限定イベントテキストまとめ その8


屏風虎・捕物帖

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:屏風虎・捕物帖』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は1/19(水)~2/5(土)までです
屏風虎・捕物帖

 これは有名な、とある国の王とその国を訪れた旅人の話である。
 王は旅人に一枚の『屏風』を見せ、こう言ったのだ。
 
 この屏風に描かれた虎を捕まえてみせよ、と。

 その屏風は以前に、この旅人のように国に訪れた商人から献上されたものだった。
 
 遠い東の国で作られた折りたたみ式の衝立で、一頭の虎が描かれている。
 生き生きとした表情で竹林に立つ若い虎は、これを見るものに今にも襲いかからんと牙を剥いていた。

 王はその屏風の虎を見せながら、困った顔で吐露した。
 
 描かれた虎が、夜な夜な屏風から飛び出して人を襲うのだ。
 そこで王は旅人に、望みのままの褒美の代わりにこの虎の退治を命じたのだった。

 この難題に対し、少し考えた旅人は『私が退治いたしましょう』と答えた。
 だから、まずはこの屏風から虎を出してくれませんか、と付け加えた。
 
 それを聞いた王は、旅人と屏風を部屋に閉じ込めた。
 夜が更け、朝を迎える。様子を見に行った使用人が見たのは、誰もいない部屋と。
 
 屏風の中で満足そうに眠りこける虎の姿だった。

 その後。屏風は王の手を離れ、流れに流れ。
 質屋や古物商、オークションやら泥棒市を渡り歩きたどり着いた。
 
 そこは『タイガーファーム』という動物園だった。

 残念ながらというべきなのか、屏風から夜な夜な虎が抜け出すことはなく。
 屏風は立派な檻の中に置かれ、いわくつきの屏風として長らく人気の展示物だった。
 
 だが、ある特別な夜。一年が終わり、新たな一年が始まる。その瞬間だった。
 年明けと共に屏風の虎は動き出し、絵の中から抜け出していた。

 それも一頭ではない。
 描かれていないはずの何頭もの『虎』が、次々と屏風から外へと姿を見せていた。
 
 『屏風の虎』たちは簡単に檻をも破り、外に出た。
 そして動物園にいた本物の虎たちをも従え、『タイガーファーム』の王となった。

 屏風を飛び出し、檻を飛び出し。
 だが、園外にまで飛び出させるわけにはいかない。許されるのはここまでである。
 
 かつて王が旅人に願ったこと。
 『屏風の虎』たちを退治して、タイガーファームを取り戻してほしい。

『マップ:[[壬寅乱れるタイガーファーム]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[壬寅乱れるタイガーファーム]]

 巨大な入場ゲートには、『ようこそタイガーファームへ』とでかでかと書かれている。
 この敷地全体が高い金網に囲われており、唯一の穴はここだけだった。
 
 新たに開けられでもしていなければ、ではあるが。

 ゲートには簡易的に作られた『封』が、有刺鉄線によって作られている。
 アリがギリギリ通れるぐらいの低さからアーチ型のゲートの頂点近くまで。
 ぐるぐるに巻きつけられて、侵入と脱出を強い気持ちで防ごうとしていた。
 
 これで『屏風の虎』が防げるかは分からないが、少なくともここから外に出てはいない証明にはなっていた。

 ゲート横の、鍵付きの鉄扉から中へと入る。普段は関係者のみが使う入り口である。
 
 園内に入って、まず最初に目に入ったのは。
 閉じたゲートの少し手前で倒れて落ちている、ボロボロの布切れだった。

 もともと灰色をしたボロ雑巾が、さらに薄汚れてねずみ色になっている。
 さらにあちこち切り刻まれて、首までもぎ取られて近くに転がり落ちていた。
 
 跡形もない。それほどまでの憎しみをぶつけられたのだろう。
 それは象をモチーフに作られたキャラクターで、タイガーファームの人気者だった『ぱおー君』の成れの果てだった。

 ここまで逃げてきて、ゲートまであともう少しのところで力尽きたのか。
 ここで脱いだだけなのか。いずれにせよ、中の人の無事を祈るばかりである。
 
 同じく園の人気キャラクターである『タイガー君』の姿は見えない。
 だが『ぱおー君』のやられ具合をみると、逆に無事の可能性は高そうだった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
虎、逃げ出したあと

 屏風は『寅舎』の檻の中に展示されていた。
 
 いつでも虎が出てきてもいいように、というわけではない。
 それはこれを飾った彼らも、見に来た客らも信じてはいなかった。

 『いわく』付きであることにのみ意味があり、檻はそのための演出でしかない
 それでも、『屏風の虎』は人気だった。
 
 ここが動物園であり、本物の虎もちゃんといるにも関わらず。
 赤ちゃん生まれました、でもなければ観客数では勝てないほどだった。

 演出でしかないとはいえ、檻もハリボテだったわけではない。
 もともと熊用に使われていたものを流用した頑丈な代物だった。
 
 だがそれが、無残に破られている。
 鉄の格子がバラバラにされて散乱し、腹に大きな風穴を開けてしまっていた。

 この状態でもなお、屏風はそこにあった。
 壊れた檻の奥、左右から照明を当てられて光り輝いている。
 
 だが、そこに虎はいない。
 竹林が描かれた背景に、真ん中あたりにポッカリと余白がある。
 そこにいたと思わせる、その跡だけがあった。

 ここから虎が出てきて、檻を破って外に出たのだ。
 
 虎や、虎の仲間や、虎っぽいものや、虎的な何かなど。
 屏風の中に封じ込められていたものどもが表れ出て、この園内を闊歩していた。

  • フェイズ3
寅、逃がしてはダメだ

 『タイガーファーム』という名ではあるが、ここは動物園である。
 虎以外にも、様々な動物が飼育展示されていた。

 園内は人工の森のような作りで、川や池などもあり多くの動物が放し飼いになっている。
 生活圏はせいぜい柵で仕切られている程度で、それぞれ自由に行き来していた。
 
 その中で猛獣などの危険な動物は、檻に入れられて隔離されている。
 飼育されている本物の虎たちも、そうやって閉じ込められていた。

 とはいえ、動物園にその名を冠する虎である。彼らは特別扱いされていた。
 
 屏風が置かれた『寅舎』とは別に、実際の虎たちの住まいがある。
 そこは『タイガーパーク』と呼ばれている。
 この園全体をそれとみなす森を除けば、タイガーファーム最大の展示施設だった。

 そこには檻はない。
 腰ほどの高さの柵があるだけで、邪魔するものなく虎と目線を合わせることができた。
 
 柵の向こうは、深い堀のようになっていて落下防止のネットが底の方に張られている。
 それを境界線として、こちらよりも少し低い位置にタイガーパークの地面が作られていた。

 そしてそこに彼らはいた。
 本物の虎たちは肩身が狭そうに端に寄っており、堂々と我が物顔でいるのは『屏風の虎』たちだった。
 
 彼らが未だ園内にとどまっていることに、理由はおそらくない。
 屏風から出て、狭い檻から出る動機はあった。だから壊して外に出たのだ。
 園から外に出る動機がないから彼らは内にいるだけで、それができれば出ていくだろう。

 食料が尽きれば、寝床が狭くなれば、退屈すれば。
 ぴょんと一飛びで彼らは堀を越え柵を越え、パークの内外を好きに行き来している。
 
 それと同じようにして、自由に、いつでも。
 出ようと思えばそれだけで、この『タイガーファーム』を出ていくことができた。

 外に彼らの世界はない。彼らの世界はここでもない。
 屏風の中、それが彼らのいるべき世界である。
 
 パークの端で身を寄せる虎たちのためにも、彼らにはいるべき場所へ戻ってもらう必要があった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
屏風の虎たちに遭遇した!

  • フェイズ4
[[壬寅乱れるタイガーファーム]]
 彼らとしては、トラたちの住むこの『タイガーパーク』の居心地は良かったろう。
 
 この動物園『タイガーファーム』で、もっともいい環境を与えられている。
 そもそもそこは、この国の王様の居城であったのだ。

 『屏風の虎』たちはそれを理解した上で目指していたのか。
 あるいは単に、仲間のいる場所に行っただけか。
 
 いずれにせよ、そこを彼らは自分たちの城と決めた。
 だがそれが、最終的に彼らの首を絞めることとなった。

 ひと目見れば分かるそれを、彼らは見逃していたのだ。
 パークの隅に身を寄せるトラたち。そこに混じった違和感に。
 
 そこにいたのは、園の人気者『タイガー君』だった。

 タイガー君とは、黒のロングタイツでおなじみのトラのキャラクターである。
 首から下は色違いなだけの『ぱおー君』の親友にして、その正体はタイガーパークのパーク長だった。
 
 彼はタイガー君の中でひっそりと、声を潜めて機をうかがっていたのだ。
 そして今、機は熟したと。彼は立ち上がり、号令を出した。
 パーク長として、トラたちへの業務命令が発動したのだ。

