「ククク、ハハハ、ハーハッハッハ!!!」
シャーリー・時峰の言葉に対しブラックファントムから漏れたそれは…堪えられない、そう堪えようの無い笑い声だった。
「よければ、このまま抵抗しないで投降していただけるとありがたい。当たり前の話なんだが、君のその機体は国の認可を取っていない機体でね。知っているかどうかは知らないが認可をとっていない機体を政府指定の領域外で動かす事は法を犯していることなんだよ。つまり、君の乗っている機体の存在自体が許されないという事なんだ。君は犯罪者であるという事なんだ。よって、君は我々に捕まるだけの理由がある。だがな、君の上げている多大な戦果に我々が救われている事も事実でもある。だから、君が無抵抗に我々に投降をしてくれるのならば、我々からも出来うる限りの待遇を保障しよう。だから、ブラックファントム、私達に――」
「冗談も休み休み言え。」
口調を変えず淡々と説明を続けるシャーリーの言葉を遮るようにブラックファントムは告げる。
「言葉が間違っているだろう、時峰?捕獲じゃなくて同行がお前らが求めるべきものだ。まあ、それでも面子を大事にしたいんだろうからそういう物言いをしているんだろうな。今、この世界で奴らを倒す事が出来るのはこいつだけだからな。だがな、お前らじゃ…無理だ、お前らではこの力を使いこなす事は出来ない。それにだ――」
ブラックファントムはその右腕に携えている黒槍の矛先で足元に倒れている半壊したアインツヴァインをつつく。
「こいつを見ればわかるだろう?俺とお前らじゃ、力の差が歴然としすぎている、例え、お前らと同じ機体がいくらあっても結末は変わらないだろうよ?そんな奴がたかだか三機でリベジオンごと投降しろなどとほざいてやがる、弱者が強者に対して行うものだろう?なのにお前らがやっているのは何だ?弱者が強者に対して投降を求めている…ふざけているのか?」
「だから、こうしてお願いしているのだよ、ブラックファ――」
その瞬間、シャーリーの乗るアインツヴァインの頭部の横をかすめるように紅の閃光が走っていき、後方にあった山にぶつかり爆発した。
ブラックファントムの持つ黒槍の矛先が展開し、中の空洞が光輝いているのが見える。今の光が、ブラックファントムの持つ黒槍から放たれたのだ。
「馬鹿も休み休みに言え……次は当てるぞ。」
「この野郎!!」
α5が自身のアインツヴァインにアサルトライフルの引き金を振り絞ろうとさせる。
それを――
「待て!」
とシャーリーは諌めるように静止させた。
「不快だったのならば、謝罪しよう。だが、これは我々からの切な願いでもある。どうか、我々と一緒に来てくれないかね?」
「――嫌だと言ったら。」
不適にブラックファントムは言い放つ。
「ならば、仕方ない、大変不本意だが、世界政府第七機関の名の下に君を…強制的に連行させてもらうことになる。」
α5、α6の鋼機がトリガーに指をかける。
「出来ると思っているのか?」
「さあ、どうだろうね。」
かたや天狼一機に全力を持って、自らの身を犠牲にしても惨敗した鋼機の集団、かたやその天狼を赤子の手を捻るかのように一撃で消滅させた鋼機。
勝負の結末は誰が見ても明らかだった。
「なるほど、何か策でもあるのか?だがな―――」
ブラックファントムはその大きな黒翼にあるブースターを可動させる。
「――お前らに付きあう義理も無い。」
ブラックファントムはそう言い放ち、飛翔の体勢に入った。
「あれだけほざいて逃げる気か!!」
α5そう叫びながら即座にアサルトライフルのトリガーを引いた。
無数の弾丸がブラックファントムを襲う。
だがその弾丸に向けてブラックファントムは掌を向け、紅の光を放出する。
光は軌跡を描き、掌から拡散し、その弾丸全てに浸食し、消滅させた。
紅の光は幾つもの線となって、ブラックファントムの周囲を徘徊する。
「逃げる?まさかこの展開を想定していなかったとでも言うんじゃないだろうな。この戦いは俺にお前らに利があっても俺にはまったく無いものだ。そんなものに構う奴が馬鹿だというものだろう?こいつと俺を捕獲するなんて言ってるんだから、これぐらいの事態は想定してるよなぁ?」
まるでブラックファントムの纏う紅の光は絶対領域だ。
螺旋上の紅の光がブラックファントムの周囲を徘徊し、光の主である王に襲い掛かる害悪を消滅させる。
全方位にてあらゆる弾丸を通さぬ螺旋の壁。
両翼に搭載されたブースターの噴射と共にブラックファントムは飛翔を始める。
ブラックファントムとアインツヴァインのスペック差は歴然たるものだ。
飛翔したブラックファントムの速度はフライトユニットを装備した鋼機の飛行速度など、兎と亀ほどの開きがある。
つまりはブラックファントムに飛翔を許したら、イーグルの面々にはブラックファントム捕獲など不可能の事象と化してしまう。
だが、それに対して、こうなることをシャーリーは機体内でかすかに微笑んで、
「α4……やれ……。」
そう命令を出した。
その瞬間、大きな風きり音が鳴り響き、ブラックファントムの機体が飛行体勢入っていた揺らぎ倒れた。
火の入っていたブースターはそのまま噴射を続け、大地に擦るようにして倒れた機体を山部の腹部に向けて突撃させる。
正体不明の攻撃にブラックファントムの絶対防御が打破されたのだ。
その結果を見てシャーリーは自分たちの考えが間違っていなかったのだと確信する。
そして理解している、二度目は無いのだと…。
何せこれは連発できない代物だ、そして種さえ割れてしまえば、あの機体には通じないのは明白。
ならば、この瞬間、この刹那こそが唯一にして無二の機会。
「投擲せよ!」
その掛け声と共に三機の鋼機が腰部にある連鎖式手榴弾(チェーングレネード)をブラックファントムに向けて投げつける。
爆発、大地を構成する数多の土が天に上がる。
これこそが、絶対防御を破る為の秘策。
「各員、特殊弾頭に切り替えよ。」
シャーリーの掛け声と共にアサルトライフルのマガジンを取り外し、腰から黄色のマーカーの入ったマガジンを装填する。
「全ては作戦通りに…だ。分かっているな?」
「私は当然ながら、それにそこのガキに言ってやった方がいいんじゃないでしょうかね。」
「誰がガキだ!お前こそ、そんな風に格好つけてミスったら大恥ものだぜ!」
「なら――撃て。」
その号令と共に三機の鋼機の銃口が、山腹に横たわったブラックファントムに向けて撃ち放った。
シャーリー・時峰の言葉に対しブラックファントムから漏れたそれは…堪えられない、そう堪えようの無い笑い声だった。
