それは必要分であって充分ではない。
生きていく上では、やはりそれだけでは満足できないのだった。
そもそも、人々を閉じ込めることが目的ではない。
門はいつでも開かれており、人や物の往来は自由だった。
都市外産の食べ物や商品も数多く街で手に入れることができる。
外からの観光客なども多くなり、近年では人数制限がされるほどである。
逆に、この街の住人も好きに外へ出ることはできる。
とはいえその人数は実のところ多くはない。
旅行や移住などは活発でなく、そもそも一歩も街の外へ出たことがないものも多い。
そういった人は本物の空を見たことがなく、街では問題視する意見もあった。
本物こそが素晴らしい、と必ずしも言えるわけでもないが。
まるで知らないというのも問題である。
今の天幕の空を本物と誤認している若者が増えているという調査結果もあり。
最近の都市内知識層の間では、よく議論される事柄の一つだった。
そんなこともあり、最近では校外学習として街の外へ出る学校も増えている。
ちなみに子供らの間では、壁外調査などと呼ばれているらしかった。
過ぎる夏を抱きしめて
このドームシティが完成してから、住民の間では数世代が経過している。
外への憧れも興味も薄く、外に出たがらないわけだが。
なによりもまず、不自由がない、困ったことがないというのが大きかった。
閉塞感を感じること無く、一日を、一年を過ごすことができる。
それを実現しているのがこの都市の『環境システム』であり、その中核を担う『天幕』の存在だった。
風を起こし、雨を降らし、雪を積もらせ、雷を鳴らす。
『環境システム』が天候を演出し、それに見合った空を『天幕』に映す。
こうした変化が常に街を動かし続けていた。
視線を上げて、空を見る。
そこには青々とした、雲ひとつない空が全面に描かれていた。
同じ青でも濃淡があり、それも常に移り変わっている。
輝く太陽から降ってくる光は、確かにその場所から落ちてきているように見えた。
だがこれは、この季節の空の景色としては設定外のことだった。
環境システムの異常はすでに、街にダメージを与え始めている。
爆発したような光量で照りつける太陽、上がり続ける気温。
人々は家に籠もり、空調でやり過ごしてはいるがいつまでも保たないだろう。
都市全体の消費エネルギー量は設定限界を超え、発電施設の警告音はけたたましく鳴りっぱなしだった。
遠からず、主要施設を除いて電力供給はシャットダウンされる。
そうなれば街は沸騰し、システムにより焼き尽くされるだろう。
その前に、『総合管理棟』を奪還せねばならなかった。
ゆずれない夏の日
都市の環境システムは多岐にわたる。
それらを一元的に管理しているのが、環境課庁舎とは別にある『総合管理棟』だった。
総合管理棟は街の外壁に組み込まれる形で建っている。
配管などが壁の中を通っていることが主な理由である。
そのようなことから、管理棟は給排気口や給排水口で外とつながっている。
そこを利用されたらしく、『夏の魔物』たちは総合管理棟に直接侵入してきていた。
彼らにどの程度の知恵、知能があったかは分からない。
ネットワークは乗っ取られ、物理的にも管理棟は制圧されている。
警備員たちの手で、管理棟から街への流入はなんとか押し留めた。
今ではここに警察や消防なども加勢し、街への被害の心配はおそらくないだろう。
だが、奪われた環境システムによる攻撃のほうが、圧倒的に深刻だった。
環境課の人間の案内で、(PC名)は『総合管理棟』へと乗り込んでいった。
裏口などは使わない。コソコソする必要もない。
彼らが裏に陣取っている以上、こちらは正面から自動ドアを使って入るだけだった。
中では『夏の魔物』たちが待ち構えていた。
去りゆく夏に抗い、ここに自分たちの楽園である常夏の国を作ろうとしている。
彼らに『冬』を味わわせる。
まずはそのための準備、下地作りが必要だった。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
夏の魔物に遭遇した!
