ステイツ、正式名称アメリカ大陸合衆国。
発足は三十年前、3強の中で最も新しく、そして最も強大な国である。
話はおおよそ四十年ほど前、当時のアメリカの国力が減退した時より始まる。
減退の原因は不景気などの経済的なものではなく、アメリカの政治体型が原因であった。
民主主義と形を取っていたがその裏ではエリートによる特権主義が蔓延っていた。
無論選ばれた人間による統治自体は悪ではない。しかし責任や使命といった統治者に求められるものを忘れ
た時、その支配は悪しき独裁へと形を変わっていく。
そしてその支配に綻びが生じた時、アメリカという国は別の形でこの体面を確保しようとした。
それは戦争による領土拡大であった。十九世紀の悪夢を再び呼び覚ましたのである。
これによりアメリカの国力はかなり回復したが民衆による反発もまた凄まじい物となった。
戦争が終了し、ステイツになる頃にはかつてのアメリカを支配していた政治家や大企業の社長などは誰一人
いなくなっていた。
自らの強欲さによって滅びた者たちの末路であった。
発足は三十年前、3強の中で最も新しく、そして最も強大な国である。
話はおおよそ四十年ほど前、当時のアメリカの国力が減退した時より始まる。
減退の原因は不景気などの経済的なものではなく、アメリカの政治体型が原因であった。
民主主義と形を取っていたがその裏ではエリートによる特権主義が蔓延っていた。
無論選ばれた人間による統治自体は悪ではない。しかし責任や使命といった統治者に求められるものを忘れ
た時、その支配は悪しき独裁へと形を変わっていく。
そしてその支配に綻びが生じた時、アメリカという国は別の形でこの体面を確保しようとした。
それは戦争による領土拡大であった。十九世紀の悪夢を再び呼び覚ましたのである。
これによりアメリカの国力はかなり回復したが民衆による反発もまた凄まじい物となった。
戦争が終了し、ステイツになる頃にはかつてのアメリカを支配していた政治家や大企業の社長などは誰一人
いなくなっていた。
自らの強欲さによって滅びた者たちの末路であった。
昼と夜の時間が丁度同じになり、涼しさを含んだ風と暖かな日差しを運んでくる。外の海岸からは潮の香り
と穏やかな波の音が響いている。
ここは旧アメリカ合衆国、ノースカロライナ軍事基地である。
「おはよう、諸君」
ブリーフィングルームの自動ドアが開くとボルスは中にいる者たちに挨拶をした。
ユニオンの時のような背広姿ではなくステイツ特有の白い軍服をしっかりと着こなしている。
「おはようございます! 隊長!」
筋骨隆々の黒人男性がボルスに敬礼をする。顔は彫が深くインパクトがある顔だった。そして彼もまたボル
スと同じ白の軍服を着ていた。
「おはようございます! 久しぶりの出勤ですね!」
金髪の女性も敬礼をする。敬礼の際に豊かな乳房が勢い良く揺れた。
男性のほうはアルフレッド・ミクソン、通称アル。女性のほうはレイア・マリアベル、通称レイ。どちらも
階級は少尉。彼らはエリートPM部隊『シルバーナイツ』の隊員である。
「ああ、ところでケントはどこだ?」
ボルスはブリーフィングルームを見渡すといると思っていた親友の姿が見当たらない。
いつもなら一番先にここに来て、待ちくたびれているはずなのだが今日に限って姿かたちがどこにも見えな
かった。
「ベルガン開発主任ならば先ほど研究室に入っていきました」
「研究室?」
アルの言葉にボルスは呆れ顔で髪を掻き揚げる。
「やれやれ、また新しい武器でも思いついたのか・・・」
ボルスはケントの”思いつき”で何度もかなり酷い目に会ったことがある。そのせいか、彼の新兵器をまっ
たく信用していなかった。
「仕方がない、私はケントを呼んでくる。他の物はいつも通り格納庫へ、今日はビーム兵器を使った訓練を行
うから機体のチェックを怠わるな」
「了解!」
二人がボルスに対し敬礼をするとボルスはそのまま部屋を出て行った。
ボルスの後姿を見送った後、レイがアルに耳打ちをする。
「隊長とベルガン主任って一体どういう関係なの?」
「一応親友らしい」
「一応ってどういうことなの?」
アルの言葉に眉間に皺を寄せる。彼女にはどうにも想像が付かないようだ。あの神経質そうな男と大雑把そ
うな隊長が仲がいい様子が・・・
「知らん、そこは隊長に聞いてくれ」
アルはそう言うと部屋を出て行った。
と穏やかな波の音が響いている。
ここは旧アメリカ合衆国、ノースカロライナ軍事基地である。
「おはよう、諸君」
ブリーフィングルームの自動ドアが開くとボルスは中にいる者たちに挨拶をした。
ユニオンの時のような背広姿ではなくステイツ特有の白い軍服をしっかりと着こなしている。
「おはようございます! 隊長!」
筋骨隆々の黒人男性がボルスに敬礼をする。顔は彫が深くインパクトがある顔だった。そして彼もまたボル
スと同じ白の軍服を着ていた。
「おはようございます! 久しぶりの出勤ですね!」
金髪の女性も敬礼をする。敬礼の際に豊かな乳房が勢い良く揺れた。
男性のほうはアルフレッド・ミクソン、通称アル。女性のほうはレイア・マリアベル、通称レイ。どちらも
階級は少尉。彼らはエリートPM部隊『シルバーナイツ』の隊員である。
「ああ、ところでケントはどこだ?」
ボルスはブリーフィングルームを見渡すといると思っていた親友の姿が見当たらない。
いつもなら一番先にここに来て、待ちくたびれているはずなのだが今日に限って姿かたちがどこにも見えな
かった。
「ベルガン開発主任ならば先ほど研究室に入っていきました」
「研究室?」
アルの言葉にボルスは呆れ顔で髪を掻き揚げる。
「やれやれ、また新しい武器でも思いついたのか・・・」
ボルスはケントの”思いつき”で何度もかなり酷い目に会ったことがある。そのせいか、彼の新兵器をまっ
たく信用していなかった。
「仕方がない、私はケントを呼んでくる。他の物はいつも通り格納庫へ、今日はビーム兵器を使った訓練を行
うから機体のチェックを怠わるな」
「了解!」
二人がボルスに対し敬礼をするとボルスはそのまま部屋を出て行った。
ボルスの後姿を見送った後、レイがアルに耳打ちをする。
「隊長とベルガン主任って一体どういう関係なの?」
「一応親友らしい」
「一応ってどういうことなの?」
アルの言葉に眉間に皺を寄せる。彼女にはどうにも想像が付かないようだ。あの神経質そうな男と大雑把そ
うな隊長が仲がいい様子が・・・
「知らん、そこは隊長に聞いてくれ」
アルはそう言うと部屋を出て行った。
ボルスが研究室の前に来ると扉の横についているインターホンのスイッチに触れた。けたたましいベルの音
を鳴り響かせ部屋の主を呼び出そうとする。だが部屋の主は出てくる様子もなく全く応答がなかった。
「おかしいな・・・」
アルの話では研究室に篭っていると聞いたが…
再びベルのボタンに指を伸ばす。呼び出しのベルが鳴り響くが全く出てくる様子がない。
