限定イベントテキストまとめ その10


邪気の波乗る枝魚

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
『時限ミッション:邪気の波乗る枝魚』を発見しました

今回のイベントミッションの開放期間は1/31(水)~2/17(土)までです

邪気の波乗る枝魚

 [[港町リーンデンヘッド]]
 北方にある町で、大きな漁港があることで有名だった。
 
 ここで水揚げされた魚介類は、内陸にある町々へ届けられる。
 自身の町だけでなく、周辺地域の台所を大きく支えていた。

 ある日、港の側にある浜に魚が打ち上がった。
 それは特段珍しいことではない。
 
 それ自体日常で、大きな群れで打ち上がることも数年おきにあり。
 巨大な魚が打ち上がることも、数十年に一度はあるものだった。

 特別だったのはそれが、妙なものだったからである。
 
 浜に落ちていたのは魚の頭だった。
 それは鰯の頭で、胴体が繋がっていた切り口のところに木の枝がぶっ刺してある。
 形としては、それがちょうど背骨代わりのようになっていた。

 浜辺でバーベキューでもした誰かの食べ残しか、それともいたずらか。
 それがたった一つ浜に落ちていたとき、誰も気にするものはいなかった。
 
 見つけた一人の老人にだけ知られる形で、この事件は始まっていた。

 そこから日に日に『枝に刺した頭』は増えていった。
 頭の種類も、最初は鰯だったものが数とともに色々増えていく。
 
 鯵、鯖、鯛。様々な頭に、それぞれ枝の背骨をつけて。
 浜辺の波打ち際に何匹もが打ち上がるようになっていた。

 そしてついに、それは訪れた。
 『枝に刺した頭』の魚は打ち上がることなく、空を泳いで陸にたどり着いたのだ。
 
 空中を浮遊する枝つきの魚頭。
 その枝には、背びれ、胸びれ、尾びれがくっついていた。

 枝背骨の魚たちは巨大な群れをなし、港へとなだれ込んできた。
 あっという間にそこで働く者たちを追い出し、我が物顔で居座った。
 
 停泊していた船ごと、港は彼らに乗っ取られてしまったのだ。

 まだ町へは乗り込んでこないが、それがいつ始まってもおかしくはない。
 
 それに、ここは港町であり、港を占拠されただけですでに町として致命的だった。
 港を取り戻す。町を取り戻す。そのためには彼らと対峙せねばならなかった。

『マップ:[[港町リーンデンヘッド]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[港町リーンデンヘッド]]

 リーンデンヘッド。
 北方にあり、雪の多い地域でもある。
 
 もう少し北へ行けば、冬のけして短くない期間、海が氷に覆われる。
 不凍港としては北端に近いような街だった。

 街の端にあるが、港はこの街の中心と言っていいだろう。
 そこには大小様々な漁船が、百隻以上は並んで係留されていた。
 
 数日かけて遠くまで漁に出かける船もあり、それなどは十人以上が乗り込むためかなりの大きさである。
 それが揃って停泊し数隻並ぶ姿は、なかなかに圧巻だった。

 海側へ突き出した防波堤には、多くの釣り人が連日並ぶという。
 夏も冬も関係ない。変わるのは釣れる魚の種類だけで、釣果は変わらず良い。
 
 漁師は船で沖へ漁に出かけ。
 それ以外の住民も、趣味で防波堤にて釣り糸を垂らすのが当たり前のことだった。

 だが、今はその港が閑散としている。
 まあ、ある意味で大賑わいとも言えるが。
 
 船は多く残されたまま、人の姿はない。
 そこにいたのは、頭だけになった魚に背骨代わりに木の枝が刺さった何かだった。

 ゆっくりと、それらは大きな群れを作って地上を泳いでいる。
 
 羽ばたいているわけでも、風に乗って滑空しているわけでもない。
 海の中でかつてそうしていたように、港の中をスイスイと泳いでいた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
頭数を揃える魚

 エラから上の部分にあたる頭部のみになった魚。
 その切り口はきれいなものではなく、千切れたように雑である。
 
 更にそこに突き刺さった枝も、適当に木から折ってきたものに見える。
 真っすぐのものばかりでもなく、途中で枝分かれしたものもあった。

 その枝の逆側には尾びれがくっついて、左右に揺れながら前に進んでいる。
 水をかくように空を泳ぎ、港のあちこちをうろついていた。
 
 その数は、今も海側からやって来ており日を追うごとに増えている。
 最初に一匹が浜に打ち上がったことから始まり、何百という数が港を埋め尽くすまでになっていた。

 これだけの数になった群れのリーダー。なのかどうかは分からない。
 彼らのほとんどはバラバラに浮遊、回遊しており。いずれか一匹がその中心にいるようには見えなかった。
 
 それでもそれは、大きく目立っていた。
 なぜなら、とても大きかったからである。

 巨大な頭。それはマグロのものだろうか。
 全身があれば何百キロという巨体で、鼻先に向けて尖った顔は銀色に輝いていた。
 
 それに刺さっているのは、枝と言うかもはや木である。
 細い丸太が背骨となって、港の地面スレスレを低空飛行していた。

  • フェイズ3
旗頭となる魚

 街に入ると、想像していた雰囲気とは違って妙にガヤガヤしていた。
 
 だがそれは盛り上がっているとか、そういう話ではなく。
 単に人が多い、ということだった。

 本来ならば港にいる人々。漁に出ていた人々。
 それらが全て街に移動してきていた。
 
 もちろん、彼らは皆街に住んでいるため、全体の数が増えたわけではない。
 だが、様々な時間帯で何かしらが動いており、常に多くの人が港か海の上にいるのだ。
 それらが全て、一人残らず街にいる。そのことで変に騒がしくなっていた。

 街と港の間には、バリケードのようなものがあった。
 交流のある村から慌ててもらってきた、獣用の電気柵らしい。
 
 あれ相手に、直接的な効果があるかどうかは分からないが。
 今のところ、街への侵攻は止められていた。

 電気柵を越えて港に入ると、世界が変わったかのように一気に静かになった。
 
 つい先日まで稼働していた、すぐにでも動き出しても不思議はない。
 その中で人の姿だけがない。その気配すらない。
 
 ゴーストタウンならぬ、ゴーストポートと化していた。

 海の近くまで歩いていく。
 潮の香り。そして生臭さはどんどんきつくなってきていた。
 
 待ち構えていたのは、マグロ頭を先頭にした魚頭たち。
 雁首揃え、彼らはこちらに向かってこようとしていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
(敵PT名)に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[港町リーンデンヘッド]]

 ゴーストポートを泳ぐ、魚頭の怪物たち。
 
 彼らは海側から来たのは確かだが、海の中から来たかはわからない。
 浜辺に打ち上げられたところから始まっており、おそらくはそうなのだろうが。
 あれらが海を泳いでいる、その姿はあまり想像できなかった。

 いずれにせよそれは、生き物ではありえない。
 魚頭の不死者である。頭と枝と、どちらが本体かは知らないが。
 
 何らかの原因で、海の中でこのようなものが生まれた。
 千切り捨てられた頭が、別の脊椎を得て別の何かに生まれ変わった。
 
 そして彼らは陸を目指した。その手始めがこの街ということだった。

 港の魚頭たちは、気がつくと増えている。そんな印象だった。
 水族館でもこれだけの数は見られない、様々な魚の見本市のようである。
 
 頭だけなので、全体の姿は想像するしかないが。
 その頭だけでも特徴が十分に出ているものも多かった。

 背骨のように刺さった木も、よく見れば色々な種類のものがあった。
 葉っぱ付きの枝の場合が一番違いが良く分かる。
 
 葉っぱの色味や形で、これはあれだと当てられるわけではないが。
 違うということだけはすぐに見て取れた。

 様々な魚の頭、様々な木の枝。あるいは幹。
 それらの組み合わせで、一つとして同じものがないぐらいの群れだった。
 
 その中でマグロ頭を筆頭とし、猛スピードで地上を泳いでいた。

 海の中と変わらない速度で、頭とヒレだけとは思えない速度で。
 空気を蹴って、ミサイルのように突っ込んできていた。
 
 だが、海の中のように泳ぐには地上はけして向いてはいない。
 広い海の中とは違い、地上には細々としたものが多かった。

 障害物が、速度を上げた彼らの邪魔をする。
 倉庫などの建物がいくつもあり、そのあたりに乗り物や道具が散乱している。
 
 それらを蹴散らし、時に激突し。
 海の上に停泊していた漁船にも、魚頭たちは突っ込んでいた。

イベントマップ『[[港町リーンデンヘッド]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

邪気の波乗る枝魚

 マグロ頭が漁船の船体に当たり大きく跳ねる。
 上に飛び、船が掲げていた『大漁旗』を巻き込み港の地面の上を転がっていた。
 
 背骨はなんとか折れずにすんだのか、フラフラと起き上がり浮かび上がる。
 その体には大漁旗が巻き付き、それに包まれる形になっていた。

 頭と尾びれ、その間を旗が包む。ちょうど枝の背骨をそれが隠していた。
 その格好でスイスイと泳ぐ。
 
 それを見ていた他の魚頭たちは、こちらへの興味は完全になくし。
 大型のものは同じく大漁旗に突っ込み、小さいものもそれぞれに干してあったタオルなどを体に巻き付けようとしていた。