[[レヴェッタ・ドームシティ]]
夏を生きるものたち。
彼らは同時に、冬を越せないものでもあった。
寒さに弱く、一年を通して戦う力、身体を有していない。
そもそもそういうふうには創られていなかった。
彼らの季節は終わろうとしている。
暑さのピークを越え、次の季節が始まる準備が確実に進んでいた。
変化を受け入れるしかない。受け入れて諦めて覚悟する、皆が通る道だった。
だがそこに希望を見つけた。未だ夏を残し、熱を帯びた場所を。
[[レヴェッタ・ドームシティ]]の環境システムは、四季の流れが数週間程度ずれている。
設定されたスケジュールではなく、外の環境に応じて変化していくようになっていた。
そのため、どうしても遅れるのだ。
だがそれが彼らにとっては、大きな希望となりえた。
それは初め、そこで冬を越すだけのつもりだった。
ぬくもりを求め、さまよい込んだ。だがそこは、彼らが思う以上の楽園だった。
冬をやり過ごすなどと後ろ向きな話ではない。
いつまでも夏を続ける、謳歌する。それが可能な場所だったのだ。
『夏の魔物』によるシステム攻撃。
短くなりつつあった昼の時間は再び伸び、システム上の限界値まで一気に達した。
午前3時の日の出、午後11時の日の入り。日照時間は実に20時間に及んでいた。
気温も同様に限界値まで引き上げられている。
安全装置が、ギリギリの境界線で抑え込んでいるだけの状況だった。
アスファルトも溶けて、ごみ集積所などで自然発火が起こる。
ここまでくれば、いかに『夏の魔物』と言えどもまともに暮らせないだろう。
システムはすでに、彼らの手からも離れ暴走状態になっていた。
「とぉつにゅぅぅぅ!!!」
暑さのせいか、それとも彼自身の熱のせいか。
顔を真っ赤にした環境課の課長が叫び、彼の部下たちが一斉に動き出した。
それに警察、消防の実力部隊が呼応してあとに続いていた。
侵入を確認してから今まで、管理棟の封鎖のみで突入は許されなかった。
その間にも街の気温はどんどん上がっていく。暑さもプライドも我慢の限界だった。
『総合管理棟』内の敵の数は少なくなっている。現場は行けると判断していた。
入り口を固めていた彼らはそこに最少人数を残し、システムの奪還を開始した。
イベントマップ『[[レヴェッタ・ドームシティ]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
真夏の回帰大作戦
『夏の魔物』はネットワークに直接触れてシステムを掌握した。
そういったことに相性のいい個体が、彼らの中にいたのだろう。
原始的な機構を持つゆえに、システムの一部に成り代わることすら可能だった。
だが、管理棟を支配していたものたちが倒れ、環境課の突入を許してしまった。
環境課の精鋭たちがキーボードを音を立てて叩く。
環境課長が眼鏡をぐいっと押し上げる。
システムを彼らが掌握するのに、僅かな時間も必要なかった。
取り返した環境システムを再設定する。
季節は真冬。気温は極寒。
システムに入り込んだバグは、『真冬』の訪れにより駆逐されていった。
レヴェッタ唯一にして最大のレジャーランド『ヴィクトリーランド』。
すでに今季の終了が決定されていたプールに、多くの市民がなだれ込んでいた。
照りつける真夏の太陽。生い茂るトロピカルツリー。
流れるプールで流れる水着、ウォータースライダーで流れる水着。
プール施設の終了は延期となり、また数週間ほど市民に涼を届けることになった。
丸一日続いた『真冬』により、『夏の魔物』は去った。
管理棟の中だけでなく、配管を使って街中に散らばっていたものも含めて。
そこからシステムを正常に戻すには、時間を大きく巻き戻す必要があり。
真夏に戻ったここから春先まで、半年がかりで時計と環境を正すことになったのだ。
結果としてだが、『夏の魔物』たちの思惑通りに夏は帰ってきていた。
木々で鳴きわめくセミ。草むらで鳴くキリギリス。空にはトンボや夏鳥たち。
飼育施設に一時的に回収されていたものが、街に再度放たれたものである。
そこに、例えば24時間の『真冬』を動力室などに潜り込むなどして生き残った『夏の魔物』が出てきて混ざっていたとして。
研究員はともかく、一般市民には分かるはずもなかった。
延命された夏は、このドームシティにおいてのみしばらく続く。
しばらく続いて、だが終わるのだ。
季節は巡る。命は巡る。次の『夏』は一年後、そのために今は幕を閉じるのだった。
ミッション『真夏の回帰大作戦』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
真夏の回帰大作戦
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
イベント挑戦ボーナス
(PC名)は『水着チケット』を手に入れた。体防具『水着』『魔水着』と1度だけ交換できます
(PC名)はコスチューム『夏の申し子』が修得可能になった
CAUTION!
