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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

capter1 MAIN 前編

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sousakurobo

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だれでも歓迎! 編集
生と死は人が一度しか体験できないものだ。
それ以外の全てはその人間がどう生きるかによって何度でも体験できるようになり、また、一度も体験できないものでもある。
言うなれば、この世で生と死こそがあらゆる人間に平等に与えられる唯一の始まりと終わりであるといえる。
そして死だけが人にとって、永遠に未知である領域なのだろう。
概念的に理解は出来ても、それが本当はどうなのか?という本質的な理解をする事は出来ない。
だから人は死に夢を見る。
ある者は死の先にはあらゆる災厄から解放された幸福な世界があると想像し、ある者は死の先には厄の塊のような救いようの無い暗黒の世界があると想像した。
だが、所詮、死は未知の領域でしかない、何故ならば、そこから行って帰ってきた人間はいないのだから。
どれだけ、人間が想像しようとも、仮説、夢想、妄言の域を出ないのである。
だから人は死を恐れる。
ならばだ。
もし、人間が一度しか無い筈の死を何度も経験したとしたら、その時、その人間は何を感じ、何を思うのだろうか?



支竹幸三郎著
「魂論」序説より



CR ―Code Revegeon― capter1  「Beelzebub of grudge」 THE MAIN STORY 前編



第七機関統治区域にあるとある山岳地帯。
そこを三機の蒼白の機体が走っていた。
その内、二機は大きな翼の生えた黒い鋼機の両肩に手をかけ運び、最後の一機は全長3mほどの金属のブロックを手に持っている。
「隊長、鋼獣がそちらに向かいました、警戒してください。」
無線越しに三機の鋼機に報告が入る。
「了解だ、各員、我々は下層へ向かう、遅れるなよ。」
「「了解。」」
隊長機が先行して山を下り始める、下に見えるのは森林地帯だ。
彼らの目的はこの山岳を抜けた先にある地下施設、そこの地下通路を抜け海に出て、そこに待機している潜水艦への自身の収容である。
それが、第七機関直属組織『イーグル』戦闘部隊αチームが受けたブラックファントム捕獲作戦の最後のミッションだった。



発端はほんの15分ほど前の話である。
鋼獣を唯一単独で圧倒する正体不明の鋼機、コードネーム:ブラックファントムの捕獲作戦が『イーグル』主導で行われた。
綿密かつ数百度におけるシュミレーションをし、ついに行われたそれは、様々なイレギュラーの影響を受けながらも現場スタッフであったαチームが臨機応変に対応し、
計画通りブラックファントムのシステムをハッキング、遠隔操作で緊急停止システムを起動させる事でブラックファントムを行動不能にする事に成功する。
これは、『汚物処理屋』などという汚名を被せられていた『イーグル』の汚名を返上するに値する成果だったといえるだろう。
だが、運命は悪戯を好むものであり、全てが終わるだろうと思ったその時に問題が発生する。
何者かにαチームを回収する予定だった大型輸送機が撃墜されたのだ。
その撃墜からほんの数秒後に司令部からαチームの隊長であった、『α1』シャーリー・時峰に無線通信が入る。
輸送機を撃墜したのは人類の敵、鋼獣が自分たちのいる方に時速300kmの速度で向かっているという一報だった。
司令部はシャーリーにその鋼獣の衛星写真を送信した。
その写真に写っている鋼獣は、飛行型であり鳥獣のような形状しており、背中に円形のようなリングを背負っている。
そして何よりも特徴的なのは九つに分かれた巨大な尾で、その一つ一つが強く発光している。
この鋼獣はいまだかつて、政府が接触した事のないまったくの未知の鋼獣であった。
これはブラックファントムを直接に回収に当たっていたαチームにとって最悪の事態といっても過言では無いだろう。
鋼機と鋼獣のスペック差は大きい。