「おい、ケント! いるなら返事をしろ!」
ボルスはインターホンのボタンを連打した。ベルの音が何度も部屋の中に響く。半分意地になっているよう
で中の人間が出てくるまで連打を続けるつもりだろう。
「もう、いい加減してくれよ!」
あまりの五月蝿さに観念したかのような顔でケントは出てきた。彼も以前の様な背広姿ではなくワイシャツ
の上に白衣を羽織った、いわゆる研究者のスタイルであった。顔はかなりやつれており目にはクマが出来てい
る。
「居たのなら返事をして欲しいものだ」
「僕としては一度鳴らしたら暫く待って欲しかったんだけどな」
文句をいうボルスに愚痴をぶつけながらケントは呆れた顔をする。
「すぐに返事をしないお前が悪い」
「人に会うのに身だしなみを整えないのが君のやりかたかい?」
「まあ、そう言うな…」
ケントの皮肉にボルスを苦笑いを浮かべていた。
を鳴り響かせ部屋の主を呼び出そうとする。だが部屋の主は出てくる様子もなく全く応答がなかった。
「おかしいな・・・」
アルの話では研究室に篭っていると聞いたが…
再びベルのボタンに指を伸ばす。呼び出しのベルが鳴り響くが全く出てくる様子がない。
「おい、ケント! いるなら返事をしろ!」
ボルスはインターホンのボタンを連打した。ベルの音が何度も部屋の中に響く。半分意地になっているよう
で中の人間が出てくるまで連打を続けるつもりだろう。
「もう、いい加減してくれよ!」
あまりの五月蝿さに観念したかのような顔でケントは出てきた。彼も以前の様な背広姿ではなくワイシャツ
の上に白衣を羽織った、いわゆる研究者のスタイルであった。顔はかなりやつれており目にはクマが出来てい
る。
「居たのなら返事をして欲しいものだ」
「僕としては一度鳴らしたら暫く待って欲しかったんだけどな」
文句をいうボルスに愚痴をぶつけながらケントは呆れた顔をする。
「すぐに返事をしないお前が悪い」
「人に会うのに身だしなみを整えないのが君のやりかたかい?」
「まあ、そう言うな…」
ケントの皮肉にボルスを苦笑いを浮かべていた。
ナイツ、それはステイツの中で最強と名高い超高速型PMである。
その性能は従来機のポーンに比べ遥かに高い水準を誇り、戦艦や大型戦車のみ使用可能だったビーム兵器を
搭載、及び装備することが可能であった。そしてナイツの一番の特徴は変形機構にあった。変形機構事態は案
としてあったがデメリットが大きく採用してもせいぜい当て馬程度であった。しかしボルスが確立した『可変
機による戦術の優位性』、そしてケントが作り出した新型エンジンにより『防御と機動性の両立』が可能になっ
たためナイツは変形機構を備えるようになった。
だが、ナイツを操れるパイロットは少ない。なぜならナイツはとてもピーキーな機体あったからだ。
しかしそのじゃじゃ馬を乗りこなせれば確実にエースとしての箔が付いた。ステイツの流星ことガルベス・
ミクトランや赤シャチの異名を持つルーベル・マクミトフなどもナイツに搭乗し、戦果を上げた。
このナイツを派生機として『クィーン』や『ビショップ』『ルーク』などが存在するがまた別の話。
その性能は従来機のポーンに比べ遥かに高い水準を誇り、戦艦や大型戦車のみ使用可能だったビーム兵器を
搭載、及び装備することが可能であった。そしてナイツの一番の特徴は変形機構にあった。変形機構事態は案
としてあったがデメリットが大きく採用してもせいぜい当て馬程度であった。しかしボルスが確立した『可変
機による戦術の優位性』、そしてケントが作り出した新型エンジンにより『防御と機動性の両立』が可能になっ
たためナイツは変形機構を備えるようになった。
だが、ナイツを操れるパイロットは少ない。なぜならナイツはとてもピーキーな機体あったからだ。
しかしそのじゃじゃ馬を乗りこなせれば確実にエースとしての箔が付いた。ステイツの流星ことガルベス・
ミクトランや赤シャチの異名を持つルーベル・マクミトフなどもナイツに搭乗し、戦果を上げた。
このナイツを派生機として『クィーン』や『ビショップ』『ルーク』などが存在するがまた別の話。
機械の音と粘つく油の匂いが辺りに漂っている。ここはノースカロライナ基地の出撃ハンガーである。
出撃ハッチの近くには多数のポーンがずらりと並んでおり、その向こうには銀のPM『ナイツ』が最終チェ
ックを受けていた。
「ナイツの整備、終わりました!」
「ご苦労様です!」
アルは緑の整備服を着た男に向かって礼をいう。
ナイツの背面には大砲というほど大きくはないもののPMの武器としてはかなり大き目のキャノン砲が付い
ていた。これがナイツが持つビーム兵器、『ビームガン』である。
「アル、ジェネレーターの点検終わったわよ」
「そうか、ありがとう」
レイがナイツのコックピットから出てくる。ビーム兵器を扱う以上ジェネレーターの管理は重要である。最
悪の場合機体が爆発したケースがあるくらい危険な代物であり、慎重に慎重を重ねて初めてビーム兵器は発射
できるのだ。
「おやおや、これはこれは・・・誰かと思えばエリート様じゃございませんか?」
後ろから下卑た笑みを浮かべた男がやってきた。さらにその後ろには無数の下品な顔の男がいた。PM第五
小隊の面々だった。そしてアルに話しかけてきた男はその隊長であるギムナンだった。
「何だ、軍曹。我々に何か用か?」
「いえいえ・・・ただ大喰らいの役立たずにはちょっとどいて頂きたいな、と」
「なんだと!?」
アルはギムナンの襟首を掴みかかる。
「ふん、エリートのお坊ちゃまにはわからねえらしいな! てめぇの機体は金食い虫だってことによ!」
ギムナンはアルが掴んでいた手を振り解く。
金食い虫、この言葉はナイツを表すスラングであった。ナイツはコストパフォーマンスが悪く、整備をする
にもかなりの金と人手が必要になっているのだ。ケントの新型エンジンもまたかなり具合が悪くなりやすく、
変形機構のせいで消耗が激しい部分もお金が懸かる原因でもあった。
「やめろ!」
正に一発触発状態の時に格納庫から聞き覚えがある叫びが聞こえた。
全員がハンガーの入り口の方を向くとそこにはボルスが立っていた。
「隊長!」
レイはボルスの方に駆け寄る。
「これは何の騒ぎだ? 詳しく説明してもらおうか?」
「詳しく? つまりこういうことだよ!」
「!?」
突然、ボルスの顔に向かって拳が飛んできた。しかしそれを難なく避ける。
どうやら因縁をつけられたらしい、最近の私は厄介事には欠いたことが無いな。
「へへ、避けてばかりじゃ何も出来ないぜ!」
再び男は拳を振るってくるがボルスは難なくかわしていく。
「そうだな、では反撃させてもらおうか!」
調子に乗っている男の腹部に拳をめり込ませる。
「ぐぅ!」
うめき声を上げる男をそのまま胸倉を掴み思いっきり床に叩きつけた。
「うおぉぉぉ……」
「さて、次は誰だ?」