「よければ、このまま抵抗しないで投降していただけるとありがたい。当たり前の話なんだが、君のその機体は国の認可を取っていない機体でね。知っているかどうかは知らないが認可をとっていない機体を政府指定の領域外で動かす事は法を犯していることなんだよ。つまり、君の乗っている機体の存在自体が許されないという事なんだ。君は犯罪者であるという事なんだ。よって、君は我々に捕まるだけの理由がある。だがな、君の上げている多大な戦果に我々が救われている事も事実でもある。だから、君が無抵抗に我々に投降をしてくれるのならば、我々からも出来うる限りの待遇を保障しよう。だから、ブラックファントム、私達に――」
「冗談も休み休み言え。」
口調を変えず淡々と説明を続けるシャーリーの言葉を遮るようにブラックファントムは告げる。
「言葉が間違っているだろう、時峰?捕獲じゃなくて同行がお前らが求めるべきものだ。まあ、それでも面子を大事にしたいんだろうからそういう物言いをしているんだろうな。今、この世界で奴らを倒す事が出来るのはこいつだけだからな。だがな、お前らじゃ…無理だ、お前らではこの力を使いこなす事は出来ない。それにだ――」
ブラックファントムはその右腕に携えている黒槍の矛先で足元に倒れている半壊したアインツヴァインをつつく。
「こいつを見ればわかるだろう?俺とお前らじゃ、力の差が歴然としすぎている、例え、お前らと同じ機体がいくらあっても結末は変わらないだろうよ?そんな奴がたかだか三機でリベジオンごと投降しろなどとほざいてやがる、弱者が強者に対して行うものだろう?なのにお前らがやっているのは何だ?弱者が強者に対して投降を求めている…ふざけているのか?」
「だから、こうしてお願いしているのだよ、ブラックファ――」
その瞬間、シャーリーの乗るアインツヴァインの頭部の横をかすめるように紅の閃光が走っていき、後方にあった山にぶつかり爆発した。
ブラックファントムの持つ黒槍の矛先が展開し、中の空洞が光輝いているのが見える。今の光が、ブラックファントムの持つ黒槍から放たれたのだ。
「馬鹿も休み休みに言え……次は当てるぞ。」
「この野郎!!」
α5が自身のアインツヴァインにアサルトライフルの引き金を振り絞ろうとさせる。
それを――
「待て!」
とシャーリーは諌めるように静止させた。
「不快だったのならば、謝罪しよう。だが、これは我々からの切な願いでもある。どうか、我々と一緒に来てくれないかね?」
「――嫌だと言ったら。」
不適にブラックファントムは言い放つ。
「ならば、仕方ない、大変不本意だが、世界政府第七機関の名の下に君を…強制的に連行させてもらうことになる。」
α5、α6の鋼機がトリガーに指をかける。
「出来ると思っているのか?」
「さあ、どうだろうね。」
かたや天狼一機に全力を持って、自らの身を犠牲にしても惨敗した鋼機の集団、かたやその天狼を赤子の手を捻るかのように一撃で消滅させた鋼機。
勝負の結末は誰が見ても明らかだった。
「なるほど、何か策でもあるのか?だがな―――」
ブラックファントムはその大きな黒翼にあるブースターを可動させる。
「――お前らに付きあう義理も無い。」
ブラックファントムはそう言い放ち、飛翔の体勢に入った。
「あれだけほざいて逃げる気か!!」
α5そう叫びながら即座にアサルトライフルのトリガーを引いた。
無数の弾丸がブラックファントムを襲う。
だがその弾丸に向けてブラックファントムは掌を向け、紅の光を放出する。
光は軌跡を描き、掌から拡散し、その弾丸全てに浸食し、消滅させた。
紅の光は幾つもの線となって、ブラックファントムの周囲を徘徊する。
「逃げる?まさかこの展開を想定していなかったとでも言うんじゃないだろうな。この戦いは俺にお前らに利があっても俺にはまったく無いものだ。そんなものに構う奴が馬鹿だというものだろう?こいつと俺を捕獲するなんて言ってるんだから、これぐらいの事態は想定してるよなぁ?」
まるでブラックファントムの纏う紅の光は絶対領域だ。
螺旋上の紅の光がブラックファントムの周囲を徘徊し、光の主である王に襲い掛かる害悪を消滅させる。
全方位にてあらゆる弾丸を通さぬ螺旋の壁。
両翼に搭載されたブースターの噴射と共にブラックファントムは飛翔を始める。
ブラックファントムとアインツヴァインのスペック差は歴然たるものだ。
飛翔したブラックファントムの速度はフライトユニットを装備した鋼機の飛行速度など、兎と亀ほどの開きがある。
つまりはブラックファントムに飛翔を許したら、イーグルの面々にはブラックファントム捕獲など不可能の事象と化してしまう。
だが、それに対して、こうなることをシャーリーは機体内でかすかに微笑んで、
「α4……やれ……。」
そう命令を出した。
その瞬間、大きな風きり音が鳴り響き、ブラックファントムの機体が飛行体勢入っていた揺らぎ倒れた。
火の入っていたブースターはそのまま噴射を続け、大地に擦るようにして倒れた機体を山部の腹部に向けて突撃させる。
正体不明の攻撃にブラックファントムの絶対防御が打破されたのだ。
その結果を見てシャーリーは自分たちの考えが間違っていなかったのだと確信する。
そして理解している、二度目は無いのだと…。
何せこれは連発できない代物だ、そして種さえ割れてしまえば、あの機体には通じないのは明白。
ならば、この瞬間、この刹那こそが唯一にして無二の機会。
「投擲せよ!」
その掛け声と共に三機の鋼機が腰部にある連鎖式手榴弾(チェーングレネード)をブラックファントムに向けて投げつける。
爆発、大地を構成する数多の土が天に上がる。
これこそが、絶対防御を破る為の秘策。
「各員、特殊弾頭に切り替えよ。」
シャーリーの掛け声と共にアサルトライフルのマガジンを取り外し、腰から黄色のマーカーの入ったマガジンを装填する。
「全ては作戦通りに…だ。分かっているな?」
「私は当然ながら、それにそこのガキに言ってやった方がいいんじゃないでしょうかね。」
「誰がガキだ!お前こそ、そんな風に格好つけてミスったら大恥ものだぜ!」
「なら――撃て。」
その号令と共に三機の鋼機の銃口が、山腹に横たわったブラックファントムに向けて撃ち放った。
鋼機の持ったアサルトライフルから放たれた弾丸が倒れたブラックファントムに襲い掛かる。
第七機関が衛星から確認した鋼獣とブラックファントムの12度の戦い。
その中でブラックファントムは何度か今回のような防護を行い敵の攻撃を無効化した。
主に対象になったのは長距離もしくは中距離攻撃を行う鋼獣だ。
射撃攻撃に対する絶対的な防御。
これを崩さなければそもそもブラックファントムを捕獲することなど、不可能である。
近距離戦を挑めばその強大な力の前には勝機は無いのだから。
世界政府第七機関直属組織『イーグル』はこの絶対防御を破る為にブラックファントムの戦闘をあらゆる方向から研究した。
その中で、この光を越える突破口になると思われたのが第7度目の戦い、通称、乙姫との戦いだ。
この戦いのみが遠距離型の敵に唯一絶対防御を使わなかった例外だった。
何故、この時だけ使わなかったのか?