 パークの隅に追いやられていた動物園のトラたち。
 窮鼠でさえ猫を噛む。窮虎であれば、同じ虎など噛みつけない理由はなかった。
 
 『パークのトラ』たちの反撃。それは彼ら『屏風の虎』にとっては誤算だった。
 それを先導する、パーク長の存在をタイガー君に隠れて見逃していた彼らのミスだった。

 パークのトラたちに追い立てられて、屏風の虎たちが逃げ出す。
 彼らが逃げる先は2つしかない。そのうちの1つを(PC名)はすでに塞いでいた。
 
 動物園を出るためのゲートへ向かう道、それを失って。
 彼らが向かう先は、そもそもの始まりの場所。彼らにとっての安全圏である屏風の中しかなかった。

イベントマップ『[[壬寅乱れるタイガーファーム]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

屏風虎・捕物帖

 かつてこの辺りには、野生のトラたちが生きていたらしい。
 しかし、ここに街が作られたのと前後して姿を消した。

 人の生活圏にいては、時間の問題でどのみち競合はしただろうが。
 そうなる前に自ら退いた。何処かへ移動したのか、その後の行方は確認されていない。
 
 ここには街ができて、多くの人が移り住んで大きくなり。
 後に作られることになったこの動物園は、そのトラたちを偲ぶものでもあった。

 『タイガーファーム』と名付けられ、多くの種類のトラたちが導入される。
 だがこの辺りにいたとされる『壬寅』はすでに、どの地域にも姿はなかった。
 
 その代わり、というつもりでもなかったのだろうが。
 『屏風の虎』を手にしたことで、それを檻の中に飾ることとなったのだった。

 屏風の飾ってある寅舎まで、トラたちに追い立てられて『屏風の虎』が逃げていく。
 自ら壊した穴から檻に入り、その先頭を走っていた虎が頭から屏風に突っ込んでいた。
 
 飛び込み選手が入水するように。静かに、すぽんとその中に吸い込まれていった。

 屏風の中で、その虎が動く絵となって竹林の中へ分け入っていく。
 そしてゆっくりと、遠ざかっていくのにあわせて色が滲んで消えていった。
 
 それが、あとに続く『屏風の虎』たち全てで起こる。
 躊躇なく次々と屏風に飛び込み、絵の中の竹林にすっすと入っていっていた。

 最後の一匹が飛び込んで、それに少し遅れて一匹のトラが寅舎に入ってくる。
 
 ゆっくり屏風に近づいて、だがそれは飛び込むことはなかった。
 目の前で前脚を振り上げ、その鋭い爪で屏風を袈裟斬りに引き裂いていた。
 
 そのまま向こう側に押し倒し、上に乗りかかる。
 猫が柱で爪とぎをするように、夢中になって屏風を爪でボロボロにしていた。

 しばらくして到着した『タイガー君』が、その肩をポンポンと叩いてやめさせるまで。
 それは続き、その頃には枠だけを残してほとんど紙切れになって散らばっていた。
 
 落ちていた小さな紙片の中を、なにか黒い墨が動いたようにも見えたが。
 それ以上、何が起こるわけでもなく。風が吹くとその紙片は飛んでいってしまった。

 その後。
 寅舎の檻は壊れたそのままに、枠だけになった屏風が飾られることになり。
 
 その枠を使った『いわく』付きのフォトスポットとして、人気を博すこととなった。
 そこには『タイガー君』と、予備の二代目『ぱおー君』が元気に働く姿があった

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『虎門おこし』を手に入れた

  • フェイズ5
  • フェイズ6
  • 当日夜(休息処理後に表示)
屏風虎・捕物帖
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『とら』が修得可能になった

ホワイトデイの騎聖戦

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:ホワイトデイの騎聖戦』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/16(水)~4/2(土)までです
ホワイトデイの騎聖戦

 騎士国ジグレメント。
 この国には2つの独立した騎士団が存在し、その2つが国を治めている。
 
 黒の騎士団ブクリエノワール、白の騎士団キャスクブラン。
 ほとんど同じ規模をもち、2つの組織はライバル関係にあった。

 2つの騎士団が国を治めるとは言ったが、その役割は大きく異なる。
 国家としての運営は一方がすべて担い、もう一方は国家防衛を担うのだ。
 
 現在では白騎士団が国家運営を、黒騎士団が国家防衛を。
 そしてそれら役割は、5年前では真逆のものだった。

 黒騎士団と白騎士団はライバルである。
 力を合わせることなどありえない。だから戦って、勝ったほうが国の長となる。
 そして負けた方は国の犬として、防衛任務に当たるのだ。
 
 昔はそれを全軍衝突で決していたらしいが、今ではそれはなくなり。
 ルールに則った『対抗戦』を行い、その勝敗で長か犬かが決まるのである。

 現在、国は白の騎士団が中心となって運営されている。
 そして今年は5年に一度、2つの騎士団による『対抗戦』が行われる年である。
 
 決戦は白騎士団の創立記念日である『ホワイトデイ』。
 勝者には『聖剣』が与えられる。国を治める正当なる騎士団の証だった。

 ホワイトデイの決戦、それはチョコレートをぶっかけ合う死闘である。
 白騎士団をチョコレートで黒く染め、黒騎士団をホワイトチョコで白く染める。
 
 相手を染めきった騎士団が勝者となり、その後5年の支配者となるのだ。

 なお、騎士団員ではない市井の人々も、この聖戦に参加することが許されている。
 支持騎士団側の色のチョコがバケツ一杯だけ与えられ、敵騎士団員にぶつけるのだ。
 
 観光客も、臨時国民としてバケツは小サイズとなるものの参加できるという。
 この国を訪れて、この聖戦に参加してみてはいかがだろうか。
『マップ:[[聖戦の騎士国ジグレメント]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[聖戦の騎士国ジグレメント]]

 白騎士団と、黒騎士団。2つの騎士団が治める騎士国ジグレメント。
 元々は2つの国だったものが、1つになって今の国の形ができあがった。

 戦いの歴史を持つ両者が1つになるには様々な労苦があり。
 かつ時間もかかった。それでも時と努力を重ね、一つになったのだ。
 
 だが、国はなんとかまとまったが、騎士団はそうはいかなかった。
 話を進めたものたちと違い、直接戦い合っていた両者である。
 簡単に解けるわだかまりではなく、しこりは残り続け。そして爆発した。

 そこで起こった実際のことは記録になく、封印されている。
 
 結果として変わったことは、彼ら騎士団が国を治めるようになったことと。
 その統治権を、『聖戦』によって決定するということだった。
 
 脳筋たる彼らに必要だったのは、灰色ではなく確かな決着だった。

 それぞれの騎士団長が使っていた剣を溶かして合わせ、1つの大剣を作った。
 戦いそのものに使えるような大きさではなく、象徴でしかない。
 
 それを『聖剣』と呼び、聖戦の勝者がそれを5年間所持することを決めたのだ。
 そしてその所有者こそが、国の政権を担うのである。

 そして、現代。幾度も戦いは繰り返され、幾度も聖剣は移動した。
 
 いつしか血なまぐさい騎士団同士の闘いは終わりを告げ。
 チョコレートをぶっかけあう、甘い香り漂う戦いが行われるようになっていた。

 騎士団が、国が、この聖戦に夢中になっている。
 
 その間に人知れず事態は進行し、騎士国の危機が迫っていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
黒き闇に紛れて

 時間は少し巻き戻る。

 騎士国ジグレメント、その近郊に、魔物たちが巣食う洞窟があった。
 
 討伐隊を組み、掃討を行うのが騎士団の仕事の一つでもあった。

 魔物たちは、襲撃のたび住処を変えるなどしてやり過ごしてきた。
 5年に1度ぐらいの周期で、騎士たちは定期的にやってくるのだ。
 
 黒かったり白かったり、いちいち鎧の色を変える妙な連中という印象だった。

 ここを離れることも考えたが、先祖代々暴れてきた土地である。
 それに他に移ったからと、安全が確保されるわけでもない。
 
 そこではそこの、戦いがある。どこで誰と戦うか、その違いでしかなかった。

 反転攻勢。魔物は魔物らしく。
 こちらから攻めてやろう、という話になった。それが5年前である。
 
 準備期間は丸5年。狙いは『聖戦』の日だった。

 『聖戦』には、騎士団のすべての人員が投入される。
 街の防御も辺境の防御も、何もかもが手薄どころかゼロになるのだ。
 
 かつてのように、激しい聖戦そのものによって疲弊や消耗はしきっていなくとも。
 その最中となれば、街への襲撃は容易だった。

 彼らは聖戦の前日、夜闇に紛れて洞窟を出た。
 
 出し惜しみはない。
 油断や準備不足はあっても、両騎士団すべての人員がそこにいるのだ。
 彼らもまた、全軍を用いての総攻撃だった。

  • フェイズ3
白き夜明けとともに

 『ホワイトデイ』当日、聖戦が始まった。
 
 白騎士団の詰め所と黒騎士団の詰め所は、大通りを挟んで向かいにある。
 彼らがこうやって睨み合うのは、今このときだけだった。

 これが終われば、敗者はこの詰め所を拠点に防衛任務につく。
 勝者は中央にある宮殿に移り、ここには5年後まで戻らない。
 
 前回勝者である白の騎士団は5年ぶりに、黒の騎士団は昨日も今日も。
 詰め所に集まり、そして道を挟んで睨み合っていた。

 今日のため、白と黒と交互に地面が塗られた大通り。
 白の騎士団長が、巨大な大剣『聖剣ショコラブラン』を手に歩み出る。
 
 それを、白黒通り、その黒く染まった地面に突き立てた。それが開始の合図だった。

 白騎士団の真っ白の鎧にはチョコレートを。
 黒騎士団の真っ黒の鎧にはホワイトチョレートを。
 
 それらは鎧に付着した瞬間、固まって色をつける。簡単には剥がれない。
 そもそも剥がすのは、騎士道に反する行為だった。

 聖戦は睨み合っていた両騎士団の間で始まり、次第に街全体へと広がっていく。
 街全体を包み込むチョコレートの甘い匂いも、どこか理性をなくさせるのか。
 狂乱の祭りは一気に、興奮の坩堝を生み出していた。
 
 それを待っていた、街を狙う魔物の軍団がついに動き出す。
 その存在に気づいたのは、夢中になった騎士団の誰かではなく住民の一人だった。

 彼は街一番の高さを誇る塔の上で、鐘を鳴らしていた。
 聖戦の間、煽るように叩き続けるのが彼の一族の仕事だった。
 
 その目に、街へと近づく土煙が映る。鐘の音は警鐘へと変わったが、その音の違いに気づくものは誰もいなかった。

 門はあっさりと破られた。魔物たちが街へとなだれ込んでくる。
 警鐘を鳴らしていた男が塔を降り、両騎士団長へと伝えたのはそれの少し前だった。
 
 チョコレートが乱れ飛ぶ。その中で、迎撃戦が始まろうとしていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
灰色の連合軍に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[聖戦の騎士国ジグレメント]]

 かつての聖剣を巡る『聖戦』では、2つの騎士団が全軍衝突していた。
 実戦さながらで直接的な死者こそないものの、負傷者などは当たり前の状態だった。

 聖戦は回を重ねるごとに激しく、酷いものとなっていく。
 そしてある年、歴史に残る激戦を繰り広げた両騎士団は猛烈に消耗した。
 
 そこを隣国に狙われた。聖戦の激しさと消耗度合いは、周辺国に知れ渡っていたのだ。

 その戦いには辛くも勝利したものの、騎士団は多くの損害を出すに至った。
 改革の必要性は以前から、ほとんどの団員が思うところでもあった。
 
 これを期に、全軍衝突を避け別の方法での対抗戦が行われるようになる。
 ルール変更や、競技そのものの変更などもありながら。
 現在の形、『チョコレートの塗り合い』へと辿り着いたのだった。

 白の騎士団キャスクブランが勝利して5年。
 捲土重来を期す黒騎士団ブクリエノワールは、入念な準備を行ってきた。
 
 聖戦が行われる『ホワイトデイ』。それは白の騎士団の創立記念日である。
 日程については、前回の勝者であり聖剣を持つものが自由に決めることができる。
 伝統的に、それぞれの創立記念日の『ホワイトデイ』『ブラックデイ』に行われてきた。