男はうめき声をあげ床にのた打ち回っている。ボルスは男を一瞥した後、制服の襟を直しながら群れている男た
ちを睨みつけた。
「くそっ・・・」
男が飛び掛ってくる、そう思いきやそれは中断された。
けたたましいサイレンの音と共にオペレーターの基地内放送が響き渡る。
「第二エリアにアンノウン出現、第二小隊、直ちに出撃せよ。その他の部隊は待機、繰り返す――」
「ちっ、命拾いしたな」
放送を聞いたギムナンは吐き捨てながらボルスを睨みつけると踵を返し自分のポーンの元へ向かっていく。
「隊長・・・」
レイが不安げな瞳でボルスを見つめる。
報復が怖いのだろうか、彼女は手に持っていたハンカチを強く握っていた。
そんなレイに対しボルスは優しく微笑みかけた。
「大丈夫だ、非は向こうにある。我々は堂々としていればいい」
そして今度は厳しい表情をし、二人に命令を下す。
「各員、搭乗! 命令があるまで待機だ!」
「はっ!」
二人は敬礼をし自分達のPMに乗り込んだ。
出撃ハッチの近くには多数のポーンがずらりと並んでおり、その向こうには銀のPM『ナイツ』が最終チェ
ックを受けていた。
「ナイツの整備、終わりました!」
「ご苦労様です!」
アルは緑の整備服を着た男に向かって礼をいう。
ナイツの背面には大砲というほど大きくはないもののPMの武器としてはかなり大き目のキャノン砲が付い
ていた。これがナイツが持つビーム兵器、『ビームガン』である。
「アル、ジェネレーターの点検終わったわよ」
「そうか、ありがとう」
レイがナイツのコックピットから出てくる。ビーム兵器を扱う以上ジェネレーターの管理は重要である。最
悪の場合機体が爆発したケースがあるくらい危険な代物であり、慎重に慎重を重ねて初めてビーム兵器は発射
できるのだ。
「おやおや、これはこれは・・・誰かと思えばエリート様じゃございませんか?」
後ろから下卑た笑みを浮かべた男がやってきた。さらにその後ろには無数の下品な顔の男がいた。PM第五
小隊の面々だった。そしてアルに話しかけてきた男はその隊長であるギムナンだった。
「何だ、軍曹。我々に何か用か?」
「いえいえ・・・ただ大喰らいの役立たずにはちょっとどいて頂きたいな、と」
「なんだと!?」
アルはギムナンの襟首を掴みかかる。
「ふん、エリートのお坊ちゃまにはわからねえらしいな! てめぇの機体は金食い虫だってことによ!」
ギムナンはアルが掴んでいた手を振り解く。
金食い虫、この言葉はナイツを表すスラングであった。ナイツはコストパフォーマンスが悪く、整備をする
にもかなりの金と人手が必要になっているのだ。ケントの新型エンジンもまたかなり具合が悪くなりやすく、
変形機構のせいで消耗が激しい部分もお金が懸かる原因でもあった。
「やめろ!」
正に一発触発状態の時に格納庫から聞き覚えがある叫びが聞こえた。
全員がハンガーの入り口の方を向くとそこにはボルスが立っていた。
「隊長!」
レイはボルスの方に駆け寄る。
「これは何の騒ぎだ? 詳しく説明してもらおうか?」
「詳しく? つまりこういうことだよ!」
「!?」
突然、ボルスの顔に向かって拳が飛んできた。しかしそれを難なく避ける。
どうやら因縁をつけられたらしい、最近の私は厄介事には欠いたことが無いな。
「へへ、避けてばかりじゃ何も出来ないぜ!」
再び男は拳を振るってくるがボルスは難なくかわしていく。
「そうだな、では反撃させてもらおうか!」
調子に乗っている男の腹部に拳をめり込ませる。
「ぐぅ!」
うめき声を上げる男をそのまま胸倉を掴み思いっきり床に叩きつけた。
「うおぉぉぉ……」
「さて、次は誰だ?」
男はうめき声をあげ床にのた打ち回っている。ボルスは男を一瞥した後、制服の襟を直しながら群れている男た
ちを睨みつけた。
「くそっ・・・」
男が飛び掛ってくる、そう思いきやそれは中断された。
けたたましいサイレンの音と共にオペレーターの基地内放送が響き渡る。
「第二エリアにアンノウン出現、第二小隊、直ちに出撃せよ。その他の部隊は待機、繰り返す――」
「ちっ、命拾いしたな」
放送を聞いたギムナンは吐き捨てながらボルスを睨みつけると踵を返し自分のポーンの元へ向かっていく。
「隊長・・・」
レイが不安げな瞳でボルスを見つめる。
報復が怖いのだろうか、彼女は手に持っていたハンカチを強く握っていた。
そんなレイに対しボルスは優しく微笑みかけた。
「大丈夫だ、非は向こうにある。我々は堂々としていればいい」
そして今度は厳しい表情をし、二人に命令を下す。
「各員、搭乗! 命令があるまで待機だ!」
「はっ!」
二人は敬礼をし自分達のPMに乗り込んだ。
アンノウン出現の報を受けて第二小隊が反応があった場所を捜索し始めた。
「本部、こちら第二小隊、アンノウン発見できず」
司令室に第二小隊の隊長の声が響く。
「こちら本部、以前反応は消えない。もう少し探索を続けろ」
「了解・・・ん? なんだ?どうした!?」
何かがあったらしい。
「どうした? 報告を。」
「こ、こちら第二小隊、ア、アンノウンに襲われて!」
オペレータールームのティスプレイに現れた点滅が次々と消えていく。
「どうした! 応答しろ!」
オペレーターは呼びかけるが聞こえてくるのは半狂乱になった叫びだけだった。
「本部!! 大至急救援を! あっ、ああああぁぁ!!」
断末魔はノイズに飲み込まれていっていった。
一体何があった?
その考えを形にする前に第二小隊の反応は全て消えていった。
「仕方がない、第一小隊も向かわせろ! バックアップに第七小隊も出撃させるんだ」
「了解、第一、第七小隊、出撃」
司令の言葉に従い二つの小隊に発進出撃コールを出す。
だが数分後に再び同じような通信が司令部に送られてきた。
「こ、こちら第七小隊!敵がうわぁぁぁぁ!」
そして先ほどと同じようにこの通信を最後に、彼らの反応は全て消失してしまった。
「ええい! 中隊に連絡! なんとしてもあのアンノウンを捕まえろ! 破壊してもいい!」
「しかし…」
ヒステリックに叫びあげる司令官を見ながらオペレーターは口を濁す。
「構わん!ステイツはナンバーワンでなくてはならんのだ!」
その台詞は旧国の遺物じゃないか・・・
司令官が言った言葉にオペレーターは少し毒づきながら発進コールをだした。
「本部、こちら第二小隊、アンノウン発見できず」
司令室に第二小隊の隊長の声が響く。
「こちら本部、以前反応は消えない。もう少し探索を続けろ」
「了解・・・ん? なんだ?どうした!?」
何かがあったらしい。
「どうした? 報告を。」
「こ、こちら第二小隊、ア、アンノウンに襲われて!」
オペレータールームのティスプレイに現れた点滅が次々と消えていく。
「どうした! 応答しろ!」
オペレーターは呼びかけるが聞こえてくるのは半狂乱になった叫びだけだった。
「本部!! 大至急救援を! あっ、ああああぁぁ!!」
断末魔はノイズに飲み込まれていっていった。
一体何があった?
