季節は春、天気は快晴。
暖かい陽射しの下、少女がひとり。背負った荷物の重さを感じさせない、踊るようなリズムで街道を歩いていた。
暖かい陽射しの下、少女がひとり。背負った荷物の重さを感じさせない、踊るようなリズムで街道を歩いていた。
パラベラム!
Episode 01:春の陽気と白ウサギ ~どこの誰かは知らないけれど~
Episode 01:春の陽気と白ウサギ ~どこの誰かは知らないけれど~
一歩歩く度にボリュームのある三つ編みが揺れ、黒いローブがはためく。
ああ、今日はなんていい日なんだろう。
顔がほころび、笑みが零れる。
少し前までは寒かったのに、今日はこんなに暖かい。この暖かさ、この匂い。まさに春だ。
「昨日は曇ってたし、寒かったから心配だったけど……」
くるりと一回転。遠心力を利用して、背負った荷物を放り投げ、そのまま脇の草原に倒れ込む。春の陽気に誘われて。
「今日はほんと、あったかくていい! 実にいい!」
……といっても吹く風はまだ、冷たいけれど。
大の字になって、ごろごろと転がる。草のクッションが心地いい。
少女――――一条 遥は旅をしている。しかしこれといって大層な目的は無い。別に故郷が嫌いというわけではないし、不祥事を起こして追放されたわけでもない。ただ、外の世界が気になっただけだ。
小さい頃に本で読んだ、遠い遠い国のお話。昔から、いつか行ってみたい、見てみたいと思っていた。
だから村を、国を飛び出した。それだけの話。やましい事なんて、なーんにも無い。極東の島国で生まれ、極東の島国で育った少女の、ちょっとした願望だ。
それが今、叶っている。
知らない街に数日間滞在して、お金を稼いで、次の街へ。たったそれだけの事を繰り返すだけだけれど、自分は今、とても充実しているのだ。
「旅って、いいなぁ……」
流れる雲を見ながら呟いた。
しかし、充実しているといってもそれは精神的な話であり、生活はけっこうギリギリだ。時に安定した生活に思いを馳せる事もあれば、家族や友人が恋しくなる事もある。めいっぱい誰かに甘えたいと思う事だって少なくはない。
「……頼れる相棒が欲しい」
異性でも同性でもいいから、話し相手が欲しかった。なるべく年上で、身長が高くて、頼れる人。年下は駄目だ、ついお姉さんぶってしまう。甘えられない。
遥の外見は極東人という事を差し引いても子供っぽい。身長は、まあ平均に届いている……と思いたい、そうであってほしい。しかし童顔なのと、何より出るところが出ていないのが問題だ。
旅先でもよく、おつかいに来た子供と間違えられる。もう十九歳なのに。もう十九歳なのに!
俯せになって地面を叩く。
ああ、今日はなんていい日なんだろう。
顔がほころび、笑みが零れる。
少し前までは寒かったのに、今日はこんなに暖かい。この暖かさ、この匂い。まさに春だ。
「昨日は曇ってたし、寒かったから心配だったけど……」
くるりと一回転。遠心力を利用して、背負った荷物を放り投げ、そのまま脇の草原に倒れ込む。春の陽気に誘われて。
「今日はほんと、あったかくていい! 実にいい!」
……といっても吹く風はまだ、冷たいけれど。
大の字になって、ごろごろと転がる。草のクッションが心地いい。
少女――――一条 遥は旅をしている。しかしこれといって大層な目的は無い。別に故郷が嫌いというわけではないし、不祥事を起こして追放されたわけでもない。ただ、外の世界が気になっただけだ。
小さい頃に本で読んだ、遠い遠い国のお話。昔から、いつか行ってみたい、見てみたいと思っていた。
だから村を、国を飛び出した。それだけの話。やましい事なんて、なーんにも無い。極東の島国で生まれ、極東の島国で育った少女の、ちょっとした願望だ。
それが今、叶っている。
知らない街に数日間滞在して、お金を稼いで、次の街へ。たったそれだけの事を繰り返すだけだけれど、自分は今、とても充実しているのだ。
「旅って、いいなぁ……」
流れる雲を見ながら呟いた。
しかし、充実しているといってもそれは精神的な話であり、生活はけっこうギリギリだ。時に安定した生活に思いを馳せる事もあれば、家族や友人が恋しくなる事もある。めいっぱい誰かに甘えたいと思う事だって少なくはない。
「……頼れる相棒が欲しい」
異性でも同性でもいいから、話し相手が欲しかった。なるべく年上で、身長が高くて、頼れる人。年下は駄目だ、ついお姉さんぶってしまう。甘えられない。
遥の外見は極東人という事を差し引いても子供っぽい。身長は、まあ平均に届いている……と思いたい、そうであってほしい。しかし童顔なのと、何より出るところが出ていないのが問題だ。
旅先でもよく、おつかいに来た子供と間違えられる。もう十九歳なのに。もう十九歳なのに!