 黒の騎士団の創立記念日『ブラックデイ』。それは聖戦のひと月前にあたる。
 例年であれば、壮大なパーティによって祝われるのだが今年は違った。
 
 白の騎士たちにはパーティをしていると思わせ、最後の極秘特訓を行っていたのだ。

 ぶっかけるチョコの運搬、効果的なかけ方、被害を抑える守り方。
 個人戦術から、全体の戦略まで。必勝体制は整っていた。
 
 そして当日。全てが作戦通りに進む中、その全てを台無しにする敵襲がやってきた。

 白黒通りを挟んだ、両騎士団の詰め所前で始まった『聖戦』。
 それが盛り上がりを見せる中、南門が破られ魔物たちが街になだれ込んできた。
 
 彼らは一気に街の奥へと進んでいく。狙いは騎士団に集中していた。

「演習中止! 敵を迎え撃つ! ヴォアスは門を抑えろ!」
 この5年、国の防衛を担っていた黒の騎士団が団長の声でまず動く。
 名前を呼ばれた副団長の男が部下を連れ離れる。逃げ道を塞ぎ増援を防ぐため、南の門を取り戻しに走っていた。
 
「我々は国民の避難だ! このまま宮殿まで下がるぞ!」
 白の騎士団は後衛で隊列を組む。避難が済むまで、けして破れない壁となるのだった。

 避難が進めば、白の騎士団も迎撃へと参加していく。
 その頃には南の門の制圧も終わり、黒の狼煙が上がっていた。作戦成功だった。
 
 それなりの被害は生んだが、奇襲は失敗と見ていいだろう。
 門も閉じられた。あと彼らにできるのは、どうにかしてこの街から逃げることだった。

イベントマップ『』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

ホワイトデイの騎聖戦

 実際問題として、どちらの騎士団が勝っても大きく国の方針が変わるわけではない。
 
 彼らは思想で対立しているわけではないのだ。
 どっちが下か上かというだけのプライドの問題であり、そしてどちらも優秀だった。

 だから多くの国民からしてみれば、どちらが上に立とうが構わなかった。
 全体的に白いものが増えたり黒いものが増えたり、街の雰囲気が変わる程度である。
 
 彼らにとっては5年に1度の楽しい祭りで、最大の娯楽というだけでしかなかった。

 『聖戦』はここで、途中ながら終了となった。
 後始末もあり水をさされたというのもあるが、何より大勢はすでに決していた。
 
 入念な準備をしていた黒の騎士団の勝利は、襲撃の時点で決定的だった。
 そしてそれを、白の騎士団もまた充分に理解できていた。

 『聖剣ショコラブラン』。
 かつての両騎士団長が使っていた剣を溶かして、新たに作った大剣である。
 
 5年ぶりにその所有者と、そして名前が変わろうとしていた。
 黒の騎士団が所有する場合、それは『聖剣ショコラノワール』と呼ばれる。
 開戦時、大通りに突き立てられた聖剣。黒の騎士団長が歩み寄り手をのばしていた。

 だが、黒の騎士団長は聖剣を抜き掲げることをしなかった。
 
 警戒を怠り、彼らの襲撃準備を見逃した。その責任は自分らにあると。
 聖剣を持つ資格はなく、辞退を申し出たのだ。

 だが、白の騎士団長はそれを認めなかった。
 
 勝負には負けた。それは明らかな、力の差での敗北だった。
 その上で、相手の辞退で勝ちを拾うなどプライドが許さなかった。

 聖戦終結の後に待つ、楽しい楽しい後夜祭。
 それを心待ちにしていた街の人々の間には、このやり取りの間不安が広がっていた。
 
 二人の騎士団長はすっと視線を合わせ、お互いに頷きあう。
 こういうときのため事前打ち合わせでもあったかのように、二人は揃って口を開いた。

「では、来年、再戦としようじゃないか」
「この一年は力を合わせ、ともに、国の運営と防衛を行おう」
 そう、黒の騎士団長が提案した。白の騎士団長はすぐさま応える。
 
「それはこちらも有り難い。ならば、まずはやることは決まっているな」
 その返答に、またもすぐに頷き返し。二人の騎士団長が同時ににやりと笑った。

 街を襲った連中は散り散りに敗走した。それの追討ちである。
 騎士国始まって以来、白と黒の両騎士団による初めての共同作業だった。
 
 白黒に塗られた大通り、そこに突き立てられたままの聖剣。
 それはこれより一年、このままの姿で立ち続けることになる。
 警護のため、それぞれの騎士団から選ばれた二人の騎士が並んで立つのだった。

 再戦の時、その後、両者の関係がどうなっていくかはいまだ分からないが。
 なにかが変わっていく。そんな予感はしていた。

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『ゴマ塩ノリ巻きおむすび』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『土産木刀 無銘の聖剣』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
ホワイトデイの騎聖戦
イベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

盗まれた聖母像を取り戻せ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:盗まれた聖母像を取り戻せ』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/11(水)~5/28(土)までです
盗まれた聖母像を取り戻せ

 聖母エール・テレグラハム。彼女はこの国の伝説だった。

 彼女が生きていた頃は『聖母』と呼ばれてはいなかった。
 その活躍から、二つ名はいくらでもあったが。
 
 その中で最も多く使われたのが『鬼神』という名だった。

 彼女が活躍したのは、睡蓮戦争と後に呼ばれる魔物との戦いである。
 そこで、まさに鬼神の如き働きをした。
 敵を倒し、味方を救い。そして国を守ったのだ。

 鬼神と呼ばれた救国の英雄は、後に聖母と呼ばれるようになる。
 
 それは、戦後の彼女のことについてであり、実際に呼ばれるのはさらに後。
 彼女の死後、その行動が多くの人に知られるようになってからだった。

 戦争が終結すると、彼女は軍内の多くの呼び止める声を振り切って軍を辞めた。
 そして作ったのが、学校と病院と孤児院だった。
 
 そこには、彼女が鬼神として戦って稼いだ金、その全てが注がれた。
 そこで彼女自身も身を粉にして働き、財産を1つとして残すことなく死んだ。
 
 残ったのはそれら施設と、そこから巣立っていった多くの未来だった。

 そんな彼女の没後五十周年を迎える今年、祝祭が開かれることになった。
 
 彼女の功績を称える銅像、『エール・テレグラハム聖母像』が造られることとなり。
 その除幕式を前に、聖母像は盗まれてしまった。

 街から東に行った場所にある、睡蓮戦争の際に破壊された魔物たちの城跡。
 その廃墟に、銅像が運び込まれる姿が猟師により目撃された。
 
 銅像を取り戻すため、力を貸してほしい。
『マップ:[[黄昏の廃城エグマヌエト]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[黄昏の廃城エグマヌエト]]

 かつて、ここには立派な城があった。
 庭園に咲く睡蓮の花がとても美しかったことから、聖スイレン城とも呼ばれた。
 
 城主の名は、アルベルト・リッツカナバル。
 城の有様そのままに、立派な領主だったという。

 だが、城は落ちた。
 彼は立派な人格者だったが、優れた為政者ではなかった。
 
 庭師のほうが向いている。それは生前、彼自身が語っていたことである。
 自虐ではなく、本気で言っているのだから始末が悪かった。

 そんな彼の城に攻め入ったのは、実態としては山賊のようなものだった。
 皆が勝手に動き、そこには戦術も戦略もない。
 
 それぞれが目の前の敵を倒すというだけの、粗暴な魔物の群れだった。

 ただし、ただの賊と言うには規模が大きすぎた。
 さらには城の防備は甘く、兵士たちは数でも強度でも劣っていた。
 
 あっけなく城は陥落し、彼らのものとなり。
 領民は隣国の街ロンガーラムへと助けを求め、逃げ込んだのだった。

 大きな城を手に入れたことで、彼らはさらに大きな集団になった。
 その一味に加わろうと、おこぼれを狙って魔物たちが集まってきたのだ。
 
 ついには自らを『魔王軍』などと自称するようになっていた。
 だが、魔王などという絶対的なものは存在しない。ごっこ遊びが関の山だった。

 だがそれでも、数の暴力は確かであり、彼らにはその力はあった。
 連携はなくとも、練度もなくとも。数は日毎に増えていっていた。
 
 鬼神エール・テレグラハムに討伐されるまで。彼ら魔王軍は調子に乗っていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
荷台の聖母の子守唄

 鴨撃ちの猟師が夜の深い時間に目撃したのは、疾走する馬車だった。
 
 街の近くでは静かに進んでいたものが、距離を取ったところで遠慮がなくなる。
 車輪が跳ねるのも構わず、ドタドタと土煙を上げながら爆走していた。
 
 猟師が見つけたのは、そのときの馬車だった。

 事情を何も知らない猟師は当然それを見送った。
 夜逃げか何かだろうと、その行き先をなんとなく見てから仕事に戻ったのだ。
 
 夜逃げは褒められたことではないが、関係のないこちらが責めることでもない。
 向かっている方角が似ていたので、鴨が逃げないか心配なぐらいだった。

 彼が鴨撃ちを終えて、二匹の太った鴨をほくほく顔で持ち帰った頃。
 街は大きな騒ぎになっていた。
 
 除幕式を数日後に控えた『エール・テレグラハム聖母像』。
 白い幕に包まれすでに広場に設置されていたそれが、盗まれていたのだ。

 それはあまりに大胆な犯行だった。
 
 夜、人通りのなくなった後とはいえこの広場のど真ん中である。
 いつ誰が通りがかってもおかしくない。
 そもそも街灯も多く、近づくまでもなく遠くからでも丸見えだった。

 別段特殊な手を使ったわけではない。
 素早く近づき、素早く荷台に積み込み、素早く逃げた。ただそれだけである。
 
 ただ早かったという理由だけで、聖母像は盗まれてしまっていた。

 そんな大騒ぎの中、英雄の帰還である。
 鴨猟師の男は、荷台に白幕に包まれた巨大な何かを乗せた馬車を見たことを伝えた。
 
 そして行方が判明した。その場所は、魔王城の跡地だった。

  • フェイズ3
聖母に捧げる魔王のバラード

 猟師の案内は必要なかった。
 その場所は、この街のものであればほとんどのものが知っている。
 
 8歳以上であれば、課外授業で必ず見学に行くことになる場所だった。

 聖スイレン城と呼ばれ、魔王城と呼ばれ、睡蓮戦争によって崩壊した。
 今では主のいない城跡だった。
 
 かつて美しかった庭園は、見る影もなく壊されている。
 生き残ったスイレンの花が、野にいくつか咲いており。
 可憐な花に比べ、意外とたくましい姿を見せてくれていた。