その考えを形にする前に第二小隊の反応は全て消えていった。
「仕方がない、第一小隊も向かわせろ! バックアップに第七小隊も出撃させるんだ」
「了解、第一、第七小隊、出撃」
司令の言葉に従い二つの小隊に発進出撃コールを出す。
だが数分後に再び同じような通信が司令部に送られてきた。
「こ、こちら第七小隊!敵がうわぁぁぁぁ!」
そして先ほどと同じようにこの通信を最後に、彼らの反応は全て消失してしまった。
「ええい! 中隊に連絡! なんとしてもあのアンノウンを捕まえろ! 破壊してもいい!」
「しかし…」
ヒステリックに叫びあげる司令官を見ながらオペレーターは口を濁す。
「構わん!ステイツはナンバーワンでなくてはならんのだ!」
その台詞は旧国の遺物じゃないか・・・
司令官が言った言葉にオペレーターは少し毒づきながら発進コールをだした。
ケントがビーム兵器のチェックを終え、一息つこうと思ったとき司令部から通信コールが送られてきた。
「こちらシルバーナイツ、どうかしましたか?」
「シルバーナイツの諸君、悪いが出撃をしてもらいたい」
司令の奇妙な愛想の良さにケントは眉をしかめる。
いつも嫌味ばかり言ってくる司令官が今日に限ってとても愛想が良い物言いだな。
うん? よく見ると眉間に皺がよってる・・・なるほど、何か厄介ごとだな。
ケントは司令官に嫌味たっぷりに返答した。
「どういう意味ですか? うちとて暇では……」
「君たちの返答は聞いてない、データはそちらに送る。いいな」
彼はそういうと一方的に通信を切ってしまった。
どうやら何か自分の名誉に関わることが起こったらしい。
「やれやれ、体面ってそんなに重要なのかな?」
ケントがため息を付いていると司令部からデータが送られてくる。
そこには以前見た物が映っていた。ユニオンで自分の目の前に現れた、あの黒いPMだ。
「なるほど、これは僕たちの出番だね」
笑みを浮かべながらボルスたちに通信を送る。
「どうした?」
パイロットスーツを着たボルスが通信ディスプレイに現れる。
「ボルス、とうとうステイツにもバイラムが来たよ」
司令部からのデータをボルスたちに見せる。恐らく命がけで取ったのかピンボケが激しい。
「嬉しいのか?」
「かも知れないね」
バイラムの性能は気になるし、それに作った奴の顔を見てみたいな。
「プログラムのチェックが終わったよ、いつでも発進してくれ」
「了解、シルバーナイツ、出撃する!」
ボルスの声と共にカタパルトが動き出す。銀の騎士団が悪魔を倒しに向かっていった。
「こちらシルバーナイツ、どうかしましたか?」
「シルバーナイツの諸君、悪いが出撃をしてもらいたい」
司令の奇妙な愛想の良さにケントは眉をしかめる。
いつも嫌味ばかり言ってくる司令官が今日に限ってとても愛想が良い物言いだな。
うん? よく見ると眉間に皺がよってる・・・なるほど、何か厄介ごとだな。
ケントは司令官に嫌味たっぷりに返答した。
「どういう意味ですか? うちとて暇では……」
「君たちの返答は聞いてない、データはそちらに送る。いいな」
彼はそういうと一方的に通信を切ってしまった。
どうやら何か自分の名誉に関わることが起こったらしい。
「やれやれ、体面ってそんなに重要なのかな?」
ケントがため息を付いていると司令部からデータが送られてくる。
そこには以前見た物が映っていた。ユニオンで自分の目の前に現れた、あの黒いPMだ。
「なるほど、これは僕たちの出番だね」
笑みを浮かべながらボルスたちに通信を送る。
「どうした?」
パイロットスーツを着たボルスが通信ディスプレイに現れる。
「ボルス、とうとうステイツにもバイラムが来たよ」
司令部からのデータをボルスたちに見せる。恐らく命がけで取ったのかピンボケが激しい。
「嬉しいのか?」
「かも知れないね」
バイラムの性能は気になるし、それに作った奴の顔を見てみたいな。
「プログラムのチェックが終わったよ、いつでも発進してくれ」
「了解、シルバーナイツ、出撃する!」
ボルスの声と共にカタパルトが動き出す。銀の騎士団が悪魔を倒しに向かっていった。
ボルスたちが出撃する少し前、第五小隊の面々もアンノウン狩りに駆りだされていた。
「畜生、どこに行きやがったんだ?」
ギムナンは辺りを見渡すが肝心のアンノウンはどこにも姿を見せない。
「もう逃げちまったんじゃねぇのか?」
仲間の一人がそう言うがなんとも言えない不気味な雰囲気が辺りに漂っていた。
やたら喉が渇く、これ以上ここにいるのは危険だな。
「そうだな、一度てった・・・」
ギムナンが撤退の意思を伝えようとした時、突如、謎の爆音が辺りに響く。
「な、何だ!?」
爆発音の方へと足を向けると黒いPMがそこに立っていた。
「なんだありゃあ?」
男が謎のPMに不可思議そうな顔を浮かべている突然こちらに接近してきた。
「やんのかぁ!」
叫んだ頃にはすでに仲間のポーンが真っ二つにされていた。
「な・・・」
瞬きしてる間にやられたっていうのかよ!?
あまりの事にギムナンは動転している。そして今度は別の仲間の方へと向かっていく。
「撃てぇ!撃ち殺せぇ!」
ギムナンの声と共にポーンのライフルが一斉に火を吹く。
だが目の前のPM、バイラムには効果か現れなかったらしく直立不動でその場に立っていた。
「くそぉ! ふざけんなよぉ!」
再びライフルを構え目の前の敵を撃つ。ライフルだけじゃない、ミサイルやグレネードといった物も混ぜながら
目の前の悪魔を倒そうとする。
「へ、へへへ・・・これで倒れただろ?」
ありったけの弾薬を使ったんだ、これで倒れない奴などいない。
だが、そんな男の希望を打ち砕くかのように敵は黒煙をふり払う。
「バ、バカなぁ!」
うろたえるギムナンをみながら悪魔は嘲笑するかのようにニヤリと笑った。
「畜生、どこに行きやがったんだ?」
ギムナンは辺りを見渡すが肝心のアンノウンはどこにも姿を見せない。
「もう逃げちまったんじゃねぇのか?」
仲間の一人がそう言うがなんとも言えない不気味な雰囲気が辺りに漂っていた。
やたら喉が渇く、これ以上ここにいるのは危険だな。
「そうだな、一度てった・・・」
ギムナンが撤退の意思を伝えようとした時、突如、謎の爆音が辺りに響く。
「な、何だ!?」
爆発音の方へと足を向けると黒いPMがそこに立っていた。
「なんだありゃあ?」
男が謎のPMに不可思議そうな顔を浮かべている突然こちらに接近してきた。
「やんのかぁ!」
叫んだ頃にはすでに仲間のポーンが真っ二つにされていた。
「な・・・」
瞬きしてる間にやられたっていうのかよ!?
あまりの事にギムナンは動転している。そして今度は別の仲間の方へと向かっていく。
「撃てぇ!撃ち殺せぇ!」
ギムナンの声と共にポーンのライフルが一斉に火を吹く。
だが目の前のPM、バイラムには効果か現れなかったらしく直立不動でその場に立っていた。
「くそぉ! ふざけんなよぉ!」
再びライフルを構え目の前の敵を撃つ。ライフルだけじゃない、ミサイルやグレネードといった物も混ぜながら
目の前の悪魔を倒そうとする。
「へ、へへへ・・・これで倒れただろ?」
ありったけの弾薬を使ったんだ、これで倒れない奴などいない。
だが、そんな男の希望を打ち砕くかのように敵は黒煙をふり払う。
「バ、バカなぁ!」
うろたえるギムナンをみながら悪魔は嘲笑するかのようにニヤリと笑った。
ボルスの後ろに二機のナイツがゆっくりとだが追いかけてきている。
「各機、付いてきてるな!」
「もちろんです、隊長」
「しかしビーム兵器を持ち出すなんてかなり大事ではないでしょうか?」
レイの質問は最もだった。従来、ビーム兵器を持ち出すにはそれ相応の危険レベルに達しなければいけない。
だが今回の件にいたってはボルスとケントの独断であった。基地司令部の許可を訓練の名目として貰ってい
るが実戦で使うというケースは今回が初めてであった。
「そうだ、かなり大事だ。もし今回の責任の所在を問われたらお前達は私に責任を擦り付ければ良い」
「隊長・・・」
「そしてもし勝ち目がないと踏んだらお前達は逃げろ、これは命令だ」
「了解しました」
ボルスの言葉にアルは感激をしながら彼が感じている”予感”に対し外れて欲しいと願っていた。
だが、皮肉にも彼の言葉は別の形で当っていた。
救援要請があった場所に近付くとレーダーに味方の救援信号をみつけた。
「レーダーに反応があった。全員、私について来い!」
ナイツたちが高速形体に変形すると音速と同じスピードで反応があった場所に向かう。
「!?」
「なんだ、これは・・・」
「う、嘘でしょ?」
反応があった場所に近付くとそこには無数のポーンの破片が転がっていた。破片といっても壊れたパーツで
はない。バイラムによって破壊されたポーンだった。コックピットを串刺しにされた者、中の人間ごと縦に真っ
二つにされた物、爆発の破片により命を奪われたもの、素手でコックピットを握りつぶされたもの。そして先
ほどボルスに喧嘩を売ったあの男のポーンも中の人間共々、無残な姿で発見された。
「酷いことを・・・」
アルがあたりを見渡す。しかしどこにも動いているものはない。
「こちらシルバーナイツ! 救援に来たぞ! 誰でも良い応答してくれ!」
ボルスは全周波数で生存者を探すが応答する物は一人もいなかった。周りを見渡しても動いているものはせ
いぜい木々が風で揺らいでいる程度。
まさか・・・全滅しているのか? こちらは百機以上のPMを出撃したのに?