『水着チケット』について。
体防具『水着』『魔水着』のいずれかと、1度だけ交換できます。
交換は『基本登録』の最上部にて行ってください。
交換されるアイテムのレベルは入手時で固定(登録フォームにて確認できます)です。
性能はアイテムレベルに依存します。交換者のステータスは関係ありません。
その他仕様については、登録フォームを確認してください。
交換期限はありません。イベント中でなくとも構いません。
死の種運ぶハロウィンナイト
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:死の種運ぶハロウィンナイト』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は10/28(水)~11/14(土)までです
死の種運ぶハロウィンナイト
多くの野菜や果実が実った農園の広がるゼレネト村。
収穫の秋が近づく中で、村を強い風が襲った。
それは砂塵を多く含む風で、黒い色をしていた。
それが吹き抜けたあと、村は一変した。
黒い砂塵が村を覆い、空を隠し太陽を包む。
昼夜問わず暗闇となった中で、彼らは活動を始めていた。
農園の土がもぞもぞと蠢き、下から何かが這い出してくる。
黒い風に触れた野菜や果実が、命を吹き込まれたかのように動いていた。
異常を外に知らせたのは、隣村に住むスエリという少女だった。
彼女は親友のシアに会うため、いつものように村に向かった。
山を越え谷を越え、隣の村へやってきた彼女が見たものは。
化け物が跳梁跋扈する、不死者たちに支配された村だった。
そこには彼女が見知った人は誰もいなかった。
シアはもちろん。
ローガン商店のおじさんも、無人販売所にいつも置いてあるおばあちゃんも。
村には誰ひとり、いなかった。代わりにいたのは化け物たちだった。
ボロ布をまとったものたち。時には骨まで見えているものまで。
場合によっては向こうの景色も透けて見えるものもいた。
そして、それだけではない。
彼女が目にしたのは、彼らに混じって踊る農作物たちの姿だった。
あの不死者たちが村人たちの末路、などとは思いたくない。
彼女の親友であるシアがあの中に混じっているなどと。
そんな事はあってはならなかった。
スエリは走って自身の村に帰り、大人たちにそのことを伝えた。
この話はさらに大きな街に伝わり。
そして、(PC名)の耳に入ることとなったのだ。
村に現れた不死者たち。踊る農作物。
ゼレネト村を彼らから解放し、スエリの親友を救い出す。
それができるのは、もはやあなたしかいない。
『マップ:[[不死者のゼレネト村]]』を発見しました
[[不死者のゼレネト村]]
広い田畑がいくつもあり、かなり大きな村である。
だが、その大半はやはり田畑であり、家や村人の数は少ない。
周囲には山があり、川が流れ。
長閑を絵に書いたような、本来はそういう村のはずだった。
村を包み込んだ砂塵は、風が吹き抜けた後もとどまり続けている。
風がなければそのまま地面に落ちるはずが、広大な村全体を、高い空に至るまでまるっと覆ってしまっていた。
密度の濃い黒い霧のような状態になって、一面に暗闇が広がっていた。
だが中に入ってみれば、思っていたよりは視界があった。
砂塵は外側に行くほど濃く、壁のようになって内外を隔てているが。
それを越えて少し歩けば、数メートルほど先までは充分に視認することができた。
そしてそこは、小さな目撃者が話してくれた通り。
不死者たちが自由に歩き回る、異常な世界と成り果てていた。
肉が残っていたり残っていなかったり。
骨が残っていたり残っていなかったり。
知性が残ってそうだったりやっぱり残ってなかったり。
