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Top > ファンタジーっぽい作品を創作するスレ > 1-707 外伝1 第2部 蛇の物語

外伝1 第2部 蛇の物語


730 : ◆P3mkcgF2L6 :2010/03/11(木) 23:02:01 ID:uONmaaxj

第二部 「蛇の物語」

風が、哭いているようだ。
この大陸に吹きあれる風は、赤い。
かつて、その大地にはひとつの偉大な塔がそびえたっていたという。
人の英知と希望を結集させてたてられた、天にまで届く塔だ。
〈塔の時代〉、人々は法や軍事力ではなく、歌によって治められていたのだと、歌い手たちは語る。
だがその塔も、いまは崩れさりあとかたもない。
各地を放浪しながら、浮かんでは弾けて消えるような歌と小話で、
その日暮らしのあぶく銭をかせぐ歌い手たちの言い分を、今では誰も信じるものはなかった。
…だが、と男はおもう。
このように風が哭く日には、彼らの言葉もさほど間違ってはいないのではないかもしれないと。
男にはこの風の音こそが、塔の歌姫たちの鎮魂歌にきこえるのだった。
大地は、何万年もの昔にすぎさってしまった時代の栄華を、いまだに記憶しているのだ。
しかし、男にはそこまでの感傷はなかった。
男は、感傷とはほどとおい場所に自らの生をおく存在だった。

赤い風をさけるため、フードをまぶかにかぶりながら、男は歩き続けていた。
男が歩を進めるのは、蜃国と鯨国をむすぶ街道から、かなり外れただだっぴろい荒野だった。
視界は、風のせいでほとんどが見えない。
こんな日は、ふつうの旅人や商人は、けっして外にはであるかないものだ。
天下の三大?局でさえ、赤い風はさけるという。
魔物がでるというのだ。

だが、男にとってそれは歩を進めるための絶好の機会だった。
男こそが、魔物なのだ。

男は鯨国の終着点、蜃国との境にある宿場町にたどりついた。
往時はにぎわいをみせたであろう町も、今は悲惨だった。
道ゆく人はほとんどおらず、町並みは、廃墟といってよかった。
それはけっして赤い風のせいだけではない。
鯨国はすでに2ヶ月ほど前に、この世から滅びさった国だった。
蜃軍の破壊と蹂躙のきずあとが、各所になまなましい状態でみうけられた。
炎に煽られ、奇妙な形にねじれた大木ーーかつては町のシンボルだったというーーの影が、
真っ赤な空を背に、悲しげに浮かんでいた。
男は、その木をめじるしに通りをすすんでいった。
ふと、先の路地裏で、足のふじゆうな女が兵士にらんぼうされているのが目にはいった。
女は、20台半ばくらいに見えた。
もと商売女だろうか。派手な赤い衣装をはだけ、耳に白く光るイヤリングをはめている。
そのイヤリングが、ほとんど女の耳ごと引きちぎる勢いで、むしり取られた。
兵士は、どこの国のものとも見分けられなかった。
戦がおわり、あぶれものになった浮浪兵が民をくいものにするのは、世の常だった。
男は、そのままとおりすぎた。

目当ての酒場は、焼けこげた木のほとんど真下にあった。
店にはいり卓につくと、5~6才くらいに見えるこどもがしきりに店の名物料理をすすめてきた。
男は、それを頼んだ。
やがて、いくつかの包子と、香ばしい肉団子のしょうゆ煮の大皿と、酒がならべられた。
もくもくと箸をすすめる男の背に、ゆらりと気配がたちあらわれた。
「あら、おいしそうじゃない」
女の声だった。
「欲しいのなら、オレの前の席について、おまえも注文するといい」
「いいのよ、私はもう食べてきたから」
女は妙に満ちたりた、補食者の笑みをうかべていった。そのくちびるは、血のように赤かった。
「…あいつらを、どうしたんだ?」
「あとが残るとやっかいだから、”必要以上”に殺しておいた。
 あれじゃもう見つけられないし、見つけたとしても、人にはみえないわね」
男は、かすかに同情をよせた。この女は、殺すだけでなく、殺したあとのことも楽しむのだ。
「じゃ、蛇。あんたへの言づてはこれよ」
言うと、指のあいだにはさんだ紙片を宙にひらめかせた。
手をはなすとそれは、蛇とよばれた男の頭のうえからゆっくりと机へと舞落ちた。
蛇は、そこにかかれた内容を読んだ。
そして、それを記憶すると酒のはいった杯の中に紙を沈めた。
紙は、存在もしなかったかのように溶けて消えた。

女は、突然あらわれたのと反対に、ゆっくりと、足をひきずりながら店から去っていった。
その赤いころもが、赤い風の中に消えていくのを眺めながら、男は杯をのみほした。


蜃国にはいると、様相がいっぺんした。
人が多い。
兵士だけではない。それに付随する武具職人や商人、商売女といったものたちに加え、
物乞いや、はてはどうみてもこそ泥といった風情の輩まで。
そこはごったな人種のるつぼと化していた。
だが、普通の人間のすがたは、ほとんど見られなかった。
…戦がはじまるのだ。

この大地は、広い。
それはあまりにも、あまりにも広大だった。
ゆえに、ひとつの国家によって統一され、安定するということがなかった。
絶えず、いずこかで戦乱の火の手があがり、人が殺しあった。
何千何百という国が興り、その多くが滅びた。
時がたち、世代がうつり、国の名がかわり、新たな支配者があらわれては消え、
多くの血とともに人の想いや記憶が流れさっても、戦争だけはこの世界にありつづけた。
それは人の心の根本まで深く食い込み、憎しみと絶望という名の傷痕を残す、巨大な獣の牙のようだった。
「獣を殺すには、魔物の力が必要だ」
ひとりの王が、そのことに気づいたのは、長い戦乱の歴史が数千年もつづいたはてのことだった。
その十数年後、百あった国の数は、わずか3つになっていた。

「鳳」・「蜃」・「鯨」。
それがいまや天下の覇権を三分し争う、3つの国の名だった。
国力は、大雑把にいうと、4:5:1。
ちょうど3すくみの関係にあるが、その趨勢は、大地の東と西の大半を手中におさめる
鳳、蜃の二大国のあいだで決せられることは、明白だった。
その中間に位置する鯨国は、最終決戦の緩衝材としてのみ生かされてたといっていい。
両国は、相手を滅ぼすための策と、軍事力の強化をはかっていた。

そして、蜃が鯨を滅ぼした。

〈続く〉

なんとか書きましたが、最初にあーなる、こーなる、ってのは決めてても
どうするか、とかは、まったく考えてないので、これからはめちゃ時間かかると思います…。
(あとキャラも考えてない)

あと「?」ってなってるところは、「金票」で一文字にして読んでください。
「金票局」で「ひょうきょく」と読みます。

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