 布を体に巻きつけて、それが何か彼らの意識に変化をもたらしたのか。
 一つの統一した動きをし始めていた。
 
 最初に大漁旗を巻き付けたマグロ頭がゆっくりと高度を上げ、鼻先をよそへと向ける。
 それは『東北東』の方角だった。

 東北東へ向かって泳ぎだしたマグロ頭。その速度は遅い。
 あとに続く者たちを待っているかのようだった。
 
 体に巻き付けるものを見つけたものから順に、それを追って泳いでいく。
 大漁旗やタオル以外にも、倉庫に貼ってあったポスターやカレンダー。
 
 干してあったワカメやコンブを巻いて行くものの姿もあったりした。

 巻けばなんでも良い。
 もはやそんな勢いで、魚頭たちは手当たり次第に体に薄いものを巻いて去っていく。
 
 砂浜に打ち上がった、細い枝が刺さった小さな鰯の頭。
 それを老人が見つけ、散歩中の犬が食べようとしたのを慌ててやめさせた。
 
 そこから始まった魚頭の襲来は、巻くことで終息していった。

 この街では昔から、春を前にしたこの時期に豆をぶつけ合う行事があった。
 
 しかし、ここは漁港のある魚の街である。
 『畑の肉』と呼ばれる大豆を使った祭りをするのもどうだろう。と毎年議論になっていた。
 
 そこで今年から、この行事が一新されたという。

 魚を何かで巻いたものを投げ合う。そういう行事になった。
 なお、祭りのあとは皆でその魚を食べる、というのも絶対の決め事である。

ミッション『邪気の波乗る枝魚』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『尾頭付き太巻寿司』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『大漁旗巻き柊鰯』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

花と仮面のフールズパレード

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:花と仮面のフールズパレード』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は3/27(水)~4/13(土)までです

花と仮面のフールズパレード

 芸術の都『ブラウンレイン』。
 
 様々な芸術を生み出し、育む。
 多くの芸術家が集まる場所として、その作品を目当てにする人たちも集まってきて大きな街を作っていた。

 個人の工房もたくさんあるが、巨大なホールやミュージアムなどもある。
 建物、それ自体も芸術作品だった。
 
 それらの中で最も有名なのは、歌劇場リンドスアルーアであろう。
 歴史も古く、人気の公演がいくつも行われている。
 その中でも近年で最も評価が高かったものは、『エイプリルスター』という演目だった。

 そしてこの劇場の前の大通りもまた、見どころの一つでもあった。
 街の南端ゲートから、まっすぐ歌劇場まで続く。この道と劇場を中心にして街ができた、というのが分かる作りになっていた。
 
 通称『サクラ・ストリート』。だがそれは、今だけの呼び名である。
 名の由来となる桜の街路樹が通りの両端、左右一直線に並ぶ。
 街路樹は季節季節で植え替えられ、それにあわせて呼び名も都度都度変わっていた。

 そのメインストリートを、奇妙な集団が歩いていた。
 
 人、動物、様々な種族が雑多に混ざり合っている。
 その彼らは共通点として、皆仮面をつけていた。
 
 白く塗った顔に派手なメイクを施した仮面。
 それはどれも『道化師』を模したものだった。

 道化師の仮面をつけたものたちの行進。
 最初それは歓迎された。何かのパレードだと、街の人達は勝手に誤解した。
 
 だがそのものたちは街の人々を襲い始め、街路樹や芸術作品を壊していく。
 破壊行為を続けながらたどり着いた歌劇場。その舞台を占拠したのだった。

 芸術の破壊をここで止めてほしい。そして歌劇場を取り戻してくれないか。

『マップ:[[芸術の都ブラウンレイン]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[芸術の都ブラウンレイン]]

 街全体は、特別前衛的であったり、機能性を無視した作りになっているわけではない。
 至って普通の、美しい街並みだった。
 芸術の都『ブラウンレイン』。
 
 人々の喧騒を離れ作品づくりに集中する。
 そのために、若い芸術家たちが人里離れたこの場所に工房を作ったのが始まりである。

 その噂を聞きつけた芸術家が、新たな刺激を求めて来たり。
 年寄りの芸術家がケチを付けに来てそのまま居着いたり。
 ライバル芸術家が芸術勝負を挑んできて負けてそのまま居着いたり。
 知らない間に子供が増えていたり。
 
 次第に規模は膨れ上がり、工房の数だけで町と呼べる大きさになっていた。

 そこからは、もはや段階などはなかった。
 食堂ができて、商店ができて、学校ができて。あっという間に『町』が出来上がっていた。
 
 そういったものから離れようと、ここに工房を築いたというのに。
 気がつけば、喧騒の中心に自分たちがいたのだった。

 この街自体を、巨大な芸術作品であると呼ぶ声もある。
 とはいえそれは、のちの評価でしかない。
 
 当時の芸術家たちは頭を抱えたというが。
 もう一度別の場所に工房を作るほど、その頃の彼らはすでに若くはなくなっていた。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
フールズ・サクラパレード

 『サクラ・ストリート』と呼ばれる、街のメインストリート。
 
 南北に一直線に続く大通りで、街を真っ二つに分断している。
 様々な意味でまさに街の中心であり、自然と多くの人が集まる場所でもあった。

 道の両側には、街路樹として桜の木が植えてある。
 ピンク色の花が咲き乱れ、道の上にも落ちた花びらが降り積もる。
 
 雨でも降ると、少し残念なことになったりはするのだが。
 春の陽気の中で爽やかな風が吹くと、桜の花がさっと舞い上がる。
 
 その中で『サクラ・ストリート』を歩く姿は、とても『絵』になる光景だった。

 だが、今現在、サクラストリートは荒れていた。
 ひどいパーティが夜通し行われた後の翌朝のように。

 体当たりなどで無理やり散らされた桜の花が、隙間なく大量に道上に積もっている。
 枝ごと折れているものもいくつか見られた。
 
 そして道沿いに置かれた、変わった形のオブジェや変わったポーズの銅像やらが無惨に倒されるなどしていた。

 道化師の仮面をつけた犯人たちは、このような行為を続けながら通りを北上していったと言う。
 
 この道を進んだ先、そこにあるのが歌劇場『リンドスアルーア』だった。
 歴史ある舞台、補修と改修を繰り返しながら大切に使われてきた。
 何者であれ、目的が何であれ。土足で踏み入れていい場所ではなかった。

  • フェイズ3
フールズ・エイプリルステージ

 歌劇場『リンドスアルーア』。
 
 多くの芸術家たちがこの場所に集まって工房を作り、それが次第に大きくなった。
 その過程において、一つの集大成としてこの劇場は作られた。

 建築家が建物を作り、美術家が舞台を作った。
 その頃にはすでに、芸術家ではない働き手も数多く町に来ていた。
 それには、引退した芸術家たちも含まれていた。
 
 音楽家や作家、衣装、宝飾など様々な分野の芸術家が力を合わせ。
 役者や歌手たちによって最初の歌劇が行われたのだった。

 その歌劇場は、仮面をつけたものたちによって占拠されていた。
 
 まだ、どこかが荒らされたという様子はない。
 ドアなどが多少壊されてはいたが、直せる程度のものだった。

 円形の客席と、奥には舞台。
 見上げれば、二階席、三階席と高みから舞台を囲んでいた。
 
 彼らの多くは、その舞台上にいた。
 道化師の仮面をつけたものたち。奇妙な姿形をしているが、舞台上という場所においてはあまり違和感はなかった。

 仮面をつけていたが、彼らが真に『道化師』かどうかは分からない。
 
 その仮面ですら、いかにも道化師といったものが多い中。
 道化っぽいものや、ただ仮面というだけの共通点ぐらいしかないものもいた。

 彼らは舞台に、こちらは客席に。
 だが、そこで彼らはこちらに何かを見せるということはなかった。
 
 客も同じ舞台に上がることを強要してくる。
 そして歌劇が始まる。喜劇か悲劇か惨劇か。それはまだ分からなかった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
(敵PT名)に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[芸術の都ブラウンレイン]]