不死者。アンデッド。リビングデッド。
そのように呼ばれるものたちが、フラフラと、あるいはフワフワと彷徨い歩き飛んでいた。
そして、彼らはただの不死者ではなかった。
ただの不死者、というのが何なのかは知らないが。
彼らは、様々な依り代を使ってこの村に顕現していたのだ。
彼らがこの村に姿を見せた、おそらくその瞬間にそこにあった何かだろう。
そのようなものを、それぞれがそれぞれに依り代にしていた。
田畑ばかりが広がり、他には何もないこの村でそれに選ばれたのは、実りを迎えたばかりの作物たちだった。
ゴースト・イン・ザ・ベジタブルズ
砂塵の霧が囲む中、暗がりの向こうにオレンジ色の光が見えた。
街灯にしては頼りなく、しかもフラフラと揺れている。
その光は、跳ね飛びながら踊る。
カボチャやメロンなどの作物たちが、怪しげに全身を輝かせていた。
オレンジ色の炎のようなオーラのようなものを纏っている。
そしてそれには顔があった。
そこだけ綺麗にくり抜かれたかのように、深い闇のような目と口の穴が空いている。
けして変わらない表情で、それら作物たちは笑顔を浮かべていた。
遊園地か何かだと分かった上でなら、それは楽しい光景だったろう。
軽快な音楽でも流れていればなお完璧である。
だが現実には、暗がりの中で無音で光って跳ねている。
幻想的とは言えない。ひたすら怪しく、不気味だった。
それらが襲いかかってくる様子はない。
目的も意味も分からないが、ただただ光って跳ねている。
取り憑いたものたちの、そもそもの悪意などによるのか。
外から来た(PC名)を排除しようというような、群れとして全体的に連動した動きはまるでなかった。
だが、悪意のないものがいない、というわけではない。
不死者たちにそれがないわけがないのだ。怨霊や悪霊たちなのだから。
悪意ある不死者たちは、こちらの臭いに気づき迫ってきていた。
ハタケ・オブ・ザ・デッド
ゼレネト村には、隣村の少女から聞いていたとおり人の姿はなかった。
空まで覆った砂塵が光を遮っているので、端まで見通せるわけではないが。
この中で、のんびり歩いている村人というのは想像できなかった。
その代わりに、というのも何だが一匹のゾンビが歩いていた。
服はボロボロで、土の中から這い出てきたのか泥だらけである。
破れた場所から見える肉もところどころ削がれ、白い骨が露出していた。
左足などはズボンの裾から伸びたまるごと白骨化しており、謎の力で繋がった足や指の骨でペタペタと歩いてきていた。
そしてそのゾンビには角が生えている。
ズッキーニとゴーヤを一本ずつ、鬼の角のように二本の野菜を乗っけていた。
依り代を使い、顕現した不死者たち。
村の中を勝手気ままに徘徊していた彼らが、ぞろぞろと集まってきていた。
彼らの依り代は様々である。
白菜を頭にかぶせた落ち武者や、体の前に人参を吊るされた首無し馬。
玉ねぎ頭の老婆やパイナップル頭の老爺などもいた。
農作物ばかりというわけでもない。あたりにあったものなら何でも良かったのか。
農機や農具などを依り代としているものも数は少ないが存在しているようだった。
おおーーん。
遠吠え。右手にある段々畑の上の方で、犬が空に向かって吠えている。
その犬は鮮やかなオレンジ色のカボチャを、頭にすっぽりとかぶっていた。
どこにいたのか、村中に散らばっていたのか。
呆れるほどの数の不死者たちが、依り代を伴って姿を見せた。
彼らから村を取り戻す。村人たちの安否は未だ不明だが。
そのために必要なことは、彼らを退けこの砂塵の黒霧を晴らすことだった。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
取り憑く不死者に遭遇した!
