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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

2-part5

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 第三機関の停止、これは『Polar Acceleration Mechanism』、略称PAMの停止を意味する。
 第三機関は当初の予想であった8秒を待たず停止してしまったのだ。
 別にこれは予想外の事態というわけではなかった。
 そう元々、先の泥種との戦いで受けたダメージにより第三機関がなんらかの損傷を受けたとAIは自己診断していた。
 その為、今回の戦いにおけるPAMの使用は危険と判断されプロテクトがかかり、使用することが出来なかった。
 つまりはそもそもこのPAMの起動は第三機関がなんらかの理由で爆発し、機体ごと消滅するという事態が起こってもおかしくはなかったというような状況であった。
 そう、今の状況は幸運といえる。
 第三機関の異常による機体の自爆、そしてそれによる搭乗者の死、その最悪の状況は回避できたのだから。
 だが求めたのは最高の稼動だった、想定できる中で最も理想的な稼動、それがなければこの危機は打破できなかっただろう。
 いや、たとえ、理想通りに稼動したところで5秒ではなんとか3体の妖魔倒すのが精一杯だった。
 残る3秒で4体の妖魔を倒さなければならなかった…そう、例え理想通りに動いたところでどちらにしろ無理だったのだ…。
 クーガは脱力する、絶望でも、後悔でもない。
 そう……ただ、体から先ほどの熱気が抜けるのを感じた。
 スラッシュゲイルは冷却を終了しようとしている。
 PAMはその力と引き換えに機体に異常なほど熱を持たせてしまう、その為に稼動後は緊急冷却に入る。
 そしてそのわずかな冷却時間、スラッシュゲイルはその性能を50%まで落とす事になる。
 つまり、PAMは切り札であると同時に諸刃の剣であるのだ。
 この冷却時間に妖魔達が襲ってこなかったのは幸運だったのだ。
 ほんの数秒で己の同胞が3体もやられたのが妖魔達の中に混乱と警戒を呼んだのだろう。
 とはいえ、元の状況になったとはいえ左脚と右腕は使い物にならない。
 機体をもはや立たせることすら困難な状況だ。
 つっかえ棒がわりに使っていたムラマサも妖魔を串刺しにし、大地に刺さっている状態だ。
 機体がこのような状況では抜きにすらいけない。
 あと3分、それだけの時間を生き残るような術はクーガには無かった。
 妖魔達はじっくりとこちらを観察している。
 またこちらが何か罠を張っているのではないかと思ってもいるのだろう。
 だが今度は本当に何も出来ない。
 きっとその内、いや…そろそろ攻撃を仕掛けてくるはずだ。
 そうなれば、クーガは機体ごと奴らに殺される。 

 もう、いいじゃないか…お前は頑張ったさ…。

 そうクーガの頭の中で誰かが言う。

 悔いが残るような戦いじゃあなかっただろ?