圧倒的な物量で押したのにその差が全くもって現れていないのだ。
ボルスの額に汗が流れる。その時、後ろから何かが大地を踏みしめる音が聞こえてきた。
その音は少しずつ、少しずつこちらに近付いてきている。
ボルスが振り向くとそこに悪魔は威風堂々と立っていた。まるでボルスを待ち焦がれるかのように。
手には先ほど倒したと思われるポーンの首を持っており、その首を無造作にボルスの方へと放り投げる。
「待ちわびた、とでも言いたげだな!」
ボルスはバイラムが投げたポーンの頭に照準を合わせ、トリガーを引いた。
ナイツの腕に仕込まれたマシンガンは正確にポーンの頭部を蜂の巣にする。
そしてその動きに合わせるかのようにバイラムは剣を構え飛び上がった。
「来い! 貴様を破壊してその素顔を太陽の下の引きずり出す!」
ボルスも思い切りペダルを踏み込んだ。背面のバーニアから眩い光が溢れバイラムへと向かっていく。
バイラムは剣を縦に振るがナイツはそれをサイドステップで避けた。そしてバイラムの左側頭部に向かって
ソードを振るう、がバイラムはこれをかわしそのまま横になぎ払う。しかしこれを飛んで避けそのまま高速形
体に変形し上空へ逃げた。バイラムはそれを追うが待っていたかのようにナイツは集中砲火を浴びせる。
「隊長!」
アルの声を聞きボルスはすかさず指示を出す。
「アル! 空雷を蒔け!」
空雷とは空の地雷である。陸路には地雷、海には機雷があるように航空機に対するトラップの一種である。
アルのナイツは背面のビームガンに備えつけられている黒いボックスから大量の空雷を空に蒔き始めた。
バイラムの周りに空雷が漂っている。
「どうくる? バイラム!」
ボルスの問いに答えるかのようにバイラムはナイツに突進してきた。空雷が身体に触れ爆発を起こすがバイ
ラムはそれを無視して目の前の騎士へ向かっていく。
「ほう、だが何も考えずに進むのは命取りだ!」
ボルスは背面のビームガンの照準をバイラムに合わせると充電を始めた。
「貰ったぞ!」
銃口からビームが発射されるがそれを感知したのかバイラムはそれを螺旋状に飛んでかわし、そのままナイ
ツの両肩を掴みを岩壁に叩きつけた。
「ぐぉぉ!」
岩に叩きつけられた衝撃がコックピットに伝わる。
そしてバイラムが掴んだ肩からミシミシと音が聞こえてきた。ナイツの肩を潰すつもりなのだろう。
「隊長!」
「待て! 今撃ったら隊長に当たる!」
レイはバイラムに向けてビームガンを構えるがアルがそれを制す。
「これで勝ったつもりか・・・もしそうなら・・・甘いぞ、バイラム!」
ボルスは思いっきりペダルを踏み込むと一気に操縦桿を後ろに倒す。
ナイツは膝を曲げ思いっきりバイラムの胸部を蹴り上げる。
あまりの衝撃に掴んでいた手を放し後ろに仰け反った。
そしてボルスのナイツはそのまま大きく飛び上がる。
「いまだ、撃て!!」
ボルスの声に二人はトリガーを引く。構えた銃口から稲妻がほとばしり光の渦がバイラムに向かっていった。
眩いばかりの閃光が爆音と共に辺りに広がり、黒い土煙をあたりに撒き散らす。
「当った!」
「やりましたよ、隊長!」
初めての射撃が当ったことにレイは喜び、アルは敵を破壊できたことに喜んだ。
だが、その喜びを打ち砕くかのように煙の中から黒い影が飛び出してきた。
「まずい!」
危険を察知したボルスは有頂天になっていた二人に襲い掛かる黒い影の間にが滑り込んだ。
金属同士がぶつかり合う音が辺りに響く。
「あっ……」
「隊長ぉぉ!」
「間に合ったか…」
ボルスのナイツが二人の前に立っている。
黒い影、バイラムの剣はコックピットのすぐ近くの胸を貫いていた。
「……取ったぞ!」
ナイツはバイラムに向かってトリガーをひく。だが、受けた場所が悪かったのかビームガンは光を生まなかった。
「ええい、当り所が悪かったか!」
ボルスはビームの使用を諦め、脚部に備え付けられていたミサイルランチャーで攻撃をする。
激しい爆発が起こるが案の定バイラムはビクともしない。
「くっ、現代の兵器がここまで役に立たないとは!」
ボルスは眉間に皺を寄せ唇を噛み締める。しかしこれで諦めるような男ではない
「ならばその装甲の隙間を狙わせてもらおう!」
ボルスは腰に備え付けられていたソードを思いっきり間接部に突き刺そうとするがバイラムはシールドを思
いっきり叩きつけて剣を無理やり引き抜いた。
「ぐぅ!」
凄まじい衝撃がコックピットの中を走る。歯を食いしばりナイツを多少ふら付きながらも体勢を立て直す。
バイラムもバックステップで間合いを調節した。
「……流石と言った所か」
ボルスは目の前の悪魔に何の力が通用しないことに恐れを抱き始めていた。
一方のバイラムはもうボルスに興味がなくなったのか背中をむけ空に飛び上がっていった。
そして背面のバーニアを光らせ雲を突き破る。
「おのれ! このまま行かせるものか!」
ボルスはナイツのブースターを極限まで噴かせると逃げ行くバイラムに向かっていく。
「背面ががら空きだぞ!」
ナイツのソードがバイラムの背面を斬り付ける。
だが、それを見通しいたのか、バイラムはナイツの動きを読んでいたかのように宙返りをした。
「なに!?」
突然の事にボルスの思考が一時的に止まる。
そしてそのままナイツの背面に廻るとそのまま剣を横に振るうが背面のウィングとバーニアを斬られたであ
りが致命傷には至らなかった。
「まだだ! まだやられてはない!」
ナイツはバイラムの頭部に残り全ての弾丸を叩き込む。
だが悪魔はナイツの弾をすべて受け止めるとそのままナイツの頭部を掴み思いっきり振り回し大地に向かって
投げつけた。
「くぅ!」
凄まじい重力がボルスをシートに叩きつける。しかし動揺することなく体勢をを立て直した頃には既にバイ
ラムの姿はどこにもなかった。
「くそ! 逃がしてしまったか・・・」
ボルスは苛立ちを隠すかのように思い切りティスプレイを叩いた。
一体何が目的だ? 我々を挑発しているつもりなのか?