[[不死者のゼレネト村]]
『不死者』とは死に損ないである。
けして、死なないわけではない。無敵の存在ではない。
魂殻は肉体を模倣する。
機能もそのまま同様のものとなるが、必ずしも同じにはならない。
あくまで模倣であり、真似であり、偽物なのだ。
頭が吹き飛べは人は死ぬ。
そのまま暮らしたり、生えてきたり、新しいパンを焼いて乗っけたりもしない。
死ねばまもなく魂殻は形を維持できなくなり、崩れてしまう。
中身がなければ、器だけでは魂は存在できない。それはこの世界が許さなかった。
だがその流れを間違えた、死に損ないが彼らだった。
頭が吹き飛んで、肉が剥がれ骨が砕け、小さな砂粒のような存在にさえなり果て。
それでもなお、自身という器を手放すことができなかった。
そこに心を留め置き続けた。その結果があの不死者という死に損ないたちだった。
彼らは器の一部として依り代を使った。
一部とはいえ、その依存度は高い。そもそもの相性の良さからそれらを選んだのだ。
自然、依り代が本体と言えるほどにまで強く繋がっていた。
故に、彼らが依り代としたもの。作物や農機具などを破壊、もしくは切り離せば。
それがすなわち、彼らという存在の死を意味していた。
魂滅の力などは必要ない。
ただの物理力。腕力。打撃力。
カボチャを叩き割る、それだけの力があれば充分だった。
イベントマップ『不死者のゼレネト村』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
死の種運ぶハロウィンナイト
死に損ねたものが、器の破壊によって正しい形で死んでいく。
彼ら自身がそれを望んだのかは知らない。
知らないが、少なくともそれ以上の抵抗、未練はないようだった。
ゼレネト村の住人たちは無事だった。
彼らは家に閉じこもり、不死者たちが村を歩き回る中で息を潜めていたのだ。
不死者たちもまた、積極的に彼らに何かをしようということはなかった。
一日のうちで何度か、コンコンと扉をノックされるぐらいであり。
それで玄関を開けなければ、それだけでしばらくすれば気配は去るという具合だった。
村人のうち数人は外の変化に気づき、少し前からカーテンの隙間から覗き込んでいた。
そして何人かは勇気を出してドアを開け、ついに数日ぶりに外へ出た。
未だ村は砂塵の黒霧の中にあり、太陽の下というわけにはいかなかったが。
それでもやはり、その開放感だけで晴れ晴れとした気持ちだった。
一度外とつながれば、それを思い出してしまえばもう簡単には閉じられない。
失ったものを取り戻す。そのやり方は、窓から見て学んでいた。
次々と村人たちは家を出て、武器を手に持った。
特別なものではない。誰かを傷つけるために作られたものではない。
いつも使っている、鍬や鋤や鎌など。土色の手に馴染み使い慣れた農具だった。
戦う相手、倒すべき相手は不死者ではない。依り代としている作物たちである。
となれば。それが相手となれば、彼らの右に出るものはこの場にはいない。
農作物の刈り取りは、彼らの十八番であり日常だった。
村人たちも加わり、『収穫』のスピードは加速していく。
好戦的な、敵意の強い不死者たちはすでに駆逐済みであり、もはや(PC名)が手伝う必要はなさそうだった。
「シア!」
そこに少女の声が響く。
段々畑の最上段から、鮮やかに輝くオレンジ色のカボチャをかぶった犬が姿を見せた。
少女を見つけて、一目散に駆け下りてくる。
そして少女の胸に飛び込む、その空中で、犬は少女に迎撃された。
「やあっ」
そのカボチャ頭を、彼女が持っていた棒きれでポカリと叩いた。
浜辺のスイカ割りのように、カボチャとは思えない強度で簡単に割れる。
二つに割れたカボチャは地面に落ちて、更に細かく砕けていた。
「シア!」「おん!」
改めて少女が犬に抱きつく。その犬は不死者ではなく、犬だった。
茶色いしっぽを元気に振りながら、余った元気で少女の胸から飛び降りる。
落ちたカボチャに食いつき、むしゃむしゃと噛み砕いていた。