 優しく

 己が全てをかけて闘ったさ。

 ゆっくりと

 疲れたろう?もう休めよ。

 慈しみを込めて

 もう全てを忘れようぜ。



 クーガはぐっとレバーを握りなおした。
 先ほど感じていたような脱力感はもう彼には存在していない。
 忘れてなるものか。
 忘れてなるものか…。
 忘れてなるものか!!!
 今、クーガは己が最も嫌うことを今、己は己の中でしようとしたのだ。
 嫌になってくる、何時から自分はこんなにネガティブな思考をする人間になったのだろう。
 どんな状況になろうとも、どんなに逆境に陥ろうとも、足掻くと誓ったあの日を忘れたのか?
 ちがうな……己にはそうしなければならない義務がある。
 それを忘れて楽になりたい?
 甘ったれるな。
「ぐっ…。」
 頭を振る。
 倒れた際の衝撃で体に痛みがあったが、そんな事は些細な事だった。
 そしてレバーを握り締める。
 スラッシュゲイルは左腕で砂を掴むが、それっきりだ。
 そもそも失った右腕と動かない左脚のせいで機体のバランスが取れない為、立ち上がる事が出来ない。
 だが、それがどうした。
 たかがその程度だろう?
 その思いがクーガを動かす。
 クーガ・ラグナグは諦めることはない…いや、クーガ・ラグナグには諦めることは許されない。
 それは例え、どんなに困難で絶望的な状況であっても変わる事は無い、それが彼の信念であり、誓いであり、トラウマなのだ。
 妖魔達は攻撃の意志を固める。
 3体の獣種はこちらへと突撃するように助走をつけはじめた。
 確認しよう、今、スラッシュゲイルの動くものは左腕と右脚のみ…。
 左足は空中からの着地から敵への突撃という連続的な行動を取った際に受けたショックで電気神経に異常が発生し動かなくなった。
 空中からの刺突の際、右腕は機体の全重に耐え切れず壊れた。
 スラッシュゲイルの象徴である振動刀「ムラマサ」は妖魔を串刺しにしたままであり、回収しているような余裕はもう無い。
 両腕に装備された2基のワイヤークローは一つは戦場を変える際の移動に、一つは空中からの奇襲の際に使い、両方とも切断済みだ。
 ショットナックルに関しては右腕が破壊されたため、使いものにならない。
 そう、たかがその程度。
 機体が立ち上がる事が出来ない?
 武器がもう無い?
 だから闘えぬと誰が決めた?
 そう、クーガの中で叫ぶ声が聞こえる。
 妖魔達が突撃を開始する。
 クーガとスラッシュゲイルになす術などない。
 このまま獣種達の牙で機体ごとズタズタにされるが運命、これは変えられぬ運命。
 妖魔達が近づく、死期が迫る。 
 スラッシュゲイルは砂を掴む。
 無駄な行動だ、そんな事をしてもこの状況は変えられない。
 だが足掻くのだ、たとえみっともなくともただそのまま死を受け入れるなんて事は出来ない。
 獣種Dがその爪をスラッシュゲイルに向ける。
 その瞬間、シュパンとまるでなにかが爆ぜるような音が鳴り響き、それと同時に獣種Dは真横に吹っ飛んだ。
 獣種Cもそれに続いて吹っ飛んだ。
 クーガはその妖魔が吹っ飛ばされた射線上を見た。
 残る時間は2分…まだ2分だったのに…。
「たく……来るのが早いんだよ…。」
 空中に機械の飛行物体を確認して、クーガはそう言った。
「おう、待ち合わせ場所には予定時間より早く着くってのが俺様のモットーでね。」
 空中に浮かぶ機械の飛行物体、D型鋼機、D-34C シュナイザーに乗る男、セイムはそう言った。




「しっかし、酷い有様だなーおい、『僕は余裕で20分ぐらい奴らと戦うことができるんです』とか言っておきながら、実際来てみれば、あと1秒でも遅かったら終了~な感じだったじゃねえか。」
 その機体はまるで戦闘機のようだった。
 左右に広がる大きな翼が特徴的で深緑なカラーリングをしている。
 空中戦闘を行うF型をベースに作られたD型鋼機なのだろう。
「うるせー、来なくてもなんとかしたよ…。」
 つい愚痴る。
「強がるなよ、まあ、ぶっちゃけもう、やられてると思ってたからな、はっきり言えば嬉しい誤算だ。」
 笑いながらセイムは言う。
「へぇー。」
 クーガは気の無い相槌を打った。
「あ、ちなみにこいつはシュナイザーって言うんだ、シュナって呼んでくれ。」
「何故、略す。」
 即座にクーガが突っ込む。
「そう呼んだ方が女の子っぽいから。」
「はいぃー?」
「だってさー彼女いない歴28年なわけよー、こんな仕事してたら彼女作ってる時間も無いしー、うちの部隊には変な女しかいないしさ、このまま30迎えて魔法使いにでもなろうかと思ってるわけよ、でもやっぱり悲しいじゃないか女気なしなのはよー、だから―――」
「てか、あんた28だったのか!!」
 クーガは驚く、言動からしてもっと若いものだと思っていたからだ。
「………何故、俺様が28だとわかった?」
 ショックを受けたようにセイムは言う。
「いや、だって彼女いない歴28年って…それに30迎えてないとも言ってたし。」
「もしかしたら29歳かもしれないじゃないか!1歳のときに彼女がいた可能性とかお前は考えないのか?」
「いや、全然。」
「…………そうかい………。」
 本当にへこんだように低いトーンでセイムはそういった。
 そんなやり取りをしてたら生体反応が動いたのをレーダーが報せた。
「おっと、楽しいお話タイムは一時中断だ、お前はそこでゆっくり休んでろ。」
 さきほど、吹っ飛ばされた二体の獣種が起き上がる。
 空を見上げ空中にいる自身を攻撃した物体を視認したようだ。
 射撃の距離が遠かったのか、当たるところが良かったのか、大してダメージは受けていないようにみえる。
「予告しよう。」
 セイムは調子づいたように告げる。
「30秒だ、30秒でそこにいる妖魔を全部、駆逐する、俺様は予告を守るぜぇ~どこかの誰かさんと違ってな。」
 そう言って、空にいた機体、シュナイザーは地上にいる妖魔に向かって突撃した。