ボルスの疑問に答えられるは誰もいない、そして答えるべきモノは一貫して沈黙を守っていた。
「隊長!」
「返事をしてください!」
雑音の中から彼を心配する声が聞こえてきた。カメラを動かすと二機のナイツが彼の元へと飛んできている。
ボルスは軽くため息を付くと通信機のスイッチに手を伸ばす。
「こちらナイト1、機体は中破したが無事だ。怪我は一つも負っていない」
ボルスの声を聞いた二人は半壊したナイツに駆け寄っていく。
「隊長! いやぁ、無事でよかった!」
「流石隊長! あのバイラム相手に一歩も退かないとは!」
「だが、逃げられてしまったな。これではな・・・」
二人はボルスを憧れの目で見るが当のボルスは苦笑いを浮かべている。
「そろそろ基地に帰還するぞ、この戦闘データをケントに見せなくてはな」
ボルスはボロボロになった”戦友”を見ながらバイラムの脅威を肌で感じていた。
「各機、付いてきてるな!」
「もちろんです、隊長」
「しかしビーム兵器を持ち出すなんてかなり大事ではないでしょうか?」
レイの質問は最もだった。従来、ビーム兵器を持ち出すにはそれ相応の危険レベルに達しなければいけない。
だが今回の件にいたってはボルスとケントの独断であった。基地司令部の許可を訓練の名目として貰ってい
るが実戦で使うというケースは今回が初めてであった。
「そうだ、かなり大事だ。もし今回の責任の所在を問われたらお前達は私に責任を擦り付ければ良い」
「隊長・・・」
「そしてもし勝ち目がないと踏んだらお前達は逃げろ、これは命令だ」
「了解しました」
ボルスの言葉にアルは感激をしながら彼が感じている”予感”に対し外れて欲しいと願っていた。
だが、皮肉にも彼の言葉は別の形で当っていた。
救援要請があった場所に近付くとレーダーに味方の救援信号をみつけた。
「レーダーに反応があった。全員、私について来い!」
ナイツたちが高速形体に変形すると音速と同じスピードで反応があった場所に向かう。
「!?」
「なんだ、これは・・・」
「う、嘘でしょ?」
反応があった場所に近付くとそこには無数のポーンの破片が転がっていた。破片といっても壊れたパーツで
はない。バイラムによって破壊されたポーンだった。コックピットを串刺しにされた者、中の人間ごと縦に真っ
二つにされた物、爆発の破片により命を奪われたもの、素手でコックピットを握りつぶされたもの。そして先
ほどボルスに喧嘩を売ったあの男のポーンも中の人間共々、無残な姿で発見された。
「酷いことを・・・」
アルがあたりを見渡す。しかしどこにも動いているものはない。
「こちらシルバーナイツ! 救援に来たぞ! 誰でも良い応答してくれ!」
ボルスは全周波数で生存者を探すが応答する物は一人もいなかった。周りを見渡しても動いているものはせ
いぜい木々が風で揺らいでいる程度。
まさか・・・全滅しているのか? こちらは百機以上のPMを出撃したのに?
圧倒的な物量で押したのにその差が全くもって現れていないのだ。
ボルスの額に汗が流れる。その時、後ろから何かが大地を踏みしめる音が聞こえてきた。
その音は少しずつ、少しずつこちらに近付いてきている。
ボルスが振り向くとそこに悪魔は威風堂々と立っていた。まるでボルスを待ち焦がれるかのように。
手には先ほど倒したと思われるポーンの首を持っており、その首を無造作にボルスの方へと放り投げる。
「待ちわびた、とでも言いたげだな!」
ボルスはバイラムが投げたポーンの頭に照準を合わせ、トリガーを引いた。
ナイツの腕に仕込まれたマシンガンは正確にポーンの頭部を蜂の巣にする。
そしてその動きに合わせるかのようにバイラムは剣を構え飛び上がった。
「来い! 貴様を破壊してその素顔を太陽の下の引きずり出す!」
ボルスも思い切りペダルを踏み込んだ。背面のバーニアから眩い光が溢れバイラムへと向かっていく。
バイラムは剣を縦に振るがナイツはそれをサイドステップで避けた。そしてバイラムの左側頭部に向かって
ソードを振るう、がバイラムはこれをかわしそのまま横になぎ払う。しかしこれを飛んで避けそのまま高速形
体に変形し上空へ逃げた。バイラムはそれを追うが待っていたかのようにナイツは集中砲火を浴びせる。
「隊長!」
アルの声を聞きボルスはすかさず指示を出す。
「アル! 空雷を蒔け!」
空雷とは空の地雷である。陸路には地雷、海には機雷があるように航空機に対するトラップの一種である。
アルのナイツは背面のビームガンに備えつけられている黒いボックスから大量の空雷を空に蒔き始めた。
バイラムの周りに空雷が漂っている。
「どうくる? バイラム!」
ボルスの問いに答えるかのようにバイラムはナイツに突進してきた。空雷が身体に触れ爆発を起こすがバイ
ラムはそれを無視して目の前の騎士へ向かっていく。
「ほう、だが何も考えずに進むのは命取りだ!」
ボルスは背面のビームガンの照準をバイラムに合わせると充電を始めた。
「貰ったぞ!」
銃口からビームが発射されるがそれを感知したのかバイラムはそれを螺旋状に飛んでかわし、そのままナイ
ツの両肩を掴みを岩壁に叩きつけた。
「ぐぉぉ!」
岩に叩きつけられた衝撃がコックピットに伝わる。
そしてバイラムが掴んだ肩からミシミシと音が聞こえてきた。ナイツの肩を潰すつもりなのだろう。
「隊長!」
「待て! 今撃ったら隊長に当たる!」
レイはバイラムに向けてビームガンを構えるがアルがそれを制す。
「これで勝ったつもりか・・・もしそうなら・・・甘いぞ、バイラム!」
ボルスは思いっきりペダルを踏み込むと一気に操縦桿を後ろに倒す。
ナイツは膝を曲げ思いっきりバイラムの胸部を蹴り上げる。
あまりの衝撃に掴んでいた手を放し後ろに仰け反った。
そしてボルスのナイツはそのまま大きく飛び上がる。
「いまだ、撃て!!」
ボルスの声に二人はトリガーを引く。構えた銃口から稲妻がほとばしり光の渦がバイラムに向かっていった。
眩いばかりの閃光が爆音と共に辺りに広がり、黒い土煙をあたりに撒き散らす。
「当った!」
「やりましたよ、隊長!」
初めての射撃が当ったことにレイは喜び、アルは敵を破壊できたことに喜んだ。
だが、その喜びを打ち砕くかのように煙の中から黒い影が飛び出してきた。
「まずい!」
危険を察知したボルスは有頂天になっていた二人に襲い掛かる黒い影の間にが滑り込んだ。
金属同士がぶつかり合う音が辺りに響く。
「あっ……」
「隊長ぉぉ!」
「間に合ったか…」
ボルスのナイツが二人の前に立っている。
黒い影、バイラムの剣はコックピットのすぐ近くの胸を貫いていた。
「……取ったぞ!」
ナイツはバイラムに向かってトリガーをひく。だが、受けた場所が悪かったのかビームガンは光を生まなかった。
「ええい、当り所が悪かったか!」
ボルスはビームの使用を諦め、脚部に備え付けられていたミサイルランチャーで攻撃をする。
激しい爆発が起こるが案の定バイラムはビクともしない。
「くっ、現代の兵器がここまで役に立たないとは!」
ボルスは眉間に皺を寄せ唇を噛み締める。しかしこれで諦めるような男ではない
「ならばその装甲の隙間を狙わせてもらおう!」
ボルスは腰に備え付けられていたソードを思いっきり間接部に突き刺そうとするがバイラムはシールドを思
いっきり叩きつけて剣を無理やり引き抜いた。
「ぐぅ!」
凄まじい衝撃がコックピットの中を走る。歯を食いしばりナイツを多少ふら付きながらも体勢を立て直す。
バイラムもバックステップで間合いを調節した。
「……流石と言った所か」
ボルスは目の前の悪魔に何の力が通用しないことに恐れを抱き始めていた。
一方のバイラムはもうボルスに興味がなくなったのか背中をむけ空に飛び上がっていった。
そして背面のバーニアを光らせ雲を突き破る。
「おのれ! このまま行かせるものか!」
ボルスはナイツのブースターを極限まで噴かせると逃げ行くバイラムに向かっていく。
「背面ががら空きだぞ!」
ナイツのソードがバイラムの背面を斬り付ける。
だが、それを見通しいたのか、バイラムはナイツの動きを読んでいたかのように宙返りをした。
「なに!?」
突然の事にボルスの思考が一時的に止まる。
そしてそのままナイツの背面に廻るとそのまま剣を横に振るうが背面のウィングとバーニアを斬られたであ
りが致命傷には至らなかった。
「まだだ! まだやられてはない!」
ナイツはバイラムの頭部に残り全ての弾丸を叩き込む。
だが悪魔はナイツの弾をすべて受け止めるとそのままナイツの頭部を掴み思いっきり振り回し大地に向かって
投げつけた。
「くぅ!」
凄まじい重力がボルスをシートに叩きつける。しかし動揺することなく体勢をを立て直した頃には既にバイ
ラムの姿はどこにもなかった。
「くそ! 逃がしてしまったか・・・」
ボルスは苛立ちを隠すかのように思い切りティスプレイを叩いた。
一体何が目的だ? 我々を挑発しているつもりなのか?