口の周りをオレンジに染めながら、犬はうまそうに食っていた。
しばらくして、黒い霧が晴れる。
収穫の終わり。そして、盛り上がる村ではそのまま収穫祭が始まるようだった。
ミッション『死の種運ぶハロウィンナイト』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた
死の種運ぶハロウィンナイト
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
雪華のサンタ道
- 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:雪華のサンタ道』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は12/23(水)~1/9(土)までです
雪華のサンタ道
クリスマスが今年もやってくる。
だが、サンタはやってこなかった。
トナカイは街にやってきた。
だが、ソリは無人でプレゼントも乗っていなかった。
いくつかの街で、何も乗っていないソリを引くトナカイが発見された。
公園などの広場で、おとなしく水を飲んだり草をはんだりしていたという。
初めそれは、飼い主がそこに置いてどこかに行ったものと思われた。
だがいつまで待っても帰ってこず、調べてみると、街に入った段階でトナカイとソリはその状態らしかった。
トナカイの飼い主であり、そしてソリの持ち主は『サンタ』だった。
サンタの街『クレスアレナ』から、プレゼントを近隣の街々に配り歩く。
それは年に一度、年の暮れに行われる彼らの大切な行事だった。
それはプレゼントをもらう側にとっても、年に一度の嬉しい贈り物だった。
だが今年。
彼らは予定よりもずいぶん早く、目的地へと到着した。
御者と荷物を失い、身軽になった分だろう。
それでもきちんと目的地にたどり着くのだから、大したものではあるが。
そこを褒めても仕方がない。プレゼントは届かなかったのだから。
多くの街に散って行った、全てのサンタたちが消えたわけではない。
いなくなった彼らには共通点があった。
配達予定地がみな似た地域にあり、全員がある1つの『街道』を利用していたのだ。
その道は『サンタ街道』と呼ばれていた。
毎年のように多くのサンタたちが使うことで、そう呼ばれるようになったという。
街道は彼らだけが使うわけではなく、様々な人が利用する。
この地域では要となる道だった。
そこでサンタは消えた。
乗っていたトナカイとソリはそのままにして。
サンタはどこに消えたのか。プレゼントはどこに消えたのか。
失ったものを取り戻す、そのためには『サンタ街道』を歩いてみる他なさそうだった。
『マップ:[[白に染まるサンタ街道]]』を発見しました
[[白に染まるサンタ街道]]
雪が降っている。
10日ほど前から降り始めた雪は、あっという間に森を白に染めた。
背の高い針葉樹林。
円錐状に枝葉を伸ばして立つモミの木の森のなかを、道はまっすぐに続いていた。
『サンタ街道』とその道が呼ばれていたのは、ずいぶん昔だという。
別の名前がつけられたわけではない。単に何とも呼ばれなくなっただけである。
サンタたちにとっても、この地域の人々にとっても重要な道であることに変わりはない。
だがそれは少しずつ、時の流れとともに形を変えていた。
このあたりは雪深い土地柄であり、この森も道も例外ではない。
トナカイとソリという組み合わせが便利に使われるほど、特に冬のこの時期は交通の便はそもそも悪かった。
森の南側はあまり雪が降らず、降ったとしても積もるのは数年に一度。
迂回した道が整備されると、冬場はほとんどの人がそちらを使うようになった。
今では雪の降る頃となれば、利用するのは彼らサンタぐらいである。
とはいえ、それ以外の季節では今でも多くの人々が使っている。
ただ、その頃にはサンタはいない。完全な棲み分けができていた。
