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Hideaway ―逃亡者―

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ssmrowa

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震える手が、弾倉へ銃弾をつめる。
小指ほどの小さな穴に一発ずつ、銃弾と共に思い出を詰める。
いや、詰め込んでいくのは思い出だけではない。
あの、軽音楽部の愉快な部員達への想いを。
中野梓との思い出と、その想いをつめた銃弾を詰める。
琴吹紬との思い出と、その想いをつめた銃弾を詰める。
田井中律との思い出と、その想いをつめた銃弾を詰める。
秋山澪との思い出と、その想いをつめた銃弾を詰める。
そして最後に平沢唯との思い出と、その想いをつめた銃弾を詰める。
最後の一つは、空白だ。
ここに詰めるべき弾は無い、詰め込んでいく思い出は何も無い。
五発の銃弾を詰め終えた弾倉を勢いよく回し、そのまま手元を見ずに装着させていく。

呼吸を一つし、その銃をゆっくりとこめかみに当てていく。
レバーを引き、弾丸を射出する準備を整えていく。
あとは、引き金を引くだけだ。
引き金を引くだけで5/6の確率で、自分は死ぬことが出来る。
決意が鈍る前に、早くしなければ。
手が小刻みに震え始めるのを感じ、焦りながらも目を瞑り、指に力を込めようとしたとき。

「駄目だよ!!」

その力を止める人間が、一人現れた。




赤座あかりは、怯えていた。
最後の一人になるまで殺し合いをしなければいけない、という現実を突きつけられ、途方も無く怯えていた。
ただの中学生である自分が何を出来るわけでもなく、人を殺せるわけでもなく。
何故、自分が巻き込まれたのかすらも理解できる訳も無く。
襲い掛かる死の恐怖に押しつぶされそうになりながら、この殺し合いの地を歩き始めていた。
誰が悪人で誰が善人か分からないけれど、この状況を変えるためにとにかく誰かに出会う。
誰かに会えば、何かしら変わるだろうと思っていたから。
とにかく、喋ることが出来る相手が欲しかった。
夢ではなく、これは現実なのだと、確認しあえるような相手が。
そんな人間を求め、恐怖に立ち向かいながら足を進めていた矢先のことだった。
目の前で、銃をこめかみに突きつけている制服の女子が居た。

「駄目だよ!!」

目を瞑っていた制服の女子に、あかりは叫んでいた。
止めなければいけない、心の底からそう思ったから。

「……来ないで」

ゆっくりと目を開いたメガネの女子は、まるであかりを飲み込むかのような冷たい目線で睨みつけた。
あかりは思わず小さく声を漏らし、後ろに一歩後ずさってしまう。

「この銃にはね、私の思い出が詰まってるの」

あかりが怯んだのを見てから、彼女は淡々と語り続ける。

「私の友達と、過ごした日々と、大切な思い出が詰まってるの」

その言葉はあかりに向けられたものではなく。

「大事な五人、どうしてもほっとけない五人との、思い出が一発ずつ詰まってるの」

その言葉は自身に向けられたものでもなく。

「私は、この思い出が汚されるのを見たくない」

ここに居ない、誰かに向けられているようで。

「私は見たの。あの初めの場所に、唯が居るのを」

光の無い目の先に、誰かの影を見つめながら。

「もし、唯が死んだら。この思い出はどんどん色褪せて行ってしまう」

淡々と、淡々と語り続ける。

「私は……耐えられない、私の大切な思い出と友達が壊れるのを見るなんて、耐えられない」

自分が選んだ、取るべき未来の末路を。

「だから、その前に死んでしまうことにしたの」

この心が、壊れてしまう前に。



「や、やっぱり駄目だよ!!」

すっかり震え上がっていたあかりが、勇気を振り絞って彼女に声をかける。

「死んだらお終いだよ!? 楽しいことも、嬉しいことも、ぜーんぶなくなっちゃうんだよ!?
 大事なお友達が居るんだったら、生きて一緒にもっと思いで作ろうよ!!」

そう、生きてこそだ。
まだ思い出は壊れると決まったわけじゃ無い、色褪せていくと決まったわけじゃない。
何が出来るかはわからないが、何かは出来るかもしれない。
それは、生きていなければ出来ないことなのだ。
だから、あかりは彼女が死を選ぶことを止める。
何より――――目の前で人に死なれるのが、堪らなく嫌だったから。

「……一人しか生き残れないのよ」

だが、彼女の目は相変わらず濁ったままである。

「唯を殺さなきゃ、私は生き残れない」

生き残るということはどういうことか?
殺しあった先の最後の一人になるということだ。
最後の一人になるという事はどういうことか?
あの場所で見た、大切な友人を殺すということだ。
大切な友人を殺すということは――――