この作戦の半年前、20機もの鋼機が、たった一機の鋼獣により傷一つ付けられず壊滅させられた過去がある程だ。
現在αチームが使用している蒼白の鋼機、S-21 アインツヴァインは最新鋭機であり、機関でも前線ではまだ使われていない代物だ。
この機体はエネルギー増幅源ディールダインを採用しており、総合的にかつての鋼機の約5倍近くまで性能を底上げさせたまさに革命的なスペックを持つ機体でもある。
だが、それをもってしても鋼獣と闘う事は無謀といえると想定されている。
『α8』秋常譲二がこの捕獲作戦開始の数刻前に鋼獣天狼に手傷を追わせるに成功したが、これは天狼がもっとも情報を多く入手していた鋼獣であり、また奇襲からの攻撃に偶然成功したからに過ぎない。
しかし、今回、αチームを追ってきている鋼獣は正体不明、姿かたちから判断できる以上の力はまったくをもって未知な敵である。
基本的に不利な戦いを行う時は、相手の情報をどれほど持っているかが勝機を分ける。
相手に可能なこと、不可能なことを考察し、それに対しての対抗策を講じる。
これが己よりも強者と戦う時の基本である。
だが、今回の敵はそれすら行わせてくれない。
つまりは、それとの戦うという事は必然、自殺しにいくようなものだといってもの決して過言では無いだろう。
そんな過酷な状況の中、αチームに課せられたのはブラックファントムとα8を連れて、鋼獣から逃げきり、新しくイーグル司令部が設置した回収ポイントに向かうという任務であった。
とはいえ、望みは皆無というわけでは無かった。
鋼獣は強大な機体性能を持つが、その反面、電子兵装がほとんど発達していないとこれまでの戦闘経過から結論付けられている。
鋼機に搭載されている光学迷彩を使用しつつ、退却を行えば、例え時速300kmで迫ってくる敵が相手でも逃げ切れる可能性はあるとは言えた。
だがここで問題となるのは二つである。
一つ目はブラックファントムの存在である。
今回の作戦の捕獲対象である、正体不明の漆黒の鋼機ブラックファントム。
おそらくは1世紀ほど前の鋼機をベースに作られたそれは、現在の最新鋭機を遥かに上回る不可思議な能力を持っている。
その能力に使われているテクノロジーの調査を行い、量産化にこぎつけることが出来れば、人類は鋼獣に大きな反撃の一手を得ることが出来る。
幸い鋼獣の性能は圧倒的ではあるが確認されている数は少ない。
一体一体の能力は強力だが広域消滅させるような兵装は今の所確認しておらず、人類に決定的な打撃を与えるというのはまだまだ時間がかかるだろうと目されていた。
このブラックファントムを機関に持ち帰る事が出来れば、それを調査し兵器化する時間はあるという事である。
つまり、この機体は人類が鋼獣に打ち勝つ為の希望なのだ。
だが、ここで捨てて逃げてしまったのならば、行動不能に陥っているブラックファントムは確実に、今、αチームを追ってきている鋼獣に破壊されてしまうだろう。
そうなってしまえば、αチームが行った事は何だ?
唯一、鋼獣に対抗できた戦力を自ら相手に献上し破壊させ、進んで滅びの道へと進んだようなものなのだ。
だから、なんとしてもこの機体は『イーグル』に持ち帰らなければならない。
αチームの隊員の命よりも重要な事といえた。
二つ目はα8、秋常譲二の存在だった。
秋常譲二はブラックファントム捕獲の作戦行動前に無断出撃を行い妖魔との戦闘を繰り広げた。
これに関しては秋常譲二に後々、相応の罰が与えられる予定であったが機関の上層部の目にある事実が入った事で彼に大きな価値を見出させる。
鋼獣・天狼と交戦した結果、天狼に小さな傷を与える程度のダメージを与えることに成功した事だ。
これはブラックファントムの謎のテクノロジーを使わずとも鋼機で鋼獣にダメージを与えることができたという唯一にして無二の例の為、
その戦闘データを解析、考察を行えば、ブラックファントムの未知のテクノロジーを調べるよりも現実的かつ早期に対鋼獣の戦術を組む事ができることになる。
ある意味まったくを持って未知のテクノロジーであるブラックファントムの解析して兵器化するというモノよりもそれは現実的な対抗策と言えた。
それゆえに、α8の回収も重要なのだ。
そして何より、αチームの隊長であるシャーリー・時峰は部下思いの隊長である事で有名である。
そして、単なる部下思いというにはそれは余りに度が過ぎている事でも有名な人間あった。


