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☆-3-001 - (2010/09/23 (木) 00:51:41) のソース

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* 投下作品まとめスレ3-1〔3-001~ 〕

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11 : ◆PDh25fV0cw :2010/08/17(火) 00:21:47 ID:qVkKo7Ek
なんか落ちそうなので適当に作ったショート 
『不幸な男』 
ある不幸な男がいた。 
彼はことあるごとに自転車を盗まれるのだ。 
鍵をかけ忘れたら当然、鍵をかけていても盗まれてしまう。 
男は折り畳み自転車を買い常に持ち歩くことにした。しかし、今度は家の保管場所で盗まれてしまった。 
怒った男は自転車の保管場所に張り付き、盗む奴を懲らしめようとした。 
しかし、男が疲れてうたた寝している隙に、またもや盗まれてしまった。 
自分で監視しては寝てしまう、ならば機械を使おう。男は保管場所に赤外線センサーを張り巡らし、警報をならすようにした。 
これでひと安心と思った男だが、運の悪いことにその夜、町中が停電し機械が止まってしまった。その隙にまたもや自転車を盗まれてしまった。 
途方にくれた男は一つの作戦を考え付く。買った自転車を鉄の箱にいれ、蓋を溶接する。これをシャベルカーで掘った穴に埋める。これで誰も自転車を盗むことはできない。 
男は安心して夜眠ることができた。 


15 : ◆GudqKUm.ok :2010/08/18(水) 11:37:47 ID:GnLuSMAY
下ネタっぽくてすいません… 

◆七歳 

「……でもお姉ちゃん、『ペニス』ってどういういみなの?」 
「いみなんかないよ。でも『名犬ペニス』ってすっごく素敵な名前じゃない?」 

「うん……じゃあ今日からボクたちの家族だから、こいつは斎藤ペニスだね」 
「あはは、ペニスよろこんでる!! よおし、おうちまで競争よ!!」 

◆二十歳 

「……で、新製品の名称ですが、私は『スカトロゼリー』というのを考えました」 
「ささ、斎藤くんっ!?」 

「スカっとしているのに、トロみのある食感で『スカトロゼリー』です。このネーミングにはかなり自信が……」 
「斎藤くんっ!! ち、ちょっと来なさいっ!!」 

◆二十五歳 

「……弁護人の発言を許可します」 
「有難うございます。さて、被害者の斎藤リツコさんは執拗に被告を『インポさん』と呼び続け、同被告に耐え
難い精神的苦痛を与えました。裁判員各位においては、何卒この点に留意して……」 

おわり 

16 :¢犬 ◆hwtA568NtI :2010/08/18(水) 19:30:31 ID:n0x+sJDC
◆でんとう 

家にあった電灯が切れた。 
若い男は電灯を買いに出かけようとした。 
その時チャイムが鳴った。ドアを開けると中年のビジネスマンが立っていた。 
電灯のセールスらしい。丁度いい、と思い若い男は「末永くもつ」電灯を契約して買った。 

届いた電灯の仰々しいダンボールの箱には「わが国伝統の一品だ」と書いてあった。 
洒落にしてはつまらないと思いながらも電灯を取り付けた。 

電灯は今も光っていた。 
取り付けた電灯は電気のスイッチに関係なく昼夜部屋を照らし続け、電気代を圧迫した。 
苦情を言おうとしたが契約した会社はもぬけの殻。電話も繋がらない。 
電灯を外そうとも昼夜照らし続けた電灯はとても熱く外せず… 
壊そうにも割れたら危ない。とうとう男は外すのを諦めた。 
時々男は思う。「伝統の一品?こんな詐欺に引っかかる奴今の時代でも俺しかいないな…ハハハ…ハァ。」 

了

星新一にはまってた頃に書いたやつを引っ張り出して書き直してみた(書いた当時:中一) 
中一に書いたやつだから色々変なとこもあるが…どうよ? 