 仮面造形師であるハイメン・ランダート。
 街に現れた仮面の道化たちが身につけていた仮面は、すべて彼の作品だった。

 ハイメンはこの場所に最初に工房を作ったメンバーの一人である。
 
 歌劇場の成立に尽力し、最初の歌劇にも参加した。
 だがそれを最後に彼は町を離れる。個人の工房を作り、そこで作品を作り続けた。

 歌劇場リンドスアルーア、そのこけら落としとなった公演。
 いくつかの案があり、その中から悲劇『公爵の騎士』が選ばれた。
 
 彼は仮面舞踏会を舞台にした喜劇『仮面の道化たち』を推していたという。
 それも町を離れる決断に至った理由の一つかもしれないが。
 その時にも、後にも本人が語ることはなかった。

 彼はすでに亡くなり、後継者のいなかった工房は閉鎖されている。
 作品のいくつかはこの街の美術館に飾られているが、多くは工房に遺された。
 
 彼が遺した大量の道化師の仮面。そしてそれ以外の仮面。
 それらで顔を隠し、彼らは暴れていた。

 白塗りの顔に、口ひげと顎ひげが描かれている。
 目と唇は赤で縁取られ、その表情は大きく笑っていた。
 
 仮面にひびが入る。それでも表情は変わらない。
 笑ったまま、道化の仮面は割れて地面に落ちた。

 あらわになったのは、なんてことはない普通の男の顔だった。
 目を閉じ、表情はない。その目を開くことのないまま、その場に崩れ落ちた。
 
 同じように仮面を失ったものが、順に意識を失っていく。
 彼らは仮面が支配する器だった。

 ガコン、と勢いよく客席の向こうの両開きの扉が開く。
 エントランスから続く入口、そこから劇場に多くの人がなだれ込んでくる。
 
 それは、美術品だった刀剣を持ち鎧を着込んだ住人たちだった。

 そこからはもう、喜劇そのものだった。
 
 住人たちは美術品として飾られていた、やたら派手な武器を振り回し。
 仮面の道化たちは、それをひょいひょいと躱しながら逃げ回っていた。

 猿が幕にぶら下がり、猫がスピーカーの中に入り込む。
 誰かが装置を動かし、ワニが舞台下からせり上がったり下がったりしていた。
 
 舞台の上でも下でも、この追いかけっこは延々と続いていた。

イベントマップ『[[芸術の都ブラウンレイン]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

花と仮面のフールズパレード

 気を失い倒れたものは、住人の誰かが数人がかりで運び出していく。
 大型の獣などは、数十人がかりとなっていた。
 
 収集のつかない状況の中。そうこうしているうちに。
 最初に(PC名)たちがこの舞台に上がり、2時間と少しが経過していた。

 何の前触れもなく、すべての仮面が剥がれ落ちた。
 時間切れ、とでも言わんばかりに。それは唐突な閉幕だった。
 
 仮面を失ったものが次々と倒れ、舞台や客席に身を投げ出す。
 演者は美術品で身を固めた住民だけになっていた。

 致命的な破壊は免れたものの、あちこち壊れた歌劇場。
 舞台には穴が空き、客席は引っこ抜かれて投げられて。
 
 暴れまわった住民たちが、直接壊したものも数多くあった。

 すぐさま、歌劇場を初めとした街中の修復工事が始まった。
 
 壊された南門から、サクラストリートを経て歌劇場まで。
 驚くべきことに、これらの修復を彼ら芸術家たちは3日で終わらせたのだった。
 
 この件に『仮面の道化師』として関わった人々、ごっそり記憶がないらしいが。
 修復作業には、彼らの働きが大きかったということである。

 散ってしまった桜の木は取り除かれ、郊外の植物園へと植え替えられた。
 また来年、美しい花を咲かせてもらうために。
 そこで、今回の傷も含めてのメンテナンスを受けるのである。
 
 大通りにあった全体の半分ほどが植え替えられ、そこには隙間ができた。
 その隙間は隙間のままにはされず、代わりの木が植物園から運ばれてきた。

 ガーデナーや華道家が中心となり、選ばれたのはハナミズキだった。
 
 だがまだ時期としては少し早いようで、花は咲いていないものが多い。
 それでも蕾は多くできており、すぐにでも白やピンクの花をつけそうだった。

 通りには桜の木だけでなく、様々なオブジェがあった。
 曲がったり折れたりしてしまっているそれらの修復は、作者自らが行った。
 
 元に戻すということはなく。破壊を経ての新たな姿へと、作品は進化していた。

 普段から劇場に寝泊まりしている劇作家、クレマチウス・ロンドゴリア。
 彼は3階VIP席からすべてを見ていたらしく、この後、新たな脚本を書き下ろした。
 
 タイトルは『道化は踊る』。
 開幕から2時間13分、舞台上のものを壊しまくるアヴァンギャルドな舞台だった。

 評価は上々だったらしいが、費用がかかりすぎると。
 以降は一度も再演されることはなかったという。
 
 芸術の都『ブラウンレイン』。そこでは今も、新たな芸術が生まれ続けていた。

ミッション『花と仮面のフールズパレード』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『大嘘フェイクフード』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『『仮面の道化たち』の主役仮面』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

最強を目指して走れ

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:最強を目指して走れ』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は5/22(水)~6/8(土)までです

最強を目指して走れ

 美しい毛並みの馬たちが駆け抜けていく。
 漆黒、黄金、白銀。金属のような光沢を持ち、風に流れながら輝いていた。

 馬たちと同様に美しい緑色の芝生の上を、10数頭ほどの集団で走っている。
 その背中には人を乗せていた。
 
 人を乗せて走る馬たち。彼らはレースをしていた。
 一周2キロの楕円形のコースを、全力で走りながら馬体を合わせて鎬を削る。
 馬と人による速さを決める戦い。それがこの街で行われるレースだった。

 だが、このレースは一年に一度、この日のこの一度にしか行われない。
 これはいわばセレモニーであり、かつて行われていた姿を再現したものだった。
 
 馬に人がまたがり、スピードを競う。その形で始まったが、今は違う。
 そのかつての形を思い返し、語り継ぐための記念レースだった。

 ここから発展した『今』の形。
 それは、走るのが半身半馬のケンタウロスというところだった。
 
 四脚の馬の下半身を持ち、人の上半身を持つ種族。
 彼らが馬に取って代わり、ジョッキーを背に乗せて競技場を走っていた。

 セレモニーが行われた記念すべきこの日。
 いくつかケンタウロス達によるレースが行われ、その終幕となるメインレース。
 
 それは『ケンタウロス・ダービー』と呼ばれる、最強を決める戦いだった。

 だが『ケンタウロス・ダービー』はその日、行われることはなかった。
 出走するはずだった、最強候補の精鋭ケンタウロスたちの姿がなかったのだ。
 
 競争は不成立となり、レースは延期となった。そしてエキシビションとして。
 同じく出場するはずだったジョッキーたちによる2400メートル走が行われた。
 
 あまり盛り上がらなかった。

 彼らに何があったのか。
 
 延期された『ケンタウロス・ダービー』を、今度こそ無事開催するするため。
 そして何より彼らの安全のためにも。
 
 ケンタウロスたちの捜索に力を貸してくれないだろうか。

『マップ:[[古代競馬場グレートオーバル]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[古代競馬場グレートオーバル]]

 古代競馬場。
 現代と比較する形でそう呼ばれるが、いうほど古いものではない。
 
 かつて馬が競走をしていた。そんな時代の遺跡である。

 とある国の、貴族たちの保養地としてこの場所は生まれた。
 別荘が立ち並び、様々な娯楽施設が生まれ。その中の1つがこの競馬場だった。
 
 ここで走る馬たちは全て、その貴族たちの持ち物である。
 それぞれがご自慢の愛馬を走らせ競う。それは代理戦争でもあった。

 プライドを賭け、金を賭け、土地を賭け、愛を賭け、命を賭け。
 彼らはそれらを馬に託して走らせていた。
 
 その勝負を見物するのも、別荘を持つ貴族たちの娯楽の1つとなる。
 直接的な勝ち負けだけでなく、見物人たちがその勝負に賭け事を始める。
 金と時間を余らせた彼らが、そうなっていくのに時間はかからなかった。

 商人など貴族以外も関わるようになり、次第に商業化して行く。
 大衆化し、スポーツ化し、その中でルールも整備されていった。
 
 今の形へと繋がっていく。その歴史が詰まった場所がここだった。

 『ケンタウロス・ダービー』が最初に行われたのは今の競馬場になってからだが。
 初めてケンタウロスが走ったのはこの競馬場である。
 
 伝説のケンタウロス、カルサス・ケンタウロス。
 『馬』として出走し、物議を醸し、その速さで全てをねじ伏せた。
 
 その伝説の始まりもまた、この場所だった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
競馬場のある暮らし