5年前、シャーリーがまだ、第七機関軍に所属していた頃、第四機関であった紛争に送り込まれた際、
たった一人の仲間を救う為にすべての仲間にリスクを犯させた過去があった。
結果、その行動はシャーリーの部隊に大打撃を与え、シャーリーは責任問題から罪を問われた過去がある。
冷静沈着であり、あらゆる状況の中でも柔軟かつ的確な判断をする事が出来、
鋼機のパイロットとしても一流という稀有な人材である彼女が汚物処理屋などといわれるある種の吐き貯めに来る事になったのはこういう背景があったからである。
彼女は今までどのような任務であっても仲間を見捨てる事はしなかった。
正確には、出来ないのだ。
利害問題を考慮した上で確率が低かろうとも、必ず全員が助かる方法を選択する。
それが、シャーリー・時峰という一人の人間であった。
だからこそ彼女はこの最悪の事態において、全員が助かる方法を即時に模索する。
そうして彼女はいくつかの逃走案を組み立て、部下たちに実行させた。
一つめは天狼との戦いで半壊したα8の機体の解体作業だ。
パイロットであるα8秋常譲二は既に機内で意識を失っている状態にある。
機体の損傷も目に見えてひどく、まともな機動が出来ない状態だと言えた。
そのため、まずコックピットブロックのみを切り離し、それをα6に持たせ、持ち運ぶ事にさせた。
次に問題となるのはブラックファントムの運搬方法である。
この機体に関しては安易に解体するというわけにはいかない。
この機体のすべてを手に入れることが今回の目的なのだ。
だが光学迷彩もなく、形状からして非常に目立つ機体であるこの機体を鋼獣の目から隠して移動するというのは困難を極める事であった。
これを回避するための最低条件は常に鋼獣の動きをモニターし、先手、先手と動く必要がある。
そこで空圧砲を持って待機していたα4にはその待機場所で待機したまま、敵の動向をモニターするように命令を送る。
α4のS-21はステルス性に特化させた特殊装備になっている。
鋼機本来の持ち味である機動力を大きく削ぐようにはなっているものの、電子兵装は他の鋼機を遙かに凌駕するものであった。
対ブラックファントム戦にはこのステルス能力をふんだんに駆使する事で、あの歪な眼光に捉われる事なく空圧砲を命中させる事に成功した。
つまりはα4は安易に退却行動をとらせるよりもその場でその高質なステルス性を駆使して鋼獣をやり過ごさせた方が生還の可能性が高いとも言える。
そして、それは鋼獣の動きをモニターすること出来るという事にも繋がり、無線通信において、α4に鋼獣の動向を探らせようという寸法だ。
これは人工衛星からの情報を司令部越しに受け取る等といった方法よりもずっとラグがなく動けるのが大きい。
シャーリー・時峰は一分足らずでこれだけの作戦を組み上げたのだ。
そうしてα1、α5、α6の三機による、ブラックファントムとα8を連れた、退却作戦が開始された。