そのような経緯から、『サンタ街道』は人々の生活からは離れていった。
人の目が届かなくなり、それでもサンタは荷を運び続けた。
降りしきる雪が視界を塞ぎ、積もった雪が音をかき消す。
何かが起こるには、何かをやるにはうってつけの環境だった。
オトリサンタは今日も行く
森の中、まっすぐに切り拓いて作られた街道。
街路樹のように道沿いに残されたもみの木が、様々な飾り付けをされていた。
オーナメントが輝き、電飾が煌めいている。
頭からかぶった雪もまるで演出したかのようである。
街道が続く限り、モミの街路樹が続く限り、それが続いていた。
『サンタ街道』と呼ばれていた頃のまま、その飾り付けは華やかで賑やかだった。
街道を一台のソリが走っている。
トナカイが引き、サンタとプレゼントを乗せて。
白髭に覆われたサンタの顔は緊張してこわばっていた。
これからプレゼントを子どもたちに配りに行く、とてもそんな表情ではない。
彼はオトリとして走らされている、『オトリサンタ』だった。
トナカイは自身が運ぶサンタがオトリなどとは露知らず。
いつものように、重たいソリを引きずりながら軽快に雪道を疾走していた。
(PC名)はその後ろ姿がぎりぎり見えるあたりにいる。
スノーカモフラージュを施した雪トナカイとソリで、静かに後をつけていた。
あまりスピードを上げないように、とオトリサンタには言いつけてあるが。
はやる気持ちのほうが強いのか、トナカイはどんどん加速していた。
少し離されて、吹雪の中に向こうの姿が消える。
見つからないことが最優先のこちらは速度をあまり上げられない。
何かが起こるには、何かをやるにはうってつけのタイミングだった。
ここがヤツラの盗む道
オトリサンタを乗せたソリが走る。その道の先にサンタが立っていた。
吹雪の中でも、赤いコートと帽子はよく目立つ。
そのための配色なのかとさえ思えるほどである。
手には赤色灯のようなものを持ち、それを光らせながら両手を振っている。
道を塞ぎ、止まれ、と言っているようだった。
その姿を見て、オトリサンタよりも早くトナカイが速度を緩めていた。
道を塞がれているというのもあるが、見知った姿というのもあったろう。
それに促される形でオトリサンタも手綱を引いて、サンタの目の前でソリが止まる。
サンタの格好をしている、だがそれはニセサンタだった。
こちらに近づいてきて、トナカイの背中をポンポンとなでながら横を通り過ぎる。
後ろのソリの所まで来て、『メリークリスマス』と笑顔で御者に話しかけていた。
そして、ソリの下に何かを投げ込む。だがそれは、角度的に御者からは見えなかった。
その投げ込んだ何かから、に間違いないだろう。勢いよく煙が吹き出し、御者のオトリサンタごとソリを包み込んでいた。
赤、緑、白。クリスマスカラーのカラフルな煙幕が立ち上る。
その間に、ニセサンタは素早くトナカイとソリをつなぐロープを切る。
そして好きな女にでもするように、トナカイの尻を軽く引っ叩いていた。
それを合図に走り出すトナカイ。切り離さされたソリは残したままだった。
「降りろ。そいつも一緒にな」
短くニセサンタが告げる。そいつとは、荷台に積んだプレゼントの袋のことである。
その辺のタイミングで、森の中からぞろぞろと仲間が出てきた。
そちらはもはや、格好もバラバラで正体を隠そうともしていない。
彼らは盗賊だった。
トナカイもまた、少し走った先で別の集団に捕まっていた。
だがそちらはなぜか、空のソリを付け直されてまた尻を叩かれる。
そのまま、サンタ街道を目的地へ向かってトナカイだけが走っていった。
オトリサンタと石が詰まったプレゼント袋を乗せたソリが盗賊に囲まれる。
吹雪が強くなる。その接近を彼らは気づいていなかった。
満を持して、うってつけのシチュエーションで(PC名)の登場だった。
(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)
戦闘予告
サンタドロボウに遭遇した!