 街は2つの区画に、完全に分けることができる。

 1つはこの街の住人たちが暮らす、まさに『街』としての機能を持った部分。
 多くの人がいるにはいるが、比較的静かな場所である。
 
 人々が落ち着いて暮らしている。
 どこか浮ついているかもしれないが、それはうまく隠されていた。

 そしてその街から少しだけ離れた場所に、もう1つの区画があった。
 
 ケンタウロスたちが脚を競い、人々がその勝敗に金を賭ける。
 『競馬場』と呼ばれる、楕円形のトラックを中心とした巨大な施設だった。

 離れていると言っても、入口のゲートがやや遠くにあるだけである。
 土地としては隣接しており、それも歩いて数分でたどり着く。
 
 街と分けるため、わざわざそういう設計にされていた。

 街と競馬場との間には、背の高い横長の建物が壁として立っている。
 それも『区画分け』の役目を持つが、その建物自体には普通の人は入れない。
 
 特別な人達だけが使える特別な部屋、いわゆるVIPルームのある建物である。
 なお、そこには街から直接入ることができる。特別な人は遠回りしないのだ。

 『ケンタウロス・ダービー』が行われるはずだったその日、街からは多くの人が消えた。
 普段はそれほどでもないのだが、その日だけは特別なのだ。
 
 ケンタウロス券を握りしめ、朝のセレモニーから一日ケンタウロスレースに興じる。
 掛け金が少額でも関係ない。これは彼らにとって、お祭りのようなものだった。

 だが、ケンタウロスダービーは開催されなかった。
 騎手たちによる徒競走には笑いはなく、激しいブーイングに包まれる。
 
 出走予定だった20頭のケンタウロスたち。彼らの姿はここにはなく、『古代競馬場』にあった。

  • フェイズ3
脚を賭けた戦い

 夕刻。沈みかけた太陽が、古代競馬場を真っ赤に染め上げる。
 風も日中よりも強くなり、伸びすぎた芝を大きく揺らしていた。

 古代競馬場。そこは街や競馬場とはかなり離れた場所にある。
 貴族たちの別荘地がこのあたりにあり、それ故に街は遠ざけられた。
 
 だが、時が経って貴族たちの衰退により、古代競馬場も廃れていく。
 その中で街はすぐ隣に新たな競馬場を作り、『競馬』は引き継がれたのだった。

 その後、馬がケンタウロスに変わっていくわけである。
 
 だからこの古代競馬場でケンタウロスは走ってはいない。
 『馬』として走ったものはいるが、ケンタウロスとしてはいないのだ。
 
 彼ら若いケンタウロスたちにとっては、初めて訪れたものばかりだった。

 石造りのスタンドが影を作る。その中に、彼らの姿はあった。
 
 ケンタウロス村への聞き込みで、彼らは確かにレースに間に合うように出発していた。
 だが彼らが向かったのは、この古代競馬場だという。
 場所を知らない彼らに聞かれた、という老ケンタウロスの証言だった。

 そしてそこにいたのは、ケンタウロスたちだけではなかった。
 ダートコースの砂の上で、走りにくそうに何度も足踏みしている彼らの前に。
 
 多種多様な脚自慢の猛者たちが、ずらりと揃って待ち構えていた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
最速を求めるものに遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[古代競馬場グレートオーバル]]

 自らの脚に絶対の自信を持つものたち。
 彼らはケンタウロスたちを騙し、この場所に呼び寄せていた。
 
 今年の『ケンタウロス・ダービー』は、特別にこの古代競馬場で行われる。
 そう言ってケンタウロスたち自らの脚で、ここに集合させていた。

 古代競馬場の、砂のレースコースを走り回る。
 彼らは戦うとか何だとか以前に、とにかく脚を見せようとしていた。
 
 集まった彼らとて、本当の意味で仲間ではない。
 全員が全員自分が一番速いと思っている、ライバル関係でもあった。

 彼らの目的。それは純粋に『スピード勝負』を挑むこと。
 そしてその勝負に勝ち、ケンタウロスたちの立場を奪うことだった。
 
 世界最速を勝手に名乗るなど許さない。
 ケンタウロスたち自身がそんな事は言ってなかったとしても。
 
 そう思われている。そう思わせているレースの存在。
 『ケンタウロス・ダービー』を自分たちのものとするために集まったのだった。

 手段は選ばず、といった輩はあらかた片付けた。
 残りはケンタウロスたちが、その速さでねじ伏せる番だった。
 
 だが、普段は芝生の上で走るケンタウロスたちは砂のコースに苦戦していた。
 それでもすぐに慣れ、集まったものたちと遜色ない走りを見せる。
 
 そしてその差は時間ごとに開いていった。砂であってもケンタウロスは速かった。

 脱落し、ケンタウロスに負けた彼らが次々と砂に沈んでいく。
 脚を削られスタミナを削られ心を削られ、負けを認めるしかなくなっていた。
 
 ここに来るまでに高まりきっていた自信は、完全に崩れ去っていた。

イベントマップ『[[古代競馬場グレートオーバル]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

最強を目指して走れ

 最も歴史が古く、最も有名で、最も偉大な。
 そして、なにより最も賞金が高い。
 
 それがこのレース、『ケンタウロス・ダービー』だった。

 20頭のケンタウロスが一頭を除いて一斉にスタートを切り、ゲートを飛び出す。
 7番のルシオンス・ケンタウロスが出遅れるが、それはいつものことだった。
 
 我先に、とゴールを目指して。栄光を目指して駆け抜けていく。
 美しい新緑の芝生が敷き詰められた地面を、蹄鉄をつけた4本の脚がえぐり取る。
 通り抜けた後の芝生は、戦のあとのようにボロボロになっていた。

 半人半馬のケンタウロス種族。
 
 鞍を乗せた背中にジョッキーと呼ばれる人がまたがり、ともに走る。
 その姿は、馬の下半身から胴体が二本、上下に並んで生えているみたいだった。

 馬と違い、ケンタウロスは操縦する必要はない。
 彼らは自分自身で、ペース配分もコース選択も行うのだ。
 
 ジョッキーの役割は、情報を伝えることだった。
 周囲の状況の変化を伝え、走りの異常やペースに狂いが生じれば指摘する。
 何より熱くなりやすい彼らをなだめすかすのが、主たる仕事の一つだった。

 ただ背中に乗っかっているだけでは、ジョッキーは『重し』でしかない。
 背にいながらいかに邪魔をせず、足枷とならないか。それが求められる技量だった。
 
 それを究極的になした時、二人は人半人半馬一体となる。
 もはやどういう状態になっているのか分からないが、それが目指す理想形だった。

 楕円形のコースをぐるりと一周して、最後の直線。
 逃げていたケンタウロスがペースを落とし、中団にいた者たちが追い上げる。
 集団最後尾のグループも諦めたわけではない。溜めていた力を全力開放していた。
 
 一頭ずつ脱落していく。優勝を諦めたものから順に。
 そして、先頭のケンタウロスがゴールした瞬間。大量の紙束が、競馬場を舞っていた。

 『ケンタウロス・ダービー』が終わり、この日が終わる。
 通常であればそうだったが、今年は違う。もう1レース残されていた。
 
 本日の最終レース。異種競走戦、『エクストリーム・オープンクラス』。
 速ければ誰でも出られる、初開催の特別レースだった。

 人が走り、馬が走り、車が走り、鳥が飛び、魚が泳ぎ、蛙が跳ねる。
 まだ何のルールも整備されていない。原始的な、ただのかけっこだった。
 
 それにも大歓声が送られる。ダービーにも負けないぐらいの。
 降り注ぐ声の中、いずれ語られる伝説の始まりとなるレース、なのかもしれなかった。

ミッション『最強を目指して走れ』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『半ジャガ半ニンジン』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

イベント挑戦ボーナス
(PC名)はコスチューム『ケンタウロス』が修得可能になった

夏を奪うものたち

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:夏を奪うものたち』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は7/24(水)~8/10(土)までです

夏を奪うものたち

 夏の海。
 砂浜と、そこから続く遠浅の海に多くの人が集まっている。
 
 美しい海水浴場である。この人々の中心に夏があった。

 砂浜ではビーチボールで遊んだり、パラソルの下で寝転んでいたり。
 一方海ではドーナツ型や動物を模した浮き輪が浮かび、人々がその上に乗ったり掴まったりしていた。
 
 海は穏やかで、波もほとんどない。
 砂浜はかなりの暑さだが、海からの風さえあれば意外と涼しく過ごせた。

 歓声やら奇声やら、ずっと何かしらの叫び声は聞こえていたのだが。
 その時響き渡ったのは悲鳴だった。
 
 悲鳴ではあったが、助けを呼ぶ声ではない。
 むしろその助けを拒む、こっちへ来るなという種類の悲鳴だった。

 海の中で事件は起こっていた。
 
 泳いでいた人たちの水着、それのみが綺麗サッパリ消えていたのだ。
 そして起こった悲鳴が、近づくものを拒否する叫びだった。

 『大量同時水着盗難事件』。
 
 対象は老若男女関係なかった。
 強い波に流されたわけではない。それにしては範囲が広く、根こそぎすぎた。
 
 傷も証拠も残さず、水着だけが盗まれていた。

 ライフセーバーたちにより大量のタオルが投げ込まれ、その場はなんとか収まった。
 やむを得ず海に飛び込んだ、その彼らの水着も盗まれてしまったが。
 
 それでも彼らは立派に役目を果たして全員を救助し、海水浴場は遊泳禁止となった。

 犯人の正体は分からない。
 だが、この海には何かがいる。それは誰しもが感じていた。
 
 サメが出たときのような厳戒態勢で閉じられた海。
 バケーションを楽しむ彼らの手に取り戻すべく、力を貸してほしい。

『マップ:[[海水浴場カプランカ・ビーチ]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
[[海水浴場カプランカ・ビーチ]]