『イーグル』は様々な推論を立てる。
42も出された仮説の中で最も有力視されたのが、この乙姫の攻撃の性質であった。
その他の鋼獣とこの乙姫の違いは攻撃が実体を伴っているか否か、つまりは乙姫は音を衝撃として相手を攻撃する鋼獣であったという点だ。
つまりブラックファントムの纏う光は実体を持つものしか消滅させる事できない可能性が高い。
光の原理は不明だが、性質は実体あるものをそのエネルギーで消滅させているといったものだろうと推測されている。
ならばこれを通過するためには実体を伴わない攻撃を行えば、通じる可能性が高かった。
第七機関にある武装でそのような攻撃を行える兵装は一つしかなかった。
圧縮した空気を砲弾として撃ち出し、対象に衝撃を与える、通称:空圧砲(ブラストキャノン)。
銃弾を使わず大気という無限の弾を放出するというコンセプトを元に開発された大型ライフルであるそれは、まさに今回の作戦に打ってつけのものだったといえるだろう。
だが、所詮はまだ実験段階もので、サンプルに一つできただけであり、一発撃ったら弾丸である大気の圧縮にかかる時間が1分であるという事、照準の悪さ故に動いている敵に命中させることは非常に困難であるという事、命中した所で相手に致命的な衝撃を与える事が出来ないという事、これらからこの兵装はとてもではないが実戦で扱えるものでは無かった。
だが、今回の捕獲作戦、世界政府からの勅命でもあり、なんとしても成功させなければならない。
空圧砲は当てた所でブラックファントムを戦闘不能に追い込むことは適わず、その一撃でこちらの全ての目論見が悟られてしまう。
空圧砲はそれだけで全長30mという超大型兵器だ。
それに光学迷彩処理を行い姿を隠した所で発射して外しでもしたら、すぐさま位置が割り出され打破されてしまうだろう。
故に『イーグル』が行なわなければならなかった最初の行動は、ブラックファントムの注意を別の所に引きつける事だった。
そのために囲うようにブラックファントムの前に三機で降下したのだ。
オープンチャンネルで会話を行ったのも、ブラックファントムの思考に雑音を混ぜ真実から遠ざける為だ。
これが空圧砲を直撃させる為に『イーグル』がとった策であった。
そしてその策は成功する、ブラックファントムの注意を引くことに成功し、空圧砲を対象に命中させる事に成功した。
この際に、作戦を遂行したαチームはいくらかの想定があったサイコロの目の中でもブラックファントムの飛翔間際を打ちバランスを崩させるという最もいい目を得た。
そうして『イーグル』はブラックファントムに向けて銃撃を開始する。
倒れた際に三機の鋼機が投擲したチェーングレネードによって発生した大きな土煙ゆえにブラックファントムの纏った光が分散していた。
一時的なブラックファントムの行動の抑制、チェーングレネードによる絶対防御破りの結界、そして、そのアサルトライフルに装填された特殊弾、作戦遂行に必要な要因は全て揃った。
この瞬間、この刹那ならば、あの防御を突破することも出来る。
ブラックファントムを囲んでいた三機の鋼機は弾丸を雨嵐のようにブラックファントムに浴びせかける。
舞い上がった砂煙ゆえに対象を明確に補足することは出来ないが、ブラックファントムの背後に山腹を構えた上での三方向からの射撃。
下手な鉄砲も数撃てば当たるなどという言葉もあるがここまで徹底しているともはやこれは、弾丸の豪雨だ。
天から降り注ぐ雨という雫を傘を持たずに、回避する事が出来ないように、紅い光という絶対防御の傘を失ったブラックファントムにはその雨を回避する事は出来ない。
三機はマガジンの弾を撃ちつくすと、すぐさま新しいマガジンに装填する。
そして発砲を繰り返した。
土煙が晴れてゆき、煙の中でゆらりとひとつの影が蠢く。
煙ゆえに薄っすらとしかまだ視認できないが禍々しいシルエットがすぐにそれが何かと教えてくれる。
悪夢の体現、人類の守護者にして破壊者、相反する力の担い手、怨嗟の魔王はそこにただ、立っていた。
第七機関が衛星から確認した鋼獣とブラックファントムの12度の戦い。
その中でブラックファントムは何度か今回のような防護を行い敵の攻撃を無効化した。
主に対象になったのは長距離もしくは中距離攻撃を行う鋼獣だ。
射撃攻撃に対する絶対的な防御。
これを崩さなければそもそもブラックファントムを捕獲することなど、不可能である。
近距離戦を挑めばその強大な力の前には勝機は無いのだから。
世界政府第七機関直属組織『イーグル』はこの絶対防御を破る為にブラックファントムの戦闘をあらゆる方向から研究した。
その中で、この光を越える突破口になると思われたのが第7度目の戦い、通称、乙姫との戦いだ。
この戦いのみが遠距離型の敵に唯一絶対防御を使わなかった例外だった。
何故、この時だけ使わなかったのか?