 セオリー通りやるのならF型タイプの鋼機が獣種と闘う時は空中から爆撃するのが基本だ。
 だが、この状況、クーガとスラッシュゲイルが地上にいる状況ではそんな広範囲攻撃を行う事はスラッシュゲイルを爆撃に巻き込んでしまう事を意味する。
 故にその行動は選択肢には無い、だからこその突撃。
 元々地上戦が苦手とされるF型で挑むのだ。
 妖魔側からすればそれは歓喜する出来事でもあった。
 空にいる翼種はともかく、獣種達には空中にいる敵を攻撃する術は無い。
 人の使う空を飛ぶ機械は獣種達にとっては天敵に近いものであったのだ。
 だが、その天敵は己の利を捨てて、自身らに向かって突っ込んでくる。
 そう、確実に状況は妖魔達に良い方向に傾いているのだ。
 シュナイザーは高速で地上近くに突っ込むと同時に逆噴射をかけた。
 その逆噴射で起こる爆風で獣種達の目は眩む。
 その瞬間、シュナイザーは翼を折りたたみ、先端部が展開し始めた。
「――まさか、変形か!!」
 そのシュナイザーの姿をみてクーガはふと呟く。
 理論は聞いたことはある。
 確か、カタリナとかいう女性が提案した新基軸の鋼機システムだ。
 地上戦特化のS型鋼機と空中戦特化のF型鋼機の両方の特性を高く持たせるために提案された、特殊形態。
 その為の可変機構、だがあれは変形に時間がかかりすぎるため隙が大きく、机上の空論に過ぎないといわれたはずのシステムだった筈だ。
 いや、だからこそなのだろう、それを実戦レベル実現してしまうのがD型と呼ばれる鋼機なのだ。
 シュナイザーは機体の変形を終える。
 その姿は先の戦闘機型の形態とは打って変わって、人型の形態となっていた。
 流星的なフォルムが特徴的で力強さと身軽さを感じさせる、さきほどまで大きく展開していた翼は背部に収納されている。
 腰部についていた、二丁の鋼機用の拳銃を抜く。
「覚悟はいいかい?ベイビー。」
 視界を取り戻した獣種達はその出来事にも構わず、シュナイザーに向けて突撃する。
 その内の1体の獣種に向けてシュナイザーは拳銃を発砲する。
 獣種の体毛は硬い、並大抵の銃器ではその体毛を貫くことなど出来ないだろう。
 基本は大口径の妖魔用の銃器が必携となる、だから、シュナイザーの持つ拳銃程度の口径の銃では獣種の体を貫けない……そう考えるのが自然だった。
 シュナイザーの拳銃からヒュンっとまた音がなる。
 それは銃声にしてはあまりにも間抜けな音だ。
 当たってはいるようだが、獣種は突撃をやめない。
 やはり効いていないのだ。
「セイム、無理だ!その銃じゃ妖魔には!!」
 クーガは叫ぶ。
「だから、お前さんは黙って見てなって…。」
 二丁拳銃を獣種に向けて三発、四発と撃つ。
 五発目が命中した時、一体の獣種はそこにそのまま倒れこんだ…。
「なっ…。」
 弾丸が相手の体毛を抜けた形跡は無い。
 倒れた獣種は血反吐を吐いている。
「わかったかい?別に外傷を与える必要はないんだ、衝撃を内部に伝えて内臓器官にダメージを与えてやればこの通り――。」
 セイムがさも自慢気にそういう――
「――セイム!後ろ!!」
 もう一体の獣種がシュナイザーの後ろに回りこみ飛び掛っていた。
 距離からしても回避は不可なのは一目瞭然だ。
「慌てない、慌てない――」
 セイムはそう軽口を叩く。
 シュナイザーは背後から向かって来る獣種に向けてエルボーブローを放った。
 獣種の顔面にエルボーブローが命中したと同時に大きなインパクト音がなる。
 それは機体の肘と妖魔がぶつかった時に起こった音というだけではなく、空気が破裂するような音も入り混じっていた。
「―――――ショットナックル!」
 そうこの音はスラッシュゲイルに内臓されている圧縮した空気を利用して放つ一発限りの衝撃拳ショットナックルを作動させた時と同じ音だ。
 シュナイザーはそれを肘で行うことが出来るようになっているという事だ、言うなればショットエルボーか…。
 そのまま振り向き様に獣種に向けて銃撃を再開する。
 連射。
 貫くのではなく、銃弾による衝撃で内臓へのダメージを与えていく。
 圧縮された空気は対象に当たると同時にその拘束を解き放ち、風の渦となって対象を襲い、その渦は衝撃となって相手の体内へと伝わっていく。
 その痛みに獣種は苦悶の表情を浮かべる。
 そして血を吐き獣種は息絶えた。
 そうしたあとシュナイザーは素早く視点を切り替える。
 探すのは最期の翼種、あまりの出来事にか、すでにこの場所から逃れようとしている。
「逃すかよ!」
 拳銃の片方の撃鉄部分が展開するそこにもう片方の拳銃の銃口を接続させた。
 二つだった銃は一つとなり巨大なライフル銃へと変貌を遂げる。
 その時、風が銃の方向に流れる音をクーガは聞いた。
 いや、銃の方向に吸い込まれるというべきか…。
 そう、シュナイザーの双銃ツインブラッドは空気を圧縮し弾丸とする銃器なのだ。
 ゆえに弾数は無限。
 シュナイザーはトリガーを引く。
 それと同時にさきほどとは比べ物にならないほどの大きな風の音が聞こえた。
 二つの銃の中で高密度に圧縮された空気の弾丸は発射されると同時に少しずつ圧縮という束縛を解かれ渦を作り出す。
 それは小規模の竜巻を発生させ、その竜巻は逃げる翼種に命中し、翼種は地に落ちた。
 敵影0。
 ここにいた妖魔達は一瞬にしてシュナイザーとセイムの手によって倒された。
「おい、クーガどんなもんよ?」
 自慢気な声でセイムは通信でクーガに言ってくる。
「――――――う―――ぃ」
「あ、なんだって?もう、一度言ってくれ。」
 通信の回線の状況が悪いらしく、クーガの返答は上手く伝わらなかったようだ。
「42秒、あきらかにタイオーバーだろ、何が『僕は30秒で奴らを一掃できるんですぅー』だ。」
 クーガは先ほど言われた皮肉をそのまんま返す、言うなれば仕返しだ。
「ゲ・・・マジで数えてたのか?」
 心底、驚いたように言う。
「お前、予告したら普通数えられるとか思わないのか?」
「全然。」
「………そうかい………。」
 そう即答したセイムの一言に、まるで絶望したかのようなため息を吐きながらクーガは答えた。 