20 :創る名無しに見る名無し:2010/08/21(土) 01:26:33 ID:2GDXEDHw
・新薬の実験 

 ある製薬会社での実験室。 
 ここでは実用に耐えうる新薬を作り出す為、動物実験が日夜行われていた。 
 其処を歩いていた白衣姿の研究員Fが、無数に並ぶ実験用マウスの入ったケースの内の一つに目を止め、 
その傍の机でノートに研究データを書き込んでいた、もう一人の研究員Nへ声を掛ける。 

「おい、15番ケースのマウスが弱り始めてるぞ? そろそろやべーんじゃねーか?」 
「あー、こりゃちょっと失敗臭いな…原因は注射した試薬の副作用かな」 

 研究員Fの指差す先には、ケースの隅っこで毛を逆立てて震えるマウスの姿があった。 
数時間前、実験を行う前のマウスは元気に動きまわっていた事から見ても、 
元気を失った原因は実験で注射した試薬であるのは間違いなかった。 

「どうする? このまま放っておいても死にそうだし、とっとと安楽死させるか?」 
「いやいやまてまて、まだ失敗と決めつけるのは早いと思うぜ? ひょっとしたら持ち直す可能性もある」 
「まぁ、そうだったら良いんだけど。本格的に駄目だったら処分してくれよ?」 
「へいへい」 

 適当に相槌を返すと、研究員Nは再びノートへと意識を傾けた。 
それを見て溜息を付いた研究員Aは立ち去る間際、ケースの隅で震えるマウスに声をかける。 

「お前、命拾いしたな……」 

 その頃、大宇宙の、人間には知覚出来ない領域の世界。 
 ここでは外宇宙へと漕ぎ出す強き生命を生み出すべく、惑星へ対する実験が数百億年行われていた。 
 世界を揺らいでいた大いなる存在の一人が、無数に並ぶ銀河の内の一つに目を止めて 
その傍で新たな秩序と混沌を生み出そうとしていた、もう一人の大いなる存在へ声を掛ける。 

「おい、15番目の銀河の第三惑星が弱り始めているぞ? そろそろ危ないのではないか?」 
「むむ、これは少し失敗の様だな……原因は、この惑星に生み出した人間の副作用かもしれん…」 

―――――――――了――――――――― 

ちょっとした勢いに任せて書いた、反省していない。 

24 : ◆Qb0Tozsreo :2010/09/07(火) 12:31:36 ID:VSFBBcQM
 『タイムトラベラー』 

 カチカチカチカチ……。 
 オレは三十歳無職童貞。このまま引きこもって一生を終えるのかもしれない。 
 ……ん? 待てよ! もし、親が死んじまったら、オレはいったいどうなっちまうんだ!?  

「心配はいらないよ」 
「だ、誰だよ! おまえ? 何でここにいるんだ」 
「ああ、ごめん。ボクはアナタの孫の龍馬。家族で時間旅行に来たついでに寄ってみたんだ。ボクの名前はお爺ちゃんが付けてくれたんだよ」 
「おまえがオレの孫?! ってことは……オレは結婚もできるし、子供だって作れるってことだよな? オレはこのまま一生童貞ではないってことか!」 
「残念だけれど……パパは体外受精だったみたいだよ。つまり、お爺ちゃんはこの先も童貞のままってわけだね」 
「そ、そんな……」 
「それじゃ、お婆ちゃんにも挨拶してくるから、またね!」 
「待てよ! お婆ちゃんって誰なんだよ? おいっ!」 

 ……ん? 夢か。オレに孫なんて有り得ないもんな。何だよ、時間旅行って……。 
 カチカチカチカチ……。 

 えっ!? 

【驚愕の新事実!】坂本龍馬の未発表書簡が発見される……名付け親は祖父、自分は未来から来た?! 