――山岳地帯森林部、目標の基地までの距離残り10km



「しかし、何時までたっても奴はここから離れませんね、そろそろ諦めていい頃だと思うのですが…。」
山岳地帯下層の森林部、そこにαチームは森林を隠れ蓑にして潜んでいた。
αチームの上空には一機の鳥獣の形を模した機械が飛行している。
背中に大きな円輪を背負っているのと、9つに分かれた尾が特徴的でその尾の内、6つが激しく発光しているのが特徴的だった。
『イーグル』司令部からの報告にあった新手の鋼獣だ。
「まったくだα6、攻撃をしてこないという事から我々を発見したという事では無いのだとは思うが、
それにしてもここでの待機時間が長い。普通ならばそろそろ別の所にいってもいいものだ。」
α4から鋼獣がこちらに向かったとの報告を受けたシャーリー達は下腹にある森林地帯へと逃げ込んだ。
ここならば森の木々が陰になって、機体を隠してくれるという算段があったからである。
木々の影に隠れれば、ブラックファントムの漆黒の機体もそれなりの迷彩効果を帯びる事になる。
これが、まったく同じS-21 アインツヴァインであったならば、カメラを赤外線モードに切り替えられ、即座に発見されただろう。
だが、鋼獣にはそのような能力がない、それは過去のデータから明らかになっていることだ。
だがシャーリーには一つの懸念がある。
あれはデータには無い未知の鋼獣であるという事だ。
そう、鋼獣の索敵能力が低いという根拠はかつてのデータからの推測でしかないのであってあの鋼獣までもがその枠に収まりきるのかどうか不明なのだ。
つまりは可能性としては鋼獣に高い索敵能力が備わっている可能性もある。
だが、それだとおかしい点も一つある…何故、攻撃してこない?
「ほんっとに、めんどくせぇな、あれに弾丸をぶち込みたくなってくるぜ。」
嫌悪の意を示してα5が言う。
「我慢しろ、こういうのは何時でもじれったいもんだよ、根比べに負けるのはお前も嫌だろう?」
「へいへい。」
α5は口では愚痴を言うものの実際にその愚痴を行動におこすことはしない人間だと3年ほどの付き合いで理解している。
この男が、冷静でいる為に、自身に抑制をかける為に、戒めとしてある種暴言じみた愚痴を零すのだ。
「しかし、こうも近くで飛び回られると、下手な身動きが取れませんね、持久戦になるとこちらが不利です。」
「そうだな、奴が何を根拠にここから離れないのかさえ理解することが出来れば、それを元に対策を立てられるのだが…。」
結局はこれなのだ、あの鋼獣は何かを探知してい、自分たちがいる大まかな位置を理解している。
これは自分たちの上空から離れずに旋回して探し回っているという点からほぼ疑いようが無い。
だが、それは何故だ?これまではそのような例はまったく無かった。
それは一体――
「―――教えてやろうか?」
その時、聞きなれない声がシャーリーの耳に届いた。
いや、知っている声だ、だが、それは聞きなれた自分の部下たちの声で無い。
暗く淀んでいるような声。
ああ、そうだとシャーリーはその声を誰が発したのかを理解する。
そうして一息を入れて、シャーリーは聞きなれない声を発した者に問い返した。
「君はそれを知っているのかい?ブラックファントム…。」