[[白に染まるサンタ街道]]
「逃げろぉ!!!!」
リーダー格の男。ニセサンタが叫ぶ。
サンタ街道の周りは左右どちらも森であり、逃げ場はいくらでもある。
それは彼らがこの場所を選んだ理由の一つでもあった。
森の中に逃げ込めばどうとでもなる。
バラバラに逃げれば、もし捕まることがあっても数人程度であり。
その中で彼は、他のメンバーに遅れを取ることはない自信があった。
このあたりは子供の頃に何度も遊んだ、慣れた森だった。
誰よりも早く、森の中へ飛び込む。
逃げろと叫んだときにはすでに走り出していたのだから当たり前である。
こんなときのために落ち合う場所は決めてあった。
辿り着いた奴らでまた始めればいい。きっとそれは精鋭たちだろう。
切り札だってある。まだ全てを失ったわけではなかった。
もみの木の街路樹の間を抜けて森へと。
だがその足が、雪を踏みしめ絶望とともに止まる。
森の木々、その間を埋めるように人が立っていた。
一人二人ではない。彼ら盗賊団を遥かに超える数が森に展開していた。
かつて子供だった者たち。
この『サンタ街道』を通っていった先の街でプレゼントを貰った子どもたちが大きくなり、サンタの危機と集まってきていた。
街道に出ていた盗賊たちの森への逃げ道を、圧倒的な数で完全に防いでいる。
この森をよく知っているのは彼らも同様だった。
森には逃げられない。街道を戻る道には(PC名)がいる。
残りは『サンタ街道』の先しかなかった。
直線路での単純な追いかけっ子。そんな展開にすら、彼らはさせてはもらえない。
街道の先からは、一頭のトナカイがこちらに向かって歩いてきていた。
それは先程、空のソリを引いて走っていったトナカイが戻ってきている姿だった。
ゆっくりと、吹雪の中を歩いてくる。
その御者台には分厚いコートを来た村の男が座り、荷台には先で捕まった盗賊たちがまとめて縛られていた。
イベントマップ『[[白に染まるサンタ街道]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た
雪華のサンタ道
彼らはこのあたりにある山小屋をアジトにしていた。
それらはサンタたちの持ち家で、夏場などに保養所として使われる別荘だった。
果てしなく寒くなり、雪が降り積もるこの季節に利用することはない。
そもそも、この時期は彼らが最も忙しく、というよりも唯一忙しく働く時期である。
別荘でのんびりなどできるわけもなく。
この季節の山小屋は、キャンパーや旅行者などに貸し出されていた。
だが、近年では借り手はほとんどいなかったという。
『サンタ街道』の衰退と人離れが、そちらにもそのまま影響した形である。
冬に来るような場所ではない。
道も森も、およそそのような扱いを受けていた。
それが今回の事件を生んだと言っても過言ではなかった。
盗賊たちは捕らえられ、盗まれたプレゼントとサンタの居場所を吐いた。
プレゼントはすでに半分以上は流れてしまっており、回収は難しそうだが。
サンタたちは彼らのアジトである山小屋に捕まっていた。
かつて子供だった大人たちが、サンタを助けに森の山小屋を捜索していく。
森のあちこちに山小屋はあり、それらを一定時間ごとに移動させているらしい。
だから、捕まった彼ら自身も、サンタたちが今どこにいるかは知らなかった。
見つけるためには森や山小屋についての知識が必要で、最後は人海戦術だった。
捜索には多くの人々が関わり、ついに山小屋を特定した。
リーダーたちが捕まったなど知らない盗賊の仲間がいたが、物の数ではない。
サンタたちは全員、無事に助けられた。
雪道を何度も移動させられたらしいが、彼らサンタには慣れたもので、むしろ盗賊たちのほうが疲労困憊だった。
『サンタ街道』をトナカイが走る。
そのソリに、サンタとプレゼントを乗せて。
少し予定からは遅れてしまったが、子どもたちは待っていてくれるだろうか。
それだけが心配だった。
街路樹のように立つもみの木の飾り付けが新しくなっていた。
更に派手になった電飾が、昼間にも関わらず眩しい光を放っている。
夜になればさぞかし綺麗だろうが、先を急ぐ彼には見ることはできなさそうだった。
帰りであれば見れるだろうか、などと昼の装飾を楽しんで走っていた。
寒そうに散歩をしている人とすれ違う。
少しスピードを落としながら手をふる。向こうは軽く頭を下げる。
急ごう。サンタはトナカイに気合を入れる。
トナカイも応え、ぐっと雪道に足を踏み込み速度を上げた。
ミッション『雪華のサンタ道』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた
特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた
雪華のサンタ道
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
最終更新:2022年07月06日 15:44