『イーグル』は様々な推論を立てる。
42も出された仮説の中で最も有力視されたのが、この乙姫の攻撃の性質であった。
その他の鋼獣とこの乙姫の違いは攻撃が実体を伴っているか否か、つまりは乙姫は音を衝撃として相手を攻撃する鋼獣であったという点だ。
つまりブラックファントムの纏う光は実体を持つものしか消滅させる事できない可能性が高い。
光の原理は不明だが、性質は実体あるものをそのエネルギーで消滅させているといったものだろうと推測されている。
ならばこれを通過するためには実体を伴わない攻撃を行えば、通じる可能性が高かった。
第七機関にある武装でそのような攻撃を行える兵装は一つしかなかった。
圧縮した空気を砲弾として撃ち出し、対象に衝撃を与える、通称:空圧砲(ブラストキャノン)。
銃弾を使わず大気という無限の弾を放出するというコンセプトを元に開発された大型ライフルであるそれは、まさに今回の作戦に打ってつけのものだったといえるだろう。
だが、所詮はまだ実験段階もので、サンプルに一つできただけであり、一発撃ったら弾丸である大気の圧縮にかかる時間が1分であるという事、照準の悪さ故に動いている敵に命中させることは非常に困難であるという事、命中した所で相手に致命的な衝撃を与える事が出来ないという事、これらからこの兵装はとてもではないが実戦で扱えるものでは無かった。
だが、今回の捕獲作戦、世界政府からの勅命でもあり、なんとしても成功させなければならない。
空圧砲は当てた所でブラックファントムを戦闘不能に追い込むことは適わず、その一撃でこちらの全ての目論見が悟られてしまう。
空圧砲はそれだけで全長30mという超大型兵器だ。
それに光学迷彩処理を行い姿を隠した所で発射して外しでもしたら、すぐさま位置が割り出され打破されてしまうだろう。
故に『イーグル』が行なわなければならなかった最初の行動は、ブラックファントムの注意を別の所に引きつける事だった。
そのために囲うようにブラックファントムの前に三機で降下したのだ。
オープンチャンネルで会話を行ったのも、ブラックファントムの思考に雑音を混ぜ真実から遠ざける為だ。
これが空圧砲を直撃させる為に『イーグル』がとった策であった。
そしてその策は成功する、ブラックファントムの注意を引くことに成功し、空圧砲を対象に命中させる事に成功した。
この際に、作戦を遂行したαチームはいくらかの想定があったサイコロの目の中でもブラックファントムの飛翔間際を打ちバランスを崩させるという最もいい目を得た。
そうして『イーグル』はブラックファントムに向けて銃撃を開始する。
倒れた際に三機の鋼機が投擲したチェーングレネードによって発生した大きな土煙ゆえにブラックファントムの纏った光が分散していた。
一時的なブラックファントムの行動の抑制、チェーングレネードによる絶対防御破りの結界、そして、そのアサルトライフルに装填された特殊弾、作戦遂行に必要な要因は全て揃った。
この瞬間、この刹那ならば、あの防御を突破することも出来る。
ブラックファントムを囲んでいた三機の鋼機は弾丸を雨嵐のようにブラックファントムに浴びせかける。
舞い上がった砂煙ゆえに対象を明確に補足することは出来ないが、ブラックファントムの背後に山腹を構えた上での三方向からの射撃。
下手な鉄砲も数撃てば当たるなどという言葉もあるがここまで徹底しているともはやこれは、弾丸の豪雨だ。
天から降り注ぐ雨という雫を傘を持たずに、回避する事が出来ないように、紅い光という絶対防御の傘を失ったブラックファントムにはその雨を回避する事は出来ない。
三機はマガジンの弾を撃ちつくすと、すぐさま新しいマガジンに装填する。
そして発砲を繰り返した。
土煙が晴れてゆき、煙の中でゆらりとひとつの影が蠢く。
煙ゆえに薄っすらとしかまだ視認できないが禍々しいシルエットがすぐにそれが何かと教えてくれる。
悪夢の体現、人類の守護者にして破壊者、相反する力の担い手、怨嗟の魔王はそこにただ、立っていた。
土煙が晴れ、ブラックファントムが立ち尽くしている。
さきほど弾丸の豪雨に晒されたなどとは思わせぬ風体だった。
そう、その装甲にはまるでダメージが無いのだ。
「こいつを倒壊させた所までは面白かったんだがな…。」
ブラックファントムは告げる。
だが、先ほどまでとは違いその声には覇気が無かった。
撃たれていたにも関わらず、相手に怒りを眼を向けるのではなく、まるで落胆したとでもいうような…そんな響きがあった。
「確かにあんたらの目の付け所は面白かった、こいつが離陸しようとするその瞬間を狙い、この機体のバランスを崩させる攻撃、そこからの呪層破り、ここまではやられた俺も感心したんだ。そこまではな…だが、あれだけの機会を得ておいて肝心の攻撃がこの体たらく、所詮はこれがあんたらの限界なんだ。だからあいつらにあんたらは――」
「――いいや、違う。」
ブラックファントムの言に割ってはいるようにシャーリーはブラックファントムの言葉を否定する。
「何がだ…。」
その言葉の意味を求めるようとするブラックファントムより早く、
「違うんだ、ブラックファントム、これで……これで私たちの勝ちだ。」
シャーリーは勝利宣言を行った。
「何を馬鹿な事を…。」
ブラックファントムは黒槍を時峰の乗る鋼機に向けた。
矛先が展開し、紅い光が収束して矛先に集まっていく。
「これを撃てばお前が―――――」
その時だった、ブラックファントムが右手に持っていた黒槍を落としたのだ。
「なんだ、これは…。」
ブラックファントムから発せられる声に驚きと動揺が出る。
そのままブラックファントムは糸の切れた人形のようにぐったりと両腕を落とす。
「こちらでも確認しているよ、ブラックファントム。」
「貴様ら、一体、こいつに何をした…。」
シャーリーはくすりと笑う。
「動かないんだろう?機体が…。」
「貴様ら、一体、こいつに何をした!!!」
ブラックファントムから発せられる声に震えが入る。
「なに、ちょっと毒を盛ったんだよ。」
「毒!?」
α6が割って入るようにいってくる。
「説明が欲しいのなら、僕が説明してあげるよ。S‐15以降の鋼機には例外無くブラックボックスとでもいうようなものがひとつ搭載されていてね。」
「ブラックボックスだと…?」
「うん、そうさ、そしてこのブラックボックスの正体は機体の緊急停止システムなんだよ。軍から強奪された鋼機のOSを遠隔操作によって内臓したブラックボックス内のシステムを起動、そして機体の全システムをフリーズさせてしまうシステムだ。まあ、このシステムの起動には機体のシリアルナンバー必要でね、アクセスできるようになっている。ま、そのシリアルナンバーがわからなかったわけだよ、外見からも判断できないしね。」
「……。」
「そこで、僕達は、ブラックファントム、つまり君の機体をハッキングする事にしたんだ。君の機体はS-16を原形として大きく改造を加えられた機体の可能性が高かった、ブラックボックスはS-15以降のどの鋼機にも搭載されている。そもそも、我々が通常相手にしている鋼獣の上をいく性能の持ち主だ、そんな奴と正面からやって勝ち目なんて、無いのがわからないのはそこにいる馬鹿ぐらいだ。だが、このブラックボックスを利用した仕掛けをやるだけならば、賭けてみる価値はあると思わないか?」
嘲笑するような響きを込めてそう言った後、α6は機体の頭部のカメラをα5の方に向けた。
「ん?馬鹿ってのは俺の事か?」
α5は素っ頓狂に言う。
それに対し、
「むしろお前以外に誰がいる?それにだ、そもそもお前この話、理解できてる?」
α6はα5を小馬鹿にするように言った。
「てめぇ!!!」
「――見苦しいのはやめろ、それにだ、事実を言われて怒るのは本物の馬鹿だ。」
「そんな、隊長までぇ~。」
「だそうだ。」
諌められたα5を見て得意気α6は言う。
シャーリーそれを見てあきれたようなため息をついた。
「お前もだ、α6。お前らはさっさとそこに寝ている馬鹿の回収をしろ。さて続きの話をしようかブラックファントム。実際の所、シリアルナンバー不明の機体のブラックボックスを起動するために我々はどのように君の機体をハッキングするかを考えたんだ、それが・・・。」
「それが、そのアサルトライフルに内臓された弾丸か!!」
「ご明察だ、ブラックファントム、この弾丸は着弾と同時に大量のナノマシンをばら撒く特別性の弾丸だ、そしてばら撒かれたナノマシンは君の機体の各所に侵入し、接続し、君の機体のデータを奪わせてもらったというわけだね。そして得たデータからシリアルナンバーを洗いだし、本部側からアクセスしブラックボックスを起動させてもらったというわけだ。これでチェックメイトという奴だ。」
ブラックファントムから笑い声が漏れる。
「どうしたんだい?ブラックファントム、何か面白いことでもあったかね、君にも我々は色々聞きたい事があるんだ、君には正常でいてもらわないと困る。」
「ククク、いや、何、俺はちょっと感心したんだ、見直したんだよ。」
ブラックファントムから発せられる言葉は窮地に追い込まれているモノのそれでは無かった。
「何にだ。」
「お前らだってやれば出来るんだなって…しかしだなぁ、しかしだ。そんな知恵があるお前らがなんであいつらにまったく勝てないんだ。」
「それはそもそも情報が…。」
「いや、違うな、貴様らは持っている筈だ、奴らの情報なんて、それこそ俺の比じゃないぐらいに・・・。」
「何…?」
シャーリーは自分の耳を疑った。
こいつは一体、何を言っている。
我々があの正体不明のアンノウンの情報を知っている?