 ここから北方にある裕福な都市『ボルカエルスト』の避暑地として発展した街。
 その南端にあるのがこの海水浴場。カプランカ・ビーチだった。

 砂浜の長さは東西3キロに及ぶ。
 
 海を背にした向こう側には街が広がっているが、その姿はこちらからは見えない。
 風を受け止めるために植えられた松林によって視界が遮られていた。
 
 松の木々の隙間から街と砂浜は自由に行き来できるが。
 その壁によって、視覚的にも意識的にも両者は区分けされていた。

 砂浜を歩くと、そこら中に波に打ち上げられた貝殻が落ちている。
 海から離れれば離れるほど、割れて砕けて小さな破片になってはいるが。
 半分ほどまで近づいたあたりからは、裸足で歩くのは少し難しかった。
 
 松林の前に等間隔で並んだ海の家には、どこもビーチサンダルが売っている。
 かなり大きなスペースが取られ、売れ行きは好調のようだった。

 だが今は、その海の家にも砂浜にも人の姿は少ない。
 バカンスを楽しんでいたものの大半は松林の向こうへと引き上げ、ホテルや別荘でプールを代わりに使っていた。
 
 いるのは見守る海の家の住人と、幾人かの野次馬。
 そして、ビーチを守るライフガードたちだった。

 見た目には、海の様子は平和だった以前と変わらない。
 沖に砂浜と平行に並べられた波消しブロックの影響で、常に静かで大人しかった。
 
 この中に、何かが潜んでいるなどと言われても。
 照りつける太陽の暑さに、今にも飛び込んでしまいたかった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
持って行かれたもの

 その日、海の中にいたすべての人の水着が奪われた。
 
 多くの悲鳴はほとんど同時に響いた。
 それはあくまで、盗難に気づいた瞬間ではあるが。
 ものを考えれば、盗まれた瞬間とそう大した時間差はないだろう。

 手練れの変態が現れた。そう皆が思った。
 だが違っていた。いや、変態は変態なのかもしれないが。
 
 ビーチは東西3キロに及ぶ。そこにいた人は100や200ではない。
 それをごく短時間のうちに同時に、というのは神業といえた。

 一人二人でやれることではないし、そもそも人の手で可能な芸当でもない。
 犯人は人ではない。そして単体でもない。
 
 海の中にいた様々な海産物が、水着を持っていっていたのだ。

 盗まれたのは水着だけだが、なくなったのは他にもあった。
 海に浮いていた浮き輪やビーチボールなど、回収されなかったものも消えていた。
 
 単に流されただけなら、波消しブロックに引っかるものがほとんどだろう。
 だがただの1つも引っかからず、そしてその沖にも漂う姿は確認されていない。

 当時、海の中にいた人。その『人』以外のものが全て。
 海の中に消えてしまっていた。

  • フェイズ3
海パンおとり大作戦

 裏地に鉄の鎖を縫い込んだ『鎖帷子海パン』をはいたライフガード。
 
 命綱を腰に巻き付け、その反対側を仲間たちがしっかりと握る。
 彼らとアイコンタクトで会話して、男は海に向かって走り出した。

 バシャバシャと大げさに水を蹴って波を横切り、海へと入っていく。
 そして海面が膝を超えたところで、頭から海中へと飛び込んでいた。
 
 ピンと張る命綱。ライフガードの彼が沖へと泳いでいく。
 当たりが来るのを待ちながら、エサは水中を彷徨っていた。

 程なくして、それはやって来た。
 ぐん、と命綱に当たりが入る。それはエサの合図か、あるいは引きずり込まれたか。
 
 いずれにせよそれは、釣り上げのタイミングだった。

 地上のライフガードたちの手により、一気に命綱が引かれる。
 ゆっくりと手繰り寄せるといったものではない。
 命綱の先にくくりつけられている男の体は、勢いよく空中へと飛び出していた。
 
 ちょっとやりすぎた、と皆が思っている中。
 空へと投げ出された男の体に、それが食いついているのを皆が目撃していた。

 『鎖帷子海パン』に牙をつきたて、小型のサメが甘噛みで食いついていた。
 
 一瞬のうちに噛みちぎれると思ったのだろう。
 だが、それはできなかった。なぜならそれは『鎖帷子海パン』だったからである。
 
 布の部分は切り裂かれていたが、鎖はそのまま残されていた。

 砂浜に落ちるライフガードの男とサメ。
 その衝撃で二人は分離し、サメはすぐさま波打ち際まで跳ねて戻っていた。
 
 だが、海の中には戻らない。打ち寄せる波を被りながら、こちらを睨みつけていた。

 そしてその背後には、いつの間にか他の海産物も姿を見せている。
 波打ち際にずらりと並び、集まったライフガードたちの水着を凝視していた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
ビーチの夏泥棒に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
[[海水浴場カプランカ・ビーチ]]

 クラゲがライフガードの男に絡みつき、それを慌てて引き剥がす。
 その一瞬で、触手の跡の部分の水着が溶けてなくなっていた。
 
 『鎖帷子海パン』をはいていたので、裏地に縫い込んだ鎖は残る。
 ヌーディストビーチになることは避けられたものの。
 なんともアヴァンギャルドな水着に仕上がっていた。

 波打ち際、そして砂浜の1,2メートル範囲ぐらいまでしか彼らは出てこない。
 その辺りまでは攻撃性を見せるが、基本的には待ちの姿勢を崩さなかった。
 
 自分たちが有利に戦える場所を選んでいるだけか。
 あるいは外にまで水着を狙って来る意志はないのか。
 
 その大半が海中にいる彼らを、砂浜に引きずり出すことは難しそうだった。

 『鎖帷子海パン』のライフガードたちが海の中にまで果敢に攻め込む。
 水着を犠牲にしながら、魚類貝類海藻類などを駆逐するものの。
 
 現状では、完全に多勢に無勢といった感じだった。

 だが、これは全て作戦だった。
 こちらに注意を向け、この近くに集めとどめておくための。
 
 本命はここではなく、沖にあった。
 砂浜からは離れた沖の海中に広げられた網が、ゆっくりとこちらに近づいている。
 海底から海面までの広い範囲を、一気に手中に収めようとしていた。