 城は庭園から、門、エントランスと。どこもかしこも破壊の爪は深い。
 しかも、それから100年近くの時間が経過しているのだ。
 もはや、どこが新たに壊れてもおかしくはなかった。
 
 限られた人数で、慎重に奥へ進んでいく。
 課外授業で訪れたことのある街の人々も、中にはいるのは初めてだった。

 エントランスから階段を上がり、さらに廊下を奥へ。
 壊れて片側がなくなった巨大な両開きの扉の前に立つ。
 
 この先は、かつての城主、そして魔王軍が使っていた『玉座の間』だった。

 門が半分開いていたからでもなく、おそらく閉じられていても分かったろう。
 それぐらいに、玉座の間は騒がしかった。
 
 中は魔物で溢れていた。そして、酒を飲み飯を食い騒いでいる。
 その中心に、除幕式を終えた聖母像が凛と立っていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
二代目魔王軍に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[黄昏の廃城エグマヌエト]]

 『謁見の間』を覗き見た時、聖母像は部屋の中央に置かれていた。
 
 すでに幕は解かれ、神々しい姿を廃墟の中で見せる。
 周囲には魔物たちが多く集まり、同じく盗んできた酒を飲んで騒いでいた。
 
 その中にあっては、聖母どころか邪神像のようにさえ見えた。

 それは、盗んできた聖母像の扱いがどこか敬って見えたからである。
 
 売るにしても、街にとっての価値とは違う。金属塊としての値にしかならない。
 単なる嫌がらせ、というのも充分に考えられる類の集団ではあるが。
 ここに置かれ飾られた姿を見ると、これ自体が目的のようにも思えた。

 突入には、街から来た兵士たちが先陣を切った。
 
 街にはすでに軍と呼べる組織はなくなっているが、警備隊は存在する。
 その中で最小限のものだけを街に残して、他の全兵士がここに来ていた。

「とぉぉぉぉぉつげぇぇぇぇぇぇぇぇきっっっ!!!」
 太い眉毛と太い髭が似合う中年の男、兵士長ラゴスが大声を上げる。
 
 奇襲も可能な状況だったが、騎士道精神なのか何も考えていないだけか。
 謁見の間にいた魔物たち、全員が気づいて入口の方を向く。
 騒ぎが一瞬で静まり返り、その中をラゴスの声が反響し。そして戦闘が始まった。

 静寂はその瞬間だけで、先程までの倍以上の音量での大騒ぎになる。
 巻き込まれるような形で、(PC名)もその喧騒に突っ込んでいった。
 
 魔物たちの中にいた犀頭の亜人が、突入してきていた兵士の一人を迎え撃つ。
 そいつはシラフだったのか、足取りもしっかりしており。
 着込んだ鎧も手にした武器も新しく、大きな体でかなり目立っていた。

「俺たちは魔王軍の正統なる後継者だ! この城は俺たちのもんだ!」
 その声に、周囲の魔物たちから歓声が上がる。
 
 周りを鼓舞はしているが、犀頭がリーダーという風には見えない。
 以前の魔王軍同様、明確なボスのようなものは存在しないようだった。

 それでも、烏合の衆というわけでもない。
 鼓舞し、それに呼応する声があったように。それなりに連携は取れている。
 
 だが、こちらは過去の魔王軍とは違う。彼らには圧倒的に、数が足りなかった。

イベントマップ『[[黄昏の廃城エグマヌエト]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

盗まれた聖母像を取り戻せ

 『魔王軍』などとかつて名乗っていたものたち。
 彼らはすべて『鬼神テレグラハム』率いるロンガーラム軍によって倒された。
 
 聖スイレン城に立て籠もった彼らは烏合の衆そのものであり。
 鬼神と呼ばれた彼女の働きがなくとも、結果は変わらなかったとも言われている。

 それでも、数で圧倒する彼らを倒すには彼女の力なくしてはどれだけかかったか。
 終戦を早めたのは間違いなく、その間の被害を少なくもしただろう。
 
 彼女は懸命に戦い、兵を率い。鬼神として戦を終わらせた。
 魔王軍は壊滅し、その後継者を名乗る連中が現れるには百年近い時間がかかっていた。

「初代魔王軍の意志を継ぎ、この城から世界征服を始める!」
 吠える。周りもまた、吠えて応える。
 
 だが、なだれ込んでくる兵士たちは途中で彼らの数をあっさりと上回り。
 そこから形勢は、なだらかに傾いていった。

 廃墟となった聖スイレン城の謁見の間は、天井の一部が壊れている。
 そこから月の光が入り込み、照らされた聖母像が邪神よろしくなおも禍々しく微笑んでいた。
 
 かつて、魔王軍を壊滅に追いやった鬼神。その銅像である。
 彼らは魔王軍を名乗りながらそれを祀り、守るように戦ってさえ見える。
 
 魔王のいない魔王軍。彼らには、強くて邪な存在が必要だった。

「かかれかかれかかれぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 一心不乱に突撃命令を繰り返し、兵士長ラゴスが旗を振る。
 兵士たちはそれに従い、魔物たちを一気に鎮圧していった。
 
 聖母が見守ってくれている。彼らにとってもその銅像は、ここにあって心強いものだった。

 かくして銅像は街に戻った。
 だが、その一部は戦いの間に壊れて欠けて、ボロボロになってしまっていた。
 
 だが、その壊れ方が奇跡的によくできており。
 まるで体中が傷つき、服なども破れても気丈に戦い笑みを浮かべる。
 
 それは戦女神のような姿だった。

 この後、銅像はこのままの姿で広場に飾られることになった。
 
 彼女の真実を伝えるものとして。
 聖母としてだけでなく、戦女神として戦ったこともきちんと残していくために。
 そのために、銅像はもう一つ新たに造り、隣に飾ることに決まったという。

 こちらの『戦女神の銅像』と対になる、『聖母の銅像』である。
 
 2つで1つの、たった一人のエール・テレグラハムの銅像。
 その除幕式には、まだもう少しかかるそうだった。

ミッション『盗まれた聖母像を取り戻せ』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『激甘餡掛け激辛団子』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『聖母像のかけら』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
盗まれた聖母像を取り戻せ
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

五色の糸を紡いで

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:五色の糸を紡いで』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は7/6(水)~7/23(土)までです
五色の糸を紡いで
 五色村。
 名前ほどカラフルではない、地味な村である。

 この村では、糸作りが行われている。
 
 蚕などの虫や、羊などの動物を使った生糸や毛糸。
 その生産を主な産業としていた。

 作っていた糸のうち、最初に問題が発生したのは蚕だった。
 
 夏の暑さから、なかなか繭を作らなくなってしまったのだ。
 作っても全身を包むものではなく、マットレスのように体の下に敷く分だけ。
 その上で蛹になり、ゴロゴロと過ごして羽化するようになっていた。

 それで紡ぐ糸の量は半分。それすら作らないとなると全くのゼロである。
 蚕による糸作りは大打撃を受けていた。
 
 そしてそれ以外の、蜘蛛やミノムシ、羊やアルパカにも影響が波及していく。
 村全体の糸の生産量が、暑さとともに軒並み落ちていったのだ。

 それでも、夏が終わればもとに戻る。今年の暑さは異常だった。
 暑さ過ぎれば。それを信じられたのは、去年の秋までだった。

 秋になり、多少気温は下がったものの未だ暑い日々は続く。
 冬になっても、涼しくはなったが糸の生産量はほとんど回復しなかった。

 暑さをもたらす原因を取り除かねばならない。
 ようやく村の人々が重い腰を上げたのは、春を迎えてからだった。
 
 なんとなく、みな分かっていた。
 熱がどこから来るのか。それは空にある太陽だけではない。
 明らかに、一方向から押し寄せてきている。それは近くの山からだった。

 春になり本格的に行われた山狩り。そこで暑さの原因が判明した。
 
 山にいたはずの鳥や動物たちは姿を消し、代わりに別のものが巣食っていた。
 時に炎をまとい光を放ち、高熱を発する化け物。
 そういった者たちが、我が物顔で山中を闊歩していたのだ。

 いつの間にこういう状況になっていたのか。
 去年の夏か、もっと以前からこうなっていたのか。
 
 だがそれを今更考えてももう遅い。考えるべきは、これからどうするかである。

 この山を中心に、周囲に熱波を放っている。
 全て、とはいかないまでも。彼らを追い出さねば、『糸作り』に未来はなかった。

『マップ:熱波生む赤一色山』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[熱波生む赤一色山]]
 村に近づくと、確かに暑いという印象だった。
 
 うだるような、というほどではない。過ごせないわけでもない。
 危機感を抱くには足りないが、異常なことは間違いなかった。

 夏はまだ本格化しているとは言い難い。
 これからまだまだ、数ヶ月は気温が上がっていくだろう。
 
 その始まりとして考えれば、ここから最終的にどこまで上がるか。
 原因があるのなら、やはりここで手を打つべきに思えた。

 五色村の正面に、その山はあった。
 真っ赤に染まる山。燃えている。そうとしか見えない。
 
 あの山から、熱波がこちらへと襲いかかってくるのだ。
 それなりに距離もあり、熱はじわりじわりと迫ってきている。
 だが、風が吹けばそれは明らかな熱量を持って、山を貫き草原を駆け抜けていた。

 村で聞けば、今年は去年よりもさらに酷くなっているらしい。
 おそらく数字で言えば数度の違いしかないだろうが。
 
 体感ではかなりの差があり、糸を作る虫や動物たちだけでなく。
 村人たちの生活にも、直接的に大きく影響が出そうな気温になっていた。

 村にある家々には、門扉のある場所や玄関前などに糸束が飾られている。
 その色は家によって違う。五色に分かれており、表札のような意味合いを持っていた。
 
 毎年新しいものが作られる。それが、今年は作れていない。
 昨年の正月に作ったものが、いまだ飾り付けられたままだった。

 今年はまだ、何もできてはいなかった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
村が紡いだ五色の糸
 五色村。その始まりは、5つの家、十数人での村作りだった。
 