何を馬鹿な、奴らの情報があれば、まだ少しはこの劣勢を跳ね返せるような作戦を立てられた筈だ。
被害を最小限に抑えられるように行動することぐらいは出来た筈だ。
奴らの強さはその機体の超常的な能力に加え、その正体の不明さにある。
神出鬼没で、一機一機がまったく違う形態、まったく違う性能を誇り、それを前提した作戦がまったく立てられないのだ。
我々が確認した鋼獣は数十種いるが、その中でその機体の特性を判明するにいたったのは乙姫、嵐蟲、天狼、雷牛の4機ぐらいだ。
といってもまだ彼らがどのような隠し手をもっているかもわからず、判明したされる特性も仮説の域を出ていない。
自身の実力より上とするものと戦う場合に勝利を得るには、徹底的な分析と対策を取ることを必要とする。
『イーグル』がブラックファントムの捕獲を了解したのも鋼獣と違いそれを取りやすかったからに他ならない。
だが、こいつは今、一体何を言った?
「知らされてないのか、まあ、そうならば説明はつくな。」
そういって、ブラックファントムの中の声は一人納得するような言葉を発する。
「待て!ブラックファントム、まさか、我々の上層部は奴らが何者か知っているということなのか?そして彼らの使う機体の正体も!?」
元々、この鋼獣との戦いは、正体不明のアンノウンが鋼獣を用いて、無差別な殺戮を行った所から始まった。
だが、もし、政府が最初から彼らが何者であるかを知っていたとするのならば、この事態を事前に察知していたのだとするならば…。
この戦いには、自分が考える以上の色々な思惑が潜んでいるのでは…?
そんな思考がシャーリーの中で巡る。
だが、追求しようとするシャーリーに対して、
「どうでもいいよ、UHの奴らがどうかだなんて俺には興味の無い事だ、俺は奴らをこの世から消せればそれで良い。」
もう語る気も無いとブラックファントムはその話を打ち切った。
「そうか、ならば、我々艦で色々聞けばいいだけのことだ。」
そうだ、焦る必要は無いとシャーリーは自分に言い聞かせる。
「ところでだ、色々ヒントを与えてやったんだから、このフリーズを解く気は無いか?」
一瞬の硬直の後、その発言に対してα5とα6は笑った。
「君は立場を理解していないようだな、それにだ、そのフリーズは我々の手で解除することは出来ないのだよ、少なくとも高官クラスの認証が無ければ解除できない仕組みになっている。つまりだ、これから何が起ころうと君の機体はそのままだということだ。」
「なるほどな―――後悔はするなよ。」
少し悲しげにブラックファントムはそう発する。
その様にシャーリーは違和感を感じた。
今まで、激怒したように見せてもある程度の余裕を持っていたように思えるブラックファントムから初めてその声に焦りの色が浮かんだのだ。
捕獲されたという事実に今更直面し、焦ったのだろうか…いや、それは明らかに別の――
その時、上空で大きな爆発音が鳴り、司令部からシャーリーに向けて通信が入った。
さきほど弾丸の豪雨に晒されたなどとは思わせぬ風体だった。
そう、その装甲にはまるでダメージが無いのだ。
「こいつを倒壊させた所までは面白かったんだがな…。」
ブラックファントムは告げる。
だが、先ほどまでとは違いその声には覇気が無かった。
撃たれていたにも関わらず、相手に怒りを眼を向けるのではなく、まるで落胆したとでもいうような…そんな響きがあった。
「確かにあんたらの目の付け所は面白かった、こいつが離陸しようとするその瞬間を狙い、この機体のバランスを崩させる攻撃、そこからの呪層破り、ここまではやられた俺も感心したんだ。そこまではな…だが、あれだけの機会を得ておいて肝心の攻撃がこの体たらく、所詮はこれがあんたらの限界なんだ。だからあいつらにあんたらは――」
「――いいや、違う。」
ブラックファントムの言に割ってはいるようにシャーリーはブラックファントムの言葉を否定する。
「何がだ…。」
その言葉の意味を求めるようとするブラックファントムより早く、
「違うんだ、ブラックファントム、これで……これで私たちの勝ちだ。」
シャーリーは勝利宣言を行った。
「何を馬鹿な事を…。」
ブラックファントムは黒槍を時峰の乗る鋼機に向けた。
矛先が展開し、紅い光が収束して矛先に集まっていく。
「これを撃てばお前が―――――」
その時だった、ブラックファントムが右手に持っていた黒槍を落としたのだ。
「なんだ、これは…。」
ブラックファントムから発せられる声に驚きと動揺が出る。
そのままブラックファントムは糸の切れた人形のようにぐったりと両腕を落とす。
「こちらでも確認しているよ、ブラックファントム。」
「貴様ら、一体、こいつに何をした…。」
シャーリーはくすりと笑う。
「動かないんだろう?機体が…。」
「貴様ら、一体、こいつに何をした!!!」
ブラックファントムから発せられる声に震えが入る。
「なに、ちょっと毒を盛ったんだよ。」
「毒!?」
α6が割って入るようにいってくる。