27 : ◆PDh25fV0cw :2010/09/15(水) 00:04:28 ID:13fAJv4b
『高度映像社会』 
30年前、世界的企業の某社が開発した小型軽量の空間への立体映像化装置は、開発競争による価格破壊も進み、個人が複数台所有できるまでになっていた。 
少し大きい街で上を見れば、立体広告がところせましとならんでいる。 
交通の関係で5m以下の立体広告は規制されているのが幸いと言ったところだ。ここも、大都市の例に漏れず、巨大なうさぎの立体映像が空で熱心にシリアルの宣伝をしている。 
「気味の悪いことだ」 
元々どがつく田舎の出身で立体映像など無縁の生活をしていたので、未だにこういった映像には慣れない。触れそうなほどリアルな物が空にある、それがどうも納得できないのだ。 
周りのやつらは、生まれた頃からあったものなので、この違和感を理解してはもらえない。 
「異物か…」 
何となくわいて出た言葉に返す者はなく、相変わらずウサギは空で笑っていた。 
「おわっ」 
ぼんやり上を眺めていたのがいけなかったのだろう、人にぶつかり、壁に向かってよろめいてしまう。 
壁に手をついて止まろうとするが、壁は手を支えることはなく、体は壁の中に入り込んでしまう。 
「いつつ…」 
少し皮が剥け血がにじむ手をなめながら、辺りを見回す。 
人一人がようやく入れる程度の細い路地。後ろを向くと、入り口は立体映像で偽装されている。 
「シークレットドア?」 
入り口を映像で偽装する、シークレットドア。ドアに壁の映像を写し隠すことからこの名前がきているらしい。 
テーマパークなどで似たような物を見たことがあるが、せいぜい子供だまし程度のものだった。 
しかし、これは通路を一つ完全に隠している。それも、完璧なほどに。これほどの精度の装置ならば相当な値段がするはずだ。 
理由は分からないが、誰かが大金を払ってでもこの通路を隠したいと思っている。 
得てしてこういった場合は危ないものが隠されている。直ぐに逃げた方がいいだろう。 
しかし、俺の考えとは裏腹にいきなり世界が歪む。今まで通路だったところが、極彩飾の、抽象画に移り変わる。壁も床も無くなり、場所の起点が無くなる。 
合わせるべき起点が無くなったことで平衡感覚が失われる。すぐに立っていられなくなり、吐き気もしてくる。もしかしたらこれが噂で聞いたことがある、映像兵器なのかもしれない。 
この状態から精神を守るためか、いきなり意識が失われた。 