 東西3キロに及ぶ砂浜の、東端にある崖から船を出し。
 気づかれないように、沖に西端まで網を仕込んでいたのだ。
 
 沖まで続く砂地の海底に岩礁はなく、邪魔になるのは波消しブロックぐらい。
 それを避けて網を広げれば、一網打尽にできるというものだった。

 そのために、ライフガードたちはビーチで派手に動いていた。
 背後に迫る網から注意をそらし、彼らを砂浜の近くに集めておく。
 
 海中からまとめて引きずり出すための、『海パンおとり地引き網大作戦』だった。

イベントマップ『[[海水浴場カプランカ・ビーチ]]』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

夏を奪うものたち

 砂地の海底を、ずるずると網が引きずられて動く。
 ゆっくりと、海中の包囲網は縮まっていた。

 このために、急遽編み上げられた網。
 3キロの砂浜をカバーできる長さで、さらに素材は鉄の鎖で作られていた。
 
 『超巨大地引き鉄鎖網』。
 大きさと素材が乗算となり、それはとんでもない重さになっていた。

 それは地引き網であり、地上において引き手の存在が不可欠である。
 
 長い砂浜の両端、あまりに遠くてお互いの姿は全く見えないが。
 時間だけを合わせて互いを信じ、3キロもの距離のある二箇所で網引きを開始していた。
 
 引いているのはライフガードの一部と、海の家の従業員たちだった。
 海を取り戻す。夏を取り戻す。売上を取り戻す。その思いは一致していた。

 鉄の鎖の網、それそのものの重さに加え水の抵抗があり。
 途中からはさらに、網に引っかかったものの重さも乗っかってきていた。
 
 増える重さは、目的の達成に近づく感触でもある。
 海の家の者たちの汗の量も増えたが、腕にのしかかる重さにむしろパワーはみなぎってきていた。

 網を引き続け、その端っこがついに砂浜の上に出てきた。
 これで、3キロの砂浜と海とをこの地引き網で完全に囲ったことになる。
 
 逃げ道はもはやない。後はひたすら引き続けるだけだった。

 そこからは、おとり役をやっていたライフガードたちも引き手に加わっていた。
 そして、おーえす、おーえすと大きく掛け声を上げながら引いていく。
 
 その声を聞いた、松林の向こうの街に引っ込んでいた者たちも戻り。
 もはやお祭りのような盛り上がり方で、地引き網が行われていた。

 砂浜の両端から、網を引きながら中央へと移動していく。
 互いが1.5キロずつ歩いてきて、ついに感動の再開を果たしていた。
 
 そして最後の一引き。鉄の鎖の網がすべて砂浜に上がり、その中には大量の海産物がピチピチしていた。

 網の中には失われた水着や浮き輪、ビーチボールなどはなかった。
 その破片のようなものも一切見つからない。完全になくなっていた。
 
 犯人たちを根こそぎすくい取るため、網の目を細かくして作った今回の地引き網。
 それに掛からなかった。少なくともその大きさのものはないということだった。

 彼ら、そのうちのいずれかが分解してしまったのか。
 とはいえそのことについて気にしているものは、ここにはいなさそうだった。
 
 網に掛かった海産物に群がる人々。どこからともなく用意されるバーベキューセット。
 3キロ分の地引き網で捕れたものは、ビーチ再開の前祝いとなりそうだった。

 後日、多くの海の家で『鎖帷子水着』が売り出された。
 もはや必要のない海にはなったのだが、結構な人気だったようである。
 
 だが、その重量はなかなかのものであり。
 鎖帷子水着で海に入らないようにと叫ぶ、ライフガードの声がちょくちょく響いていた。

ミッション『夏を奪うものたち』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『鎖衣コーンドッグ』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『『鎖帷子海パン』の残骸』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

明けない夜長の双子月

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
イベントスタート
『時限ミッション:明けない夜長の双子月』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は9/25(水)~10/12(土)までです

明けない夜長の双子月

 ある夜を境に、その地方では『夜』が明けなくなった。
 
 沈んだ太陽は再び夜空を照らすことなく。
 空には常に、月と星だけが輝いていた。

 もう何日経ったかもよく分からないが。
 太陽が沈んで、月が昇り、それからずっと夜が続いている。
 
 月がぐるぐると巡るだけで、一度も太陽が戻ってきてはいない。
 一晩かけて空をまたいだ月は西の空に沈み、同時に東の空に再び昇るのも月だった。
 
 同じ月なのか、2つ存在するのか。それすらも分からなかった。

 夜が明けないからと言って、時間が止まっているわけではない。
 月と星は空を動き続け、何度も隠れては姿を見せを繰り返している。
 
 その繰り返しの中で、月だけが日ごとに大きくなっていっていた。

 欠けた月が満ちていく、という意味ではない。
 
 太陽が沈んだ後に昇ったのは、きれいな真円の満月だった。
 それが一回り二回りと、沈み昇るたびに欠けることなく巨大化していた。

 近づいてきている、ということなのか。
 まっすぐ落ちてきているわけではないが、恐怖感は十分にあった。
 
 太陽ほどの明るさではないにせよ。
 それはもう、地上を煌々と照らす存在にはなっていた。

 長すぎる夜。そして大きくなっていく月。
 その中で、地上にも異変は広がっていた。
 
 太陽の下で生きてきた者たち。闇の中で生きてきた者たち。
 棲み分けがされていたものたちの、その垣根が崩れてしまっていた。

 太陽の再登場を待てず、闇の中を動き出した者たち。
 いつまでも続く夜に、完全に寝不足に陥った者たち。
 
 生活リズムを狂わされたものたちが草原に溢れ、暴れ始めていた。

 この場所に秩序をもたらすもの。
 まさに『太陽』と言えるものの到来を人々は待っていた。

『マップ:[[長月夜の狂宴草原]]』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
長月夜の狂宴草原

 太陽の姿はない。
 
 いつからいないのか、このあたりの人に聞いてみたのだが。
 数ヶ月と言ったり数週間と言ったり数日と言ったり。
 人によってまちまちで、時間感覚はかなり狂っているようだった。

 月が延々と周回している。
 1つ目の月が沈み、本来太陽が昇るタイミングでまた月が昇ってくる。
 
 瞬間移動でもなければ、2つ目の月が太陽の代わりということになる。
 太陽が月に姿を変えた、と言ってもいい。
 
 二つの月が互いを追い続け、夜の世界が終わらない羽目になってしまっていた。

 長い長い月夜は、この草原をあらゆる意味で狂わせていた。
 
 昼を生きてきたものたちは、いつまでも昇らない太陽にしびれを切らし。
 飢えた目を赤く滾らせながら夜の活動を始めた。
 
 夜を生きてきたものたちは、いつまでも沈まない月に怒りを覚え。
 眠い目を赤く血走らせながら夜の活動を続けた。

 今、この草原は昼とも夜とも言えない状態にある。
 それは単純な明るさについても、そのようになっていた。
 
 沈まないだけでなく、周回ごとに巨大化していく月。
 それがもたらす光は、夜というにはあまり明るすぎるものだった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
昼を生きるもの

 この草原で、昼を生きてきたものたち。
 彼らはその夜、朝を待っていた。
 
 厳密には、別に今か今かと待っていたわけでもないが。
 太陽の登場を待って活動を開始するのが、彼らの日常だった。

 とっくに夜が明けても良い時間に未だ闇が広がり、空には月が見えていた。
 それでも彼らには待つしかない。
 
 二度寝、三度寝、四度寝。
 それが何度目の睡眠なのか、そして何時間寝ていたのかすら分からない。
 寝ても寝ても、寝ても覚めても、一向に太陽は昇らなかった。

 そのまま冬眠のように眠り続けるものもいたが。多くは限界が来た。
 飢えと、そして退屈と。それらが彼らに、『夜』への一歩を踏み出させた。
 
 その頃にはもう、月は最初の倍ぐらいの大きさになっていた。

 小さな雲程度では、その姿を隠すことはできない。
 輪郭を隠せるぐらいの雲ができても、その光は雲を貫き地上に降り注いでいた。
 
 それは彼らに力を与える。月の光の力、それだけではない。
 闇を照らす明かるさこそ、何より大きな勇気となっていた。

 昼でも夜でもない世界に出ていく。
 狂気の世界に、勇気という狂気を纏って。
 
 彼らもとうに、限界は超えていたのだ。


  • フェイズ3
夜を生きるもの

 草原で暮らす民、クジルファ。
 彼らは『夜狩り』で名を馳せた狩猟民である。
 
 夜の闇の中で、獣よりも静かに、獣よりも速く、獣よりも鋭敏に。
 そうやって狩りを行い日々の糧としていた。

 彼らの村は少し離れた場所にあるが、草原に一時的な集落を作っていた。
 狩猟期はそこで暮らし、『夜狩り』を行うのだ。
 
 この集落は、昼の時間帯に安全に体を休めるための場所だった。

 そんな彼らもこの終わらない夜に、終わらない狩りを続けていた。
 朝日を拝むまでは終われない。そんな呪いとともに行われる『夜狩り』は成果を上げ続けたが、犠牲も出し続けた。
 
 眠気と疲労に倒れていく狩人たち。
 残った者たちは皆、限界ギリギリのバッキバキの目をしていた。

 彼らの集落を取り囲む群れ。
 そこには、昼を生きるものも夜を生きるものも入り交ざっていた。
 
 『夜狩り』で培った腕も、まともに使えるものは殆ど残っていない。
 異常な興奮状態にはあったが、それは感覚を研ぎ澄ますものではなかった。

 巨大な月が照らし出す草原。
 狂気が渦を巻き、誰も彼もがまともな目つきをしていない。
 
 彼らを救うには、それらを追い払うしかなかった。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
昼と夜の怪物に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
長月夜の狂宴草原

 西の空に浮かぶ月。
 それが本来夜空に浮かんでいた月なのか、太陽の代わりに昇るようになった月なのか。
 
 ウサギだったり蟹だったりワニだったり老婆だったり、様々に見える模様があるが。
 見るたび模様が違うようにも思え、同時に見えない以上は比較は難しかった。

 『夜狩り』の民、クジルファ。
 これまでも、もちろん彼らも反撃を食らうことはあった。
 
 夜の闇に紛れた奇襲を主とするスタイルでも、相手もまた夜を生きるもの同士。
 ある程度の犠牲は支払うが、それ以上の報酬を得るのが彼らだった。

 今はその報酬を大きく上回る犠牲を払いながら、彼らの集落に追い詰められていた。
 倒れたものの多くは睡眠不足と疲労によるガス欠ではあるが。
 
 この状況で取り囲まれた敵たちに狩られれば、それらも全て同じ末路だった。

 草原に作られた、彼らの一時的な集落。
 少し丈夫に作られたテントのような家が並び、中では倒れた者たちが眠っている。
 
 オオカミのようなサイズと顔つきの犬が数匹、各テントの脇にいたが。
 すべて腹ばいに、自らの腕を枕に眠っていた。

 この集落は彼らにとって、狩りの期間の前線基地のようなものだった。
 だが今は、ここから少し離れた場所にある村を守るための最終防衛基地となっている。
 
 別に今ここを取り囲んでいるものたちに、復讐のような気持ちはないだろう。
 ただ、昼も夜もなくなった狂った世界で暴れているだけだ。
 それでもここが防波堤となるのは変わらない。『夜狩り』の民として、何かが彼らを動かしていた。