「説明が欲しいのなら、僕が説明してあげるよ。S‐15以降の鋼機には例外無くブラックボックスとでもいうようなものがひとつ搭載されていてね。」
「ブラックボックスだと…?」
「うん、そうさ、そしてこのブラックボックスの正体は機体の緊急停止システムなんだよ。軍から強奪された鋼機のOSを遠隔操作によって内臓したブラックボックス内のシステムを起動、そして機体の全システムをフリーズさせてしまうシステムだ。まあ、このシステムの起動には機体のシリアルナンバー必要でね、アクセスできるようになっている。ま、そのシリアルナンバーがわからなかったわけだよ、外見からも判断できないしね。」
「……。」
「そこで、僕達は、ブラックファントム、つまり君の機体をハッキングする事にしたんだ。君の機体はS-16を原形として大きく改造を加えられた機体の可能性が高かった、ブラックボックスはS-15以降のどの鋼機にも搭載されている。そもそも、我々が通常相手にしている鋼獣の上をいく性能の持ち主だ、そんな奴と正面からやって勝ち目なんて、無いのがわからないのはそこにいる馬鹿ぐらいだ。だが、このブラックボックスを利用した仕掛けをやるだけならば、賭けてみる価値はあると思わないか?」
嘲笑するような響きを込めてそう言った後、α6は機体の頭部のカメラをα5の方に向けた。
「ん?馬鹿ってのは俺の事か?」
α5は素っ頓狂に言う。
それに対し、
「むしろお前以外に誰がいる?それにだ、そもそもお前この話、理解できてる?」
α6はα5を小馬鹿にするように言った。
「てめぇ!!!」
「――見苦しいのはやめろ、それにだ、事実を言われて怒るのは本物の馬鹿だ。」
「そんな、隊長までぇ~。」
「だそうだ。」
諌められたα5を見て得意気α6は言う。
シャーリーそれを見てあきれたようなため息をついた。
「お前もだ、α6。お前らはさっさとそこに寝ている馬鹿の回収をしろ。さて続きの話をしようかブラックファントム。実際の所、シリアルナンバー不明の機体のブラックボックスを起動するために我々はどのように君の機体をハッキングするかを考えたんだ、それが・・・。」
「それが、そのアサルトライフルに内臓された弾丸か!!」
「ご明察だ、ブラックファントム、この弾丸は着弾と同時に大量のナノマシンをばら撒く特別性の弾丸だ、そしてばら撒かれたナノマシンは君の機体の各所に侵入し、接続し、君の機体のデータを奪わせてもらったというわけだね。そして得たデータからシリアルナンバーを洗いだし、本部側からアクセスしブラックボックスを起動させてもらったというわけだ。これでチェックメイトという奴だ。」
ブラックファントムから笑い声が漏れる。
「どうしたんだい?ブラックファントム、何か面白いことでもあったかね、君にも我々は色々聞きたい事があるんだ、君には正常でいてもらわないと困る。」
「ククク、いや、何、俺はちょっと感心したんだ、見直したんだよ。」
ブラックファントムから発せられる言葉は窮地に追い込まれているモノのそれでは無かった。
「何にだ。」
「お前らだってやれば出来るんだなって…しかしだなぁ、しかしだ。そんな知恵があるお前らがなんであいつらにまったく勝てないんだ。」
「それはそもそも情報が…。」
「いや、違うな、貴様らは持っている筈だ、奴らの情報なんて、それこそ俺の比じゃないぐらいに・・・。」
「何…?」
シャーリーは自分の耳を疑った。
こいつは一体、何を言っている。
我々があの正体不明のアンノウンの情報を知っている?
何を馬鹿な、奴らの情報があれば、まだ少しはこの劣勢を跳ね返せるような作戦を立てられた筈だ。
被害を最小限に抑えられるように行動することぐらいは出来た筈だ。
奴らの強さはその機体の超常的な能力に加え、その正体の不明さにある。
神出鬼没で、一機一機がまったく違う形態、まったく違う性能を誇り、それを前提した作戦がまったく立てられないのだ。
我々が確認した鋼獣は数十種いるが、その中でその機体の特性を判明するにいたったのは乙姫、嵐蟲、天狼、雷牛の4機ぐらいだ。
といってもまだ彼らがどのような隠し手をもっているかもわからず、判明したされる特性も仮説の域を出ていない。
自身の実力より上とするものと戦う場合に勝利を得るには、徹底的な分析と対策を取ることを必要とする。
『イーグル』がブラックファントムの捕獲を了解したのも鋼獣と違いそれを取りやすかったからに他ならない。
だが、こいつは今、一体何を言った?
「知らされてないのか、まあ、そうならば説明はつくな。」
そういって、ブラックファントムの中の声は一人納得するような言葉を発する。
「待て!ブラックファントム、まさか、我々の上層部は奴らが何者か知っているということなのか?そして彼らの使う機体の正体も!?」
元々、この鋼獣との戦いは、正体不明のアンノウンが鋼獣を用いて、無差別な殺戮を行った所から始まった。
だが、もし、政府が最初から彼らが何者であるかを知っていたとするのならば、この事態を事前に察知していたのだとするならば…。
この戦いには、自分が考える以上の色々な思惑が潜んでいるのでは…?