まず、この状況はなんだろう。起きたらいきなり草原に寝かされていた。 
気絶している間に、草原に運ばれたという可能性もあるが、たぶんそれはないだろう。 
この場所には草の臭いがしない、それに床はリノリウムのような感触。 
つまり、これは立体映像。 
「起きたかね」 
目の前に茶色のスーツをきた老人が立っている。 
「何らかの偶然で我々の秘密通路を見つけてしまったようだね。我々の手違いで侵入者撃退用の装置が作動して君には迷惑をかけた」 
やはり、何らかの施設の通路を隠していたようだ。 
「一体ここはどこなんですか?」 
老人はその質問に答えず、質問を返してきた。 
「君は、ここをどこだと思うかね?」 
?何を言っているんだろうか。 
「周りを見てみたまえ。どこまでも広がる草原。素敵だとは思わないかね?」 
その言葉で少し理解できた。つまり、この映像の元の場所はどこかと聞いているのかも知れない。だが、映像は映像だ。その場所に移動しているわけではない。 
「映像は映像。そう思っているのかね?」 
心を見透かされたような言葉にドキリと心臓が跳ねる。 
「たしかにこれは映像、まやかしだ。しかし、それを確認するためにはどうすればいい?」 
いきなり老人の姿が掻き消える。 
「我々が映像を映像として確認するにはどうしたらいい。現実と変わらないリアルな映像はどうしたら虚像と確認できる」 
いきなり後ろにあらわれる老人。声も後ろに移っている。 
「触ってみる。これは原始的だが確実な方法だ。しかし、触れられないものはどうすればいい?」 
今度は上にあらわれる。 
「確認できないなら、それは本物だってことが言いたいのか?」 
また消え、今度は最初と同じく真正面にあらわれる。 
「その通り、触れられないならばそれはいかに馬鹿げていてもそれは現実の可能性もあるということだ」 
老紳士は本当にうれしそうに笑う。何がそんなに嬉しいのだろう。 
「さて、私も時間がなくなってきた。君は最初にここはどこか、と聞いたね?今からその答えを示そう」 
老紳士が指をパチンと鳴らす。すると、いきなり床が開く。捕まるものも無く、為す術も無く下に落ちていく。 
軽い浮遊感のあと、硬い地面に叩きつけられる。 
打ちっ放しのコンクリートの床、周りを覆うフェンス、どうやらビルの屋上のようだ。 
上を見ると、ピンク色の巨大な何かが見える。 
「え?ウサギ?」 
そうそれは、さっき見た広告用の巨大ウサギの映像。そう映像のはずだ。しかし、俺はその映像から落ちてきた。 
呆然としていると、元から無かったかのようにウサギは消えてしまう。 
「どうなっているんだ……」 
『確認できないならそれは本物かもしれない』 
さっき自分で言った言葉が頭で繰り返される。 
空に浮かんでるウサギは本物で俺は中にはいった。こんなこと誰が信じてくれるんだろうか。精神障害を疑われて終わりだ。 
だが、それでも構わないではないか。今やこの世界はリアルな虚像に満ちている、その中に実在する虚像があったとしても。 
ビルを降り、外に出る。空を見上げると新しい広告が映し出されるところだった。 
どうやら、紳士用の靴の広告らしい。俺は苦笑しながら、空に一礼して再び街を歩き始めた。 

33 : ◆PDh25fV0cw :2010/09/17(金) 01:34:28 ID:9oop0EaF
『王の頷き』 
ある国に絶対に賛成しない王さまがいた。大臣がどんなにいい案を持っていっても首を横に振り、美女が誘惑しても決して流されない。 
そんなことをしていれば、国が運営できないものだが、しばらくすると皆が持ってきた案より優れたものを、王自身が考えついてしまうので、皆は文句も言えず国もうまく回っていた。 
しかし、大臣たちは面白くない。かといって、王に歯向かう気もない。王としては歴代でも1、2を争う名君なのだ。しかし、大臣たちは王が皆の意見に賛成する場面をどうしても見てみたかった。 
そんなある日、ある男が王の謁見にやって来た。 
王は民衆の知恵を借りるために、様々な国民と謁見を行っている。この男もそういった一人だった。基本的には、王との謁見は1対1で行われる。これは大勢の前では気後れするものもあるだろうという王の配慮だった。しかし、王の安全のため何人かの兵士は配備されている。 
さて、その謁見をおこなっていた男は王にある紙を渡す。その様子を窓の奥から偶然見ていた見ていた大臣は驚いた。王はなんと首を縦に振ったのだ。 
大臣はあの男が渡した手紙の内容を知りたくて仕方がなかった。しかし、王に直接聞くわけにもいかないだろう。わざとではないにしろ、盗み見たようなものだからだ。 
いったいどんなに素晴らしい内容だったのだろう。最高の統治方法、最高のレシピ、想像は膨らむ。 
大臣は謁見を管理する部門に立ち寄り、男の素性を聞いた。 
男はどうも街で服屋を営む仕立て屋らしい。大臣は男に使いをやり内密で自宅に呼び出した。 
なぜ呼び出されたのかわからないのか、少し緊張気味の男に大臣は聞いた。 
「お前はどんな内容の進言をしたのだ?内容を言えばこの金貨をやろう」 
そう言って家が二つは建つであろう量の金貨を男の前においた。 
それに驚いた男は 
「私は王の服の新しいデザインを、献上に来ただけです。王が新しい服を考えていると、掲示があったので。それだけです、決して怪しいものではありません。そんな金貨を貰うほどのものではありませんよ」 
男は慌てて答えた。 
「別に君をどうにかしたいわけじゃないさ。ただ、私は王がなぜ頷いたのかを知りたかっただけなんだよ」 
それを聞いて多少安心したのか、男は冷静になる。 
「そうなんですか。しかし大臣様が見た、王が首を振る動作は、肯定をする動作ではないでしょうね。今着ている服をを確認した動作を大臣様が勘違いしただけでしょう」 
そう言って男は金貨を貰うのを辞退した。 
「そうか。それならば、お前を宮廷専属の仕立て人として採用する」 
「え?なんででしょうか?」 
男は狼狽えた。王の動作の謎も勘違いとわかったのだ、一介の街の仕立て屋である自分がいきなり宮廷専属なんて名誉職取り立てられるなんて、わけがわからない。 
「確かに、王が首を縦に振ったのは、服を確認するためかもしれない。しかし、あの後、王は首を横に振らなかった。君のデザインが優れていたためだ。それに、これだけの金貨を前にして誠実に答えたのも良い。私は誠実な人間は好きだ、それは王もおなじであろう」 
そう大臣は答えた。 
大臣の頼みを聞き入れた男はこの後、王や王の側近のために数々の素晴らしい服を仕立てるが、それはまた別のお話だ。 