ボルスの疑問に答えられるは誰もいない、そして答えるべきモノは一貫して沈黙を守っていた。
「隊長!」
「返事をしてください!」
雑音の中から彼を心配する声が聞こえてきた。カメラを動かすと二機のナイツが彼の元へと飛んできている。
ボルスは軽くため息を付くと通信機のスイッチに手を伸ばす。
「こちらナイト1、機体は中破したが無事だ。怪我は一つも負っていない」
ボルスの声を聞いた二人は半壊したナイツに駆け寄っていく。
「隊長! いやぁ、無事でよかった!」
「流石隊長! あのバイラム相手に一歩も退かないとは!」
「だが、逃げられてしまったな。これではな・・・」
二人はボルスを憧れの目で見るが当のボルスは苦笑いを浮かべている。
「そろそろ基地に帰還するぞ、この戦闘データをケントに見せなくてはな」
ボルスはボロボロになった”戦友”を見ながらバイラムの脅威を肌で感じていた。
ナイツが帰投をすると整備員達が一斉にナイツに群がった。
無理もないだろう、この基地に帰ってきたのはナイツのみで残りのPMはすべてバイラムによって破壊しつ
くされたのだ。かつてポーンがあったハンガーはガランとしており、いつも騒がしかった待機室は静まり返っ
ていた。
「……みんな、いなくなってしまったんだな」
アルは思わず口に出してしまう。抑えきれない寂しさと怒りを。
「私、今まで実戦なんて経験したことなかったけど・・・やっぱり戦場では人が死ぬのね」
レイも同じように口に出す。恐怖と悲しみを。
これからこの気分を何度も感じなくてはいけない。それが軍人なのだから・・・
無理もないだろう、この基地に帰ってきたのはナイツのみで残りのPMはすべてバイラムによって破壊しつ
くされたのだ。かつてポーンがあったハンガーはガランとしており、いつも騒がしかった待機室は静まり返っ
ていた。
「……みんな、いなくなってしまったんだな」
アルは思わず口に出してしまう。抑えきれない寂しさと怒りを。
「私、今まで実戦なんて経験したことなかったけど・・・やっぱり戦場では人が死ぬのね」
レイも同じように口に出す。恐怖と悲しみを。
これからこの気分を何度も感じなくてはいけない。それが軍人なのだから・・・
「……なるほどねぇ…」
ケントはボルスが持ってきたブラックボックスを感心した面持ちで眺めながらキーを叩いている。
「何かわかったか?」
ボルスはコーヒーカップを片手にケントに質問をする。
「ぜんぜん?」
ケントは肩を竦め、お手上げと言ったそぶりを見せた。
「ケント、私を怒らせたいのか?」
「あのねぇ、僕だって君を怒らせるつもりでこんな事を言ったりしないよ」
ボルスはケントの胸倉を掴みかかったが彼はそれをあっさり外す。
「どういうことだ?」
「ボルス、落ち着いて聞いて欲しい。まずバイラムと交戦したデータを調べてみたんだけど、どうもおかしいんだ」
ケントはキーボードを叩く手を休め、大型ディスプレイの電源を入れる。
「おかしい?」
「ああ、まずこれを見てよ」
「……ノイズ?」
大型ディスプレイにバイラムと戦った動画データが映し出される。しかし動画の中に時折凄まじいノイズが
走っていた。ブラックボックスはカメラやセンサーがすべて破壊されるまで記録を続ける物だがこれにいたっ
ては明らかに違った。
「そうだよ、このブラックボックスは戦った相手を自動的に調べるオートアナライズ機能をつけてあるんだ。
でもその機能がまるでジャミングにかかったかのようにノイズが発生した。これがどういうことか分かるかい?」
「いや」
「普通なら剣と剣がぶつかればその硬さや鋭さ、切れ味なんかが登録されるんだ、でも今回、君はバイラムと
戦ったのにそのデータがまったく影も形も残っていないんだ」
「なんだと!?」
データは取ったはずだった。それだけじゃない機動性や装甲の厚さといった物もレポートとして提出はして
ある。だが最も重要であるこのブラックボックスにはバイラムのデータが全くないのだ。
ケントの言葉にボルスは言葉を失った。
そんなボルスを見ながらケントは話を続ける。
「ユニオンやアジア統連はバイラムとの戦闘部分は公表したけどバイラムがどういったもので出来てるのか?
どこから来てどこへ行ったのか? そういったものは何も公表されてないんだよ。その理由はバイラムのデー
タが取れなかったからだ。もし仮にバイラムがどこかに飛び去ったとしても軍事衛星で追跡すればいい。でも
それが出来なったからバイラムは謎、なんだ」
「軍事衛星でも追えないとは…いくらなんでも無理がありすぎるぞ」
「でも事実だ、僕は科学者だから事実である以上受け止めるしかない」
あまりの事にボルスの頭は混乱していた。無論ケントの頭も混乱している。ボルスが口に出しているのは世
界の”常識”であり、ケントが口にしているのはバイラムに対する”事実”であった。
ケントは軽くため息を付くと別の事を考え始めた。
「ところでバイラムが初めて世界に登場したのは?」
「忘れるものか、ユニオンの新型発表会だ」
「そしてバイラムは僕たちの目の前で”私はバイラム”って言ったんだ」
「そうだ、あそこの会場に居たのは各政府の上層部だったな」
「何故バイラムはあそこに現れたんだろう? 偶然? 違う、それならわざわざもっと危険度が低い所を選ぶ
はずだ」
「バイラムの性能はお前も知っているだろう」
あの圧倒的なバイラムの性能はどの軍事地基地を襲撃しても全滅する事はできるはずだ。
「もちろん、でもだからと言って戸惑うことなく危ない所に投入できるかい。テストで良好でも実戦で予定通
りに動くとは到底思えないよ。規模が小さい所に新型を入れるのが普通だ」
「インパクトを出したかったのでは?」
あの性能を見せ付けるならユニオンの新型と対比になるはずだ。
「確かにインパクトは出るけどそれなら小さな基地を一つ潰した方が効果的だ。それに新型機のお披露目会場
を潰す理由がない」
そう、例えユニオンの新型でも潰すことは不可能だろう。
ケントは近くにあるコーヒーカップを手に取り中のコーヒー口に含んだ。
そして少し何かを考えるとフッ、っと鼻で笑った。
「どうした?」
「ボルス、これは僕の思い違いなら良いんだけど…」
「なんだ?」
「もしも、もしもだよ、あのバイラムが”量産機”だったらどうする?」
「何を言ってるんだ?」
ケントの言葉にボルスは思わず首をかしげてしまった。
「ごめんよ、でもそう思うと辻褄が合うんだ。量産機ならあんな危険な場所に放り込めるし・・・」
「破壊されたとしても量産機ゆえに補強が効く」
「そしてまた作ればいい、なぜならキチンとした”製品”なんだからね」
「だが量産機ならもっと出してきてもいいと私は思うぞ」
しかし大量に出て来たら我々は為す術も無く滅ぼされるだろうがな。
部屋に気まずい沈黙が流れる・・・
「……とりあえず、解析を頼む」
嫌な予感を振り払うかのようにボルスはケントの部屋を出て行こうとする。
「うん、分かったよ……」
ケントは首を回しながらデータの解析を再び始めた。
「ボルス」
「なんだ?」
部屋を出て行こうとするボルスの背中に声をかける。
「僕たちが話し合ったことは所詮”仮説”に過ぎない事だ。今は目の前の問題を、バイラムを倒すことから始
めよう」
「そうだな・・・」
ケントは再びキーを叩き始める。その時に末端的な疑問が思い浮かぶ。
もしも、もしもバイラムが現れたのが何らかの必然を含んだものだったらどうなるんだろう? もしそうな
らどうやって”彼ら”はどうやって新型の事を知ったんだろう? もしかして・・・スパイがいる・・・のか?