そんな思考がシャーリーの中で巡る。
だが、追求しようとするシャーリーに対して、
「どうでもいいよ、UHの奴らがどうかだなんて俺には興味の無い事だ、俺は奴らをこの世から消せればそれで良い。」
もう語る気も無いとブラックファントムはその話を打ち切った。
「そうか、ならば、我々艦で色々聞けばいいだけのことだ。」
そうだ、焦る必要は無いとシャーリーは自分に言い聞かせる。
「ところでだ、色々ヒントを与えてやったんだから、このフリーズを解く気は無いか?」
一瞬の硬直の後、その発言に対してα5とα6は笑った。
「君は立場を理解していないようだな、それにだ、そのフリーズは我々の手で解除することは出来ないのだよ、少なくとも高官クラスの認証が無ければ解除できない仕組みになっている。つまりだ、これから何が起ころうと君の機体はそのままだということだ。」
「なるほどな―――後悔はするなよ。」
少し悲しげにブラックファントムはそう発する。
その様にシャーリーは違和感を感じた。
今まで、激怒したように見せてもある程度の余裕を持っていたように思えるブラックファントムから初めてその声に焦りの色が浮かんだのだ。
捕獲されたという事実に今更直面し、焦ったのだろうか…いや、それは明らかに別の――
その時、上空で大きな爆発音が鳴り、司令部からシャーリーに向けて通信が入った。
『イーグル』本部内司令部。
そこは世界政府第七機関直属組織『イーグル』のブレインとも呼べる場所だった。
今、ここでは遂行中である、ブラックファントム捕獲作戦を人工衛星でモニターし、指示支援を行っている。
そしてその中央にある司令席に、イーグルの総司令である、秋常貞夫は腰掛けていた。
先ほど、ブラックファントムの捕獲成功の報告を聞き、成功率が低い中で何度もシミュレーションを重ねた作戦が成功に近づいた事で安堵の息をついた所だった。
だが、まだ気を抜けないのも事実である。
ぬか喜びはいけない、それは冷静な判断を鈍らせるものだ。
現場の人間が決死の覚悟で作戦を遂行しているのに対し、こちらがそれを的確な判断をもって支えるそれが自分達の役目なのだから。
秋常は腰からシュガースティックの入った小箱を取り出し、一つを小箱から出して咥えた。
本当ならば煙草を咥えたいのだが、残念ながら司令部は禁煙である。
それでもこれを咥えるという行為をするだけでもある程度、落ち着くものだった。
「柳瀬くん、αチームの現在の状況の報告を頼む。」
「はい、現在、イーグルが送りこんだαチームは輸送機からフライトユニットを受け取り、コードBPに運送用の特殊ネットを取り付けている所です。BPは先ほどと同じく緊急停止システムの作動により、現在行動不能のままです。システムが解除されるなどと言った兆候も今のところは見られません。5分後には輸送機内にBPの収容を完了する予定です。」
柳瀬と呼ばれた、女性オペレーターが秋常に報告する。
「そうか、一番の難関を脱したとは言え、まだ作戦は終わっていない、最後まで気を抜かないようにモニターしていてくれ。」
柳瀬は秋常のその発言に了解の旨を伝える。
「しかし、BPは色々気になる事を発言していましたね。」
秋常の横にいる、眼鏡をかけた長髪の女性が言った。
「まあ、思い当たる節が無かったわけでもなかったが、やはりなぁと言った所かな、琴峰くん。」
秋常の直属の部下であり、『イーグル』の副官である琴峰雫はそれに是と答える。
「引渡しの前に出来る限りの情報は拾っておきたい所です。それと、ご子息も無事であったようでなによりです。」
「からかうのはよしてくれ、私はあいつを勘当した身だよ、だから私とあいつの中には血以外の繋がりはもう無いんだ。」
「それでも、あなたを見返したくて、彼はこの『イーグル』に入ってきたのでしょう?普通にあのまま機関軍にいる事出来たでしょうに…。」
「知らんよ、それにその話は今する話でもない。」
秋常は不快そうにその話を打ち切った。
そうして少しの沈黙があった後、秋常はわざとらしい咳払いをして言った。
「ところで琴峰くん、第七機関は何か言ってきているかね?」
「第一機関と第四機関から、作戦遂行の経過の報告を急かされたようで、さきほどから何度も作戦の遂行状況を説明しろというコールが入っています。」
「まったく、世界政府などといってもこれでは名前が変わっただけで統一前と何も変わらんのではないか?」
「ノーコメントです、そんな事を言っているのが機関の上層部の耳に入ったら、司令の首が飛びますよ。」
そういった、琴峰の発言に秋常は少し苦笑いして
「肝に命じておくよ。」
と答えた。
そもそも、今回の作戦は他の機関から第七機関がやらざるおえなくなって『イーグル』に行わせたモノだ。
最初の鋼獣の出現が第七機関の統治下である極東の旧名日本であった為、第七機関が作り上げ世界政府を乗っ取る新しい兵器なのではないのかと他の機関から疑いをかけられたのだ。
勿論、それは噂程度の推論にすぎず確固たる証拠があったわけでは無いが、第七機関を見る他の機関の目は日に日に厳しくなっていった。
その上で、あのブラックファントムの登場である、何の因縁か、ブラックファントムが最初に出現したのもまた、日本だった。
当時、世界各地が鋼獣に荒らされており、その最大の被害を被っていたのが第七機関の統治下であった為に、疑いに薄れてきたところで、なんともタイミング悪く現れたのだ。
それからまたこういう噂がいかにも真実のように語られる事になる、第七機関は極東の地を利用して世界政府乗っ取りの為の兵器の開発の実験を行っている。
我々が被っている被害はその実験の余波であると…。
無論、鋼獣にはまったく未知のテクノロジーが使われている事は明白であり、これが今、この世界に存在するテクノロジーで作れるものでは無いというのは技術者の目から見れば火を見るより明らかな事ではあったが、それ以降、前にも増して、第七機関を見る他の機関の目は厳しいものになった。
言ってしまえば、今、『イーグル』が行っているこの作戦はブラックファントムを捕獲し、世界共通の場に提供することで身の潔白を証明しよう行ったものだ。
まったく他の機関の証拠もない言いがかりなど無視すればいいのにと秋常は常々思う。
だが、他機関からそれを口実にした様々な脅しを第七機関が押し付けられた等という噂を聞いてもいた為、仕方がなかったのかもしれないなという考えも頭の片隅にはあった。
「司令、BPへの外付けのブースターの装着作業が終了しました。今から輸送機の方へと向かうとの時峰隊長からの報告がありました。」
柳瀬が秋常に対して、報告をする。
「そうか。」
なんにせよ、今はこの作戦に集中しなければならない。
この作戦の成功は確実に人類にあのアンノウンと戦う為の力をもたらすのだから…。
そんな事を秋常が考えていた時だった…
「えっ!?」
と柳瀬が素っ頓狂な声を上げたのは…。
「柳瀬、何があった!」
琴峰は声を大きくして柳瀬に状況の報告を求める。
秋常は琴峰を見て、自分と同じく柳瀬の言葉に嫌な悪寒を感じたのだと理解する。
「は、はい!αチームを回収中の輸送機が…あ、あの、げ、撃墜…されました…。」
何を、今何を言った?