 山野を開拓して家を建て、田畑も作られたがあまり多くの実りは得られなかった。
 近くの山々も同様。恵まれた場所とは言いがたかった。
 
 それは今も変わっていない。植物の生育には向かない土地だった。

 そこで彼らは、『糸作り』を始めた。
 五家がもともと持っていた技術でもあったが、土地に合わせてそれを発展させていった。
 
 『糸作り』を主産業として、五色村は大きくなっていった。

 五つの家はそれぞれ、蜘蛛、蚕、羊、アルパカ、ミノムシを使った糸を作る。
 どこの家のものか一目で分かるよう、それらは五種の色に染め分けられた。
 
 そして彼らは自家で作る大きな糸束を、看板や表札代わりに家の外に飾っていた。

 今ではいくつも分家し、その中で婚姻などもあったがそれは変わらず。
 後に村に転居してきた者たちにも、その技術が惜しげなく伝えられた。
 
 五種の糸、五色の糸。
 それらは数世代を経て、村の名産品として広く認知されるようになっていた。

 五色村に訪れてみれば、全ての家に『五色の糸束』のいずれかが必ず飾られている。
 それによって、扱う糸、そして五家のいずれに属するかが一目瞭然だった。
 
 きっちりと、数を数えてみた訳では無いが。
 綺麗に等分に、五色に色分けられているように見えた。

  • フェイズ3
燃え上がる運命の赤い糸
 細かな糸が舞う草原を進んだ先にある、赤い山。
 
 赤土がむき出しになっているわけでも、木々が紅葉しているわけでもない。
 それでも、燃えていると見紛うほど山全体が赤く染まっていた。

 直ぐ側まで来てようやく、それが赤い糸が舞っているせいだと分かった。
 
 赤色に染まる糸があたりを舞い飛び、草木にまとわりつき。
 風にそよぐその姿が、山全体が赤く燃えているように見えていた。

 この山に来るまでの草原でも、多くの糸が飛んでいた。
 植物の綿毛や動物の毛、あるいは蜘蛛などの虫たちが吐き出した糸。
 それらが細かく千切れ、空を舞っていたのだ。
 
 そこにあったのは、白い糸を中心に茶色や黒にくすんだものばかりである。
 だがその山には、赤色の糸だけが飛んで全体を包み込んでいた。

 山に入ってすぐ、彼らは姿を見せた。
 
 赤い糸が舞う、そのうちの一本が不意にぼっと火がつき燃え上がる。
 それが周囲に伝播して、一気にあたりが炎に包まれた。

 その炎の中でも、現れた獣たちに逃げ惑う様子はない。
 それはそうだろう。糸に火を付けた、その熱を放っているのはまさに彼らだった。
 
 膨れ上がった炎に誘われてか、山の奥から次から次へと獣たちが出てくる。
 赤い山が、さらに真っ赤に染まる。熱はますます上がっていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
赤色の熱源に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[熱波生む赤一色山]]
 獣たちが放つ熱が、風を舞わせて赤い糸をあちこちに飛ばす。
 
 糸の一部は燃え、それがまた別の風を生み。
 軽い糸は翻弄されて暴れながら、あちこち飛び回っていた。

「おい、この糸……」
「これ、グロバスのところに昔いた蜘蛛の糸じゃないのか」
 以前に山狩りを行った村の若者たちが、今度もついてきていた。
 そして彼らは飛び交う赤い糸を見ながら、そんなことを口々に言い合っていた。

 細長い綿毛のような糸で、その端に小さな塊がしがみついている。
 木に引っかかっていた糸をよく見れば、キュッと体を縮こませた蜘蛛のようだった。
 
「あの蜘蛛は、何年も前に全部死んじまったんだ」
「そのときも確か、凄い猛暑で。なんとか頑張ったんだけど、一匹残らずな」
 ついてきたものは若者が多い。半分以上はその存在すら知らないらしい。
 断片的な情報を、その少ない中で交換しあい。確認しながら思い出してい
た。
 五色村を作った5つの家。
 その中のグロバスという家では赤い糸を吐く蜘蛛を飼っていた。
 
 だがそれは、ある年の猛暑で死んでしまったのだ。
 そこで今はそれよりも少し暗い、紅色の糸を吐く蜘蛛を扱うようになった。
 暑さに強い種で、今回も村で一番最後まで糸を作り続けていたのがその蜘蛛だった。

 自らが吐いた赤い糸に掴まって飛んでいるのは小蜘蛛である。
 生き残りの子孫か、あるいは別の場所から同種が飛来してきたのか。
 
 いずれにせよ、この暑さを直接生んでいるのは熱を放つ獣たちではあるが。
 その彼らを先導し、ここに集め留まらせているのは彼ら赤い糸の蜘蛛たちだった。

 獣たちが一箇所に集まってきたことで、熱も風もどんどん強くなっていた。
 
 ちょっとしたきっかけで。それが何か分からないほど小さなきっかけで。
 爆発するように風が吹き、山を包み込んでいた赤い糸が一斉に舞い上がっていた。
 
 昇り龍のように、真っ赤な帯が空に上る。
 赤い糸が束になり、しがみついた小蜘蛛たちとともにそれを作り上げていた。

 すっと真上に昇ったあと、東の空へと赤い帯が流れていく。
 それは空に浮かぶ川にも見えた。
 
 見上げているうち、少しずつだが風が収まり熱も下がっていく感覚があった。
 あたりからは、熱を生む獣たちの姿が消えている。
 
 彼らは赤い帯の川を追い、山を離れその行く先へと向かっていた。

イベントマップ『熱波生む赤一色山』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

五色の糸を紡いで
 まるで冬が来たかのように。と言うのはあまりに大げさである。
 実際にはほんの数度ほど気温が下がっただけだが、体感ではそう思えるほどに。
 
 山も、あたりも、そして五色村も、一気に涼しくなっていた。

 それを感じたのは、望たちや村人たちだけではない。
 糸を作る蚕や蜘蛛、羊たちも同じように思ったことだろう。
 
 暑くはない。涼しい。ちょっと肌寒い。
 そこで彼らが頼るのは、自らが生み出す『糸』だった。

 体が溶けるような気分だった蚕は、冷たい床に腹をべたりと付け寝そべっていた。
 
 その床がキンキンに冷えて、蚕の体も同じ温度に染まっていく。
 溶けそうだった体が固まり、それどころか凍りつきそうな心持ちになったところで。
 
 蚕は糸を吐き、暖かく優しい繭を作って体を包み込んでいた。

 羊やアルパカたちも、体毛を伸ばして寒さを感じる体を温める。
 とはいえそれは、蚕や蜘蛛たちに比べれば時間がかかる。
 
 しばらくは互いに身を寄せ合い、団子になって過ごすしかなさそうだった。

 いつもの夏に戻り。あとは時間がたてば全て元通りだろう。
 
 丸くなった毛むくじゃらの羊やアルパカが転がるように歩き。
 蚕やミノムシは繭に閉じこもり、蜘蛛は大きな糸の巣を作り上げる。
 
 五色村が五色の糸を紡ぐ。その未来はすぐに帰ってきたのだった。

 村人たちは早速、『糸作り』を再開していた。
 完全に新規のものとなると、およそ一年ぶりとなる仕事である。
 
 わずか一年で鈍るような、そんな半端な腕のものはいない。
 テキパキと、そして美しく糸を紡いでいく。出来上がったのは『五色の糸束』だった。

 いつもなら年が明けた最初に行う、糸始めの儀式で作られる糸束。
 それは自分たちの家々に飾られるもので、古いものと毎年交換するのだ。
 
 今年できなかったそれを、半年遅れで執り行う。
 新しくなった『五色の糸束』は風に揺れ、よく手入れされた髪の毛のように輝きながらサラサラとなびいていた。

ミッション『五色の糸を紡いで』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『天糸瓜の五色団子』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
五色の糸を紡いで
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『蚕糸使い』が修得可能になった

黄泉帰る秘宝島伝説

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:黄泉帰る秘宝島伝説』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は8/31(水)~9/17(土)までです

黄泉帰る秘宝島伝説

 デッドマンズアイランド。その島はそう呼ばれていた。

 大きな島ではなく、記録が残る限り無人島である。
 そのような名前で呼ばれるぐらいには忌避されていた、というのももちろんあるだろう。
 
 それもあるが単純に、暮らすには不向きな島だった。

 周囲の海流があらゆる方向から島に流れ込むようになっており。
 島からの脱出が難しく、海に出ての漁は不可能だった。
 
 そのような海流の状況から、多くの難破船がこの島にたどり着いた。
 このあたりで航行不能になれば、決まってその島に流れ着くのだった。

 この島で救助を待つ日々。
 壊れた船を直すもの。島にあるものや流れ着いたもので筏を作るもの。
 
 あらゆる方法で脱出を試みたが、誰一人生還者はなく。
 帰らずの島として、多くの死者を積み上げた。
 そうしてついた名前が『デッドマンズアイランド』だった。

 しかしながら今では船の性能も上がり、海流の影響も受けにくくなった。
 また、これらの伝説も有名なことから、近くの島々から定期的に見回りもある。
 
 稀に、事情を知らない漁師などが海流に乗って流れ着くらしい。
 それを回収救助し、さらにお説教をするのが仕事だった。

 現在、島には新たな伝説が生まれていた。
 数多くの難破船が流れ着いた島、そこには有名な海賊たちの名前も含まれており。
 
 彼らが奪った数々の『秘宝』もまた、島にあると言われているのだ。
 島に閉じ込められ、出られないと悟った彼らがどこかに隠した。
 
 海賊の隠し財宝の伝説が、いつ頃からか人々の口に乗るようになっていた。

 というわけで。
 今回、周辺六島による共同企画として、お宝探しツアーが組まれました。
 
 海賊の遺した『秘宝』を探しながら、南の島で最後の夏を過ごされてはいかがだろうか。

『マップ:[[秘宝島デッドマンズアイランド]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
秘宝島デッドマンズアイランド

 波は殆どなく、穏やかな海の上。
 一見するとそうだが、それは表面上のものにすぎなかった。
 
 荒れ狂うことなく。水面下を静かに激情が流れ行く。
 その行き先は、『デッドマンズアイランド』と呼ばれた島だった。

 島の周囲には、6つの有人島が存在する。
 
 これら六島がぐるりと囲む海域、この中を流れる海流が複雑かつ強力であり。
 中心にある『島』はもとより、内海そのものに六島の人々は船を出すことはなかった。

 それが変わったのは最近になってからである。
 小舟を櫂で漕いでいた時代から、推進力も船自体の大きさも進化し続けてきた。
 
 漁の範囲も近海から遠洋へと広がっていく中。
 どこかの島の誰かが言いだしたのだ。内海に行ってみないか、と。

 危険性から忌避してきた海域だったが、漁場としては魅力的だった。
 直ぐ側にそのような場所があって、無視し続けることはできない。
 六島の間での話し合いの後、皆で内海中央の『島』に向かうことにした。
 
 それが十年ほど前、初めての『デッドマンズアイランド』への上陸だった。

 信心深い老人は祈り、心配性の中年は酒を飲み、冒険心の塊の子供は密航を試みる。
 そうして行われた上陸はあっさりと成功し、その大きな一歩を刻んだ。
 
 時は経ち、現在。
 『デッドマンズアイランド』は観光スポットとなっていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
デッドライン・アイランド