もしそうならユニオンだけじゃなくステイツやアジア統連にも・・・?
キーボードの手が止まる、だがケントは首を振ってその考えを頭の外に追い出そうとする。
仲間を疑うことは出来ない・・・
これが彼の甘さである事を彼自身気が付いていなかった。
ケントはボルスが持ってきたブラックボックスを感心した面持ちで眺めながらキーを叩いている。
「何かわかったか?」
ボルスはコーヒーカップを片手にケントに質問をする。
「ぜんぜん?」
ケントは肩を竦め、お手上げと言ったそぶりを見せた。
「ケント、私を怒らせたいのか?」
「あのねぇ、僕だって君を怒らせるつもりでこんな事を言ったりしないよ」
ボルスはケントの胸倉を掴みかかったが彼はそれをあっさり外す。
「どういうことだ?」
「ボルス、落ち着いて聞いて欲しい。まずバイラムと交戦したデータを調べてみたんだけど、どうもおかしいんだ」
ケントはキーボードを叩く手を休め、大型ディスプレイの電源を入れる。
「おかしい?」
「ああ、まずこれを見てよ」
「……ノイズ?」
大型ディスプレイにバイラムと戦った動画データが映し出される。しかし動画の中に時折凄まじいノイズが
走っていた。ブラックボックスはカメラやセンサーがすべて破壊されるまで記録を続ける物だがこれにいたっ
ては明らかに違った。
「そうだよ、このブラックボックスは戦った相手を自動的に調べるオートアナライズ機能をつけてあるんだ。
でもその機能がまるでジャミングにかかったかのようにノイズが発生した。これがどういうことか分かるかい?」
「いや」
「普通なら剣と剣がぶつかればその硬さや鋭さ、切れ味なんかが登録されるんだ、でも今回、君はバイラムと
戦ったのにそのデータがまったく影も形も残っていないんだ」
「なんだと!?」
データは取ったはずだった。それだけじゃない機動性や装甲の厚さといった物もレポートとして提出はして
ある。だが最も重要であるこのブラックボックスにはバイラムのデータが全くないのだ。
ケントの言葉にボルスは言葉を失った。
そんなボルスを見ながらケントは話を続ける。
「ユニオンやアジア統連はバイラムとの戦闘部分は公表したけどバイラムがどういったもので出来てるのか?
どこから来てどこへ行ったのか? そういったものは何も公表されてないんだよ。その理由はバイラムのデー
タが取れなかったからだ。もし仮にバイラムがどこかに飛び去ったとしても軍事衛星で追跡すればいい。でも
それが出来なったからバイラムは謎、なんだ」
「軍事衛星でも追えないとは…いくらなんでも無理がありすぎるぞ」
「でも事実だ、僕は科学者だから事実である以上受け止めるしかない」
あまりの事にボルスの頭は混乱していた。無論ケントの頭も混乱している。ボルスが口に出しているのは世
界の”常識”であり、ケントが口にしているのはバイラムに対する”事実”であった。
ケントは軽くため息を付くと別の事を考え始めた。
「ところでバイラムが初めて世界に登場したのは?」
「忘れるものか、ユニオンの新型発表会だ」
「そしてバイラムは僕たちの目の前で”私はバイラム”って言ったんだ」
「そうだ、あそこの会場に居たのは各政府の上層部だったな」
「何故バイラムはあそこに現れたんだろう? 偶然? 違う、それならわざわざもっと危険度が低い所を選ぶ
はずだ」
「バイラムの性能はお前も知っているだろう」
あの圧倒的なバイラムの性能はどの軍事地基地を襲撃しても全滅する事はできるはずだ。
「もちろん、でもだからと言って戸惑うことなく危ない所に投入できるかい。テストで良好でも実戦で予定通
りに動くとは到底思えないよ。規模が小さい所に新型を入れるのが普通だ」
「インパクトを出したかったのでは?」
あの性能を見せ付けるならユニオンの新型と対比になるはずだ。
「確かにインパクトは出るけどそれなら小さな基地を一つ潰した方が効果的だ。それに新型機のお披露目会場
を潰す理由がない」
そう、例えユニオンの新型でも潰すことは不可能だろう。
ケントは近くにあるコーヒーカップを手に取り中のコーヒー口に含んだ。
そして少し何かを考えるとフッ、っと鼻で笑った。
「どうした?」
「ボルス、これは僕の思い違いなら良いんだけど…」
「なんだ?」
「もしも、もしもだよ、あのバイラムが”量産機”だったらどうする?」
「何を言ってるんだ?」
ケントの言葉にボルスは思わず首をかしげてしまった。
「ごめんよ、でもそう思うと辻褄が合うんだ。量産機ならあんな危険な場所に放り込めるし・・・」
「破壊されたとしても量産機ゆえに補強が効く」
「そしてまた作ればいい、なぜならキチンとした”製品”なんだからね」
「だが量産機ならもっと出してきてもいいと私は思うぞ」
しかし大量に出て来たら我々は為す術も無く滅ぼされるだろうがな。
部屋に気まずい沈黙が流れる・・・
「……とりあえず、解析を頼む」
嫌な予感を振り払うかのようにボルスはケントの部屋を出て行こうとする。
「うん、分かったよ……」
ケントは首を回しながらデータの解析を再び始めた。
「ボルス」
「なんだ?」
部屋を出て行こうとするボルスの背中に声をかける。
「僕たちが話し合ったことは所詮”仮説”に過ぎない事だ。今は目の前の問題を、バイラムを倒すことから始
めよう」
「そうだな・・・」
ケントは再びキーを叩き始める。その時に末端的な疑問が思い浮かぶ。
もしも、もしもバイラムが現れたのが何らかの必然を含んだものだったらどうなるんだろう? もしそうな
らどうやって”彼ら”はどうやって新型の事を知ったんだろう? もしかして・・・スパイがいる・・・のか?
もしそうならユニオンだけじゃなくステイツやアジア統連にも・・・?
キーボードの手が止まる、だがケントは首を振ってその考えを頭の外に追い出そうとする。
仲間を疑うことは出来ない・・・
これが彼の甘さである事を彼自身気が付いていなかった。
バイラムがステイツに現れたことにより世界に緊張が走り始めた。
国際指名手配を捕らえられないことに世論は大きく揺れ、政府の危機管理を問われる声がいくつもあった。
黒いPM、バイラム。その圧倒的な力で世界をどうするつもりなのだろうか・・・?
変革か? それとも破壊か? 彼が再びユニオンに現れるとき時計の針がまた一つ動き始める。
国際指名手配を捕らえられないことに世論は大きく揺れ、政府の危機管理を問われる声がいくつもあった。
黒いPM、バイラム。その圧倒的な力で世界をどうするつもりなのだろうか・・・?
変革か? それとも破壊か? 彼が再びユニオンに現れるとき時計の針がまた一つ動き始める。
第6話「世界を回して」に続く
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