俯せになって地面を叩く。
ぱすっ、ぱすっ、ぱすっ。
ああ、音が虚しい。こんな事をしている自分が女々しい。
ぱすっ、ぱすっ、がしゅんっ。
「音が……ん? この音……」
脳裏をよぎる、嫌な予感。
微かに聞こえる、金属のフレームが掠れる音に顔を上げる。
脳裏をよぎる、嫌な予感。
微かに聞こえる、金属のフレームが掠れる音に顔を上げる。
現れたのは筋骨隆々とした空色の流線型。のっぺりとした顔の中央で小さなモノアイが青い光を放っている。その姿はまるで物語に出てくる一ツ目の巨人のようであった。
それは鋼鉄の巨人。遥かいにしえの遺産。
「オートマタ……!」
面倒な奴に出くわしてしまった。
が、幸いまだ距離はある。何とかしてやり過ごさなければ。
周囲を確認。
「北と南は平野。東にオートマタ、西に森。森を抜ければ遺跡、と……よし」
はいずって、投げ捨てた荷物の傍へ。
取り出した手榴弾のピンに指を掛ける。
それは白燐超高熱耐消火性焼夷弾頭型発煙化学爆弾。
……煙幕とも言う。というか煙幕である。
――――これにだってお金かかってるんだから、使わせないでよ……!
が、思いも虚しく“一ツ目”がこちらを向く。こっち見んな。
<目標確認>
……どうやら喋れるらしい。ではなく、
「ああもうっ! 見つかったぁっ!」
ピンを抜き、力いっぱい円筒形のそれをブン投げると、即座に百八十度向きを変え、荷物を抱えて全力ダッシュ。目指すは彼方に見える森。
真後ろでグレネードが弾ける音と、一ツ目の「グアッ」という短い悲鳴。ビンゴだ。後は相手のカメラが麻痺している間に駆け抜けるだけ。さすが白燐超高熱耐消火性焼夷(以下略)である。お金は無駄になったが命は無駄にはならなかった。
「命あっての物種って言うしね……!」
背に腹は代えられぬ。世の中にはお金よりも大切なものがあるのだ、たくさん。
それに少しだけ――――大体六百グラムだけ身軽になれた。
いける、逃げ切れる、そんな気がする。だって今日はいい日なんだから。
――――確証は、皆無だけれど。
それは鋼鉄の巨人。遥かいにしえの遺産。
「オートマタ……!」
面倒な奴に出くわしてしまった。
が、幸いまだ距離はある。何とかしてやり過ごさなければ。
周囲を確認。
「北と南は平野。東にオートマタ、西に森。森を抜ければ遺跡、と……よし」
はいずって、投げ捨てた荷物の傍へ。
取り出した手榴弾のピンに指を掛ける。
それは白燐超高熱耐消火性焼夷弾頭型発煙化学爆弾。
……煙幕とも言う。というか煙幕である。
――――これにだってお金かかってるんだから、使わせないでよ……!