 月が沈む。そして反対側の空に、次の月が昇り始める。
 その間、数分間だけの月のない夜が訪れようとしていた。
 
 二つの月が同時に空に浮かぶことはない。
 一つが消え、一つが姿を見せる。そこには、少しの時間があった。

 地平線から漏れる月光や星の光もあるため、真っ暗闇というわけではないが。
 巨大になった月がもたらす明るさに比べれば、ギャップもあって充分な暗さがある。
 
 それは本当の『夜』と言える時間だった。

イベントマップ『長月夜の狂宴草原』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

明けない夜長の双子月

 こちらを覗き込む目のように、空に大きな月が輝いている。
 それが沈む。監視の目が、地上から消えようとしていた。

 彼らクジルファが伝える神話にこのようなものがある。
 伝説の族長ロンガファが、15日間続いた『夜』を一人で戦い続けた話である。
 
 槍を突き、弓を撃ち、罠を仕掛け、釣り糸を垂らし、犬を放った。
 月が輝く15もの夜で様々な狩りを行い、『夜狩りのクジルファ』の名を世に知らしめた。

「全員目を覚ませえぇぇ!!!!」
 馬に跨った族長が叫び、隣りにいた彼の若い妹がフライパンを打ち鳴らす。
 鉄のフライパンに叩きつけられた鉄のお玉が、強烈な金属音を響かせていた。
 
 まず犬たちが起き上がり、フラフラとした足取りで歩き出す。
 一歩、二歩、三歩と歩くうちにすぐに地に足をつけ、顔つきも鋭いものに変わっていた。

 そしてテントからも、ぞろぞろとゾンビの群れのように人々が起き出してくる。
 彼らは犬たちよりも時間はかかったが、一般的な寝起きと比べれば遥かに機敏に動き。
 
 武器を持って、再び狩りの群れに加わっていた。

「行くぞぉ!」
 族長の叫びが、月のない夜に響く。
 
 ここまで戦ってきた者たちはもう一度、自身に鞭を入れ。
 倒れていた者たちは、たっぷり休養を取ったとは言い難いが、短い時間を戦うエネルギーは再充填されていた。

 十五の夜を戦い抜いた族長ロンガファの伝説。
 そして今日は、太陽が隠れ、月が昇り続けるようになってちょうど十五日目の夜だった。
 
 そこが反撃のタイミングとなったのは偶然である。
 彼らが意図したものではない。相手に合わせたもので、彼らが決めたのは月が消える瞬間に始めることだけだった。

 十五日目。その夜の月が地平線から昇り始める。
 月のない夜に始めた反撃は、(PC名)の手も借り戦線を一気に押し戻した。
 
 彼らは最後の力を振り絞った。
 それが最後の『夜』などと、誰が言ったわけでもない。そうと決まったわけでもない。
 それでも彼らはカッラポになるまで、十五日目の夜を狩り抜いた。

 夜が終わり、朝が来る。
 朝が来たのだ。東の空に昇ったのは、さらに巨大になった月ではなく太陽だった。
 
 あまりにも眩しい朝日に草原が染まる。
 すべてが光の中に溶けていく。そんな感じさえあった。

 大草原に寝そべるクジルファの民たち。半分は気絶したように眠り、半分は眠るように気絶していた。
 
 たった一人残った族長は、馬に乗って草原を走っている。
 オオカミのような犬たちとともに、朝日の中で銀色に輝いていた。

 『夜狩り朝駆け』。それもまた、彼らの異名の一つでもあった。
 だが今その元気が残っているのは族長のみ。
 
 血走った目で、ヒャッハーと叫ぶ男だけだった。

ミッション『明けない夜長の双子月』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『豆と栗の双月饅頭』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『月夜狩人の猟具』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
明けない夜長の双子月
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました

煤の一つも残さずに

  • 発生(前回フェイズ6、強制イベントおよび休息処理後)
『時限ミッション:煤の一つも残さずに』を発見しました
今回のイベントミッションの開放期間は11/27(水)~12/28(土)までです

煤の一つも残さずに

 年の暮れ。
 長かった一年が終わり、そしてまた新たな一年が始まる。
 
 始まらないことも、たまにはあるかもしれないが。概ね始まる。

 だがそれもこれも、今年を終わらせてこその話である。
 一年の終わり、その締めに行うこと。全てをきれいにスッキリと。
 
 そう。大掃除である。

 『煤払い』。町では年末に行われる大掃除のことを特別にそう呼んでいた。
 
 家の中にある煤を払い清める。そして神を迎え、新たな一年を始める。
 それが煤払いと呼び長年続けられてきた伝統儀式だった。

 麓に広がる町を見守る形で、その山全体を敷地をする『蛇泉大社』がある。
 煤払いはもともとこの神社で生まれた行事で、それが町に広がったものだった。
 
 大掃除であることは変わらない。
 ただそれは、特別な場所で特別な『煤』を払う儀式であるということだった。

 蛇泉大社には多くの『蔵』がある。
 この蔵を開けて、中に溜まった煤を掃除するのがこの神社の煤払いだった。
 
 蔵には様々な神事で使われる道具が、それぞれの神事ごとに分けて納められている。
 そのため、その神事が行われるときにだけ蔵は開けられ、掃除が行われるのである。

 神事には毎年行われるものもあれば、十年に一度というものもある。
 そしてそのたび、蔵は開かれる。だが、神事が行われなければ蔵は開かれない。
 
 百年に一度だけ行う神事の蔵は、百年に一度だけ開かれるのだ。

 翌年の春、その百年に一度の神事が百年ぶりに執り行われる。
 つまり、この暮れに蔵を開け大掃除である煤払いを行うのである。
 
 『大煤払いの儀』。それは特別に、それ自体が神事として扱われていた。
 百年に一度、その百年間に溜まりに溜まった煤を払うのだ。

 前回の神事も煤払いも見たものはおらず、蔵の中を覗いたものもいない。
 文献によれば相当に大掛かりで、相当に危険な煤払いとなったとだけあった。
 
 必要なのは、掃除の得意なものではない。
 百年ものの『煤』と呼ばれる何かと対峙できる何者かだった。

『マップ:乙塚山の蛇泉大社』を発見しました

  • フェイズ1(食事およびマップ移動処理後)
乙塚山の蛇泉大社

 乙塚山の麓に広がる町。
 山そのもの、そして山の神を祀る『蛇泉大社』の信徒たちの集落である。
 
 人々を見ると身なりはいいが、家々は質素で派手なものはない。
 伝統的にそのようにして暮らしてきた。それがひと目で分かる町並みだった。

 神社を中心とした町ではあるが、厳しい戒律などがあるわけではない。
 あれをやれ、これをやるななどといったものはなく。
 神社での手伝いなども、町民の善意によって行われていた。
 
 近すぎず遠すぎず。
 町と山の上にある神社との物理的な距離が、そのまま心の距離といったところだった。

 その町ではすでに『煤払い』は始まっていた。
 とは言っても、本格的なものではまだない。
 
 これから年末に向けて、ようやく手を付けたばかりだった。

 それもあって、町の雰囲気はまだゆるい。
 年末年始に向けて、むしろゆるくゆるくなって行くものかもしれないが。
 
 『蛇泉大社』の緊張感は、まだ町まで伝わってはいなかった。

  • フェイズ2(なし、探索可能)
神事と蔵

 町からは『蛇泉大社』がしっかりと見える場所にあり。
 向こうからも、町全体をしっかりと見下ろせるようになっている。
 
 それぞれの眼差しが持つ意味は全く違うが。
 常に見ている、常に見られている、という関係が重要だった。

 山の中腹よりも高い場所にある神社まで、石段がずらっと続いている。
 一段一段が一つの岩から切り出したもので、それが数百かあるいはそれ以上か。
 
 この山にそれほどの石材があるとは思えない。
 おそらくは何処かから運んできた。想像するだけで疲れそうで、これを登る前に考えたくはなかった。

 最上段の先にある拝殿に至るまでの道に様々な施設がある。
 数多くの『蔵』もまたそうである。
 
 神社が行う神事は多岐にわたる。
 それぞれで使用する道具を分けて、一つの蔵にまとめて納められており。
 蔵には担当する神事の名前が、そのまま表札のように書かれて掛けられていた。