 『デッドマンズアイランド』にたどり着くことは簡単である。
 周辺の海域まで来て、何もしなければいいのだ。
 
 何もしなければ勝手にたどり着く。そして、出られない。
 ここはそういう島だった。

 白い砂浜を水着の美女が駆けていく。
 小麦色の肌、布面積の小さい水着、それを追いかける浮かれた男。
 
 波に乗るサーファー。走るバナナボート。弾むビーチボール。
 『デッドマンズアイランド』と呼ばれた南の島は、今やバカンス真っ只中だった。

 六島の連合漁協が行う、『秘宝島、お宝探しツアー』。
 その船に乗って、(PC名)は他の参加者たちと共に島に上陸していた。
 
 先客たちは、六島の住民や外からの観光客である。
 お宝探しとは別に、彼らなりに夏を満喫していた。

「みなさんこちらですよー」
 オムライスに刺さっているような小さな旗を振りながら。
 漁協の婦人会所属、牡蠣剥き名人アトランタさんが先導して歩く。
 
 そして、島の奥にある森へと足を踏み入れた、その瞬間だった。

 空に閃光が走る。
 宝探しツアーの演出の一つ、というわけではなかった。
 
 黒雲と、それを引き裂く雷。
 いきなり現れたそれらが、島を悪意で包み込もうとしていた。

  • フェイズ3
デッドエンド・アイランド

 島の中に生えた森。それは浅い海の中にあった。
 
 十数センチほどの深さしかないが、根は完全に水中にある。
 そこで創り上げた森は、全体が透き通るような緑に輝いていた。

 島の中央部分にできた窪みに水が溜まり、もう一つの小さな海を作っている。
 陸地だけで言えば、ドーナツ型をしていた。
 
 そのドーナルの穴の部分に広がる森は、背の低い木々が密集して生え揃う。
 宝探しツアーとして、何かが隠れる要素は充分にあった。

 森に足を踏み入れる、その小さな海に足を浸ける。
 その瞬間、空を覆った暗雲がぴかりと光り、鋭い輝きを見せていた。
 
 さきほどまで。
 本当に、つい一瞬前まで雲ひとつない青空が広がっていたというのに。
 
 空は乱れ、そして島も乱れ始めようとしていた。

 遠くで悲鳴が聞こえた。声はビーチ方面から。
 おそらくあちらで遊んでいた誰かのものだろう。
 
 様子を見に行きたいが、今すぐにという訳にはいかない。
 ここでも周囲で悲鳴が上がる。一気に暗くなった島で、それらが目を覚ましていた。

 『デッドマンズアイランド』。そう呼ばれた理由。
 多くのものを閉じ込め、死してなお手放すことはなかった。
 
 死したる海賊たち、それに連なるものどもが動き出していた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
秘宝の番人に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
秘宝島デッドマンズアイランド

 島を覆う暗雲。雷がゴロゴロと騒ぐ。
 それにしてはやたらと海は穏やかで、怖いぐらいの静けさだった。

 海には島を囲むように、多くの船が浮かんでいた。
 蜃気楼のように揺らぐ。ドクロマークの帆が揺れる。それは海賊船だった。
 
 だがそれらは、海流に乗って島に向かっては来ない。
 何もしなくても、反対に何をしてもそうなってしまうというのに。
 いつまでもそこで、島を取り囲んだ海賊船の幻はゆらゆらと彷徨っていた。

 雷が海に落ちて、その近くに浮かんでいた海賊船が霧散する。
 そうやって1つずつ、雷と激しい光がかき消していった。
 
 そのさまを、島の海賊たちも見ている。消えていく船を。沈んでいく船を。
 船が消える度、彼らの姿もまた1つずつ煙のように消えていった。

 かつてこのあたりの海を荒らし回った海賊たち。
 島に閉じ込められるまで、人生の殆どの時間を海の上で過ごしてきた。
 
 そして、彼らは『奪う』ことが生業だった。だが、この島に奪う対象はいない。
 せいぜい奪えるのは、魚や貝などの命ぐらいだった。

 彼ら海賊が、この島で長らく暮らしたような痕跡は残っていない。
 難破した船に積まれた水や食料がなくなればそこまで、というところだった。
 
 取り残された彼らが願うのは、助けが来ること。
 そして、同じように難破してきた船が流れ着き、その荷を奪うことだった。

 助けは来ない。そして難破して来るのは決まって海賊船で、起こるのは奪い合いだった。
 どちらも来なければ、始まるのは同士討ちによる奪い合いである。
 
 何がどう合っても未来はない。ここで朽ちるとも、また海に出て藻屑になろうとも。
 この島に来てしまった時点で、彼らの未来は尽きていたのだ。

 この頃から、実は『海賊の隠し財宝』についての話はすでにあった。
 
 多くの海賊たちが漂流して流れ着いた『デッドマンズアイランド』。
 そして同時に、多くの積荷が運び込まれた『宝島』でもある。
 人も物も出られない。であれば、ないはずがない、というのが理屈だった。

 本当にあったかどうかは分からない。今も、そして昔も。
 
 金目のものはすぐに、酒や女に化けるのが海賊というもので。
 彼らに貯蓄という概念はない。財宝を奪うのが彼らで、溜め込むものではなかった。
 だが真実についてはあまり意味はない。重要なのは、煽り文句の1つ2つだった。

 光に集まる蛾のように、噂は島に多くの海賊たちを引き寄せた。
 それが決め手となって、辺り一帯の海賊たちは滅んでいったのだった。
 
 海賊たちの被害者の多くは、この周囲の島々の人である。
 六島は海賊から解放されたのだ。噂話と、『デッドマンズアイランド』によって。

イベントマップ『[[秘宝島デッドマンズアイランド]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

黄泉帰る秘宝島伝説

 何が悪かったのか。
 漁協の婦人会所属、牡蠣剥き名人と名を馳せるアトランタは考えていた。

 この島に乗り付けた船が海賊船をモチーフに改造してあったのがいけなかったのか。
 沖合で撃った大砲、空砲だったが、あれがよくなかったのか。
 それとも、この海賊のコスプレだろうか。これが気を悪くしたのかもしれない。

 島に海賊たちの亡霊が現れて、宝探しツアーは中止となってしまった。
 島中に色々な仕掛けを作った大掛かりな企画だっただけに、落胆は大きい。
 
 安全を確保できたとしても、また最初から企画の練り直しだった。

 ドーナツ型の島、その真ん中に広がる小さな海と森。
 そこに水に浸かる形で宝箱が置かれていた。宝探しツアーのための『秘宝』である。
 
 やたら派手な、真っ赤な宝箱。申し訳程度に、木の陰に隠されている。
 ダイヤル式の錠がついていたが、4桁の数字を合わせれば開けられる玩具みたいなものだった。

 彼女はそのダイヤルを回して左から順に数字を合わせていく。
 六島連合の漁船団が『デッドマンズアイランド』に初めて上陸した日付だった。
 
 チン、と軽い音を立てて鍵が開く。中身は見ずとも彼女は知っているが、一応開ける。
 六島どこでも使える商品券と、趣味の悪いドクロの指輪だった。

 そこで、彼女は宝箱の下にキラリと光る何かを見つけた。
 水の中に手を入れて、引き上げようとしたが動かない。
 
 それは木の根っこに埋まるようにがっちり掴まれていた。

 横に動かしたり逆に押し込んだり。助走のようなものをつけて、無理やり引き抜いた。
 汚れている。だが、すぐにそれが何か分かった。それは古い金貨だった。
 
 首をひねりながら、その金貨を宝箱の中に放り入れる。
 誰かが宝箱に入れようとして落としたのか。『秘宝』に金貨はなかったはずだが。
 それに、落としただけであんな頑丈に根に絡まるものかも疑問だった。

 後で誰かに聞こう、と深く考えるのはやめて宝箱を閉じた。
 島に帰れば仕事が山積みだ。ツアー中止の補償やら何やら、考えることは多かった。
 
 あまり船を待たせても悪い。
 ため息をつきながら宝箱を持ち上げ、海賊姿の彼女は海岸線に足を向けた。

 彼女が金貨を引き抜いた根の隙間に、さらに輝く何かがあった。
 それに彼女が気づく前に、泥が入り込んで隙間を埋めてしまっていた。
 
 それらはかつて泥の中に埋められ、木の成長とともに巻き込んだ多くの金貨。
 一枚奪って行く彼女の背中を見る亡霊の姿は、誰かに見られる前に沈んで消えた。

ミッション『黄泉帰る秘宝島伝説』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を32300Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『山盛り海賊丼』を手に入れた

特別ボーナス

(PC名)は魂片:『レプリカ海賊金貨』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
黄泉帰る秘宝島伝説

イベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス

(PC名)は『水着チケット2022』を手に入れた。体防具『水着』『魔水着』と1度だけ交換できます

聖なるパンの誕生を祝う

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:聖なるパンの誕生を祝う』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は10/26(水)~11/12(土)までです
聖なるパンの誕生を祝う

 この一帯は小麦の一大生産地であり、小麦畑が全面に広がっている。
 そしてその合間合間に、小さなスペースを見つけていくつかの町や村が作られていた。
 
 まず小麦畑があって、それ以外がある。
 この順序はどの集落を見ても、変わらない根本的なルールだった。

 その中の1つの集落。
 何の変哲もない小さな村で、『パン食い競走』が始まろうしていた。
 
 50メートル走。その短距離走の途中でパンを食う。
 しかも高いところに吊って飛びついて食いつくという、珍妙な競技である。
 
 他の集落でも同様に、似たような競技が独自に行われ賑わいを見せていた。

 長大なバケットを立てた状態でチームで守り、互いのそれを倒し合う『パン倒し』。
 音を上げるまでパンで叩き合う『パン戦』。
 高い場所にある籠にパンを投げ入れる『パン入れ』。
 
 様々な競技がそれぞれの集落で、パンを使って行われていた。

 『聖パン節』。これはこの小麦地帯の町々で行われるお祭りだった。
 
 祝い方はそれぞれで、とにかくパンを用いるのが特徴である。
 競技性のあるものだけではなく、手作り体験や試食会を行う町もあった。

 様々な町が祭りを行う中、ルーアンでは大規模なものが開催されようとしていた。
 これは毎年開催場所が変わる、『聖パン節』全体のメインディッシュだった。
 
 各町々村々の名うてのパン職人たちが集い、その腕を競うのだ。
 『今年のパン』を決める、ナンバーワンパン職人決定戦だった。

 今年、これが行われるのはルーアン。
 このあたりでは1,2を争う古く大きな町だった。
 
 数多くのパン職人が集結し、すでに予選が行われてその殆どが大会を去った。
 残ったのは8人。ここルーアン代表のパン職人もそこに名を連ねていた。

 『聖パン節』のメインイベント、今年のパン決定戦。
 この秋のパン祭りに、試食側として参加してみてはいかがだろうか。

『マップ:[[聖パンの古都ルーアン]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[聖パンの古都ルーアン]]