36 :創る名無しに見る名無し:2010/09/21(火) 19:05:30 ID:OjCBrvx5
【屋上】 
「またここへ来てしまった」 
S氏はそうつぶやくと、錆付いたパイプ椅子に腰を下ろした。 
ここはとあるビルディングの屋上。さほど高層でもない、どこにでもありそうな場所だ。 
彼は悩み事があるとこの場所に来る。いや厳密に言うと来てしまうのだ。 
ここが、どこの何ていうビルディングなのかはまったく覚えていないし 
また覚えていたとしても、きっと自分の意思ではたどり着けない所なんだと 
何となく感じていた。いづれにしてもここがどこであろうとどうでも良かった。 

S氏は平凡なサラリーマン、上司からは叱られ部下からは突き上げられ 
御多聞にもれない中間管理職であった。 
悩み事と言っても、大それたものではなく些細なことが多い。 
自分の成果を上司に横取りされたり、データ収集や難交渉など人がやりたがらない 
仕事を押し付けられたり。だがS氏は仕事にそれ程不満があるわけではなかった。 
彼にとって常にそれが自分の役回りであると思っていたからだ。 

いつものように小一時間ここでぼんやりと夜景を眺め、ため息をひとつつくと 
そろそろ帰ろうかと腰を上げた。その時、「カチャリ」とドアのノブが回る音がした。 
『誰か来る』 
勝手に入り込んだ後ろめたさもありS氏は物陰に身を潜めた。 
ここには明かりがなく、どんな風体なのか良く見えない。警備員なのか住人なのか…。 
すると、 
「誰かいますか?いますよね」 
『しまった!見られてた!』 
いきなり声を掛けられ、S氏は体が硬直し声も出ない。不法侵入という言葉が頭をよぎる。 

「いることは判っています。何もしませんから、そのまま私の話を聞いてください」 
『?』 
「これからもあなたは何度もここに来ることになるでしょう。でも、決して会社を 
辞めようなどとは思わないでください。」 
誰とも判らぬ人影は勝手に話を続ける。 
「今あなたがやっている仕事は、将来きっとあなたの出世の足がかりになります。 
どうか、この調子で仕事を続けてください。」 
『何なんだこの人は、何で私の事を知っている?もしかして!』 
もしかしたら未来の自分がタイムマシンで自分を励ましにやって来たのか? 
S氏は、星新一でも思いつきそうにないベタな空想をしてしまった。 