 一年に一回、決まった日に行われる神事。
 それはいくつもあり、それぞれ小さな『一年蔵』に道具が納められている。
 
 『三年蔵』『五年蔵』『十年蔵』と、期間が長くなるにつれ数が減っていく。
 十年を超えるものは、一つずつしかないようだった。

 特別大きな道具を使う場合もあるが、そういった例外を除けば。
 概ね、年数によって蔵の大きさは立派になっていく。
 
 そして、今回開かれる『百年蔵』。
 それは大きさだけで言えば、拝殿に匹敵するほどの大きさをしていた。

  • フェイズ3
百年の蔵の孤独

 『百年蔵』は、百年間一度も開かれることなく眠り続けている。
 
 とはいえ、百年もの間そのまま放ったらかしにされていたわけではない。
 外側の掃除や手入れはされており、見た目は綺麗で他の蔵と大差はなかった。

 はっきりした違いといえば、巨大であるということだろう。
 百年に一度の神事ともなれば大々的に行われ、必要な道具類も多い。
 それを一処に納めるとなれば、これだけの大きさの蔵になるということだった。
 
 その『百年蔵』の扉の前に、男が二人立っている。
 ともに白い着物に紫色の袴を着た、半分以上白く染まった髪の男たちだった。

「ご開帳!」
 こういう場所にはあまり似合わない、威勢のいい声が山に轟く。
 
 それだけで数キロはありそうな大きな南京錠を外し、丸太のかんぬきを抜く。
 それぞれ地面に置いて、両の扉を二人の男が一方ずつ手をかけ。
 ゆっくりと、焦らすわけではなく単純に重たいそれを開いていった。

 少し隙間が開いただけで、もう異変は始まっていた。
 
 内から外へ風が吹き出す。窓もなにもない、完全に閉じられた場所から。
 そしてその風には色がついていた。
 真っ黒な、闇そのものと言っていいものが蔵の中から溢れ出していた。

 その風に押されるように、あるいは実際に押されていたのだろう。
 扉を開く速度が上がる。それは扉を持つ男たちの表情を見ても明らかだった。
 
 途中からは開くよりも、押し留める方に力を込めるがそれでも勢いは収まらず。
 『煤』は扉を完全に押し開き、外へと飛び出していた。

 『煤』とは、ただのゴミやホコリなどではない。
 百年もの間に蔵が神具とともに溜め込んだ、闇そのものだった。
 
 『大煤払いの儀』と呼ばれる神事は、この闇を払うこと。
 百年ものの淀みを清めることだった。

 黒い煤は広がり分かれ、それぞれに形をなしていく。
 いくつもの得体のしれないもの。様々な形をした怪物を生み出していた。

(PT名)は何もしませんでした (行動ポイント残り1ポイント)

戦闘予告
黒煤の妖魔に遭遇した!

  • フェイズ4
  • フェイズ5
  • フェイズ6
乙塚山の蛇泉大社

 厳密に言えば、『百年蔵』が閉じられていた期間は百年ではない。
 わずかに足りない、九十九年である。

 百年に一度の神事が行われる前年の暮れ、蔵は開けられることになる。
 それが今回の『大煤払いの儀』であり、これが百年ぶりなのは確かなことだった。
 
 無事終わればこのあと蔵の中から道具が取り出され、春の神事に向けて準備が始まる。
 年が明けて春になるまでのおよそ半年は、蔵は開け放たれたままとなるのだ。

 大祭が終われば道具はすべて蔵にしまわれ扉は再び閉じられる。
 そしてまた百年後の神事、その前年の『大煤払いの儀』まで眠ることになる。
 
 つまり、百年には半年ほど足りないのだ。
 九十九年と半年。それが正確に蔵の中で『煤』が積もった時間となる。

 けして百年にはならないように、わざとそうしているのか。
 煤を溜め込み、百年が経つとどうなってしまうというのか。
 
 百年が経つ半年前に蔵を開け放つ。そして煤払いを行う。
 それそのものを神事とするには理由があるのかもしれなかった。

 九十九年の時を経て、しかし百年には満たず。
 煤は蔵から出て化け物となった。
 
 動物であったり、物であったり。様々な形で具現化し襲いかかってきたが。
 黒い願いは叶わず、血のように煤を噴き出しそれらは地面に倒れた。
 
 血も肉も、すべてが煤でしかない。地面に撒かれれば何ら区別はつかなかった。

 煤は最初に吐き出したものがすべてのようで、新たに蔵から出てくる様子はない。
 そしてそのすべての煤は、もはや何らかの形を保つものはなくなっていた。
 
 空から大量の墨をぶちまけたみたいに。
 地面も木も草も岩も、あたり一面が真っ黒に染まってしまっていた。

 細かい黒い粉末が集まったものだが、風が吹いても舞い上がることはない。
 最初は勢いよく、風に乗って飛び出してきたのだが。
 
 地面にベッタリと張り付いたまま、動くことはなかった。

イベントマップ『乙塚山の蛇泉大社』をクリア!
クリアボーナス
(PC名)はステータスボーナスを△△得た

煤の一つも残さずに

『百年蔵』の扉が開き、外へと吐き出された大量の『煤』。
 
 掃き出す手間が省けた、などといった軽口を思いつきはしたが。
 笑ってくれる人は、集まった神職の人たちの中にはいなさそうだった。

 扉を開ける役目だった二人の神職の男の他に、多くのものが集まっていた。
 白い着物に、色違いの袴をつけている。
 年を取るほどに色は派手になっており、そのまま神職としての位を示していた。
 
 彼らはスコップのようなものと麻袋を手に、せっせと煤を集めていた。

 蔵の前から山の斜面一帯を、真っ黒の煤が埋め尽くしている。
 その量は、それが収まっていたはずの蔵の体積を大きく上回っていた。
 
 薄まって拡散しているとは言え、信じがたい量ではある。
 百年近い間に溜め込んだものと思えば、信じられる気はした。

 それを手作業で集めて、麻袋に詰めていく。
 しばらく見ていたが、減ってる感じは全くしなかった。
 
 外だけではなく、蔵の中にも多くの煤は残っている。
 そちらには派手な袴の年齢層高めの男たちが入っていって煤を集めていた。
 中の煤は特別なものである、という感じがしてこちらを立ち入らせない雰囲気だった。

 『煤』と呼んではいるが、燃えカスとしてのそのままの意味ではない。
 蔵の中にろうそくや暖炉などはなく、普通のススがたまる環境ではなかった。
 
 それが何かは、神社の者たちも分かってはいない。
 蔵に神事の道具を納めておくと出てくるもの。ただそれだけだった。

 ちなみにこの『煤』は、人気だったりする。
 
 それは『穢れ』とは扱わず、蔵に保存された神事の道具から生まれたものとして。
 町の人々からは、ありがたいもの、とされていた。

 ただ、一年蔵や三年蔵ではあまり量は採れず、またありがたみも薄い。
 そんなことは口に出すことはまずないが。実際のところ、人気はなかった。
 
 だが、十年蔵ともなるとその煤を欲しがるものも多く、量もそれなりに出てくる。
 町の人達には配られ、町外からの参拝者にはお守りとして売られていた。

 そして今回は、『百年蔵の煤』である。
 この蔵が開けられることは皆が知っており、ここから町の方角を見下ろすと。
 銘々に麻袋を持った町の人達が、ぞろぞろと石段を上がって来ていた。
 
 彼らは煤集めに協力し、そのまま煤を持ち帰る人たちだった。

 この『蛇泉大社』には、百年蔵を超える『千年蔵』というのもある。
 蔵開きはまだまだ数百年先の話ではあるが。
 
 その時、どれほどの『煤』が出てくるというのか。考えるだに恐ろしく。
 考えるだけ無駄なことなので、いつか誰かが頑張ってくれと。願うしかなかった。

 なお、この神社の歴史は千年に満たない。
 つまり、その神事はいまだ一度も行われておらず、蔵も完成後一度も開いたことはない。
 
 神社創建の千年後、祝いのための超大祭に向けて。
 真の意味での『開かずの蔵』として、今もずっと煤を溜め続けていた。

ミッション『煤の一つも残さずに』をクリア!

クリアボーナス
(PC名)は魂塵を△△Ash得た
(PC名)はSPを1得た
(PC名)は『煤墨クロクジラ汁』を手に入れた

特別ボーナス
(PC名)は魂片:『煤綿お守り人形』を手に入れた

  • 当日夜(休息処理後に表示)
(イベント名)
今回のイベントは終了しました
現在位置、HP、疲労度がイベント開始前の状態に戻りました
最終更新:2024年12月04日 12:25