 古都ルーアン。
 このあたりでは1,2を争う大きな町であり、農村という感じでは全くなかった。

 道には石畳が敷き詰められ、建物も石やレンガ作りの立派なものである。
 それでも何もかもが古めかしく映る。
 
 伝統的、牧歌的といえば聞こえはいいが。
 何年も時を止めたような街並みと雰囲気が広がっていた。

 だが、時を経てこそ手に入れられる。一朝一夕には手に入らない良さもある。
 初めて来たのに懐かしさを感じる、そんな空気感があった。
 
 そしてその空気を包むのがパンの匂いである。
 それは街に入る前、街の姿が目に入るよりも前からずっと漂っていた。

 小麦の一大生産地にして、パンの聖地であるルーアン。
 町には数多くのパン屋が軒を連ね、その全てからパンの焼ける匂いがしている。
 
 そこに、バターやジャム、チョコやクリームなどが合わさり。
 複雑さなどない、単純なただただいい匂いが町の外まで流れていた。

 その甘く香ばしい匂いに吸い寄せられるように、多くの人々が祭りに集まってくる。
 その集客能力は強烈であり、(PC名)もまた誘われた一人だった。
 
 もちろん、『聖パン節』の祭りが行われるすべての町でもパンの匂いを味わえる。
 だが、ルーアンのそれは他とはまた強さが違っていた。
 
 この町で行われる、パン職人たちの熱き戦い。
 その思いが溢れ、パンの匂いをよりいっそう濃いものにしていた。

 『聖パン節』のメインディッシュ。
 予選を勝ち抜いた8人の戦士たちが、自分たちの出番は今か今かと待ちわびる。
 
 決戦は間近に迫っていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
黄金色の祭り

 黄金色に輝く小麦畑の中を縫って走る農道を通り。
 『古都ルーアン』にたどり着くまでにも、いくつかの村や町を経由してきた。
 
 そのいずれの集落でも、『聖パン節』を祝う祭りが行われていた。

 最初に訪れた村の出し物は『パン引き』だった。
 縄のように編み込んだ十数メートルはある長さのパンを引き合うのだ。
 
 千切れないように、互いのチームがそっと引き合うのが見どころである。
 力を入れず抜かず。この長さで作るのも職人技だが、引くのもまた職人技だった。

 訪れた町々。どこも盛り上がり、大変なお祭り騒ぎである。
 
 これはその町の住人だけで行われるローカルなものではない。
 小さな村でさえ、明らかに住人を超える数が集まっていた。
 
 自身の町でも祭りを行っている近隣の人から、遠方の観光客まで。
 様々なものが混在し、みなで祭りを楽しんでいた。

 いつの頃からか、交流を目的として互いの祭りに顔を出すようになったらしい。
 
 小麦畑が広がるこの一帯すべてを巨大な一つの会場として。
 それぞれの町々が、パンをテーマに様々な出し物を行っている。
 
 まるで学園祭のように、それらを回って歩くのが恒例になっていた。

  • フェイズ3
パンを愛しパンに愛され

 『古都ルーアン』。この町に8人のパン職人が集結していた。
 
 それぞれの町が代表者を一人出し、まずは予選が行われた。
 この8人は厳選なる書類審査を見事に勝ち抜いた、この小麦畑地帯を代表する精鋭パン職人たちだった。

 1回戦。早コネ対決。小麦粉から生地の完成までのスピードを争う。
 
 目にも留まらぬ早業で、あっという間に生地がこねられていく。
 わずか数コネの差で半分が脱落、4人が勝ち上がった。

 2回戦。早焼き対決。今度は生地を焼くスピード対決となった。
 
 強すぎず弱すぎず、絶妙な火加減の調整力。繊細な感覚を必要とした。
 1人は黒焦げ、1人は生焼けとなり、2人が決勝に残った。

 決勝に残った一人が、ここルーアンのパン職人だったことで大きく歓声が上がる。
 相手はレスポリの職人。去年の優勝者であり、連覇を狙う大本命だった。
 
 決勝戦。これはもちろん、焼けたパンの試食審査である。
 この場にいたものたち、(PC名)を含めてそのすべてが審査員だった。

 美味しさを担保した上で、素早く大量に作る。
 これは日常食としてのパン職人には絶対に必要な能力だった。
 
 全員による試食、そして全員の投票によって勝敗が決まる。
 みなに行き渡るほどの最高の職人が作るパン、それは質も量も圧倒的なもので。
 
 『聖パン節』で最も、パンの匂いが強く強く充満する瞬間でもあった。

 町がパンの匂いに包まれる。それは幸せの匂いだった。
 
 良い匂いは幸せを運ぶ。だが、幸せというものは常に狙われるものでもある。
 幸せの匂いは、それを狙うものを呼び寄せてしまっていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
パン・モンスターに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[聖パンの古都ルーアン]]

 パンの匂いに誘われて、町へと迷い込んだ魔物たち。
 
 その目にはパンしか映らず、鼻にはパンしか匂わず、口にはパンしか入らない。
 もしかしたら耳にはパンの声が聞こえているのかもしれないが。
 食べにくくなるので、聞こえないものとするのがよさそうだった。

 試食用に大量に作ってあったパンをうまく囮に使って。
 パン職人、ルーアンの住人、祭り客。みなで協力して魔物たちを撃退していく。
 
 お祭りの客たちは焼き上がったパンや、すでに配り終えていたものを住民に運び。
 彼らはそれを使って魔物たちを操って導き。
 最後はパン職人たちのめん棒の一撃で、次々に魔物を倒していっていた。

 それでも数が多い。それだけパンの匂いが強烈だったのだ。
 彼らを狂わせてしまうほどに。その心を奪ってしまうほどに。
 
 なにか決め手がいる。そこに現れた救世主。
 その名は『シオレラ・ド・パンパーヌ』。伝説のパン職人、その像だった。

 町の広場に立つ、巨大なモニュメント。
 でっぷりと太った、エプロン姿のパン職人を模した像である。
 
 これは今年の『聖パン節』のためだけに、開催の前日に作られた。
 しっかり全身食べられる、巨大な『パン』そのものだった。

 軽トラの荷台に載せられた巨大モニュメントパンが戦陣を駆け抜ける。
 
 それは作られてからずいぶん時間が立っており、匂いについてはほとんどない。
 見た目にも、美味しそうとなるものではなかった。ヒゲのおじさんだった。
 
 それでもその重量とインパクトは魅力だった。
 モニュメントパンを追いかけて、魔物たちの多くが走り出していた。

 自治会長の運転する軽トラが、モニュメントパンを載せて町を離れていく。
 後ろに魔物たちの列を作って。どこまでも、どこまでも。
 
 街に残った魔物たちを掃討し終わる頃になっても、彼は戻っては来なかった。

イベントマップ『[[聖パンの古都ルーアン]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

聖なるパンの誕生を祝う

 騒動が一段落した後。
 決勝用に用意されたパンのほとんどが、撃退に使われてなくなってしまっていた。
 
 とても審査用に、全員の口に入るほどの数はない。
 今日のために用意したパン窯も、焼いている途中のパンを狙って壊されてしまった。
 新たに焼き直すというのも難しかった。

 『聖パン節』ナンバーワンパン職人決定戦。決勝に残った二人。そして敗れた六人。
 運営委員会に自治会長代理の副自治会長。協議した結果、優勝者が決まった。
 
 今年の優勝は、出場パン職人すべての中から魔物の撃退数で決着する。
 ハプニングによって汚されかけた『聖パン節』を救った英雄こそ勝者にふさわしい。
 この結論がでたのは、協議を始めてすぐだった。

 撃退数については、簡単に答えは出た。
 野パンの会の会員の人が、偶然にも出場者8人の撃退数をカウントしていたのだ。
 
 発表された撃退数。それによって。
 ティテロアナ村出身の若者、若干24歳のパン職人ロッカー・パイロンに決まった。

 大会に出場するようなパン職人たちは経験を積んだ高齢が多く。
 彼の若さは、魔物の撃退においては大きなアドバンテージとなったようである。
 
 倒敵数は2位にダブルスコア以上をつけて、実に108を数えていた。

 異論は出なかった。大会出場者からも、決勝に残っていた二人からも、客側からも。
 めん棒を振るって街を救ったその英雄に、今年の栄誉が与えられることになった。
 
 そして自治会長には、本人は欠席のまま特別賞が送られた。
 副自治会長を筆頭に、涙を見せる気の早いものも何人かいたようだが。
 王の帰還が待たれるところだった。

 ちなみに、遥かに遠い地にて、ちょうどこの頃決着がついていた。
 燃料切れで止まった軽トラ。襲いかかる魔物たち。
 モニュメントパンが食われている間、完全無視されて逃げ切る自治会長。
 
 彼がルーアンに戻った頃、町では『今年のパン』が大売り出しだった。
 選ばれたのはかぼちゃパン。パン職人ロッカーによる作品だった。

 多くの獣を連れて走る、荷台に巨大な人形パンを載せた軽トラ。
 その姿が小麦畑地帯をも越えて多くのものに目撃され、噂になったらしく。
 
 『聖パン節』の祭りが有名になって、さらに観光客がどっと押し寄せることになる。
 だがそれはまた、来年の話である。

ミッション『聖なるパンの誕生を祝う』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『『今年のパン』かぼちゃパン』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『魔を退けし伝説のめん棒』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『』が修得可能になった

盗まれた討魔の音色

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:盗まれた討魔の音色』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は12/21(水)~1/7(土)までです
盗まれた討魔の音色
 今年が終わろうとしている。
 その意味するところは、来年が始まるという以外には何もないが。
 