が、思いも虚しく“一ツ目”がこちらを向く。こっち見んな。
<目標確認>
……どうやら喋れるらしい。ではなく、
「ああもうっ! 見つかったぁっ!」
ピンを抜き、力いっぱい円筒形のそれをブン投げると、即座に百八十度向きを変え、荷物を抱えて全力ダッシュ。目指すは彼方に見える森。
真後ろでグレネードが弾ける音と、一ツ目の「グアッ」という短い悲鳴。ビンゴだ。後は相手のカメラが麻痺している間に駆け抜けるだけ。さすが白燐超高熱耐消火性焼夷(以下略)である。お金は無駄になったが命は無駄にはならなかった。
「命あっての物種って言うしね……!」
背に腹は代えられぬ。世の中にはお金よりも大切なものがあるのだ、たくさん。
それに少しだけ――――大体六百グラムだけ身軽になれた。
いける、逃げ切れる、そんな気がする。だって今日はいい日なんだから。
――――確証は、皆無だけれど。
♪ ♪ ♪
草原を見下ろす小高い丘の上、リヒト・エンフィールドは一人、日の光を浴びながら寝転がっていた。
男の傍らには杖が刺さっている。赤い石の埋め込まれた、金属でできた杖だ。いや、杖というよりもそれは棒術等で使うロッドと言ったほうが適当だろう。
風が吹き、ざんばらの赤い髪が揺れる。
舞い散った葉が男の口に侵入した。誤ってそれを噛み潰してしまう。緑色のエキスがじわりと滲んだ。
「ペッ、ペッ! 苦っ! 気持ち悪っ!」
がばっ! と起き上がり、哀れペースト状になってしまった葉っぱを吐き出す。
<流石ボス。相変わらずのダサカッコ悪さ、素敵です>
ロッドから、少女の声。それは抑揚が無く、それでいて透き通っていて。
「ヘーシェンよ。不思議な事に褒められてる気がしない」
<はい、褒めてないですから>
幼さを感じさせるその声――――ヘーシェンは容赦無く即答。リヒトの心をズタズタに引き裂
「しかし今日はいい天気だな」
……いてはいなかった。というかむしろ男は話を聞いていなかった。
<十一時の方向で小鳥が鳴いていますね>
なので彼女も彼を無視した。
「ああ、久々に釣りでもしたいな」
会話が繋がらない。というか双方繋げる気が無い。何を言っても、どこ吹く風だ。
と、その時、丘の真下、草原から爆発音。ヘーシェンは立ち上る煙を見、ボスと呼ばれた男は森に向かって全力で突っ走る少女と、それを追うオートマタを見た。
<……あ、発煙手榴弾>
「見ろヘーシェン、小さな女の子が襲われているぞ。これは助けなきゃいけないな。だって 小 さ な 女 の 子 が襲われてるんだもんな」
こんな時だって噛み合わない。
<大人の女性だったら見捨てるんですね。流石ボス、とんだロリコン野郎です。ボスが襲われればいいのに>
「よし! 助けるぞヘーシェン! 彼女を助けて金を要求、そして身体で払わせる!」
嘘か真か……いや、おそらく真だろう。目が本気だ。
<最低ですね。ロリコン紳士の名が泣いてます>
吐き捨てるような声。もしも彼女に瞳があったのなら、その視線はどこまでも冷ややかであっただろう。……あるいは、無表情か。
男の傍らには杖が刺さっている。赤い石の埋め込まれた、金属でできた杖だ。いや、杖というよりもそれは棒術等で使うロッドと言ったほうが適当だろう。
風が吹き、ざんばらの赤い髪が揺れる。
舞い散った葉が男の口に侵入した。誤ってそれを噛み潰してしまう。緑色のエキスがじわりと滲んだ。
「ペッ、ペッ! 苦っ! 気持ち悪っ!」
がばっ! と起き上がり、哀れペースト状になってしまった葉っぱを吐き出す。
<流石ボス。相変わらずのダサカッコ悪さ、素敵です>
ロッドから、少女の声。それは抑揚が無く、それでいて透き通っていて。
「ヘーシェンよ。不思議な事に褒められてる気がしない」
<はい、褒めてないですから>
幼さを感じさせるその声――――ヘーシェンは容赦無く即答。リヒトの心をズタズタに引き裂
「しかし今日はいい天気だな」
……いてはいなかった。というかむしろ男は話を聞いていなかった。
<十一時の方向で小鳥が鳴いていますね>
なので彼女も彼を無視した。
「ああ、久々に釣りでもしたいな」
会話が繋がらない。というか双方繋げる気が無い。何を言っても、どこ吹く風だ。