「それとも、自分で思い出を壊せというの? 無理よ、そんなの」

思い出を自ら砕くということだ。
彼女は、それを選ぶ事はできない。

「これは逃げよ、それは認めるわ」

だから、逃げる。
押しつぶされそうな現実が襲い掛かってくる前に。
この殺し合いという舞台から一足先に降りる。

「じゃあね」

緩んでいた力をもう一度加え、引き金を引いていく。
それを止めようとあかりがようやく走り出すが、間に合うわけも無い。

「だ、駄目――――――――!!」

あかりの叫びが、木霊する。





カチン。

死は訪れない。





「よ、良かった……良かったよ……」
あかりは、気がつけば無我夢中で相手を押し倒していた。
引き金が引かれ、カチリと音がしたあとにあかりが突進してきたのだ。
何が起こったのかは、あかりには理解できない。
彼女が一発だけ銃弾をつめていなかったことなど、あかりには知る由も無い。
ただ、自分の目の前にいる人間が助かったことが堪らなく嬉しくって。
自分の目の前で人が死ななかったということが堪らなく嬉しくって。
彼女は、泣き出しそうになっていた。
ゆっくりと立ち上がり、服についた埃を払い、呼吸を整えてから決意する。
友達になろう、そのために自己紹介をしようと。
ゆっくりと、彼女の方へと振向いていく。


「私、赤座あか」

その時、振り返った時に聞こえた破裂音が。
生涯で聞いた、最後の音だった。


「……背負えというのね」


銃口から立ち上る煙と、額に穴をあけて倒れ伏している少女の死体を目前に彼女は呟く。
思いを詰めた銃弾は、彼女の頭を貫くことは無かったのだ。
その確率は六分の一、決してありえない数字ではない。
だが彼女は死ねなかったという事実を、生かされたと捉えた。

「みんなは、私にこの思い出を背負って生きろというのね?」

思い出は、彼女の命を貫くことが出来なかった。
一人一人の思いを込めた弾丸だったからこそ、彼女の命を貫けなかったのだ。
彼女は、それを生かされたと受け止めた。
思い出が壊れる様を見届けてくれと、言われたような気がしたのだ。

「でも私が生きるには、思い出を壊さなきゃいけない。
 そんなこと、私に出来るわけが無い」

だが、耐えられない。
綺麗な思い出が色褪せて汚れて壊れて行くのを、受け止めることなど出来るはずが無い。

「だったら……せめて唯は、唯は綺麗な思いでを抱いたままで居て欲しい」

だから、色褪せぬままの思い出を抱いたままで居られるよう。
この自分の中にある、楽しい楽しい思い出をそのまま抱いてもらえるよう。
自分が、その相手を生かせば良い。
彼女の思い出が汚れて壊れないのならば、それが良い。
自分は背負って生きていけないから、思い出が壊れるのを見つめられないから。
彼女の思い出を壊さないように、自分が守ってやれば良いのだ。
最後の一人になるまで生き残らせる、その最後の一人に彼女を仕立て上げれば良い。
あの子は何も知らなくて良い、人を殺す感覚も、誰かが死んでいく感覚も、何も味わわなくていい。
だから、自分が動かなくては。
この身を粉にしてでも、彼女を生き残らせなければ。
美しく綺麗で、決して汚されてはいけない彼女の思い出を守るために。

「やらなきゃ」

すくりと立ち上がり、銃殺した少女へと銃弾を打ち込んでいく。
バン、バン、バン、バンと、破裂音が四発。
それは思い出を置いて行く合図。
今から自分は汚い人間になるから、綺麗な思い出を置いておく。
彼女達の綺麗な思い出を、汚い自分で汚すわけには行かないから。
この場所で出会った、見ず知らずの少女の身体に埋め込んでいく。

「私があの子を守らなきゃ」

くるりと振向き、銃を片手に走り出していく。

考えに矛盾を孕んでいることに気がつきながら。

もう一人、その思い出を持つ少女が居ることも知らず。

ただ、ただ、義務感に急かされるように。

生かされてしまった彼女は、その道を歩むしかなかった。



【赤座あかり@ゆるゆり 死亡】

【H-7/灯台付近/一日目-朝】
【真鍋和@けいおん!】
[参戦時期]:後続にお任せ
[状態]:健康
[装備]:RSAF エンフィールドNo.2(6/6 予備弾49発)
[道具]:基本支給品*2、不明支給品(1~5)
[スタンス]:奉仕マーダー(唯)
[思考]
基本:唯が最後の一人になれるように動く、唯には絶対に会わない



――以上61名、当選確実です 投下順 ジョナサン・ジョースターVSロビンマスク
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GAME START 真鍋和 Sinking girl

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