「さて、この機体をどうするかだな。」 
 機体から降りたセイムはスラッシュゲイルを見て言う。
「とりあえず第三機関に問題が発生したが、軽くチェックした感じではそこまでの重傷ではないようだから、パーツ交換で済むと思う。問題は…この機体をどうやって、運ぶかだな…。」
 そうクーガが言うのに対して…、
「運んだところでこれは限りなく大破に近い、中破って奴だぜ、なんとか取り返しが付くって自己診断してもらったってこれじゃ即戦力どころか修理に何日どころか運が悪いと一部分丸ごと取り寄せとかになって数十日かかるぞ!!」
 まあ、事実だ、即戦力として見込まれて増援に来たのに着任早々機体をこんな状況にさせてしまったのは非常に問題がある。
「そんな事言っても、国の技術の粋たるD型を放棄するわけにもいかんし、別に緊急時ってわけでもないんだから爆破するわけにもいかんだろ・・・。」
「ハァー疫病神だぜ、まったく。」
「すまない。」
 落ち込む、事実だ。
 そんなクーガをみて、セイムは肩をぽんと叩く。
「だがな、生きてて良かった……あの時、俺様はお前とこれが今生の別れになるだろうと思ってたしな。」
 セイムのそんな一言にクーガは少し、救われた・・・が
「ちょっと、待て、今生の別れになるって、俺が耐えること信用してなかったのか?」
「全然。」
 そうセイムは即答する。
 沈黙。
 数十秒の間、沈黙していたが、急にセイムが笑い始める。
 それにあわせるようにクーガも笑い始めた。
 そうしてそこには二人の笑い声が響いた。 




 <第二話「飛翔する鋼」  了>















 少女は死ねと叫ばれた 
 それは少女の自身の咎か、少女の生まれの咎か、それとも存在自体の咎か
 ならば、何が少女を存在させる、何が少女であろうとさせる
 次回 シャドウミラージュ「変幻する糸」

 その答えを知るために、少女は死地に立つ決意をした



 To be continue

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