「知らなきゃ、教えてやろうなんて文句は吐けない、違うか?」
行動不能になった漆黒の鋼機、ブラックファントム、そのスピーカーから声が発せられる。
その言葉には何か含みがあるのが感じられた。
「なるほど、だが、ただでというわけでは無いんだろう?」
シャーリーはため息交じりに言う。
「そうだな、この機体のフリーズ状態を解除してくれたら、教えてやるというのはどうだ、この緊急事態だ、高官どもも進言すれば解除してくれるかもしれない?
ついでにあいつも片づけてやろう、ここにいる人間全員が生きて生還万々歳という奴だ。悪い話じゃないだろう?」
茶化すようにブラックファントムは告げる。
「てめぇ、立場わかってんのか!」
α5が怒鳴りつけるように言いながら、鋼機の右腕に握られた、アサルトライフルの銃口をブラックファントムに向ける。
それも滑稽だと笑ってブラックファントムは言う。
「ハァー、状況を把握出来ていないような奴と無駄口する趣味は無いんだ、いいか?そこの脳無し、俺はシャーリーと話しているんだ。」
「この――」
ブラックファントムに煽られα5は怒りを露にする。
だが、そんなα5を遮り、侮蔑するように――
「黙れ馬鹿、いくらやつらの探知能力が低いとは言え、大声を出せば流石に気づかれるぞ?」
α6は釘を刺した。
「おお、相方は話がわかるようで…。」
「ぐっ。」
それを受けてα5は押し黙る。
「それにしてもだ、ブラックファントム、取引というのは信用の下に行われるのを知っているかい?」
シャーリーがブラックファントムに苦笑まじりの口調で問う。
「何が言いたい?」
「私は君を信用していないという話だよ、それにおそらく私ごときが進言した所で解除の容認などしてくれる事はないだろうな、私達に君を捕獲しろといった人間達はね、
 各機関への体裁とプライドを守るためにこんな無茶な任務をやらせているんだ、そんな人間達がそうそう容易に折れてくれると思うかね?」
事実だった。
もしこれで、ブラックファントムをキャッチ&リリースしたというものならば、他機関から第七機関とブラックファントムの繋がりを示唆される要因になりさらに立場が悪くなってしまう。
今回のこの無茶な作戦は、第七機関の身の潔白を証明するための作戦でもあるのだ。
「ふん、やりもしないで、諦めるなんて愚者もいいところだな。」
ブラックファントムは呆れたように呟いた。
「だが、まあ、我々も背に腹は代えられなくなってきている。我々の方から進言はしてみるよ、それで一応の手は打ってくれないかね。」
出来る限りの譲歩だった。
いや、これ以上の事をシャーリーは出来る権限を持っていない。
つまりはこれがシャーリーの出来る限りを尽した誠意と言えた。
「はぁー、はいはい、わかったよ。」
シャーリーはブラックファントムがそれをあっさり承認したことで少々拍子ぬけした。
こちらからは最大の誠意だったとはいえ、理不尽な物言いだったのは間違いないのだ。
「俺も命が惜しいからな、出血大サービスという奴だ、まず奴らはなんでここにとどまっているかという話だったな?」
「ああ、そうだ。」
ブラックファントムはそこに一息を入れた。
「それはな、奴らがこの機体に惹かれているからだよ。」

「それは一体どういう意味だ?ブラックファントム。」
「言葉通りさ、シャーリー・時峰。奴らはこの機体の大体の居場所を探知する事ができる、
 ただ結構範囲はアバウトで半径5kmぐらいで…だったかな。
お前らの記録に残っているだろう、俺と奴らの戦いはこちらからけしかけた回数よりもあちらからけしかけて来た方が多いのは、これっておかしいと思わないか?
 奴らの探知能力は低い、だが、何故かこいつは見つけられる。それはつまり、奴らは俺の機体の大体の居場所を特定できる能力を持っているからという事なんだよ。」
シャーリーは息を呑む。
「それはつまり――」
「そうだ、そうなんだ、そうなんだよ、俺たちがここでずっと息を潜めていても奴はここから離れるなんて事は無いという事だ。」
「ブラックファントム、聞きたい事がある。」
α6が迫るようにブラックファントムに尋ねる。
「なんだ?」
「我々の状況は把握できた、それにあなたは我々よりも奴らの情報を多く持っているようだ。
そこであなたに一つ聞きたい事があるのだが、我々の上空を飛んでいる鋼獣の事を知っているか?」
「そりゃあ、見えてるからな。」
「いや、そういう話をしているのではなくてだな。」
困ったような口調でα6言う。
α5はそのやりとりを見て腹を抱えて笑った。
「黙れ、ゲンジ。」
若干の怒気を込めてα6はα5に言う。
「いや、だってよぉ、ぐはは、今のはねぇぜ、ぐははは。」
「からかいがいがある奴らだなぁ…。」
その光景を眺め、周りには聞こえないようにブラックファントムは静かに呟いた。
それを見てシャーリーは溜息交じりにブラックファントムに言う。
「頼むからあまり部下で遊ばないでくれ、ブラックファントム、それで実際の所、あの鋼獣の能力に関して知っている事は無いか?」
「ん?ああ、しかし、お前ら、それも知らないのか、どうりでのんびりこんな所で隠れてるわけだな…。」
また、それかとシャーリーは思う。
彼は先ほどの戦いにおいても、我々にそんな事も知らないのかなどという台詞を吐いた。
それはつまり、機関の上層部は彼らの正体に関して知っているという言葉の裏返しであると考えられる事でもある。
だが、今はその意味に関して深く考えている場合では無い、それは生還してから行うべき事だ。
「そうだ、私たちは残念ながら、知らされていないんだよ、だから君が知っているのならば、少しだけでも生き残る確率を上げる為にも教えてほしい。」
ブラックファントムは少し考えるようにして間を置いた後、答えた。
「そうだなぁ、お前らのデータバンクの中では奴のコードネームは焔凰(えんおう)という。」
「焔凰?」
「そうだ、三獣神機、鳳凰のレプリカにして、UHの中でも数が少ない飛翔種機神疑似型、それが焔凰だ。鋼獣の中でもレアな機体だ。俺も存在は知ってはいたが初めて見たよ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
α6が慌てた声をあげる。
「お前は一体、奴らの事をどれだけ知っているんだ?それに俺達のデータバンクのコードネームだと?それは本当は俺達がその情報を知っているという事なのか?」
それをブラックファントムはふん、と鼻で笑った。