と、その時、丘の真下、草原から爆発音。ヘーシェンは立ち上る煙を見、ボスと呼ばれた男は森に向かって全力で突っ走る少女と、それを追うオートマタを見た。
<……あ、発煙手榴弾>
「見ろヘーシェン、小さな女の子が襲われているぞ。これは助けなきゃいけないな。だって 小 さ な 女 の 子 が襲われてるんだもんな」
こんな時だって噛み合わない。
<大人の女性だったら見捨てるんですね。流石ボス、とんだロリコン野郎です。ボスが襲われればいいのに>
「よし! 助けるぞヘーシェン! 彼女を助けて金を要求、そして身体で払わせる!」
嘘か真か……いや、おそらく真だろう。目が本気だ。
<最低ですね。ロリコン紳士の名が泣いてます>
吐き捨てるような声。もしも彼女に瞳があったのなら、その視線はどこまでも冷ややかであっただろう。……あるいは、無表情か。
「誰がミッドナイト的な事をすると言った、この変態人形め」
<そうですね、私はミッドナイト的な事とは言ってないですね。その変態ぶり、流石ですボス>
「口の減らない奴だな」
<口はありませんが>
「……まあいい」
リヒトが立ち上がり、ロッドを掴む。
「幼女に襲い掛かるような変態はピーピーピーボボボの刑に処してやる。いくぞ、ヘーシェン」
<……イエス・マイマスター>
噛み合わない二人だが、そういつも噛み合わないわけではないらしい。
掴んでいたそれを地面から抜き放つと、男の周囲でマナが舞った。草が揺れる、ロッドの宝石が放つ光を増す。
リヒトはロッドを振りかざし、高らかに宣言した。
<そうですね、私はミッドナイト的な事とは言ってないですね。その変態ぶり、流石ですボス>
「口の減らない奴だな」
<口はありませんが>
「……まあいい」
リヒトが立ち上がり、ロッドを掴む。
「幼女に襲い掛かるような変態はピーピーピーボボボの刑に処してやる。いくぞ、ヘーシェン」
<……イエス・マイマスター>
噛み合わない二人だが、そういつも噛み合わないわけではないらしい。
掴んでいたそれを地面から抜き放つと、男の周囲でマナが舞った。草が揺れる、ロッドの宝石が放つ光を増す。
リヒトはロッドを振りかざし、高らかに宣言した。
「パラベラム!」
♪ ♪ ♪
走って、走って、気付けば視界にはたくさんの木々。森へ逃げ込む事に成功したようだ。
針葉樹の陰に隠れて進む。少しずつ、少しずつ。
踏んづけた細い落ち葉が砕ける音だけが響く。ぱきぱき、ぱきぱき、と。
走って、走って。もっと遠くへ、もっと遠くへ。黙々と、黙々と、ひた走る。
その度に踏まれた枝が、落ち葉が、ぱきぱき、ぱきぱき。
ぱきぱき。
ぱきぱき。
ぱきぱき。
ミシッ……。
今、確かに聞こえた。木が根本から軋む音が。
「追い、付いて……来た……!?」
しかし振り返る余裕は無い。振り返れば、走る速度は遅くなる。走れ、走れと自分に言い聞かせ、何とかその欲求を打ち消した。
<目標ヲ発見。確保シマス>
いかにも機械的な、片言な言葉。それが逆に恐怖感を募らせる。
これで確定した。追い付かれた、という事実が。
針葉樹の陰に隠れて進む。少しずつ、少しずつ。
踏んづけた細い落ち葉が砕ける音だけが響く。ぱきぱき、ぱきぱき、と。
走って、走って。もっと遠くへ、もっと遠くへ。黙々と、黙々と、ひた走る。
その度に踏まれた枝が、落ち葉が、ぱきぱき、ぱきぱき。
ぱきぱき。
ぱきぱき。
ぱきぱき。
ミシッ……。
今、確かに聞こえた。木が根本から軋む音が。
「追い、付いて……来た……!?」
しかし振り返る余裕は無い。振り返れば、走る速度は遅くなる。走れ、走れと自分に言い聞かせ、何とかその欲求を打ち消した。
<目標ヲ発見。確保シマス>
いかにも機械的な、片言な言葉。それが逆に恐怖感を募らせる。
これで確定した。追い付かれた、という事実が。
「しつっこいなあ、も……うきゃっ!?」
身体が一瞬宙に浮く。そしてそのまま落ち葉の中へダイブ。つまり、コケたのだ。
「いっ……たぁ……」
針のような葉がちくちくと刺さって痛い。もう起き上がる気力すら無くなった。
バキバキと、足音が近付く。
バキバキ、バキバキ。
バキバキ。
バキッ。
足音がすぐ傍で止まる。一ツ目が遥に向かって手を伸ばす。
ああ、もうおしまいだ。故郷のお父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しくださ