 そのためには、無事に今年を終わらせねばならない。
 終わりがあれば始まりがある。終わりがなければ、始まりもないのだ。

 『討福寺』。
 宝龍華山に建てられた寺院で、麓にある町を守る存在である。
 
 この寺には有名な鐘があった。
 高さが5メートルを超える大釣鐘で、それを打つ音は一望する町の隅から隅まで家を揺らしながら響き渡るという。

 これは魔祓いの鐘として、長年の間、寺院と町を守り続けてきた。
 
 毎日、決まった時間に鳴らされる鐘。
 時報のように今では扱われているが、本来は災いを遠ざけ魔を祓う。
 そういう人々の願いが音色に込められていた。

 その鐘がある朝、忽然と姿を消していた。
 
 四方の柱で巨大な瓦屋根を支える立派な鐘楼。
 その中央に、青銅製の大釣鐘がでんと存在感たっぷりに吊り下げられていた。
 
 それがなくなっていたのだ。

 この大釣鐘には、日々の時報だけではない大事な役目がある。
 それは年の瀬、108つの鐘を打つという大役である。
 
 日々の鐘は災いを遠ざけ、音の響く範囲を清浄に保つ結界のような役目を負い。
 年の瀬の鐘はこの一年に溜まった魔を祓い切るためのものだ。

 その大釣鐘が盗まれた。これでは魔は祓えない。災いは免れない。
 このまま年が明けてしまえば、寺院も町も暗黒時代に突入である。
 
 必ず取り戻し、108つの鐘を打たねばならない。
 鐘を盗んだ愚か者、その足取りを追った先にあったのは『墓地』だった。

『マップ:[[鐘撞き宝龍華山]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[鐘撞き宝龍華山]]

 宝龍華山は、その御大層な名前に似合わない小さな山である。
 
 切り立った崖や岩山などがあり、場所によっては険しくはあるが。
 ハイキング気分で頂上まで上って降りてこれるぐらいのものだった。

 『討福寺』はその中腹ほどにあり、そこまでは数百段の石階段が待ち構えている。
 その階段も本堂も、全てが麓にある町から見ることができた。
 
 町から見えるように。そして寺からも町がすべて見渡せるように。
 そのように設計され、作られていた。
 
 そしてそれは、大釣鐘のある鐘楼も同じだった。

 鐘楼の大釣鐘もまた、町からよく見える。
 大きさと存在感は距離を取ることでより強く感じられるぐらいだった。
 
 視界を邪魔するものがない。
 それはつまり、音もまた遮られることがないということである。
 町の端から端まで。隅から隅まで。鐘の音は響き、町を守ってきたのだ。

 だがそれが見えない。町からでもはっきりと、空っぽの鐘楼が見えていた。
 
 鐘の音はすでに、人々の間では時報のような扱いになっており。
 年の瀬に行われる108つの鐘撞きも、まだ鳴り始めるには少し早い。
 
 正直なところ、今はなくても困らないものではある。
 代わりになるものも、いくつか考えられないこともなかった。

 それでも、いつもあったものがない。見守ってくれていた存在がない。
 空の鐘楼が与えた衝撃に、町は大きな不安に包まれていた。
 
  • フェイズ2(なし、探索可能)
闇に覆うて鐘を盗む

 鐘楼の大釣鐘が盗まれた。
 それに気づいたのは早朝、すでに忽然と姿を消した後だった。

 まだ明るくなる前、鐘楼へと鐘を撞きに行った小坊主がそれを発見した。
 正確に言えば、見つけることができなかったのだ。
 
 鐘楼の建物自体には何の異常もなかった。
 傷一つつけられることなく、そして寺の誰にも気づかれることなく。
 真夜中のうちに、巨大かつ超重量の大釣鐘が盗まれてしまっていた。

 異常を知らせるための鐘はもうなく、小坊主たちが走って町へ。
 叩き起こされた皆が驚く中、一人の老人がある光景を目にしていた。
 
 老人の名は芋作。年を追う事に早起きとなり、すでに昼夜は逆転し昼前に寝るような生活を送っている。
 そんな彼が日課としている真夜中の散歩、そこで目撃したのだ。

 町の徘徊を終え、石階段を登って討福寺の境内へ。
 賽銭箱の中を覗く、までがルーティン。そこで視線は、鐘楼に向いた。
 
 月と星の明かりだけ。だからはっきりと見たわけではない。
 そんなはずはない、と彼自身思って誰にも言えなかったぐらいだった。

 鐘楼にはすでに大釣鐘はなく、取り外されたそれはふわふわと宙に浮き。
 寺院が管理する墓地のある方へと移動していた。

  • フェイズ3
誰がために鐘を鳴らす

 境内には足跡もなければ、大釣鐘を引きずった痕もない。
 隠蔽のために綺麗にした、という印象も受けなかった。
 
 老人の話通り、移動したならば浮いていたとしか考えられなかった。

 盗まれた大釣鐘が向かったとされる寺院墓地。
 同じ山中ではあるが境内を離れ、寺からは少し距離のある場所にある。
 
 麓にある町からは寺の全景が見えるといったが、この墓地だけは例外である。
 手前側に森があるなどして、ここだけが唯一隠されていた。

 墓地には直接町からは行けず、討福寺を経由する必要がある。
 境内から墓地までは、丁寧に草を抜き平らにした山道が続いていた。
 
 斜面に沿って山を下りながら、本殿側を隠すように道はうねり。
 時間自体はそれほどかからず、目的地にたどり着いた。

 大釣鐘の姿を探す。だがそれは、本来探すまでもない。
 5メートルを超える高さがあり、小さな墓石の並ぶ墓地に隠せるものではなかった。
 
 左右と見渡して、そのようなものはない。
 老人の見間違いか、あるいは一旦はここに運ばれさらに何処かへ持ち去られたか。
 いずれにせよここにはない。死角になっている場所がないかと、墓地の中へ歩を進めた。

 中央付近まで来たところで、雰囲気が変わった。
 そもそもが墓地であり、暗く湿った空気が漂っていたのは確かだが。
 
 それ以上にはっきりとした、魔の気配が辺りを取り囲んでいた。

 そこにいたのは、町を狙う魔物たち。
 大釣鐘の音で討ち祓われるべきものたちだった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
煩悩にまみれしものに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[鐘撞き宝龍華山]]

 討福寺が管理する墓地。
 この町で生まれたものの殆どがこの場所に行き着く。
 
 町を出るものもいるが、その多くは最後には戻ってくるという。
 皆と合流するため。最後には一つとなるために、ここはその集合場所だった。

 討福寺と大釣鐘は町を守る。そのために存在している。
 それは墓に入った後も同じだった。
 
 人々を蝕む魔と、鐘は戦い続けてきたのだ。

 鐘の音が無理やり鎮めてきた、『煩悩』と呼ばれる感情。
 
 それが具現化したもの。あるいはそれに当てられたもの。
 鐘を持ち去ったのは、そういったものたちだった。

 目的はもちろん、その音色による浄化を阻止するためだった。
 
 打音。それだけが力を持つわけではない。
 大釣鐘の存在そのものが、山と町に特別な聖域を作り出している。
 
 それに、日々の鐘撞きや年の瀬に行われる108つの打鐘。
 それらが徹底的に、煩悩という魔を討ち祓う音を聖域の中に響き渡らせるのだ。

 だが、それでも祓いきれなかった、残穢ともいうべきもの。
 しつこいカビのように根を張り、自らを隠蔽し。そうして、反撃の機会を狙っていた。
 
 要たる大釣鐘。憎き大釣鐘。輝ける大釣鐘。
 あれを破壊することが、彼らの復讐だった。

 目的は鐘を破壊すること。盗み出す必要も、ましてや隠す必要もない。
 音が鳴らない状態にしてしまえば、それで充分だった。
 
 墓地に移動させたのは、そこで彼らが一番力を振るえるからである。
 境内から運び出し、ここまでたどり着く。そこで彼らの目的は概ね完了していた。

 大釣鐘の破壊も含めて、全ては深夜の段階で終わっていた。

イベントマップ『[[鐘撞き宝龍華山]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

盗まれた討魔の音色

 この墓地は宝龍華山の中で穢れや念が最も吹き溜まりやすく、鐘の影響が少ない。
 だから、彼らは鐘の破壊もそれを追うものの迎撃も、この場所を選んだのだ。
 
 そのような場所とはいえ、この戦いにおいて彼らがこれだけの力を出せた。
 そもそもそのことがすでに、大釣鐘の消失を意味していた。

 鐘は壊した。だが、そこまでだった。
 
 抑えつけられていたわけではない。封じられていたわけではない。
 鐘が消えれば彼らを祓う力も消えるが、力を取り戻すには時間がかかる。
 溜まり、澱み、腐る。それには時間が必要で、それを得ることはできなかった。

 壊された大釣鐘の破片は、墓地のあちこちに散らばっていた。
 
 かき集めてパズルのように元に戻す。
 寺の僧たちはそう言って頑張ったが、破片は全て見つかってはいないらしい。
 
 たとえ全て見つかって元の形が戻ったとしても、音が戻るわけではない。
 全て元通りにするには、溶かして作り直すしかなかった。

 大釣鐘の戻らなかった鐘楼。
 その場所には、大釣鐘と同じぐらいに巨大な太鼓が吊り下げられていた。
 その太鼓は町で、夏祭りの時に使われるものだった。
 
 広場の中央に櫓を組んで、この大太鼓を打ち鳴らしながらその周りを皆が踊る。
 『盆踊り』と呼ばれる、この町で大事にされているものの一つだった。

 その大太鼓が季節外れのこの時期に引っ張り出され、大釣鐘の代わりになった。
 鐘楼に吊られる、その前には寺一番の怪力僧侶が立っていた。
 
 僧服の上半身をはだけ、巨大な二本のバチを握って構える筋骨隆々の男。
 修業によってと言うにはあまりに過剰な筋肉を膨らませ、男は太鼓を叩いていた。

 どんどこどーん。と太鼓が鳴る。
 大釣鐘の音に比べれば、音量も透明度も及ばないが。
 
 それでもその音は力強く、鐘楼から見下ろす町の隅から隅まで遍く響かせていた。

「いよぉぉぉぉぉうう!!!!」
 太鼓の音に負けじと、と言うか実際に同じぐらいの音量で筋肉が叫ぶ。そして。
 
 どぉぉぉぉぉぉん!!!
 最後に特大の、夕刻を告げる大太鼓が打ち鳴らされた。

 この音に、どれだけの力があるかは分からない。
 実際に魔を祓う、災いを退ける力があるのかどうか。
 
 それは年が明け、そして次の年の瀬まで分からないのかもしれない。

 だが少なくとも、意味はあった。
 鳴り響く太鼓のリズム。その音に、思わずステップを踏んでしまうものもいたが。
 
 人々の顔からは不安は取り除かれ、安らぎに満ちている。
 これから町に108つの太鼓を打つ音が鳴り響く、いい年の瀬を迎えられそうだった。

ミッション『盗まれた討魔の音色』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『クリアボーナス食料』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『クリアボーナス魂片』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『鐘楼守』が修得可能になった
最終更新:2022年12月28日 20:11