「俺からすれば、お前らが知らなすぎてびっくりなんだがな、俺が知っているのなんてこの機体のデータバンクにあるぐらいの情報だよ、
 といってもお陰さまでOSが凍結されて、今は閲覧できなくなっているがな。」
そこで更なる追及をしようとしたα6をシャーリーは止める。
「気になる話は多いが、それは後で聞かせてもらおう、今は時間が無い、奴の性能に関して知っている事を教えてくれ。」
「そうだな、何から話せばいいか、まあ、名は体を表すといったように、焔、つまり奴は炎を使う鋼獣だ。奴の姿を見てみてくれ、さっきと違う所があるのに気付かないか?」
そう言われてαチームの三人は、上空の焔凰に機体のカメラを向ける。
「いや、特別なにも変わっている様子はないが…。」
α6は焔凰を見つめて、呟く。
だが、何か違和感があるのは確かだった。
虹色で大きな二つの翼に、鋭角的でその嘴だけで相手の体を貫けそうな頭部、背中に大きな円輪を背負っており、その尾には9つの内、8つの光る大きな尾羽がある。
この中で何がおかしいのだろう、α6は考える。
だが、その違和感に最初に答えたのはα5だった。
「尾の光ってる数が違うな、たしかさっき見たときは6本だったが、今は8本光っている。これがなんか意味あんのか?」
「一番、意外な奴が答えたな、頭はアレだが感覚は鋭いタイプの人間という事か…。」
「てめえ、あんまり人馬鹿にしてると本当に撃つぞ。」
α5はブラックファントムに向けたアサルトライフルの引き金に指をかけさせる。
そんなα5を遮るようにシャーリーは銃口をブラックファントムから逸らさせた。
「α5、よくできた御苦労だった、だから黙れ。」
「た、隊長~。」
落ち込むα5を苦笑してブラックファントムは言う。
「奴の特性はな、太陽光を吸収しそのエネルギーをディールダインで増幅し尾羽というエネルギー貯蔵庫に蓄える事だ。
 一本の尾羽に発電所が一日に作り出す程度のエネルギーが蓄えられるんだそうだ。そしてそのエネルギーを熱線として吐き出す。これが焔凰の能力だ。
 奴は俺達の大体の位置を把握している、だが明確にどこにいるかまではわかっていない、そこで奴が何をしようとしているかわかるか?」
シャーリーの背筋にぞくりと悪寒が走る。
それは他の二人も同じようで、押し黙ってしまった。
「奴はな、9つの尾に蓄えられたエネルギーを全て解き放つ事で俺らごとここら一帯すべてを焼き払うつもりなんだよ。」
αチームの上空を飛行する鋼獣焔凰、その象徴たる尾の中で光を帯びていないものは残り1つであった。