<小さな女の子を追い掛けるとは関心しませんね、このド変態>
突如として間に割って入った、白い機械人形。
特徴的な脚部と、長い耳のようなアンテナが目を引く。その機械人形は、まるで――――
「白い、ウサギ……」
<さあ、今の内に逃走、逃走>
“白ウサギ”のどこか間の抜けたような声で急かされ、立ち上がる。そうだ、今は逃げないと。
「どこのどなたかは知らないけれど……ありがとう!」
再び、走りだす。
できるだけ遠くへ、もっと遠くへ。
身体が一瞬宙に浮く。そしてそのまま落ち葉の中へダイブ。つまり、コケたのだ。
「いっ……たぁ……」
針のような葉がちくちくと刺さって痛い。もう起き上がる気力すら無くなった。
バキバキと、足音が近付く。
バキバキ、バキバキ。
バキバキ。
バキッ。
足音がすぐ傍で止まる。一ツ目が遥に向かって手を伸ばす。
ああ、もうおしまいだ。故郷のお父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しくださ
<小さな女の子を追い掛けるとは関心しませんね、このド変態>
突如として間に割って入った、白い機械人形。
特徴的な脚部と、長い耳のようなアンテナが目を引く。その機械人形は、まるで――――
「白い、ウサギ……」
<さあ、今の内に逃走、逃走>
“白ウサギ”のどこか間の抜けたような声で急かされ、立ち上がる。そうだ、今は逃げないと。
「どこのどなたかは知らないけれど……ありがとう!」
再び、走りだす。
できるだけ遠くへ、もっと遠くへ。
♪ ♪ ♪
走りだした少女を見送って、“白ウサギ”ヘーシェンは視線を一ツ目へと移した。
<『どーこーのだーれーかーは知ーらなーいーけーれーどー』……さて、月光仮面は誰でしょうね>
意味不明な彼女の言動に一ツ目が一瞬戸惑いを見せる。
<兎に耳あり、あなたに隙あり>
鋭い踏み込みから放たれた肘鉄が、人で言うところの鳩尾の部分を強打する。肘に取り付けられたニードルが、マナの防壁を貫通して一ツ目の装甲に傷を付けた。
本来オートマタは、重大なマナ不足に陥るかでもしない限り戦闘中は常にマナによる防壁を展開している。
そしてその防壁は自らの意思で強度を変更出来るだけでなく、オートマタが反射的に危機を感じた場合にも、その防御力を飛躍的に上昇させる。あたかも生物の筋肉のように。
それ故に奇襲はオートマタに対して非常に有効な戦術であると言えよう。
<……損傷ハ軽微。敵対スルナラ、破壊スル>
<そうですね。せっかく疾風のように現れたので、疾風のように去っていこうと思います>
こんな時も噛み合わない。ウサギはいつだってマイペースなのだ。自分の邪魔をする奴がいたのなら、躊躇せずに噛み付こう。
腰を落として、低く構える。バイザー式の真紅の瞳が輝きを増す。
<カモン、サイクロプス>
<『どーこーのだーれーかーは知ーらなーいーけーれーどー』……さて、月光仮面は誰でしょうね>
意味不明な彼女の言動に一ツ目が一瞬戸惑いを見せる。
<兎に耳あり、あなたに隙あり>
鋭い踏み込みから放たれた肘鉄が、人で言うところの鳩尾の部分を強打する。肘に取り付けられたニードルが、マナの防壁を貫通して一ツ目の装甲に傷を付けた。
本来オートマタは、重大なマナ不足に陥るかでもしない限り戦闘中は常にマナによる防壁を展開している。
そしてその防壁は自らの意思で強度を変更出来るだけでなく、オートマタが反射的に危機を感じた場合にも、その防御力を飛躍的に上昇させる。あたかも生物の筋肉のように。
それ故に奇襲はオートマタに対して非常に有効な戦術であると言えよう。
<……損傷ハ軽微。敵対スルナラ、破壊スル>
<そうですね。せっかく疾風のように現れたので、疾風のように去っていこうと思います>
こんな時も噛み合わない。ウサギはいつだってマイペースなのだ。自分の邪魔をする奴がいたのなら、躊躇せずに噛み付こう。
腰を落として、低く構える。バイザー式の真紅の瞳が輝きを増す。
<カモン、サイクロプス>
次 回 に つ づ く ゥ !
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