「どういうことだ!BPが輸送機を撃墜したのか!?」
激するように琴峰が柳瀬に解答を求める。
「BPの緊急停止システムは作動したままですので、BPが輸送機を破壊した可能性は限りなく低いと思われます。それに――」
秋常の脳裏に最悪のシナリオが思い浮かぶ。
「――正体不明の機影が、時速300kmでαチームの方に向かっています、各機関とのデータベースに照合―――データベースに無い機体です、ですが…ですが…」
もはや司令部にいる数十名の人間、全てが柳瀬がその先に何を言おうとしているのか察知している。
最悪だ、なんと運が悪い、なんとタイミングが悪い、まるで神が我々に滅ぶべしと審判を下したようじゃないか。
「機影からして、鋼獣と見てまず…間違いないかと思います。」
その柳瀬の言葉は司令部の人間にまるで罪人への死刑宣告を送るような響きを持って放たれた。
そこは世界政府第七機関直属組織『イーグル』のブレインとも呼べる場所だった。
今、ここでは遂行中である、ブラックファントム捕獲作戦を人工衛星でモニターし、指示支援を行っている。
そしてその中央にある司令席に、イーグルの総司令である、秋常貞夫は腰掛けていた。
先ほど、ブラックファントムの捕獲成功の報告を聞き、成功率が低い中で何度もシミュレーションを重ねた作戦が成功に近づいた事で安堵の息をついた所だった。
だが、まだ気を抜けないのも事実である。
ぬか喜びはいけない、それは冷静な判断を鈍らせるものだ。
現場の人間が決死の覚悟で作戦を遂行しているのに対し、こちらがそれを的確な判断をもって支えるそれが自分達の役目なのだから。
秋常は腰からシュガースティックの入った小箱を取り出し、一つを小箱から出して咥えた。
本当ならば煙草を咥えたいのだが、残念ながら司令部は禁煙である。
それでもこれを咥えるという行為をするだけでもある程度、落ち着くものだった。
「柳瀬くん、αチームの現在の状況の報告を頼む。」
「はい、現在、イーグルが送りこんだαチームは輸送機からフライトユニットを受け取り、コードBPに運送用の特殊ネットを取り付けている所です。BPは先ほどと同じく緊急停止システムの作動により、現在行動不能のままです。システムが解除されるなどと言った兆候も今のところは見られません。5分後には輸送機内にBPの収容を完了する予定です。」
柳瀬と呼ばれた、女性オペレーターが秋常に報告する。
「そうか、一番の難関を脱したとは言え、まだ作戦は終わっていない、最後まで気を抜かないようにモニターしていてくれ。」
柳瀬は秋常のその発言に了解の旨を伝える。
「しかし、BPは色々気になる事を発言していましたね。」
秋常の横にいる、眼鏡をかけた長髪の女性が言った。
「まあ、思い当たる節が無かったわけでもなかったが、やはりなぁと言った所かな、琴峰くん。」
秋常の直属の部下であり、『イーグル』の副官である琴峰雫はそれに是と答える。
「引渡しの前に出来る限りの情報は拾っておきたい所です。それと、ご子息も無事であったようでなによりです。」
「からかうのはよしてくれ、私はあいつを勘当した身だよ、だから私とあいつの中には血以外の繋がりはもう無いんだ。」
「それでも、あなたを見返したくて、彼はこの『イーグル』に入ってきたのでしょう?普通にあのまま機関軍にいる事出来たでしょうに…。」
「知らんよ、それにその話は今する話でもない。」
秋常は不快そうにその話を打ち切った。
そうして少しの沈黙があった後、秋常はわざとらしい咳払いをして言った。
「ところで琴峰くん、第七機関は何か言ってきているかね?」
「第一機関と第四機関から、作戦遂行の経過の報告を急かされたようで、さきほどから何度も作戦の遂行状況を説明しろというコールが入っています。」
「まったく、世界政府などといってもこれでは名前が変わっただけで統一前と何も変わらんのではないか?」
「ノーコメントです、そんな事を言っているのが機関の上層部の耳に入ったら、司令の首が飛びますよ。」
そういった、琴峰の発言に秋常は少し苦笑いして
「肝に命じておくよ。」
と答えた。
そもそも、今回の作戦は他の機関から第七機関がやらざるおえなくなって『イーグル』に行わせたモノだ。
最初の鋼獣の出現が第七機関の統治下である極東の旧名日本であった為、第七機関が作り上げ世界政府を乗っ取る新しい兵器なのではないのかと他の機関から疑いをかけられたのだ。
勿論、それは噂程度の推論にすぎず確固たる証拠があったわけでは無いが、第七機関を見る他の機関の目は日に日に厳しくなっていった。
その上で、あのブラックファントムの登場である、何の因縁か、ブラックファントムが最初に出現したのもまた、日本だった。
当時、世界各地が鋼獣に荒らされており、その最大の被害を被っていたのが第七機関の統治下であった為に、疑いに薄れてきたところで、なんともタイミング悪く現れたのだ。
それからまたこういう噂がいかにも真実のように語られる事になる、第七機関は極東の地を利用して世界政府乗っ取りの為の兵器の開発の実験を行っている。
我々が被っている被害はその実験の余波であると…。
無論、鋼獣にはまったく未知のテクノロジーが使われている事は明白であり、これが今、この世界に存在するテクノロジーで作れるものでは無いというのは技術者の目から見れば火を見るより明らかな事ではあったが、それ以降、前にも増して、第七機関を見る他の機関の目は厳しいものになった。
言ってしまえば、今、『イーグル』が行っているこの作戦はブラックファントムを捕獲し、世界共通の場に提供することで身の潔白を証明しよう行ったものだ。
まったく他の機関の証拠もない言いがかりなど無視すればいいのにと秋常は常々思う。
だが、他機関からそれを口実にした様々な脅しを第七機関が押し付けられた等という噂を聞いてもいた為、仕方がなかったのかもしれないなという考えも頭の片隅にはあった。
「司令、BPへの外付けのブースターの装着作業が終了しました。今から輸送機の方へと向かうとの時峰隊長からの報告がありました。」
柳瀬が秋常に対して、報告をする。
「そうか。」
なんにせよ、今はこの作戦に集中しなければならない。
この作戦の成功は確実に人類にあのアンノウンと戦う為の力をもたらすのだから…。
そんな事を秋常が考えていた時だった…
「えっ!?」
と柳瀬が素っ頓狂な声を上げたのは…。
「柳瀬、何があった!」
琴峰は声を大きくして柳瀬に状況の報告を求める。
秋常は琴峰を見て、自分と同じく柳瀬の言葉に嫌な悪寒を感じたのだと理解する。
「は、はい!αチームを回収中の輸送機が…あ、あの、げ、撃墜…されました…。」
何を、今何を言った?
「どういうことだ!BPが輸送機を撃墜したのか!?」
激するように琴峰が柳瀬に解答を求める。
「BPの緊急停止システムは作動したままですので、BPが輸送機を破壊した可能性は限りなく低いと思われます。それに――」
秋常の脳裏に最悪のシナリオが思い浮かぶ。
「――正体不明の機影が、時速300kmでαチームの方に向かっています、各機関とのデータベースに照合―――データベースに無い機体です、ですが…ですが…」
もはや司令部にいる数十名の人間、全てが柳瀬がその先に何を言おうとしているのか察知している。
最悪だ、なんと運が悪い、なんとタイミングが悪い、まるで神が我々に滅ぶべしと審判を下したようじゃないか。
「機影からして、鋼獣と見てまず…間違いないかと思います。」
その柳瀬の言葉は司令部の人間にまるで罪人への死刑宣告を送るような響きを持って放たれた。
CR capter1 SIDE C END
To be continued
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