「では、これで失礼します。決してあきらめないでくださいね!」 
最後にそう言い残すと誰とも判らぬ人影は去っていった。 
S氏はしばらく放心状態になっていたが、やがて正気を取り戻した。 
「いったい何だったんだ?」 
そう言いつつ、なんだか笑いが込み上げてきた。 
おかしな事にいつもより元気が出てきたような気がする。 
自分の努力を認めてくれる人がいるのはうれしいものだ。 
あの人影がどこの誰であれ、とても感謝したい気持ちになった。 

それから何日かして、S氏は思いきってある行動に出た。 
会社からの帰り道、適当なビルディングの屋上にのぼり、こう話しかけるのだ。 
「誰かいますか?いますよね…」 

終わり 
40 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 12:25:43 ID:ePZQFWsi
【最強の兵器】 

F博士の研究室 

「これでよし、完成じゃ」 
「やりましたね博士!と言っても僕はこの装置のことをよく教えてもらってませんが…」 
「そうじゃったな。完成する前にこの装置の情報が漏れては命が危なかったのでな。すまんかった」 
「もしや兵器…ですか?」 
「まあそんなもんじゃ。この装置はミニブラックホールを発生させて一瞬に周囲の物をすべて飲み込んでしまう」 
「それはすごい!」 
「そこまで知らんかったとは。君を助手に採用して正解だったようじゃ」 
「お褒めに預かり恐縮です。ところでいったいどれくらいの範囲まで有効なのですか?」 
「それは設定次第。半径1メートルからから1万3千キロ以上」 
「それでは地球も一飲みじゃないですか」 
「そういう事になるな」 
「しかし博士、もしこれが悪人の手に渡ったら大変ですね」 
「そう思うじゃろうが、この装置の最大のポイントはそこなのじゃ」 
「どういう事ですか?」 
「ブラックホールの中心がこの装置だからじゃよ」 
「と言うと」 
「…もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」 
「ええ、小学校の頃に1度」 
「そうじゃろうな。打ち所が悪かったのか良かったのか。まあ良い、この装置がブラックホールの中心に 
 あるということは、この装置もろとも飲み込まれてしまうということなのじゃよ」 
「なるほど、つまりこの装置を作動させた人間も消えてしまうわけですね。しかし遠隔操作で…」 
「この装置は所有者自身が自らの手で操作した時だけ作動すようにプログラミングしてある」 
「自爆テロならぬ、自滅テロですか…ぷぷっ」 
「笑い事ではない」 
「でも何だか売れそうにないですね」 
「売るつもりはない。進呈するのじゃ」 
「誰にですか?」 
「この世で最も不甲斐無く、心配性で、臆病で、周囲の国からも馬鹿にされている…」 
「わが国の国王!?まさかこれで消えていなくなれと?」 
「いや、国王がこの装置を持っていることを周辺国にアピールするのじゃよ」 
「あそうか、周辺国が下手な行動に出れば、いつ何時あの臆病国王がスイッチを押すかもしれないと…」 
「今度はいやに察しがいいな。その通り、だからこれはわが国にとって最強の兵器になる」 
「でも、あの国王のことですよ。ちょっと自信喪失しただけで使ってしまいそうだ」 
「それはさすがに側近が止めるじゃろうが、まあわしもそう長くはないその時はあきらめよう」 
「博士!」 

次の日、博士は国王に謁見し予定通りその装置を献上することができた。 
世界的に有名な大科学者F博士の発明とあって、すぐさま新兵器として採用され 
その情報は瞬く間に周辺国に伝えられた。その抑止力たるや、言うまでもない。 
「これでしばらくの間、この国も安泰じゃろう」 

その後博士は失踪した。どうしても隠しておかねばならない秘密があったからだ。 
実はその装置は空っぽで、ブラックホールなどまったくのハッタリだったのだ。 

終わり 

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