「ブラックファントム…あと残り時間はどれほどある?」
シャーリー時峰はブラックファントムに問う。
「さあな、ただ、さっきから奴を見てたが大体5分で一本分のチャージが出来るみたいだ、
あとはフルチャージにはあと4分ぐらいと言った所だな。」
「隊長、4分ではこの荷物を持ってここから射程圏外に逃げるのは無理です。」
α6の声には焦りの色が見えた。
この男は普段は常に冷静さを保っているように見えるが、窮地に弱い。
「わかっている、落ち着け!ブラックファントム、奴に何か弱点はないのか?」
「知らないよ、機体がまともに動けば、データバンクからデータを覗く事も出来るが
お陰さまで今は無理だ、俺の知ってる情報なんてうろ覚えなレベルだ。だが、可能性ぐらいならば、示唆できる。」
「可能性?」
「奴の特徴はエネルギー貯蔵庫たる九つの尾だ。だが、その尾にこそ突くものがあると思わないか?」
あっ、と納得したような声を上げたのはα6だった。
「そうか、光っている尾が膨大なエネルギーの貯蔵庫なのならば、その尾を破壊する事が出来るかも知れない。
あの膨大なエネルギーで奴自身をも自滅させる事が出来るかもしれない。」
「まあ、そういう事だ。」
「他に何か知っている事は無いか?」
シャーリーはいつもと変わらぬ口調でブラックファントムに尋ねる。
「無いよ、あとはまあ、せいぜい頑張ってくれ、俺はここで見物させてもらうよ。」
もう、どうでもよさそうな口調で答える。
「感謝する、ブラックファントム、先ほどは君の事を信用できない人物だと評した事をここで謝罪させてもらうよ。君がいなければ我々はここで滅びを待つだけだった。」
ブラックファントムは意外な事を言われ驚いた様子を見せ、少し間を置いたあと、苦笑いした。
「やめてくれ、俺はただ、死にたくないだけだ。」
「それでも、ありがとう、凍結解除の進言はしておいたよ、だが、申し訳ないが彼ら受け入れないだろうと思う。それに関しては私から謝罪させて貰う。」
シャーリーは感謝の意をこめて、ブラックファントムに告げた。
「隊長、残り2分30秒です。」
急かすようにα6が言う。
「了解した、さて、諸君、我々には時間がない、細かい作戦を練っている暇もない、だが、やることは明白だ。
あの上空で我々を見下している下衆を焼き鳥にしてやるというそれだけの事だ。
今まで諸君らと様々な任務を行ってきた、そして私と諸君らであらゆる任務を成功させてきた、それは誇るべき事だ。そして我々の行うことはそれをまたやるだけでいい、簡単な事だろう?」
「当然。」
「楽勝。」
二機の鋼機が武器を構える。
「ならば、我々はその存在の名の元に、謳おう。その誇りの証明として、謳おう。」
イーグルの聖句、それはイーグルの創設者、黒峰玄武が組織の在り方を示すために作られたものだ。
「我らは気高き鷹なり。」
だが、玄武の死後、そのあり方を歪められてしまい、その玄武の理念を体現する組織としては成り立たなくなってしまった。
「あらゆる厄災から弱者を守る聖者の爪を持つものなり」
灰色から黒とよばれるような任務ばかりを押し付けられるようになり、それでついた蔑称が『汚物処理屋』であった。
「あらゆる悪を見逃さぬ、絶対なる監視の目を持つものなり」
ありとあらゆる侮蔑や屈辱に晒され続け、どのような目的を持って創設されたかを知っている外部の人間など数えるほどしかないだろう。
「故に我ら、世界の悪を正義の名の元に滅する」
だが、その黒峰玄武が掲げた理念は、その志は、まだここに残っているのだ。
どれほど汚されようと、どれだけ堕とされようと、それだけは、その高貴なあり方だけは誰に変える事は出来ない。
「「「我らの名は鷹、この世界の僕にして、守護者なり!!!」」」
イーグルという組織は、それだけは、その高貴なあり方だけは、どんな苦境に立とうとそれだけは守ってきた。
タイムリミットは2分。
勝率10%にも満たない戦いだ。
だが、彼らはそれを苦としない、信じているのだ、自らの勝利を…。
「さあ、行くぞ、各員、溜まってるものを全部吐き出して来い。」
そして、『地に堕ちた正義の味方』と『鋼獣・焔凰』との戦いの幕が開けた。


To be continued

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